8月31日から中国で行われるFIBAワールドカップ2019を直前に控えた、バスケットボール男子日本代表「AKATSUKI FIVE」が、アルゼンチン、ドイツ、チュニジアを迎えて行った強化試合「バスケットボール日本代表国際試合 International Basketball Games 2019」。その会場でソフトバンクが5Gのプレサービスを提供しました。
2020年から商用サービス開始が予定されている「5G」は私たちの生活を、さまざまな場面で大きく変える事が予想されます。先日、そんな5Gがもたらす、未来のスポーツ観戦をさいたまスーパーアリーナで体験しました。
チケットを忘れても大丈夫。ノーストレスな顔認証ゲート
入場ゲートの一角には鉄道の改札口のようなものが設置されたレーンがありました。ただし、きっぷを入れるところも、カードをタッチする部分も見当たりません。タブレット画面ほどのディスプレーがあるだけで、観客がゲートに近づくと、自動的にゲートが開きました。。ディスプレーで顔を認証することで、チケットのチェックを行っています。
自分の顔写真を事前に登録しておくと、通過する観客の顔とそのデータの顔の特徴点を照らし合わせることで、入場チェック。顔の特長となる部分を確認するため、髪型やメガネ、またメイクを変えてもその認証率は変わらないそうです。
これが実用化されれば、会場に入る前にチケットを探すこともなく、またチケットを忘れるといった心配もなくなります。そして、スムーズな入場が可能になるため、スポーツ観戦におけるストレスの1つが解消されることに。
会場に入るとすぐにバスケットボール日本代表オフィシャルチアリーダーズ「AKATSUKI VENUS®︎ presented by PASONA」がお出迎え。早速、5Gデモ体験ブースへと足を運びました。
未来のスポーツ観戦は、アリーナが目の前にやって来る時代?
高速大容量、低遅延、多接続が特長の5G。その特長をスポーツ観戦に活かす技術として、VRとARが挙げられるでしょう。
今回、ブースで体験した「VR試合観戦」は、両サイドのバスケットゴールの下、そしてコートサイドのテーブルオフィシャル席の3カ所の映像を使ったもの。VRゴーグルで見ると立体映像として、実際に目の前で選手がプレーしているような臨場感が得られます。もちろん、試合展開に合わせて3台のカメラを切り替えることも可能なので、通常では見られないアングルからの試合観戦は、これまでにない体験となりました。
また、VRゴーグルのユーザー同士でコミュニケーションすることもできます。離れた場所にいる友人と、バーチャル空間の中で並んで座り、一緒に試合を観戦。会話を楽しむだけでなく、ハイタッチをするといったことも可能。会場に行けない時でも臨場感ある試合観戦を特等席から楽しめます。もしかすると近い将来、自宅で試合を見る「VR観戦チケット」というものが発売されるかもしれません。
バスケコートが目の前に出現して、試合を立体的に見ることができるARホログラム
また、「ARホログラム」の技術は、大げさに言えば、自宅のテーブルの上で立体的なバスケットの試合を持ってくるようなもの。ARグラスをかけると、バスケットボールの試合が3Dホログラムで目の前に浮かび上がります。3Dなので、どのアングルからでも立体的に見ることができ、自宅のテーブルの上がバスケコートになり、選手たちがプレーを展開する…。映画で見た未来がすぐそこまで来ていると実感できました。
「見たいプレーを好きな角度で、また好きな選手をずっと見たい」を叶える技術
素晴らしいプレーも微妙な判定も、座っている席や中継のカメラの角度によってよくわからないこともあります。そんなときに活躍しそうなのが「自由視点映像」。これは会場を囲むように設置された30台のカメラの映像を、手元のスマホやタブレットなどのデバイスで操作し、好きなアングルで見ることができるというもの。これも大容量の映像データを遅延なく伝送できる5Gならではのサービスといえます。
