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2020年からスタート!小学校で「プログラミング」が必修化ってホントですか?

「プログラミング」とは、ざっくりいえばコンピューターを動かすためのプログラムを作成すること。そのプログラミングを学ぶための授業が、2020年度から小学校で必修になるんです!

まだまだ先の話じゃないの? なんて思っていたら、授業開始はもう2年後。
ただでさえ忙しい今の小学生たち、学習内容がさらに増えて大丈夫なの? そもそも全員が学ぶ必要あるの? 先生の負担は大丈夫? そんな声が、全国の親御さんたちから聞こえてきています。

文部科学省が考える、プログラミング必修化の意義とはいったい何なのでしょうか…。
専門家の先生に伺ってきました!

「プログラミング」が必修化されると、何がどうなるの?

専門家:川原田康文 先生(相模女子大学 小学部 副校長)
ロボット教育学の第一人者。ロボットを教材として活用した、新しい教育システム構築を研究している。在籍している小学校でも、今年4月から全学年でいち早くプログラミング授業を開始。World Robot Summit ジュニア競技委員。

聞き手:
Aさん(男性34歳、会社員) 小学5年生の長男と、2年生の次男の父親。
Bさん(女性30歳、会社員・現在は育児休暇中) 2歳の女の子の母親。
Cさん(男性41歳、小学校教員) 都内公立小学校の教師。専科は国語。

Q.なぜ今「プログラミング」が小学校で必修になるのでしょうか? 今回の導入はどのような目的があるんですか?(Aさん)

私たちの暮らしは、今まさに劇的な転換期に差しかかっていますよね。
AI(人工知能)などの技術が発展することで、産業革命以来の大きな変化がまもなく訪れ、今の小学生たちが生きていく未来は、私たちがこれまで営んできた社会とはぜんぜん違うものになるでしょう。そうした変化に対応できる人間を育てるために、教育も大きく変わろうとしています。

「みんな等しく、同じ時間内に、同じことができる」ことを目指した現在の学校教育は、そもそも明治政府が定めた方針で、日本人の識字率向上に大きく貢献しました。戦後、占領軍として来日したアメリカ人も驚いたと言いますよね。しかし、これからの時代に必要なのは「自ら考え、創造する力」だと言えます。

将来的にはAIやAIを搭載したロボットが人間に替わって、多くの仕事を担うようになると予想されています。中国ではセルフレジのみの“無人コンビニ”が増えていますし、ドバイでは、“空飛ぶタクシー”の試験運行が開始されたというニュースも先日流れました。今存在している仕事がAIに奪われるのも、時間の問題。そんな時代だからこそ、AIにはできない能力を身につけることが、未来を生き抜く術になります。

Q.どうしてプログラミングの授業で「自ら考え、創造する力」が身につくのですか?(Bさん)

プログラミングというと、難解なコンピューター言語を覚えたり、パソコンで高度なプログラムを組んだりする光景を思い浮かべていませんか? 実は、2020年度から導入される授業内容はそういうものではないんです。「どういう指令を出したら、コンピューターが正確に動くのか」「エラーの原因は何なのか」ということを、一つ一つ検証して、考え・間違いに気付ける力。「こうしたら、ああなるはず」と予測できる力。それらを養うのが、プログラミング授業の目的です。

そもそも、子どもは自由な発想に満ちた存在ですよね。小さい頃の砂場遊びを思い出してみてください。大きな山を作ったらトンネルを掘りたくなる、おだんごを作れば葉っぱの皿に乗せたくなる、溝を掘れば、そこに水を流したくなる。「こうしてみようかな」「もっと面白くなるかも」という好奇心が、子どもの原動力。プログラミングもまったく一緒で、工夫次第で幾通りもの違った結果を得ることができます。“やらされている感”がないので、どの子も目をキラキラさせて学んでいますよ。

Q.今でもすでにいっぱいいっぱいなのに、どうやって授業時間を作るのでしょうか? これ以上学ぶことが増えたら、子どもがパンクしてしまいそうです…(Aさん)

親御さんは心配になってしまいますよね。
今回実施するプログラミング教育は、「教科」というよりも「考え方」を学ぶ授業になります。プログラムを組んだ後に、その内容を一つ一つ文章化する作業は作文能力につながりますし、さまざまな角度から物事を検証するトレーニングは、理科の実験に通じるものがあります。ですから、「国語」「算数」「プログラミング」と、独立した教科として並び立つというよりも、“国語的なこと”、“算数的なこと”を総合的に学ぶイメージでしょうか。

