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300席すべてに座って見え方を検証。舞台 × デジタルで観劇の未体験ゾーンへ

開発者に聞く、演劇 × XR技術のコラボが切り拓くミュージカルの最新観劇スタイル

コロナ禍で観劇スタイルにも変化が起きています。2.5次元ミュージカル作品とXR技術のコラボレーションと聞いて、どんなものを想像しますか? デジタルによってミュージカル作品の新しい楽しみ方を生み出すための取り組みを始めた株式会社ネルケプランニング(以下「ネルケプランニング」)と、ソフトバンクの技術開発者に話を聞きました。

2.5次元ミュージカル

日本の2次元の漫画・アニメ・ゲームなどを原作・原案としてつくる3次元の舞台の総称で、日本だけでなく海外でも各種の公演が行われています。

2.5次元ミュージカルを中心に数々の人気作品の制作を手掛けるネルケプランニングと、ソフトバンクは、新たな観劇・視聴の体験価値を提供するため、ソフトバンクが持つXR技術などの先端技術を活用したコラボレーションを開始しています。

  • 「KYOTO SAMURAI BOYS」東京見参~天~
    2022年3月から、好きな俳優を選択して視聴できる「推しカメ」の映像や、没入体験できるVRコンテンツ、公演会場で販売される俳優のブロマイドにスマートフォンをかざすと特別映像を視聴できるAR(拡張現実)コンテンツを提供。公演詳細ページはこちら
    © SAMURAI BOYS PROJECT

KSB

  • 「アマネ†ギムナジウム オンステージ」
    2022年5月から、舞台観劇+AR(ステージのARデコレーション) やギムナジウムで暮らす人形たちの生活に超接近&臨場感あふれるVRコンテンツを配信。公演詳細ページはこちら
    © 古屋兎丸・講談社/アマネ†ギムナジウム オンステージ製作委員会

amane

お話を聞いた方

山岡さん

株式会社ネルケプランニング
事業本部 第1制作部
山岡 由佳(やまおか・ゆか)さん

小劇場の劇団制作を経て2014年に株式会社ネルケプランニングに入社。「KYOTO SAMURAI BOYS」 東京見参~天~、「アマネ†ギムナジウム オンステージ」ほか、公演制作を多数担当

細谷

ソフトバンク株式会社
コンシューマ事業統括 サービス企画本部 コンテンツ推進統括部 プロダクト開発部
細谷 朋未(ほそや・ともみ)

法人プロダクト・IoTアプリ企画を経て、ARやメタバースアプリ開発を担当

森

ソフトバンク株式会社
コンシューマ事業統括 サービス企画本部 コンテンツ推進統括部 プロダクト開発部
森 香菜子(もり・かなこ)

カスタマーサポート企画を経て、VRアプリ開発・無人AIの自動追尾カメラの技術PoCを担当

戸惑いの連続からスタートしたミュージカルとXRのコラボ

ネルケプランニングさんにとっては、デジタル技術と初のコラボとなりましたが、スタートにあたって何か懸念はありましたか?

山岡さん

どのようにコラボレーションしようか、何から取り組んだらよいのか、戸惑いはありました。年間の公演ラインナップを見ながら、デジタルと組み合わせたらどんなことができるのか、両社で可能性を探るところからスタートしました。

VRやARのようなXR技術について、聞いたことはあるけど具体的なコンテンツになじみがない社員が多かったので… 、そもそも演劇と組み合わせて、何が表現できるのか想像がつかない、といった状態でした。理解を深めるためにソフトバンクさんが勉強会を開いてくれ、今までに手掛けたVRやFRのコンテンツを見ていく中で、「これができるかもしれない!」「こうやったらお客さまに喜んでもらえそう!」と少しずつプランを膨らませていきました。

  • 「FR SQUARE」のFRは「Free view point Reality(多視点)」を略したソフトバンクによる造語。

細谷

本番の舞台に向け、どのようなスケジュールでどんな準備が必要なのか、舞台制作についての知識がまったくなかったので、「XR用にこんな素材がありますか?」と聞くと、通常、本番の舞台の数カ月前にはプロモーション用の素材撮影が終わっているので、後から欲しい素材の撮影ができない、などといったことがありました。

森

ネルケプランニングさんは、XR技術や開発スケジュールが分わからない、ソフトバンクは、2.5次元ミュージカルがどのようにでき上がっていくのか分からない、と始めた頃は、お互いに手探りと驚きの連続だったのではと思います。

一番始めにコラボした「KYOTO SAMURAI BOYS」で苦労された点はありますか?

山岡さん

VR用カメラとFR用の推しカメラを設置したのですが、VRのように舞台近くにそういったカメラを設置する経験はなかったので、役者さんに普段通りにパフォーマンスしていただきつつ、時々カメラを気にしてほしい、というお願いをしていました。推しカメラに関してはパフォーマンスに全力過ぎて、カメラに向かない役者さんもいたので、スタッフが「目線、こっちです!」とサインを出すようなシーンもありましたね(笑)

「推しカメ」映像のイメージ

KYOTO SAMURAI BOYS

©️SAMURAI BOYS PROJECT

初めての舞台ではありましたが、「FR SQUARE」、「VR SQUARE」、「AR SQUARE」でできることに全部チャレンジしてみて、いいところと、難しいところを抽出してみようという姿勢で臨みました。

では、次の作品「アマネ†ギムナジウム オンステージ」では、いいところが採用されたんですね。

山岡さん

実はそうではないんです。逆に、「『KYOTO SAMURAI BOYS』でできなかったことこそ、チャレンジしてみよう!」となりました。スマホを使ったARコンテンツですね。

細谷

「演劇とのコラボ」という点では新鮮な取り組みでしたが、「KYOTO SAMURAI BOYS」でやったことは、主に既存のソフトバンクの5G LAB(FR SQUARE、VR SQUARE、AR SQUARE)へのコンテンツの追加でした。そこで「アマネ†ギムナジウム オンステージ」では、実際の劇中にスマホをかざすことで、演劇 × XRの新しいユーザー体験をAR技術を活用して提供できないか、ということを考え始めました。

特にこだわった演出はどこですか?

