7月10日から9月5日に開催される東京のまちを舞台にした国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」。ソフトバンクの新しい視聴体験プラットフォーム「AR SQUARE」と協働した本芸術祭では、参加者は東京都⼼の北東エリア(千代⽥区、中央区、⽂京区、台東区の4区にまたがるエリア)でARを活用した新しいまち歩き体験をすることができます。
芸術祭の開始が目前に迫るなか、出展予定の AR アートに関する記者説明会が6月29日に開催。作家らによるARアートの発表や会場で行われたアート体験の様子を取材してきました。
アーティストの感性とAR技術で見え方はこう変わる。「都市と経験のスケール」作品紹介
おお……。
紙の上から次々と飛び出す山や大仏たち。
顔を上げると目の前にはどこか昭和の雰囲気が漂うスタイリッシュなオフィスが。「東京ビエンナーレ2020/2021に出展するARアートのソフトバンクとの共同開発に関する記者説明会 」の会場です。
「⾒なれぬ景⾊へ ―純粋×切実×逸脱―」をテーマに開催される「東京ビエンナーレ2020/2021」では、作家とコラボしたARアートや約60組のアーティストの作品を千代田区、中央区、文京区、台東区の東京北東エリアで楽しむことができるのが特徴です。先ほど動画で紹介したのは、AR(拡張現実)で体験できる芸術作品の一例でした。
AR技術を用いてアート作品を拡張現実上で表現することを可能にしたのが、いまだかつてない開発ユニット「AR三兄弟」の川田十夢(かわだ・とむ)さん。今回の説明会ではスピーカーとして登壇し、AR作品「都市と経験のスケール」についての説明や込められた思いを語りました。
川田さんいわく、本プロジェクトのARアートには2つの鑑賞方法があるそう。一つは、プロジェクト名の通り、「場所にとらわれず」に拡大/縮小できるARアートを出現させて楽しむ方法。もう一つは、周囲の建物や通信環境に基づいて制作された「場所ありき」でARアートを楽しむ方法です。
こうしたARでの新しいアートの楽しみ方を可能にするのは、ソフトバンクも普及を進めている5G(第5世代移動通信システム)の技術。未知なる可能性が開かれたAR×アートの領域の先を走る作品として、AR三兄弟 川田十夢さんと大御所アーティストらとのコラボAR作品が紹介されました。5Gの高速大容量という特徴により、精密なアート作品を表現するための高度な計算処理がリアルタイムにできるようになったことで、アートで大切とされる質感描写やディテールなどのリアリティーにもこだわる再現性が可能となったようです。
現代美術家 椿昇さんとのコラボ ”TOKYO BUDDHA”
有楽町のビルとビルの間という空間を一つのフレームとしてとらえ、大仏が空から次々と落ちてくるこちらのARアート。落下してくる大仏がビルに当たると、「カーン!」という軽快な金属音が響きます。ご覧の通り、最終的には山積みになった大仏が金に変わってビルの間から落ちてくるという奇想天外な流れになっています。
本作品は実際の空間をフレームとしてとらえ、そこにARが組み合わさることで初めて1つの作品となる、まさに川田さんの言っていた「場所ありき」の作品です。建物にスマホをかざすと、輪郭情報や奥行きなどをリアルタイムに計算処理してARを出現させる点に5Gの特徴が活かされています※。
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ARアートは4G/LTEでも体験いただけます。
オンラインで記者説明会に参加されていた椿さんからは、作品の制作背景や込められた思い、ARという技術によって開かれるアートの可能性について言及されました。
ファッションデザイナー 山縣良和さんとのコラボ ”Small mountain in Tokyo”
神田川の水面から突如現れるのは、大きくそびえ立つ山。ポイントは水面に山の姿が反映されているところだそうです。
今回のイベントのテーマの一つである、歴史と未来。イベント対象エリアには、神田山という山を切り崩して地盤を造った歴史があるそう。「山が動く」=「歴史が動く」という言い回しがあるように、神田山がなくなったことで歴史が動き、2021年にはARで山が生み出されることで、新しい歴史が動くポイントになればという思いも込めて、この山を再現したとのことです。ちなみに、こちらも先ほどの作品と同じく、その場所でしか見られない作品ということです。(画像の場所、都内某所にある橋からの風景ということですが、どこだかわかりますか?)晴れた日には水面にうつる山ももっと映えるんだろうな、と想像しながらお話を伺いました。