重複する部分は、既存の教科の時間を使ってプログラミングを学ぶことになる予定です。現段階では、算数の「図形」の単元や理科の「電気」の単元に含める方向で検討が進んでいるようです。2020年度のスタート時点では年に数時間程度と、授業時間も少なく設定されるでしょうが、成果によっては徐々にプログラミングに割く時間も増えていくでしょう。

Q.私は教員ですが、プログラミングの知識がほとんどなく、うまく教えられるのか不安です。(Cさん)

先生方には、プログラミングの知識というよりも、これまでとは教員としてのスタンスを変えることを学ぶ必要があるかもしれませんね(笑)。

文部科学省は、2020年度からのプログラミング学習必修化と同時に、指導方法の考え方を大きく変えようとしています。明治時代以来、現状維持で続いてきた小学校教育がガラッと変わるでしょう。

端的にいえば、先生を「ティーチャー(教師)」から、「ファシリテーター(世話役・進行役)」にすること。つまり、子どもに“教える”のではなく、“学ばせる”、“考えを引き出す”のがこれからの先生の役割になっていきます。

私が今行っているプログラミングの授業でも、課題は用意しますが正解を教えることはありません。答えは全て一人一人の子どもたちが持っているもの。ですから、「子どもの学ばせ方」の適切なノウハウを身につければ、プログラミングそのものの専門的知識がなくとも大丈夫なので、安心してください。

もちろん、事前研修や指導マニュアルもたくさん出てきています。民間企業が提供するユニークな指導を取り入れる方法もあります。ソフトバンクグループが必修化に先駆けて始めた「Pepper 社会貢献プログラム」が取り組みの一例で、実は私も監修者として参加しています。

自分が作ったプログラムで、目の前のPepperが実際に手を上げたりしゃべったりすると、それこそみんな大興奮ですよ(笑)。子どもの遊び心・好奇心を十分に生かした、とても良い取り組みだと思います。やはり、三次元で動くものは刺激になりますし、子どもたちにはその成果がわかりやすく、達成感につながりますよね。

Q.2020年度までに家庭でしておくべき準備はありますか?(Bさん)

お住まいの地域でプログラミング体験イベントなどがあれば、参加してみるといいのではないでしょうか。プログラミングの考え方に触れておくだけでも、とても役に立つと思います。近年、学校の長期休みには各地でたくさんの体験イベントが開催されていますし、今年の夏休みには全国の子どもたちの約半数がプログラミングイベントに参加したというデータがあるほどです。「子どもにさせたい習い事」でもプログラミングは常に上位に位置していますし、親御さんの関心も年々高まっていると感じますね。

一方で、今の小学生の親世代はプログラミングに馴染みがない、一度も教わったことがないという方も多いはず。「自分が分からないから、子どもに教えられない」と拒絶するのではなく、いい機会なので、プログラミングに関してはお子さんに“先生”になってもらってはどうでしょう? 授業を聞いて理解したつもりでも、いざ誰かに説明するとなると案外分かっていなかったということもありますし、復習にもなって一石二鳥です。「反抗期の息子にプログラミングのことを聞くと、急に多弁になって、親子の会話が弾む」という事例もありますし、親も子どもと一緒になって学んでみてください。

そして何よりも、毎日の生活の中で、ぜひ子どもたちに自分で考えて行動するよう促してみてください。何か失敗したり、叱るような場面があれば、「次、同じようなことがあればどうしたらいいか」「どうしたら上手くできるか」を話し合い、何か予定があれば、「そのためには何を準備すればよいか」「何時に家を出ればよいか」など、子ども自らが考える機会をより多く与えてもらえるといいと思いますよ。

「Pepper社会貢献プログラム2」とは

2015年6月の発売以降、さまざまな分野で活躍している人型ロボット「Pepper」。
人間の表情や声から感情を読み取ることができる高いコミュニケーション能力や多彩なアプリケーションだけではなく、プログラミング学習など新しいICT教育の形としても注目を集めています。

「Pepper社会貢献プログラム スクールチャレンジ」の第2弾である、「Pepper 社会貢献プログラム2」では、2018年4月から小学校、中学校、高等学校などにPepperを貸し出します。現在、応募を受け付け中! プログラミング専用カリキュラムやソフトウエアなども併せて提供されますよ♪ プログラミングの授業がもたらす「自ら学び、考え、創造する力」を、多くの子どもたちが身に付ける機会になるといいですね。

「Pepper社会貢献プログラム2」詳細はこちら!

(掲載日:2017年10月24日)
文:ソフトバンクニュース編集部