SNSボタン
記事分割(js記載用)

モバイル・インターネット時代へ ~ソフトバンク平成史②~

モバイル・インターネット時代へ ~ソフトバンク平成史②~

ボーダフォン代表執行役社長のビル・モロー氏、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏(いずれも当時)と共に

携帯電話事業への参入を希望していたソフトバンクは、平成17年11月に総務省から新規参入事業者として認可され、いよいよ本格的なサービス開始に向けた準備を進めていました。

ソフトバンクは、基地局の建設などゼロから事業を構築しようと考えていましたが、平成18年10月にMNP(Mobile Number Portability:番号持ち運び制度)制度の導入が決まっており、そこをターゲットにして携帯電話のサービスを開始する場合、時間がかかり過ぎると判断し、まずはいち早くサービスを開始して他の事業者と同じ土俵に立つことが先決との判断で、方針を転換します。

目次

携帯電話事業への挑戦。史上最大規模の買収劇

平成18年3月、ソフトバンクとヤフーは、英ボーダフォングループからボーダフォン株式会社を買収すると発表しました。世界規模でビジネスを展開する英ボーダフォングループは、競争戦略として規模の経済(スケールメリット)を重要視していたのですが、当時、世界に先んじて第3世代携帯電話方式(3G)が主流になりつつあった日本市場ではそれを生かせず苦戦を強いられていました。そして、先進性への投資よりも、欧州を中心に引き続き主流だった第2世代携帯電話方式(2G)で勝負できる新興国市場へと投資戦略をシフトしていったのです。

念願の携帯電話事業への参入と、英ボーダフォングループの思惑が合致した買収交渉は、史上最大規模の買収劇となりました。ソフトバンクにとって携帯事業への参入は悲願でしたが、ITバブル崩壊以降のタイミングであったため、多額の資金投入は、当時は非常にチャレンジングな出来事でした。

また、ようやく買収合意に至ったものの、10月のMNP制度導入までには半年ほどしかなく、携帯事業でトップを狙うには、解決しなければいけない課題が山積みで、他事業者と戦うための体制を整えるには抜本的な改革が必須でした。

「負け癖がついた組織体制を瞬間風速でも良いから、どういう形であっても1位を取る経験をさせたい。勝ち癖をつけたい」というのが当初からの経営陣の悲願でしたが、参入後わずか半年で契約者純増数ナンバーワンを達成するなど、まさにモバイル・インターネットカンパニーとしての新たな快進撃が始まったのです。

4つのコミットメントで、モバイルNo.1を目指す!

モバイル・インターネットというパラダイムシフトをけん引していこうと、念願の携帯電話事業に参入したソフトバンクは、半年後に迫ったMNP制度導入で勝ち抜くために以下の4点をコミットメントとして挙げ、抜本的な事業改善に取り組みながら、10月から新ブランドでのサービス展開を開始しました。

  • 1. 3Gネットワークの増強
  • 2. 3G端末の充実
  • 3. コンテンツ強化
  • 4. 営業体制/ブランド強化

3Gネットワークの増強は、平成18年当時、約25,000局ある3G基地局を平成19年末までに46,000局にまで拡大する倍増計画を立て、平成19年上期中には47,439局を達成。合わせてホームアンテナの無料設置なども行いました。

3G端末の充実については、ファッション、スリム、ワンセグ、カラーバリエーションなど、新端末発表ごとに機種数の充実を図り、ケータイのトレンドセッターとしてお客さまの多用な価値観に合わせた端末を開発しました。また、平成20年7月には日本で初めてiPhone の販売を開始。旗艦店のソフトバンク表参道には午前7時の発売開始に1,500人以上のお客さまが集まり、革新的な携帯電話の販売を大いに盛り上げました。

平成20年7月 iPhone 3G 発売日の様子

iPhone の販売につながる恩人の縁

平成20年7月、ソフトバンクは日本で初めてiPhone 3Gを販売開始しました。発売前のソフトバンク表参道には、端末を求める長い行列ができ、発売当日のセレモニーでは「携帯電話がインターネットマシンとなる歴史的な日」と孫が挨拶しました。

