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研究歴25年の“蚊博士”が教える「THE・虫よけ対策」とウワサの真相

蚊はなぜ寄ってくる?  “蚊博士”に聞く、生態を理解した虫よけ対策

日に日に日差しが強くなり、蚊などの虫よけ対策を始める季節がやってきました。とはいえ蚊も生き物。なるべく無理に駆除したりせず、上手に共存する方法を考えたいものです。

そこで今回は、25年間、蚊について研究し続けている害虫対策の専門家、白井良和さんに蚊の生態を踏まえた効果的な虫よけ対策や、蚊にまつわるトリビアを伺いました。蚊の生態を知った上で適切な対策をとれば、効き目がアップ、さらには蚊への愛着も湧いてくるかも?

目次

お話を聞いた人

白井 良和(しらい・よしかず)さん

白井 良和(しらい・よしかず)さん

害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役、医学博士。幼少期から虫が好きで、中学生のときにはゴキブリを飼っていたことも。1994年、京都大学部農学部卒業、1996年、京都大学大学院農学研究科修了後、殺虫剤メーカー勤務を経て、2001年富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。博士論文は「蚊の吸血誘引に関する総合的研究」。

2003年、蚊駆除業務を柱に有限会社モストップを創業。現在では、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験を主な業務とし、書籍の出版等も行っている。

どうして蚊は人を刺すの? かゆくなる理由や蚊の習性を知ろう

蚊が人を刺すのは、血を吸うためですよね? なぜ血を餌にするんでしょうか?

人間や動物の血を吸うのは、メスだけなんです。その理由は、血液には産卵に必要な栄養が豊富に含まれているから。オスは、花の蜜や植物についた水滴などを養分にしているので、血を吸うことはありません。

オスは触覚がフサフサしているので、よ~く見ると肉眼で見分けることができます。

オスは触角がフサフサしているので、よ~く見ると肉眼で見分けることができます。

蚊には、人間のように温血動物の血を吸う種類もいれば、ヘビやカエルなどの冷血動物の血ばかりを専門に吸う種類もいます。そして実は血を吸わない蚊も存在するんですよ。約100種類いる蚊の中で、吸血するのは30種類ほどでしょうか。そのなかでも日常生活で人間が刺される可能性があるのは、5~6種類だけです。

血を吸っているだけなのに、蚊に刺されるとかゆくなるのはどうしてなんでしょう?

それは、蚊の唾液に対して人間がアレルギー反応を起こすからです。蚊は人間の皮膚に唾液を入れながら血管を探します。そのとき血管以外の部分に唾液が入り、微量でもアレルギー反応を起こしてしまいます。

なるほど。唾液の量はかゆみの出方に関係ありますか?

唾液の量はかゆみの強弱にはほとんど関係ありません。刺された人の体質や免疫力の差、生まれてから今までに刺されてきた回数によって、かゆみの出方が異なります。

人間は、蚊に刺される経験をすると次の5段階でかゆみの反応が起きます。

刺された回数で変化していくかゆみの反応5段階

第1段階
(刺された回数が少ない)
無反応
第2段階 遅延反応のみ
(刺された直後にはかゆみは出ないが、1日後くらいに腫れてかゆみが出てくる)
第3段階 遅延反応と即時反応
(刺されてすぐに腫れてかゆくなり、数日後にまたぶり返す)
第4段階 即時反応のみ
(刺された直後だけ腫れてかゆくなる)
第5段階
(刺された回数が多い)
無反応

よく、「歳を取ると蚊に刺されにくくなる」という人がいますが、年齢はあまり関係ないと思われます。そういう人は、実は蚊に刺されていないのではなく、その年齢に到達するまでにたくさん刺されているから、免疫がついて第5段階の無反応になっている可能性も考えられます。

蚊に「刺されやすい人」と「刺されにくい人」の差って、何?

蚊に「刺されやすい人」と「刺されにくい人」の差って、何?

「蚊は二酸化炭素が好き」と伺いましたが、蚊が寄ってくる条件は他にありますか?

