物件探しでは、家賃や間取り、周辺環境など、チェックしたいポイントがいくつかあります。多くの人がまずはインターネットで物件探しを行うかと思いますが、疑問や不安を感じることも多いのではないでしょうか。今回は、スマホを活用してオンライン上でスムーズに物件探しをする際のコツや、実際に内見する際に活用したいスマホの便利機能などについて、物件探しの専門家である株式会社リビングインの相樂喜一郎さんにお話を伺いました。
目次
話を聞いた人
株式会社リビングイン代表取締役 相樂喜一郎さん
外資系証券や大手不動産会社勤務を経て、2012年に株式会社リビングインを立ち上げる。東京の不動産を専門にこれまで500件近くの売買・賃貸仲介を行い、後悔のない部屋選びをサポート。不動産コンサルティングマスター、不動産鑑定士補、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、公認ホームインスペクター(住宅診断士)としても活躍中。
物件はオンラインで探す方がいい?
物件探しをする際は、現地の不動産屋へ行く、もしくはスマホを活用してオンラインで探す方法があります。近年は、物件探しだけでなく、内見や契約までオンライン上で済ませることができるようになりました。物件探しの基本的な流れは下記のようになります。
探し始めてから入居までにかかる期間は、早い人で1週間、遅い人で3カ月程度と、個人によって差があります。入居日が決まっている場合は、遅くても1~2カ月前から物件探しをスタートしましょう。
「オンラインでの物件探しは、現地の不動産屋で物件を探すよりも、より広範囲に物件の相場や情報を知ることができます。スマホでなら電車での移動時間やちょっとした待ち時間を使って手軽に調べることもできますしね。ただし、物件探しのみオンラインで行うのか、それとも内見や契約まで全てオンラインで完結させるのかは、次にお話するメリット・デメリットを理解してから判断するのがよいでしょう」
オンラインで物件探しをするメリット・デメリット
スマホを活用したオンラインでの物件探しは、下記のようにメリットもあればデメリットもあります。
【メリット】
- 24時間いつでも数多くの物件をチェックできる
- 自分のペースでゆっくりと物件が検討できる
- エリア、物件の条件ごとの家賃相場が把握しやすい
【デメリット】
- 街の雰囲気、物件の空気感がイメージしづらい
- 最新情報が反映されるのに時間がかかることも
- 騒音、日当たりなどは現地へ行かないとわからない
「オンラインでは、いつでもゆっくりとたくさんの物件を検討できる点が大きなメリットですね。特にスマホなら隙間時間に最新の物件情報がアップされているかこまめにチェックすることもできます。しかし、不動産情報サイトに掲載されている物件の中には、入居中ですぐに内見できなかったり、リフォーム中で室内の画像は別の部屋だったりするものもあります。どうしても不動産屋の実店舗と比べると、最新情報の反映が遅いという点はデメリットですね。ただ、最近だとマンションの口コミサイトなどを見てある程度、周辺環境の雰囲気を把握することもできるようになってきています」
オンラインで物件探しをするのに向いている人は?
前述したように、スマホを活用したオンラインでの物件探しにはメリット・デメリットの両方がありますが、それぞれどんな人に向いているのでしょうか。
【オンラインでの物件探しが向いている人】
- 引っ越しに慣れている人
- 物件の条件はあまり気にしない人
- 物件探しのコストと時間を少しでも抑えたい人
- 遠方で不動産屋に出向くのが難しい人
- すでに一人暮らしを何年もしている人
【直接不動産屋へ行く方が向いている人】
- 初めて一人暮らしをする人
- 物件の細かい条件まで気になる人
- 引越し先の土地勘がない人
「初めて一人暮らしをする人や土地勘がない人はオンラインで全て決めてしまわずに、まずは不動産屋の担当者と一緒に現地に足を運び、実際の部屋の様子や騒音などの周辺状況を確認した方が安心かと思います。すでに一人暮らしの経験があり引っ越し慣れしている人は、チェックすべきポイントをある程度分かっていると思うので、オンラインでの物件探しに向いているかもしれません。
このようにオンラインでの物件探しは、向いている人とそうではない人がいるため、まずはオンライン上でどこまで行うか自分の中で明確にしておくのがよいでしょう。物件探しのみオンラインで行うのか、もしくは内見から契約まで全部オンラインで完結させるのか、今までの経験なども踏まえて検討することが大切です」
オンラインで物件探しをするには?
実際にスマホを使ってオンラインで物件を探す際は、どのような点を意識すればいいのでしょうか。ここでは、希望条件のまとめ方や、不動産情報サイトをチェックする際のポイントについて見ていきます。