もちろん、巻き戻したりスローで再生したり、時間と空間を超えて試合映像を楽しむことができます。このサービスは観戦だけでなく、判定での利用もありそうです。審判が確認しづらい場所で起こったプレーに対し、より正確なジャッジを下せる可能性もあるでしょう。
今回、ライブ配信で体験したのは「VR試合観戦」「自由視点映像」。5Gネットワークを通して、リアルタイムでインタラクティブな体験が実現できるのです。
好きな選手にフォーカスしたプレー映像を見られる「選手追尾」
新しいスポーツ観戦は5G以外のテクノロジーも利用されます。その1つである「選手追尾」もスポーツ観戦に新たな体験を提供しそう。タブレット画面に表示されている選手を選ぶと、その選手にフォーカスしたプレー映像を見る事ができます。このサービスは好きな選手のプレーを見るだけでなく、同じポジションの子どもたちが練習の際に参考映像として使ったり、選手も自分のプレーを振り返ったり、次の対戦相手に関するスカウティング映像としても利用できそうです。
選手に、重さわずか10gほどの特殊なセンサーを付け、会場内に設置されたセンサーで位置情報を読み取り、その情報を元にカメラが選手を自動で追尾し撮影するというものです。
まるでゲームセンター? フリースローの成功率やダンクシュートの跳んだ高さなどを視覚化
これは「リアルタイムスタッツ」と呼ばれ、画像分析技術により、ライブ映像に選手の動きと連動したスタッツデータをリアルタイムでCG合成するもの。例えば、シュートを打つ選手のフリースローの試投数や成功数、成功率などを表示させます。
ちょうど、ビデオゲームで戦士の攻撃力や防御力などのステータスが表示されるイメージを想像してもらうと良いでしょう。計測、測定できるものは全て表示できるので、ダンクシュートを決めた選手の滞空時間や高さ、距離なども、将来的には表示できるようになるかもしれません。バスケットボール以外の競技でも、プレーのステータスを視覚化することで、スポーツ観戦の楽しみが増えそうです。
他にも、Googleレンズでポスターを認識すると、ポスターが動き出すという仕掛けもあり、さいたまスーパーアリーナの5Gデモ体験ブースは、未来を体感できる空間でした。
観戦サポートアプリを使えば、スポーツ観戦がより便利に
場内では観戦サポートアプリを使うことで、さらに試合観戦を楽しむことができました。座席からアプリでフードやドリンクを注文することで、売店の行列に並ぶことなく商品を受け取ることが可能に。さらに、ユニフォームなどのグッズ注文ができたり、会場で行われているイベントにも参加できたりしました。
2020年に商用サービスが始まる5G。高速大容量、低遅延、多接続を特長に持つ5Gにどれほどの秘めた力があるのか、まだわかりません。ここにあげたサービスは、5G開始とともに提供されるものもあれば、もう少し時間がかかるものもあります。
年齢を重ねて会場に足を運ぶのが困難になった人や、会場から離れた場所に住む人が、VRやARで仲間と一緒にスポーツ観戦を楽しんだり、スポーツファンがリアルタイムで提供されるデータでさらに盛り上がったり、これからのスポーツ観戦は会場でも、家でも、そして外出先でも新たな楽しみ方を提供されることになるでしょう。
5Gなどを活用して、8K映像をリアルタイムで配信する実験も!
8月23日に行われたドイツ対チュニジア戦では、高速大容量、低遅延の通信が可能になる5Gの実用化に向けた取り組みの1つとして、シャープ株式会社と5Gを活用した8K映像ライブ配信の実験を行いました。試合映像はソフトバンクの光回線と5Gネットワークを通して「5G×IoT Studio」のお台場ラボへリアルタイムに伝送され、高精細8Kモニターを接続したパソコンでの視聴に成功。遠隔地でも臨場感のある映像を視聴することができました。(記:ソフトバンクニュース編集部)
(掲載日:2019年8月30日)
文:小野寺俊明
撮影:中西祐介
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