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STEAM教育に『R』を。失敗から学びを高めていく、これからの時代の探究型学習

STEAM教育に『R』を。失敗から学びを高めていく、これからの時代の探究型学習

Society5.0の到来に向け、子どもたちが未来を生き抜く力を身に付けるための教育方針が掲げられ、教育現場では新たな取り組みが行われています。

人型ロボット「Pepper」を使った教育事業を推進しているソフトバンクロボティクスの担当者に、STEAM教育の発展形である探究型STREAM教育の内容や、その学習成果を発表する「STREAMチャレンジ2021 全国大会」の様子、また、新しく提供を開始した教育事業について聞きました。

宮北さん

ソフトバンクロボティクス株式会社
事業開発本部 新規事業開発統括部 Humanoid事業部 戦略企画課

宮北 幸典

長﨑さん

ソフトバンクロボティクス株式会社
事業開発本部 新規事業開発統括部 Humanoid事業部 戦略企画課

長﨑 徹眞

  • 所属は2021年3月末時点の内容です

椅子に座って受ける授業とは違う。社会とのつながりを感じながら、それぞれの個性を発揮できる「STREAM教育」

探究型学習が求められる背景を改めて教えてください。

宮北:AIやビッグデータ、IoT、ロボティクスなどの技術が高度化し、産業や社会が大きく変化しようとしている現代、子どもたちを取り巻く環境はものすごいスピードで変化しているのに、教育現場は150年近く変わらずに、先生が教壇に立ち、子どもたちは座って授業を受けるというスタイルが続いてきました。一方、社会に出たら周囲の環境はものすごいスピードで変化していて、これまで通りの教育だけではその変化にうまく対応できない、といったことにもなりかねません。

そうした危機感から、文部科学省では新たな課題や環境の変化に対応し、自ら答えを見つけていく力を身に付けられるよう、探究的な学びやSTEAM教育を取り入れる方針を決めました。目の前にある課題を見つけ、いかに解決していくかという思考や活動を、教育を通して練習するのです。練習なしで、いきなりできるものではないですからね。

STEAM(スティーム)教育とは?

Science(科学)、Technology(技術)、 Engineering(工学)、 Mathematics(数学)にArts(芸術・教養)を加えた5つの要素を統合的に学習する教育手法。初期はデザイン・感性などの要素だったが、近年は根本的な考え方や知識を意味する教養も要素と考えられている。STEAM教育では、文系・理系といった分類をせず、実社会の課題解決に対し、横断的に各教科の学びを活かす能力を育成する。

これまでの学校の授業と、どう違うのでしょうか。

宮北:探究のプロセスは4段階で、まず課題を設定し、情報を収集、集めたものを整理・分析し、まとめ・表現する。知識は、テクノロジーを活用すれば簡単に得られるので、そこに注力せず、手にした情報をいかに活用するかが重要です。子どもたちが興味関心を持った事柄に対して深掘りしていったり、新たな視点で調査をしたり。目的を設定すると子どもたちの学びが自発的になりどんどん進んでいくので、先生は「教える」ことはありません。そもそも、先生が知らないことが出てきても、自分たちで答えを調べることができるのです。我々大人たちがイメージする授業とは全く違いますし、実際に学習を進めるのは難しいです。今までの一斉学習が普通だった先生自身も意識を変えることが求められていますね。

長﨑:子どもたちの反応も興味深いですよ。普段の授業ではおとなしかった子がとても生き生きと参加したり、それぞれの得意分野を生かして課題を解決したり。先生方からは、子どもたちの新たな一面を発見できたとの声が届いています。

ソフトバンクロボティクスで掲げる「STREAM教育」は、どういったものですか。

宮北:STREAM教育という言葉はさまざまなところで使われ始めていますが、まだ内容が統一されている段階ではありません。我々が考えるSTREAM教育は、基本的にはSTEAM教育と変わりませんが、Robotics(ロボット工学)、Reality(現実性)、Reviewing(評価)の観点を「R」に込めています。子どもたちに社会を知ってもらうきっかけになってほしいと考え、社会との接続性を重視していて、後ほど紹介するSTREAMチャレンジでは、RealityやReviewingの実践として、各発表について有識者からのフィードバックを受ける仕組みがあります。

Pepperで学ぶ探求型学習とは?

長﨑:楽しみながら探究的学習に取り組んでほしいですよね。我々が考えるSTREAM教育を実践するためにPepperをプログラミング教材として使っていますが、授業を見るとみんなでワイワイガヤガヤ、非常に活発な様子が見られます。社会課題の解決という、正解のないものに取り組むので、アイディアも多種多様ですし、どのアイディアを採用するのか、どうやって表現するのかなど、周囲とのコミュニケーションが欠かせません。それらを実行する過程で自然と役割分担ができて、個々の得意な能力を発揮できます。そうするとそれぞれが持つ能力の違いを肯定的に受け入れながら、お互いの能力を伸ばし合う相乗効果も生まれるんです。学校全体の教育の質があがることにつながります。

社会課題の解決方法はさまざま。STREAMチャレンジ全国大会の様子

社会課題の解決方法はさまざま。STREAMチャレンジ全国大会の様子

数年前から名前を変えながらも毎年開催されているプログラミングコンテストとのことですが、どんな大会ですか?

