そろそろ来年のカレンダーを用意する時期ですね。皆さんは、毎年どんなカレンダーを使っていますか? ソフトバンクでは、今年も白戸家のお父さんとふてニャンが登場するオリジナルカレンダーを作りました。
2021年オリジナルカレンダーの3つのポイント
かわいいスイーツとのコラボ写真に注目
毎年テーマを変えて制作しているソフトバンクのオリジナルカレンダー。2021年のテーマは見ているだけで幸せな気分になれる「スイーツ」です。各月のカレンダーには、お父さんとふてニャンが季節のスイーツとコラボした写真が掲載されているのでお楽しみに。
懐かしいけどちょっと新鮮、付録のシール
今回のカレンダーには、付録として記念日イベントやメモなどに使えるシールが付いています。昔のカレンダーにはよく付いていましたが、改めて見るとちょっと新鮮な感じがしますよね!
地球に優しい素材「ポリ乳酸」を使用、SDGs推進ロゴとスローガン入り
昨年に続き、カレンダーのケース部分には硬くしっかりした製品が作れる一方、土の中に埋めると分解される地球に優しい素材「ポリ乳酸」を採用。「ポリ乳酸」について詳しく知りたい方は、次ページ以降で専門家にお話を伺っているのでぜひチェックしてみてください。
またソフトバンクは2020年5月11日、SDGsの取り組みを強化していくことを発表しました。その決意を込めてカレンダーの封筒には、ソフトバンクオリジナルのSDGs推進ロゴとスローガンが入っています。
自然から生まれて、自然に返っていくプラスチック「ポリ乳酸」
2050年、海を漂うプラスチックごみは、世界中の魚より多くなるかもしれない……。
海洋プラスチックごみは、近年世界で大きな問題となっています。この問題に対して、今大きく注目されている素材があります。それが「ポリ乳酸」です。ポリ乳酸がなぜ自然に返るのか、また各国で課題とされているプラスチックごみ問題について、ポリ乳酸の専門家であり、世界で話題となっている新たな技術を開発した、小松技術士事務所の小松道男さんにお伺いしました。
小松技術士事務所・所長 小松道男さん
小松技術士事務所・所長。プラスチック射出成形品などの生産システム分野で、幅広くコンサルティングに従事。文部科学大臣表彰科学技術賞(技術部門)受賞。第7回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞、ものづくり名人の称号を授与される。令和2年度型技術協会技術賞受賞。令和2年度気候変動アクション大賞受賞(開発・製品化部門)。ポリ乳酸の成形加工に関しては、日本、フランス、ドイツ、米国等で38件の特許(293個の発明)、およびその周辺技術ノウハウを保有している。
ポリ乳酸が自然に返る仕組みとは?
ポリ乳酸とは、「生分解性プラスチック」という微生物の力で分解される、環境に優しいプラスチックの一種。
原料は、トウモロコシなどから取れるデンプンやサトウキビの絞り汁に乳酸菌を混ぜたものです。
もちろん、一般的な石油系プラスチックと同じように、硬く、しっかりした製品をつくることができます。しかし、石油系プラスチックが海や土に何十年も残り続けるのに対して、ポリ乳酸はいらなくなったあと土の中に埋めておくと、微生物のはたらきによって水と二酸化炭素に分解され、自然に返っていきます。大量の微生物が活発に活動している土の中ならば、約3カ月で分解されてしまいます。
植物からつくられて、微生物の力で水と二酸化炭素に分解される。その水と二酸化炭素で植物がまたデンプンや糖をつくる……。このように、ポリ乳酸は、ずっと繰り返されていく「カーボンニュートラル」というサイクルをつくりあげています。
普及のためのポイントは「材料のコスト」、そして「技術力」!
しかし、ポリ乳酸は、世界でもまだあまり普及していません。その理由の一つが「材料のコスト」。これまでポリ乳酸の原料にかかるコストは、石油からつくられる材料の5倍ほどでした。しかし、近年は価格競争などによって、石油由来のプラスチックに迫る価格となってきています。
また、もう一つの問題として、加工技術があげられます。ポリ乳酸は、水あめのように非常にベトベトしていて、加工するのが難しいため、石油からできたプラスチック製品のような、薄くて硬いものを短時間で大量につくることが今まで世界でできていなかったんです。 そこで、世界でもトップレベルである日本の技術力が結集し、薄くて硬いポリ乳酸のプラスチック製品が大量生産できる技術を開発。材料価格の低下もあいまって、製品の価格を大きく下げることに成功しました。
ポリ乳酸は耐熱温度が65度ぐらいで、そのままでは熱湯や電子レンジに入れられないという問題も抱えています。私は、ポリ乳酸に、陶器をつくる際に使う粘土を非常に細かい状態にして混ぜることで、140度まで耐えられる耐熱ポリ乳酸で器をつくる技術も開発しています。
(左)高温に耐えられるため、電子レンジ加熱、食器洗浄機OKの器「iiwan(いいわん)®」
どうして今「ポリ乳酸」が注目されているの? プラスチックごみがヒトに及ぼす影響とは
プラスチックごみは、環境に対してどのような影響を与えるんですか?