蚊が寄ってくる三大要因は、温度、二酸化炭素、水です。体温が高く、汗をかきやすい人は刺されやすいと言えるでしょう。実験で足のにおいや顔の脂にも反応することが分かっているので、なるべく全身を清潔にしておくのがおすすめです。

また、蚊は色を識別できると言われていて、黒など濃い色を好む研究結果が出ています。ですので、濃い色の服を着ていたりすると刺されやすい傾向にありますね。

蚊の刺されやすさに男女差はありますか?

刺されやすさに男女差はありません。妊婦が刺されやすいのは、妊娠中は体温が高く、汗をかきやすいというのが要因だと思います。

O型の人は刺されやすいと言われていますが、血液型による違いはありますか?

血液型による違いはいろいろな説が出ていて、私自身も研究をして論文を書いたことがあります。結論から言うと、O型>B型>AB型>A型の順で刺されやすいというデータは出たのですが、そこまで大きな差はないというのが本当のところ。刺されやすさには他の要因の影響が強いと考えられ、必ずしもO型が刺されやすいとは言い切れません。

一概に〇〇だから刺されやすい、とはなかなか言えないんですね。

そうですね。蚊に刺されやすい要素はないのにやたらと刺される人や、逆にほとんど刺されない人もいて、そのメカニズムはまだ解明されていません。まだまだ蚊には不思議がいっぱい潜んでいるんです。

アレルギー反応でかゆくなるだけなら、刺されてもいいか… という気もしてしまうのですが、刺されないに越したことはないんでしょうか?

人間を最も多く殺している生き物は、蚊だって知っていますか? 蚊は、マラリアや日本脳炎、デング熱、ジカ熱などさまざまな病原体を媒介して、たくさんの人が亡くなる要因を作ってきました。

有名な武将の平清盛も、蚊によって日本土着のマラリアに感染して亡くなったという説があります。昭和30年ごろに日本土着のマラリアはなくなりましたが、2014年に東京の代々木公園で採取した蚊からデング熱のウイルスが検出された例もありますし、刺されないに越したことはありませんよ。

専門家が教える効果的な対策方法を、次のページで詳しく解説します!

蚊のウワサ、ウソホントその1「歯磨き粉に蚊は集まる?」

最近、SNSで「歯磨き粉を置いておくと、そこに蚊が集まる」という投稿が話題ですが、これは事実無根です。蚊は、人体のように動いているものを認識し、止まっているものにはあまり寄って来ないという特性があります。さらに、歯磨き粉は温かくもないし、二酸化炭素も出ていません。水分も豊富ではなく、蚊が好きな要素が1つもないので、この情報は誤りであると言えるでしょう。

なるべく蚊に刺されないためには、どんな対策をすればいい? 専門家が教える効果的な虫よけ方法

室内編と屋外編に分けて白井さんに効果的な虫よけ対策法を教えてもらいました。

<室内編>

  1. 蚊の侵入を防ぐために、窓やドアを開けっ放しにしない
  2. 小さな隙間からでも蚊は目ざとく入ってくるため、網戸のほつれや穴はふさいでおく
  3. 虫よけグッズは寝る直前ではなく、それよりも前から使っておく

虫よけグッズは「ワンプッシュ型スプレー」「液体蚊取り」「蚊取りマット」「蚊取り線香」の4つが基本です。肝心なのは、使う時間帯。蚊は日中から夜にかけてタンスの裏や、物陰に隠れてじっとしていて、夜中~朝方にかけて活発に動いて血を吸う習性があります。ですから、いないと思っても油断は禁物。早めの時間帯に使用して、蚊が出ない状態にしてから寝れば、グッズの無駄な消耗も防げます。