宮北:探究型学習のプロセスにおけるサイクルの4つ目である「まとめ・表現」の場として、Pepperを使ったプログラミング教育を行っている全国各地の子どもたちに参加していただける全国大会を実施してきました。一定期間の学習プロセスを完成させる重要なステップで、明確な目標があることで子どもたちがより意欲的に学習に取り組んでくれる動機付けにもなります。

「こんなにすごいゲームを作りました」といった技を競うものというよりは、学習のプロセスやその成果を発表するのがゴールだとしていることが重要なポイントだと思っています。

今年の大会は、例年通りの実施が難しかったのではないでしょうか。

長﨑:これまではいわゆるコンテスト形式で、各自治体内で予選を開催していただき、各優勝チームが全国大会に出場して順位を決める形でした。最終審査の発表はどれも高レベルなものが揃っていましたね。ただ、学習プロセスの完成の場なのに、一部のハイレベルなチームしか参加できないという課題もありました。

宮北:コロナ禍では自治体で予選を行うのも難しく、そもそも探究型学習自体を思うように進められなかったところもありました。そこで今年は、各校で学習発表会を実施していただくこととし、それとは別に、全国大会に出たい方が自由に動画でエントリーできるチャレンジの場を設けることにしました。形式が変わっても、それぞれ素晴らしい発表内容でした。この大会では「誰かのために役に立ちたい」という思いを強く感じる取り組みが多いように思います。昨年までの大会でも言えることですが、いい作品を作り上げるチームは、非常にチームワークが良く、自分事として課題を設定して、周囲をうまく巻き込みながら活動していた気がしますね。

コロナ禍の厳しい状況下でも子どもたちを第一に考えて教育活動を継続された先生方や、取り組んでいただいた児童生徒の皆さんにはとても感謝しています。リモート開催などの制約もテクノロジーを使って克服できたと思いますし、フィードバックする有識者をアサインするスキームを構築することもできました。来年はさらに有意義な成果発表の場にしていきますので、ぜひ大会参加を目標に学習に取り組んでいただけたらと思います。

STREAMチャレンジ2021全国大会の様子はこちら

STREAMチャレンジ2021全国大会の様子はこちら

何度失敗してもいい。Pepperは探究型学習に適した教材

何度失敗してもいい。Pepperは探究型学習に適した教材

ソフトバンクロボティクスが教育に注力する背景を教えてください。

長﨑:社会をより良くしていくために、課題を解決する力やロボットと共生する方法を考えていく力が必要だと痛感しているのが、我々ロボット業界だと思います。Pepperという教育に適した素材があるのですから、次世代を担う子どもたちに提供し、探究的な学びを通して変化へ対応できる力をつけてほしい。また、ICTのおかげで大人と同じ情報に接している子どもたちには、本物の教材を使ってほしいと考えています。Pepperのような社会で実際に使われているものを提供できることは、企業が教育活動に参加する意義だと思っています。

なぜPepperが探究型学習に適しているのでしょうか。

宮北:人型であること、そして商用コミュニケーションロボットであることです。人だったらこういう動きや反応をするだろう、と感覚でわかるので、プログラミングした結果を子どもたちでも簡単に評価できるんです。また、すでに社会生活のなかで活躍しているので、実際に動かせる場に設置して使ってもらい、現場からのフィードバックを受け取れる環境もある。単にプログラミングしてモノを動かすのではなく、社会課題を解決するという目的から逆算した活動ができる、アクティブラーニングに適した教材だと言えます。

Pepperを使った学習は、テクニックを磨くものというよりは、Pepperにどんなコミュニケーションをさせながら課題を解決するかという、アイディアが問われます。また、プログラミング力だけなく、国語や社会で学んだ知識などを使うことにつながります。

商用で使っているものだと、プログラミングが難しいのではないでしょうか?

長﨑:プログラミングは簡単なものから高度なものまで対応していますので、だいたい小学4年生くらいからできますよ。授業の進め方はさまざまですが、例えば始めにイベントなどでPepperのデモを見てもらい、どうやって動いているのか分解しながら技術を習得してもらいます。その過程で「こんなこともできるかな?」と考えながら技術を試していき、4~5時間である程度扱えるようになります。

宮北:プログラミング教育って、失敗することを認めてそこから学びを高めていく教育なんです。料理や工作など、物理的に作るものと比べると、間違えても簡単にリカバリができますから。失敗を楽しみながら大いに試行錯誤してほしいなと思います。

何度失敗してもいい。Pepperは探究型学習に適した教材

新しく事業の柱となる「Pepper for Education」とはどんな内容ですか?

長﨑:これまでは社会貢献の枠組みで事業を実施してきましたが、家庭用、商用向け販売と並び、教育現場に広く展開していくために「Pepper for Education」として提供することになりました。「Pepper社会貢献プログラム」をバージョン2まで実施してきて経験を積み、自治体に限らず私立学校や民間教育事業者など、全国的に活用いただけると判断したからです。

「Pepper for Education」の提供開始にあたり強化したのはサービス面で、教師向けの研修やプログラミング講座など、組織に合わせてカスタマイズしたサービスを提供していきます。また、教育カリキュラム作成時のアドバイザリーも行います。例えば授業の導入が難しいという声があれば、授業に一緒に入らせていただき、子どもたちに学習をスタートする際の問いかけを行うところからご支援することもできます。

宮北:探究型学習は大人にとってもワクワクするものです。今後も、我々の事業を通して学校の改革に貢献していきたいと思います。

(掲載日:2021年4月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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