そのほか、宇川直宏さん(現代美術家、映像作家)や千葉学さん(建築家)、イ・ブルさん(アーティスト)といったアーティストとコラボした共同制作アートなども紹介されました。
「5G × Artで東京はもっと面白くなる!?」開発チームによるクロストーク
「5G×Artで東京はもっと面白くなる!?」というテーマで行われたクロストークでは、キュレーターを務める東京ビエンナーレの宮本さん、ソフトバンクのAR SQUARE開発チーム責任者の大塚さん、実際のAR制作を担当したAR三兄弟の川田さんが登壇。本プロジェクトを振り返って、作品に実装された新しいAR技術や5Gがもたらす新しい東京の風景について言及。また、ソフトバンクと東京ビエンナーレ連携企画の『進撃の巨人』ARアート作品についても触れられました。
AR三兄弟/開発者の川田十夢さんは、進撃の巨人アートへの思い入れやARアートの可能性についてお話しされました。
「もともと『進撃の巨人』の大ファンなので、今回の企画で携わることができて非常にうれしかったです。東京という都市でここまでできるんだ!というポイントを追求できているので、ぜひ体験していただきたいですね。いずれ通信環境に制限がなくなれば、どこからでも体験することが可能になり。リアルタイムで複数の人がAR作品を同時体験できる環境が作れるようになると思います」
また、制作にあたり活用した国土交通省の3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」※のデータについても言及されました。
「実は国土交通省で3次元の地理空間データを開発していて、そのデータを誰でも好きなときに取り出せるようになっています。今回の作品ではPLATEAUのデータを有効活用し、ダイナミックに仕上げました。今後デジタルツインがさまざまなインフラと接続してくると思うので、技術的な先行事例として注目いただけると思います。」
3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU」とは?
国土交通省が進める 3D都市モデル※整備・活用・オープンデータ化のリーディングプロジェクトです。都市活動のプラットフォームデータとして 3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開しています。
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3D都市モデル:国土交通省が「PLATEAU」の一環として整備する、実世界(フィジカル空間)の都市を仮想的な世界(サイバー空間)に再現した3次元の地理空間データのこと。
ソフトバンク株式会社の大塚哲治さんは、ARとアートのコラボを下支えした5Gや、5Gの高速大容量という特長を利用した動画の域を超えたサービス「5G LAB」の1つである「AR SQUARE」について説明しました。
「一方通行ではなく、作品を体験することで自分なりのテーマを見つけ出すことができるコンテンツだと思っています。アートとARの可能性をさらに追求していく必要もあるので、本イベントのフィードバックを受けてこれからどんな化学反応が起きていくか楽しみです。アートを始めさまざまな領域で、多くの方々に5Gを体験していただければと思います。」
キュレーター/東京ビエンナーレプログラムディレクター の宮本武典さんは、新しいAR技術や表現方法、5Gがもたらす新しい東京の風景について語りました。
「東京ビエンナーレでは、作家の方々がARアートを通して東京をどう語っているかを考えながら作品を楽しんでもらいたいですね。ARで過去を保存することは魅力的な取り組みですし、歴史的な文化資源をARで目の当たりにして考えさせられることもあるはずです。ARの活用は、東京の未来を考えるきっかけになるだけでなく、 実際に都市デザインの開発プロセスにも影響を与えていくと思います」
最後に、「東京ビエンナーレ2020/2021」で届けたいAR体験について3名が語り合い、説明会は終了しました。本イベントを通して、これまで体験したことのない新しい東京をぜひ発見してみてください。
(掲載日:2021年7月7日)
文:ソフトバンクニュース編集部
アートの新しい楽しみ方を「AR SQUARE」で体験してみよう!
「東京ビエンナーレ2020/2021」では、スマホのカメラを通して、アートを東京の街に出現させ、現実の背景や人物と一緒に写真や動画を撮影したりすることができます。撮影した写真や動画をSNSに投稿することも!