<屋外編>

  1. 針が肌に到達しないダボッとした服を着る
  2. 蚊が好む黒や青、赤など濃い色の服を避ける
  3. 蚊が嫌う成分が入った虫よけ剤が効果的

蚊は柑橘系の匂いを嫌う性質があり、昔はみかんの皮を燃やして虫よけに使っていたこともあるほど。そのため、柑橘系のアロマオイルや香り成分入りの虫よけリングなどもあります。長時間の外出の場合は「ディート」や「イカリジン」という成分が含まれた虫よけ剤を使いましょう。

「ディート」は非常に効果的ですが、年齢により使用回数が決まっています。小さいお子さんに使用する際はパッケージの注意書きをよく読みましょう。「イカリジン」は、年齢による使用回数制限はありません。

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虫よけグッズを探す

蚊のウワサ、ウソホントその2「音で蚊を遠ざけられる?」

音を利用した「虫よけアプリ」や「超音波虫よけ」などが出回っていますが、実はメスは聴覚が弱いので、まったく効果はありません。2007年にこのような商品は公正取引委員会によって勧告を受けたはずですが、忘れた頃に密かに復活するということが数年おきに繰り返されているようです。

なるべく蚊に刺されないためには、どんな対策をすればいい? 専門家が教える効果的な虫よけ方法

蚊は植木鉢の受け皿や、古いタイヤなどに溜まったわずかな水から発生します。身の周りから蚊を遠ざけるには、こうした水たまりをなるべく減らすよう心がけましょう。

かゆみを抑える方法と、蚊にまつわるあの「ウワサ」の真偽

それでも刺されてしまった場合、なるべくかゆみを抑えるにはどうすればいいでしょうか?

効果的なのは、やはりかゆみ止めですね。私は刺されても気にしないので、ほとんど使わないんですけど(笑)。あとは冷やすこと。保冷剤だと刺激が強すぎる場合があるので、流水などで冷やすのがよいでしょう。

かゆみを抑える方法と、蚊にまつわるあの「ウワサ」の真偽

「蚊に刺されたらしばらくそのままにして、しっかり血を吸わせてから叩いた方がいい」と言いますが本当でしょうか?

それは間違った情報ですね。少しでも早く追い払って、体内に入る唾液の量を少なくするのが得策です。「刺されたところにセロハンテープを貼って空気に触れさせないほうがいい」というのも嘘。爪で傷をつけたり、叩いたりと痛みでかゆみを抑えようとするのも、一時的なしのぎ方で効果はありません。皮膚に傷がつくとそこから細菌が入ることもありますから、やめた方がいいでしょう。

さまざまな蚊の情報が飛び交っていますが、正しい情報はなかなか少ないようですね。

そうですね。蚊は身近な存在なのに、実はまだまだ分からないことだらけなんです。例えば、蚊をおびき寄せる効果的な方法は、まだはっきりと分かっていません。

数多くの虫除けグッズが発売されているのにそうなんですね。驚きです。

二酸化炭素が好きだから自動車の排気に集まるかといったらそんなこともない。一度、ラーメンの湯気に集まっていたのは見たことがありますが、それはとても珍しい例で、ほとんどの場合、蚊をだますことはできません。

エサになる砂糖水を置いておいても、寄ってくるのは500匹中10匹程度。蚊は皆さんが思っている以上に賢い生き物で、特定の場所に集めるのは、とても難しいことなんです。

もっと単純な生き物かと思っていました……。他に蚊の魅力はありますか?

トワダオオカやキンパラナガハシカのように、身体の一部がブルーに輝く美しい姿をしたものもいますし、蚊の針の形状を応用して痛くない注射針が開発された事例もあります。よく観察すると蚊はとてもおもしろい生き物ですよ。やみくもに嫌いにならず、生態をよく知って上手に付き合っていけたらいいですね。

白井さんによると、蚊は約25〜30度の気温で活発に活動するため、秋頃まで対策が必要だそうです。アウトドアなどで外に出る機会も増えてくる季節。ぜひ本記事を参考に、蚊の生態を踏まえた効果的な虫よけ対策を実践してみてください。

(掲載日:2022年7月29日)
文:佐藤葉月
イラスト : ウラケン・ボルボックス
編集:エクスライト