ワイモバイルのInstagramで可愛いふてニャンとコラボレーション中の、東大出身、異色のバルーンアーティスト SHINOさん。
東大大学院にまで進んだ彼は、なぜバルーンアーティストという生き方を選んだのでしょうか? 進路決定のいきさつのほか、譲れない信念、営業のコツやプレゼンテーション術、さらにはご自身の働き方までを語ってもらいました。
SHINO(シノ)
1976年生まれ、東京都出身。東京大学在学中、バルーンアートに出会う。風船をひねって作るバルーンツイスト全米大会でアジア人として初めて優勝、日本大会を立ち上げたバルーンアート界のパイオニア。テレビ、ラジオ、新聞・雑誌に数多く取り上げられている。パフォーマンスや会場装飾のほか、来場者1万人超えの作品展を各地で開催するなど従来のバルーンアーティストの枠に収まらない活動を展開。
バルーンアーティストと東大生の二足のわらじ。そして、バルーンアート全米チャンピオンへ
まずは、SHINOさんとバルーンアートの出会いを教えてください。
小学生のときにマジシャンに憧れて、高校時代はマジック愛好会に入りました。東大ではジャグリングのサークルに入ったのですが、そこでバルーンアートの存在を知って夢中になったんです。ちなみに東大に入った理由は、東大農学部に興味があったから。ただそれだけです。僕はそのときそのとき興味のあることをやりたくなる性格なんですよ(笑)。
東大の大学院にまで進んでいながら、なぜバルーンアーティストになろうと思ったのでしょう?
最初からこういうことをプロとしてやりたかったんですよ。研究者との二足のわらじを考えたこともありますが、大学時代からバルーンの仕事がたくさん舞い込んでいたので、これ一本で食べていけると思うようになりました。
憧れの人に会うために、迷わず渡米。そこで3時間の個人レッスンを受けて翌年に優勝!
バルーンアートの全米チャンピオンになるまでの経緯を教えてください。
学生時代、サークルの仲間とバルーンアートに没頭していたところ、アメリカでバルーンアートの大会が行われることを知ったのですが、過去の受賞作を見て驚きました。のちに僕が師と仰ぐことになるパトリック・ブラウンさんの作品が、あまりにもすごくて。この人に会いたいなと思っていたら、大会で講師をやるとのことなので、迷わず渡米。「わざわざ日本から俺に会いに来たのか」と喜んでくれた彼から、3時間ほどプライベートレッスンを受け、その翌年の大会で僕はぶっちぎりの優勝を果たしました。
わずか3時間のレッスンで?
はい。意識の持ち方や根底の技術を教えてもらいました。もちろん、そこから個人的な努力もしましたが、今の僕があるのは、その3時間のおかげですね。
とはいえ、ご自身のセンスも良かったのでは?
僕は色のセンスに自信があります。東大の大学院ではランドスケープ(造園学)を専攻していたので、色に対する知識や感度が高いんですよ。あとはデフォルメや、ストーリー性を盛り込むのも得意なので、「表情が豊か」「生きているみたい」とよく言われます。
営業のコツは「共感者を増やすこと」。観客の心を掴むプレゼンテーション術も紹介
依頼を「受ける・受けない」の判断基準を教えてください。
僕が基本お断りするのは「アリバイとしてのイベント仕事」です。依頼主の体面上の理由で「とにかく何かやんないといけないからやってくれ」みたいな仕事は、やっても意味がないので、よっぽどギャラが良くないとやりません(笑)。
逆に、ギャラは安いけどやりがいがある仕事は?
一番は、幼稚園・保育園での公演ですね。子供たちがものすごく喜んでくれて、終演後に「だいちゅき!」「ありがとう!」と言いながら僕のところにハイタッチしにきてくれるんです。そういう子供たちの反応を見ると、こっちも幸せな気分になるので、幼稚園・保育園めぐりはやめられません。
仕事の大変な部分は?
パフォーマンス中は風船を軽くひねっているように見せていますが、意外と力のいる作業なので、体がガチガチに凝ってしまいます。ですから週5回、整体に通ったこともあります。あとはパフォーマンス中によく喋る仕事でもあるので、喉のケアも欠かせません。
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仕事で関わる人達に対して大事にしていることは「共感、共有」
顧客獲得のために、どのような努力をしているのでしょう?