ソフトバンクがこの年の9月に企業向けに開催したビジネスイベントで孫は、「1企業あたり5台のiPhone を無料で貸し出す」と宣言しました。従来の端末とは全く異なるこのiPhone は、ビジネスに必要なツールになると確信していたからです。これを機に企業からの問い合わせが殺到し、従業員向けの業務ツールとしての大量導入が始まり、今ではビジネスに欠かせないツールとなりました。

ソフトバンクが携帯事業に必要な電波の免許を取得する前、孫は将来のインターネットマシンを思い描いて端末開発の依頼にスティーブ・ジョブズ氏のもとを訪れていました。徹底した情報管理で有名なアップル社のトップであるジョブズ氏は盟友とはえ、自身のアイディアは語りませんでしたが、お互いが強くモバイル・インターネットの世界を思い描いていることは明らかでした。ボーダフォン株式会社を買収後、孫は開発中のiPhone の販売交渉に再びジョブズ氏を訪ねることになります。

ところで、ジョブズ氏は自らが創業したアップルを追われた、いわば浪人時代に、孫の恩人である佐々木 正氏(シャープ株式会社 専務、当時)を訪ねています。アポなしで突然面会を求めた青年ジョブズ氏に佐々木氏は時間を割き、「これからはネットワークの時代になる」と説いたそうですが、孫にとっての大恩人である佐々木氏を、孫の盟友が訪ねていることは非常に興味深い話です。

独自のアイディアにより、契約者純増数20カ月連続のNo.1を達成

コンテンツ強化では、端末のキーボードにYahoo! ケータイボタン(「Y!」ボタン)を設置し、ワンクリックで簡単にインターネットにアクセスできるようにしました。インターネットサービスを携帯に展開することで、音楽配信やSNSなども携帯から利用できるようにしました。

営業体制の強化では、白とシルバーを基調にしたソフトバンクショップを次々とオープンさせ、タイムリーな端末供給を可能にしました。また、グループ傘下の日本テレコムによる法人営業の強化や家電量販ルートの充実などで販売の強化体制を取りました。

さらに、CMを軸としたブランド戦略を実施。ハリウッド俳優を起用して「SoftBank」の認知度向上を図り、予想GUY、白戸家シリーズなどでCM好感度7年連続ナンバーワンを獲得しました。また、「福岡ソフトバンクホークス」効果も高く、携帯参入を見据えたブランド戦略としてのプロ野球参入も、その目論見は大きく当たったのでした。

  • 出典:CM総合研究所 平成25年度 企業別CM好感度ランキング

料金プランについては、誰でも「わかりやすい」究極のプランとして、基本料金が破格の月額980円、音声通話定額プランの「ホワイトプラン」を始め、「Wホワイト」「ホワイト家族24」と次々に発表。ついに携帯事業参入後約半年の平成19年5月には、契約者純増数で初めてトップになり、その後20カ月連続のNo.1を達成しました。

機種数、カラー数で圧倒した“予想外”の端末展開

ソフトバンクの携帯端末開発は、従来の携帯端末のデザイン枠に収まらない、自由で独自のユニークな発想で開発され、圧倒的な機種数やカラー数は発表ごとにを増し、その充実ぶりはまさに“予想外”の連続でした。

発売当初よりワンセグ端末カテゴリーで3カ月連続販売実績1位を獲得したAQUOSケータイこと「SoftBank 905SH」は、当時画期的な「サイクロイド」携帯。画面が縦から横に動かせるため、通常のTV画面と同じような感覚でワンセグ放送が視聴でき、その独創的なアイディアは多くの人に驚きを与え人気を博しました。

1機種で20色のカラーバリエーションを採用したPANTONE®(パントン)ケータイこと「SoftBank 812SH」は、シンプルでカラフルな形状が幅広い年齢層のお客さまに支持された人気端末です。PANTONE®シリーズはその後、お父さんバージョンのPANTONE®ケータイやフルスライダー端末など、さまざまなバリエーションが開発され、ロングセラー商品になりました。

