あらゆる分野で産業構造が大きく変わると言われる5G。建設業界でも、国土交通省が労働生産性向上などを目指す「i-Construction (アイ・コンストラクション)」を推進する中、最新技術の活用による現場が抱える課題の解決に向けた新たな試みが進められています。
北海道で実際に建設中のトンネル工事現場で、5Gネットワークを活用しトンネル工事現場における作業員の安全管理を目的とした実証実験※が行われました。
- ※
総務省の「多数の端末からの同時接続要求を処理可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等における作業員の安全管理を目的としたi-Constructionの実現に向けた調査検討の請負」委託事業。Wireless City Planning(WCP)、ソフトバンク、大成建設の3社が共同で実施。
落盤、土砂崩れ…。難易度の高いトンネル工事現場で、5Gを活用した安全な環境を確保
実証実験は、ソフトバンクが開発した可搬型5G設備「おでかけ5G」※を工事現場に設置して、トンネル内に5Gネットワークを構築。5Gの性能測定のほか、安心・安全な工事現場の管理実現に向け、具体的なユースケースを想定した取り組みの検証が行われました。
- ※
5G基地局、5G端末、コア設備、コンピューティング設備を含めた可搬型5G基地局ソリューションの総称。可搬型機器を用いて特定の場所にプライベートな5Gネットワークの構築が可能。
災害時の初期安全確認を想定した実験
トンネル工事現場では、遠隔制御装置「カナロボ」を搭載した油圧ショベルカーおよびクローラダンプに「おでかけ5G」の端末を搭載。「おでかけ5G」の設置場所から約1,400mの地点で、操作室からの遠隔操作で無人の建設機械を操縦。建設機械に搭載した、4台のフルHD画質カメラからの映像伝送をリアルタイムに確認しながら、トンネル内で災害が発生した場合に初期の安全確認ができることを検証しました。
センサーによるデータ収集でトンネル内の安全性を監視
さらに、酵素、硫化水素、メタン、CO、CO2、温度を計測するセンサーをトンネル内の環境測定用に設置し、毒性ガスや可燃性ガスなどトンネル内で発生する、危険性の高い各データを収集。労働環境の指標となる温度などをリアルタイムに監視して、危険値が検出された際に作業員へアラートを送る仕組みを検証し、外部からのモニタリングによる工事現場の安全監視を確認しました。
この実証実験を受託したWireless City Planning 先端技術研究部 5G試験課の田島裕輔は、「多数の大容量デバイスが増え無線通信の容量がひっ迫することを想定。ネットワークスライシング機能による優先制御機能の確認を行い、通信回線の容量がひっ迫した環境下でも、途切れることなく正常に通信できることを確認できた」と述べ、工事現場に5Gを活用する「i-Construction」の実現に自信を見せていました。
5Gを活用したi-Constructionの実現に向けた実証実験を実施
先端技術で日常生活が劇的に変わる時代へ
次世代通信技術「5G」によって、人と人だけでなく、あらゆるモノとモノがつながるIoT時代が本格的に到来します。
先端技術を用いた新たなサービス・ソリューションの実現に向け、さらなる技術開発に取り組んでいます。
(掲載日:2020年2月10日)
文・撮影:ソフトバンクニュース編集部