この仕事は、リピートが見込めないケースもいっぱいあります。たとえば事業所や工場の閉所式の催事などに呼ばれる仕事の場合、リピートが見込めないわけですが、だからこそ、一期一会の精神で、毎回その場を盛り上げることに全力を尽くして、期待以上のものをお見せするようにする。そうすると感動してもらえたり喜んでもらえたりして、口コミなどで仕事が広がっていきますね。
あとは、ウェブサイトで自分の実績や考えをこまめに更新するようにしていますね。それを読んでくれた方の一部は、姿勢を含めて評価してくれて、「ぜひ依頼したい」という話が舞い込んできます。仕事のクオリティーとそれに対する考え方に共感していただける方たちに支えられている感じですね。
観客の心を掴むプレゼンテーション術を教えてください。
まず、時間の感覚を大事にしています。飽きさせぬよう、物足りなさを感じさせぬよう、「長すぎず、短すぎず」を心がけます。あとは、自分がワクワクしているものを共有していただくトークをします。「この色、すごいと思いませんか?」「これ、自分でもすごく気に入っているテクニックなんです」などと語って、自分事をみなさんにも共有させるというか、強いる部分もあります(笑)。
「私とあなたは別人ですけど、この時間、この場所を共有しているんですから、何かを共感しましょう」という考え方でパフォーマンスをすると、より感動をしていただける気がします。
サラリーマンじゃない生き方のメリットや成長し続けるためのマインドセット
共感、共有という言葉が出ましたが、SHINOさんのトークには、実際そうさせる力があると思います。そのトークスキルはどのように磨かれたのでしょうか?
大学院まで通って研究の世界にいた影響が大きいでしょうね。大学院では必要な研究費を得るためにやっていることを他人に理解してもらうのが重要なのですが、僕の学んでいたランドスケープは、専門的な難しい言葉を使ってえらそうにしていると到底理解は得られないため、一般の人がわかる言葉に翻訳する訓練を相当行いました。
サラリーマンじゃない生き方を選んだメリットは?
仕事が好きな方にとっては、残業代が出なくても時間をかけて仕事のクオリティーを高めたいという時期があるはず。それが自分のスキルやセンスを上げることに繋がると思うんですが、働き方改革があまりにも進んで残業が制度的に許されないような風潮になってしまうと、そういうチャンスが潰されてしまって、突き抜ける人が減ってしまうのではないかと思うので残念な気がします。
その点、僕みたいなフリーランスは、働き方のすべてを自分で自由にコントロールできるのがいいですね。
自分の成長のために「何がプラスにできるか」を常に考え、実行する
言い換えればそれは、全責任が自分にかかってくることになりますが、プレッシャーを感じませんか?
重圧に押しつぶされるような仕事は受けません(笑)。自分で責任を取れないことや自分の能力が及ばないことはやらず、やれる範囲の中で最大限を目指すのがモットーです。そして毎回、ちょっと上を目指すようにしています。少しでも時間に余裕があったら「何かプラスできないか」と考え、実行する。それはお客さんのためというより、自分の成長のためですね。
今日も、おじさんのバルーンフィギュアを頼まれていないのに持ってきました。そうすると見栄えもよくなるし、みなさんも喜んでくれるし、見た人の反応から新たなアイデアが浮かぶこともある。
勝手に自分でプラスすることで広がることもあるな、と感じています。
それでは最後に、SHINOさんの今後の抱負をお聞かせください。
僕は自分の目標やゴールを決めていなくて、常にその時点で「こっちの方をやりたいな」と思うことや「やってください」と他人に頼まれたことをやるようにしています。そうすると思いもよらぬ話が舞い込んできたり、新しい仲間ができたりして、そこからまた次の展開が見えてきたりするんですよ。
最近思うのは、自分がいいなと思っていることは、実は思い込みなんじゃないかってこと。他人から言われた「こういうのをやった方がいい」とか「これをやっている姿を見たい」などの言葉に耳を傾けて、それをやってみると、「案外悪くないな」「楽しいな」と思うことが多々あるんですよ。
ですからこれからは、「自分が喜ぶこと」と「他人が喜ぶこと」を両方やり続けて、その流れを絶やさないようにしていきたいと考えています。
ありがとうございました!
SHINOさんオリジナルのバルーンアートとふてニャンのコラボレーションはInstagram
2020年3月までの期間限定で、SHINOさんオリジナルのバルーンアートとふてニャンがコラボ中。バルーンとは思えないハイクオリティな作品と、ふてニャンの可愛さが見事にマッチしています。ワイモバイルの公式Instagramアカウントでぜひチェックしてみてくださいね。
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(掲載日:2019年6月6日)
文:岡林敬太(フリーライター)
撮影:藤井由依(ロースター)
編集:大崎安芸路、尾畑舞(ロースター)