先ほども説明したように、石油由来のプラスチックは自然の力では分解されません。波などによって砕かれ、目に見えなくなっても、実は「マイクロプラスチック」というとても小さくバラバラな状態になって、海を漂い続けているんです。
プラスチックが大量につくられるようになって70年ほど経ちますが、70年前のプラスチックもまだ残り続けているし、その量は今もどんどん増え続けています。
マイクロプラスチックの表面は、静電気を帯びているため、海の中に溶けているPCB(ポリ塩化ビフェニル)といった発がん性物質、有害物質を引きつけます。その量は、PCBの場合、海の平均的なPCBの濃さに対して、マイクロプラスチック1粒で約100万倍になるといわれています。
その1粒や2粒をエビや小魚が食べたとします。その小魚を毎日食べたとしても、人の体に問題は起こらないレベルです。しかし、そのエビや小魚をエサとする、マグロやカツオなどの大きな魚は、マイクロプラスチックを含んだ小魚を大量に食べるので、有害物質が体の中に濃縮されていきますよね。
このことから、近い将来、人間がそのようなマグロやカツオなどを食べると危険なのではないかと考えられています。植物や動物に影響を及ぼすだけはなく、いつかはその影響が人間に跳ね返ってくる可能性があります。
こ、怖いですね……。何か対策が行われているのでしょうか?
フランスは、2020年1月から、使い捨ての容器や食器に生分解しない石油由来のプラスチックを使用することが法律で禁止になります。また、すでにヨーロッパの乳製品メーカーなどでは、容器にポリ乳酸を使っていますね。日本の大手コンビニチェーンの一つでも、サラダのパックが2020年度から全てポリ乳酸製に変わることが11月に発表されています。
さらに、2019年6月に大阪で開催された「G20大阪サミット」では、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されました。
石油由来のものから生分解性のものに置き換わる、プラスチックのパラダイムシフトが今まさに起こっているんです。
そこでポリ乳酸が活躍するんですね!
はい。海洋プラスチックごみの約80%は、陸上でポイ捨てされたものが風で飛ばされたり、川を流れて海に出たりしたものといわれています。しかし、ポリ乳酸のプラスチックであれば、陸でちゃんと処理して自然に返してやることで、環境を守ることができるんです。
さらに、ポリ乳酸は焼却処理をしても、排出される二酸化炭素の量が通常のプラスチックよりかなり少なく、また、二酸化炭素はポリ乳酸の原料である植物が成長するときに吸収されるため、焼却時もエコなサイクルをつくりあげていることになります。
とはいえ、ポリ乳酸は海水の中では分解に時間がかかるため、いったん海に出てしまうと石油系プラスチックと同様に、ごみとして海を漂い続けてしまうことになります。そうならないためにも、まずは一人一人がごみをポイ捨てしないという、当たり前の意識を持つことが大切だと思います。
海が汚れているんだったら、技術でそれを解決しないといけない
小松さんは、なぜポリ乳酸に関する技術の研究に取り組むようになったんですか?
私がポリ乳酸と出会ったのは、2005年。「愛・地球博(2005年日本国際博覧会)」が開催されたとき、「万博のレストランで使う食器は全てポリ乳酸製にしていこう」と国会で演説されていたのを聞いたことがきっかけでした。当時、石油系プラスチック製品を製造する金型のエンジニアだった私は、この演説を聞いて気後れするというか、「石油系プラスチックの製造に関わっている自分は、環境を汚しているのではないか?」といった思いを抱いたんです。
そこで、ポリ乳酸を製造する会社に問い合わせてみたら、ポリ乳酸の加工技術に頭を抱えていることが分かって。「ならば私がやってやろう!」と、名乗りをあげたのがポリ乳酸との出会いです。
そこから技術の発展に向けて、研究を重ねてこられたんですね。
今日まで15年近く、ポリ乳酸に関する技術開発をコツコツとやってきました。その間に起こった東日本大震災の時には、いわき市の事務所も結構やられてしまい、「全て終わってしまった……」と落胆していたんですが、いろいろなパートナーが支援の手を出してくれた。「これを一緒にやらないとだめだ」と支えてくれたおかげで、ここまで続けることができました。
2018年1月には、「第7回ものづくり日本大賞」で内閣総理大臣賞をいただくことができましたし、先日は「K2019(国際プラスチック・ゴム産業展)」という世界最大のプラスチック展示会にライセンス企業である日精樹脂工業(株)と出展して、ポリ乳酸製のシャンパングラスを大量生産する技術を実演して、世界中から大反響を得ることができました。
さまざまな困難に当たったけれども、信念は曲げず、なんとか加工できるようにしようと、日本のものづくりの力を集結してやってきた結果じゃないでしょうか。やはり、海を目の前にした港町で育ってきたので、海が汚れているんだったら、技術でそれを解決しないといけないと思っています。
私たちの国は、美しい地球を守っていくために生かせる、非常に高い技術を持っています。それを再認識して、みんなで協力していくことが大切なのではないでしょうか。そういう最初の一粒のタネを、私たちは作れたんだと思います。
(掲載日:2019年11月15日、更新日:2020年11月17日)
文:馬場吉成
編集:エクスライト
写真:高島啓行
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