細谷

舞台本編の前でも後でもなく「劇中でのARをお客さまに体験してもらいたい!」と思っていました。舞台の空間を使って、現実空間を拡張してユーザーの上に何かを飛ばす、曲ごとに演出を変えるなど、絶対に実現したかったことを盛り込みました。

今までの舞台にはない演出ですが、お客さまはスムーズに体験できましたか?

山岡さん

一般的には写真撮影が禁止されている公演が多いのですが、「アマネ†ギムナジウム オンステージ」では最後のレヴューショー中の撮影を許可していました。そのタイミングでステージにスマホをかざすとARエフェクトが体験できるので、舞台上にスマホを向けるという点では、抵抗なくお客さまには体験いただけたのでは、と感じています。

5G LABで2.5次元ミュージカルの世界を楽しもう!

5G LAB

「5G LAB」には、5Gの低遅延・大容量という特長を生かした臨場感あふれる映像コンテンツを体験できる「FR SQUARE」「VR SQUARE」「AR SQUARE」アプリがあります。

5G LABをチェックする

お客さまにとって一度きりの舞台を絶対に成功させたい!約300の座席すべてからの見え方を劇場に通い詰めて検証

お客さまには一度きりの舞台を絶対に成功させたい!約300ある座席すべてからの見え方を劇場に通い詰めて検証

こだわりの演出には相当の時間がかかったと想像します。

細谷

最初は、ARの演出であればARグラスをかけて体験してもらうコンテンツを想定していました。ただ、それだと約300名のお客さまへARグラスとそれを接続するためのスマートフォンをお渡しする必要があり、運用の煩雑さから見送りました。

山岡さん

代わりにスマホとアプリがあれば体験できる演出に切り替え、準備を進めることに。将来的にはARグラスで試してみたい気持ちはあります。今回はまずそこに向かうための取り組みなので、1人でも多くのお客さまに体験いただける方法を選びました。

アマネギムナジウム

座席ごとのARエフェクトの見え方を検証

森

実際には、準備開始から本番まで3週間ほどと短かったので、私たちはほぼ毎日劇場に通い詰めて、練習なども見学させていただきました。おかげで、振り付けや歌もだんだん覚えて、ほとんどマスターしました!(笑)

その舞台はお客さまにとっては一度きりのもの。絶対に失敗できないという思いで、検証に力を入れましたね。各座席でAR体験できるよう、劇場内の座席のすべて(約300席)に座り、それぞれの席からの見え方もチェックしました。最終的に、技術面だけでなくARでどう見えるかの演出も任せていただきました。

お客さまには一度きりの舞台を絶対に成功させたい!約300ある座席すべてからの見え方を劇場に通い詰めて検証

©古屋兎丸・講談社/アマネ†ギムナジウム オンステージ製作委員会

山岡さん

特に、音の切り替えに合わせて、ARの映像が変わるタイミングが完璧でした! 将来的に照明さん、音響さん、AR技術者が並んで舞台演出する日が来るんじゃないかなと思います。

次に演劇 × XRでやってみたいこと、ここまでできる!など、今後どのような未来を作れそうですか?

山岡さん

360度カメラを使ってみたいですね。デジタルを使う良さは没入感が得られることだと思うので、そこを味わってもらえるように模索中です。

ARブロマイドやARトレーディングカードは、「KYOTO SAMURAI BOYS」のメンバーの皆さんのパフォーマンスや舞台『魔法使いの約束』のキャラクターや世界観とARの相性が良すぎて(笑)お客さまに大好評です。スマホをかざすことで役者さんが動くというのが衝撃的だったようです。他コンテンツでも展開していきたいですね。

中には、コンテンツを見るためにXRのアプリを使用することに慣れない反応も最初はありましたが、今では、「これ本当に無料なの?」という反応や「絶対見たほうがいい!!」というツイートをしてくれる方も。演劇 × XRが定着するいいきっかけになったと感じています。

お客さまには一度きりの舞台を絶対に成功させたい!約300ある座席すべてからの見え方を劇場に通い詰めて検証

©️coly/舞台まほやく製作委員会 舞台 魔法使いの約束「ランダムトレーディングカード <正装> 」にスマホをかざすと音楽が流れ、魔法がかかったようにキャラクターが動き出します。

細谷

すぐにできそうなのは、インタラクティブな体験だと思います。ユーザーの行動に合わせてストーリーが変わる、ユーザーがスマホをタップしたらモノを投げるなどですかね。今後、リアルで起きているものを、バーチャル空間で活用して、そのバーチャル空間に自分が入るという新しい舞台の体験を作りたいですね。

山岡さん

XRありきの舞台をやってみたいですね。特に子どもたちは抵抗なく楽しんでもらえそうです。自分がストーリーの中に入って一緒に戦ったり、暑い・寒いを感じられたり、リアルな世界では行けないところに行ったりする体験を作れるんじゃないかとワクワクしています。

ありがとうございました。


新しい魔法が生まれた!演劇 × XR技術がつくる新しいエンターテインメント|〜ここばな #23

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新しい魔法が生まれた!演劇 × XR技術がつくる新しいエンターテインメント|〜ここばな #23

(掲載日:2022年7月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部

リアルとバーチャルの融合する2.5次元のミライ体験に刮目せよ!

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