社員のアイディアから商品化された、人気アニメシリーズ「機動戦士ガンダム」とのコラボレーション携帯も発表。キャラクターが搭乗した機体を模した充電器とのセット販売は、多くの話題をさらいました。

ソフトバンクは、平成20年に「インターネットマシン元年」を宣言します。携帯電話は「ボイスマシン」ではなく「データマシン」であるとして、文字入力のためのフルキーボードを備え、まるでミニPCのような形状の端末「SoftBank 922SH」を出すなど、データ通信を意識した端末ラインアップをリリースしていました。

さらに、平成21年は「インターネットコンテンツ元年」を宣言。一人一台所有される「インターネットマシン」を通じて、人々はコンテンツを利用するようになる。そして個々人の手中にある小さな端末を通じてインターネットに接続することでパラダイムシフトが起こる。つまり「モバイル・インターネット」の時代が来ると予測してのことでした。

iPhone 3Gに続いて、iPhone 3GS、iPad、iPhone 4 を販売。並行して「つながらないソフトバンク」を払拭すべく、電波改善宣言を発表。モバイルネットワークに関するご要望に全力でお応えするとして、基地局倍増計画、自宅用基地局無料提供、店舗・企業用基地局無料提供、店舗・企業用Wi-Fiルーター無料提供などに取り組みました。

同志的パートナーと共創し、真のモバイル・インターネットカンパニーへ

同志的パートナーと共創し、真のモバイル・インターネットカンパニーへ

経営統合発表の会見でイー・アクセス代表取締役会長の千本 倖生氏(右)と

ソフトバンクは常に向こう5年、10年を見据え、通信事業者としての戦略的な投資を行ってきました。平成22年、会社更生法の適用を申請したPHS事業者の株式会社ウィルコム(以下「ウィルコム」)について再生に向けた事業支援を決定し、その後ソフトバンクのグループ傘下での業績回復を実現します。

さらに平成24年10月にはイー・アクセス株式会社(以下「イー・アクセス」)との経営統合を電撃的に発表。そしてその2週間後の10月15日には、アメリカの3位の携帯電話事業者、スプリント・ネクステル・コーポレーション(以下「スプリント」)の事業への買収について発表し、ボーダフォン株式会社に続いてスプリントの再生も手掛けることになります。

平成24年2月、念願のプラチナバンド900MHz帯の事業免許を取得。LTE基地局も急ピッチで建設し、スマートフォンの本格普及に伴うデータ通信増に備えました。ウィルコムとイー・アクセスは平成26年に合併し、ワイモバイル株式会社として新たに発足。新ブランド「Y!mobile(ワイモバイル)」を立ち上げました。これにより、スマートフォンでは毎月50GBまで使える超大容量プランの“ソフトバンク”と、高速回線で利用しやすい価格帯の“ワイモバイル”として、両ブランドのポジショニングが明確になり、お客さまのニーズを正確に捉えることができるようになりました。“ソフトバンク”と“ワイモバイル”の両ブランドの商品を扱うショップは、すでに約1,700店舗以上(平成31年1月末)展開しています。

  • 平成27年4月1日、ワイモバイルはソフトバンクモバイル株式会社、ソフトバンクBB株式会社、ソフトバンクテレコム株式会社と合併。その後はソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)として事業を継続。

(掲載日:2019年4月23日)
文:ソフトバンクニュース編集部

ソフトバンク平成史の関連記事

ブロードバンドへの挑戦 ~ソフトバンク平成史①~

ブロードバンドへの挑戦 ~ソフトバンク平成史①~

300年成長し続ける企業とは? ~ソフトバンク平成史③~

300年成長し続ける企業とは? ~ソフトバンク平成史③~

モバイル・インターネット時代へ ~ソフトバンク平成史②~

人類史上最大のパラダイムシフトへ ~ソフトバンク平成史④~