最近、さまざまなセキュリティーの技術として注目されている「顔認証」システム。顔認証はスマホだけでなく、空港の税関やテーマパーク、コンサートなどにおける本人認証で使われています。ネットでもいろんな記事で紹介されていますが、一部のスマホに搭載され、初めて顔認証を使った、という声が増えています。
そこで、顔認証ってどのような仕組みなのか?安全性はどうなのか? をまとめて、実際に顔認証を実験してみることにしました。
- 認証まで、たった1秒? 顔認証の仕組みとは
- 顔認証と指紋認証の違いは? どっちが良いの?
- 顔認証はいったいどこまで本人を認識できるのか、スマホで検証
- 空港やイベント会場などでの本人確認にも。世の中に浸透し始めた、顔認証の技術
認証まで、たった1秒? 顔認証の仕組みとは
顔認証とは、カメラが撮影した顔を本人またはコンピューターが確認する認証方式。顔といっても目、鼻、口の3点を基本として認証するようです。
スマホでの利用方法は簡単で、事前に顔認証に必要な情報を登録するだけ。その後は、スマホの画面を見つめる(のぞき込む)だけで瞬時に本人確認が行われ、ロックが解除されるんです。顔認証にかかる時間は1秒以内といわれています。本体を手に持ってカメラが顔を認識できた瞬間から認証を始めているので、実際はそれほど時間を感じないほどのスピードです。
顔認証と指紋認証の違いは? どっちが良いの?
今までのスマホは指紋認証がメインでしたが、これから顔認証に変わっていくかもしれません。また顔認証だけでなく指紋認証機能も搭載されているものが登場しています。
でも、「顔認証と指紋認証ってどっちが良いの?」と感じるかもしれません。搭載されている技術にもよりますが、顔認証が誤認識する確率は約100万分の1で、指紋認証と比べると10倍以上の高精度になるのだとか。セキュリティーの精度は顔認証の方が高いといえそうですね。
3D顔認証で顔を立体的に認識
以前から使われている顔認証の多くは、一般に使われているカメラで撮った映像から解析を行っていますが、最近では3Dでの顔認証に変わりつつあります。本体に内蔵されている写真を撮るカメラ以外にIRカメラ、近接センサー、照度センサー、ドットプロジェクターなどを使うことで、数万を超える顔の特徴を立体的にスキャンし、本人の顔の立体図を作ります。
顔認証ができるスマホでは、カメラの近くにこんなセンサーや機能が搭載されています。
近接センサー |
本体と顔の距離(近づきの度合い)を検知し、通話の有無を識別するセンサー。本体の前面にあるカメラにのぞき込むと自動で顔を検知する |
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ドットプロジェクター |
瞬時に数万点以上の赤外線(IR)を顔に照射 |
IRカメラ |
赤外線が顔に当たっている様子から顔の立体的なデータを得ることができるカメラ |
投光イルミネーター |
暗い場所でも赤外線によって正確に測定できる |
顔認証のデータは、暗号化され、本体のメモリーに保存されるため、安全性が高いといわれています。3Dでの顔認証が登場する前から顔認証の機能はありましたが、2D技術では平面のみしか認識できないため、本人の写真で認証ができていました。3D技術を使った顔認証ではその心配はなくなります。
顔認証はいったいどこまで本人を認識できるのか、スマホで検証
顔認証を調べていくと、どこまで認識するのか疑問に思ってきました。そこで独自で編集部のデスクにあったグッズを集めて、こんな場合は認証できるの? という検証をとある男性に協力いただき、実施することにしました。
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- ※編集部が独自に検証した結果を掲載しています。結果を保証するものではありません。
今回検証として集めたグッズはこれです。
まずは顔認証の登録から。最初に設定すれば問題ないようです。
最初はマスクから。
マスクは無理だろうと思いつつも認証してみたところ、やはり鼻や口が隠れているので、認証できず。他のものでも挑戦してみることに。
メガネと付け鼻。これは認証できません。
眼帯。これは認証できました。
怪しいサングラス。目の部分が暗くなっていますが、透き通っているからなのか認証できました。
かつら。認証できました。とてもお似合いですね。
大きなひげ。口元が隠れているせいか、認証できません。
おにぎりさんハット。認証できました。
戦国アートマスク。認証できませんでしたが、お肌がツルツルになったようです。
午後7時ごろに部屋の電気を暗くした状態で顔認証を試してみました。暗さによるかもしれませんが、認証できました。
結果は5勝4敗。基本的に目・鼻・口の3点が隠れていないものは認識ができるようです。暗い場所でもちゃんと認識できるようで、顔認証の技術が進化しているところが分かりました。
空港やイベント会場などでの本人確認にも。世の中に浸透し始めた、顔認証の技術
指紋や顔など、身体の一部を使って本人確認を行う「生体認証」は急速に発展していて、中でも「顔認識」はさまざまな用途で実践利用が始まっています。写真を撮影する時に、被写体に人がいるかどうかを示す「顔検出」もそのひとつです。最近のセキュリティーカメラは顔を検出した後、年齢、性別、さらには顔の表情から感情(楽しい・悲しい・退屈・怒っているなど)を推定することができます。
「顔認識」のひとつである「顔認証」は、「Face ID」などのスマホにおける活用のほか、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)の年間パスポートやファンクラブ会員が参加するライブコンサート、また成田空港や羽田空港などでは入国時の税関でも本人確認として「顔認識」技術が利用され始めています。
AI関連技術の進歩で顔認証もどんどん進化しています。今回編集部が調査した実験のグッズを使っても本人であれば認証してしまう、そんな時代がくるかもしれませんね。
(掲載日:2019年2月21日)
監修・文:神崎洋治
撮影:ソフトバンクニュース編集部
撮影協力:株式会社サン・スマイル
神崎洋治(こうざきようじ)
TRISEC International,Inc.代表。
ロボット、AI、IoT、インターネット、デジタルカメラ、セキュリティーなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。雑誌、「ロボスタ」等のウェブメディア、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数。