まずは条件をまとめる
物件探しで大切なのが、自分の希望する条件をリスト化させることです。契約後に不都合な点に気付いても解約が難しいので、譲れない条件はあらかじめ整理しておきましょう。
【条件整理の主な項目】
- 予算(家賃、管理費など)
- 住みたいエリア(スマホの地図アプリでオフィス、学校、よく行く場所までの経路や所要時間などを確認)
- 立地条件(駅からの距離、近隣施設の有無など)
- 部屋の広さ、間取り
- 建物の構造、防音性、耐震性など
- 設備(オートロック、テレビモニター付きインターホン、インターネット環境など)
- 日当たり、眺望など
「希望する条件は個人によって異なりますが、近年はテレワークの普及により、ワーキングスペースの有無やインターネットの通信速度といった条件も重視されています。騒音や人通りの少ない静かな環境など、交通の利便性よりも室内での過ごしやすさを重視して部屋を探す人も増えてきています。まずはスマホでいろんな不動産情報サイトを見て、気になる物件があったらスクリーンショットを撮ったり、URLを記録しておくと自分の希望条件を整理しやすくなるかと思います」
不動産情報サイトで検索する際は、どんな点に注目すべき?
物件情報については、不動産情報サイトで探すという人も多いかと思います。スマホでさっと検索するだけでも膨大な数がヒットしますが、まずはどんなサイトを見ればいいのでしょうか。
「まずはそのサイトに掲載されている物件の写真の点数に注目しましょう。リビング、キッチン、浴室、トイレ、玄関だけでなく、それぞれを別角度から紹介していたりと、より詳しく見せてくれるサイトは信頼できます。あとは動画もあれば室内の様子を具体的にイメージしやすくなりますね。このように、できるだけ情報量が多いサイトを参考にするとよいでしょう。逆に写真がリビングだけ、外観と間取り図だけのような情報量が少ないサイトは要注意です」
物件を内見する際に活用したいスマホの便利機能
内見は、部屋を借りる前に物件を確認できる貴重な機会です。スマホを活用したオンライン内見でも直接現地に足を運んで確認する場合でも、まずは内見時のチェックポイントをリスト化しておくとスムーズに進みます。担当者に確認したいこと、部屋で確認したいことを、スマホのメモ機能などで事前にまとめておきましょう。
内見時に確認することの例
<現地で確認すること>
- 部屋の広さ、収納スペースの奥行など、サイズの確認(スマホのメモ機能で記録したり、写真を撮っておく)
- 騒音の有無
- 日当たり、風通し
- 近隣の街並みや店舗、施設の有無(スマホの地図アプリなどと照らし合わせて確認)
- 建物や住人の雰囲気(ベランダ、共用部分、ゴミ置き場、駐輪場、駐車場など)
- 室内の設備(キッチン設備、浴室乾燥機の有無、エアコンの設置場所など)
- 携帯電話の電波強度
- ゴミ出しのルール(事前に担当者へ確認するのもおススメ)
<担当者に確認すること>
- 自分が置きたい家具が入るか、室内の広さ、サイズの確認(できれば廊下やエレベーターも確認する)
- インターネット環境(光ファイバーなどインターネット回線の整備状況)
- 事故物件ではないか(事故物件か確認できるサイトをチェック)
- 近隣住民について(可能な範囲で)
「部屋の確認はもちろん大切ですが、エントランス、 共用廊下、隣のベランダなど、近隣住民と関わりが多そうな部分も必ず見ておきましょう。オンライン内見の場合、担当者にこういった部分までカメラで映してもらうことをリクエストするのを忘れずに。また、あらかじめ自分の持っている家具や家電のサイズを測っておくと、寝室の広さやクローゼットの奥行、洗濯機、冷蔵庫の設置場所なども内見時に確認できます。特にオンライン内見の場合は、部屋の広さ、室内設備、ゴミ出しのルールなど、気になるポイントは問い合わせの段階であらかじめ質問しておくとよいかもしれません」
物件を内見するときに準備しておきたい持ち物
物件を内見する際は、部屋の図面、カメラ(スマホ)、メジャー、家具の寸法メモ、筆記用具、懐中電灯、方位磁石、スリッパ、などがあると安心ですが、意外と常備していないもの多く、改めて買い揃えるのも少し面倒ですよね。しかし、スリッパ以外の持ち物はこのようにスマホのアプリで代用できるんです。
方角を確認するためのコンパスアプリ

ベランダや窓の向きなど、方位方角の確認に役立ちます。 iPhoneにも標準アプリとして「コンパス」が搭載されていますよ。
太陽の位置が分かるアプリ
指定した時間と場所の日の出・日の入りをシミュレートできるアプリ。日当たりの確認や窓の場所のチェックに活用できます。

メジャーアプリ

カメラを家具を置きたいスペースや対象に向けるだけで、長さを算出できるアプリを使うと便利。
iPhoneの標準アプリ「計測」のほか、ARメジャー機能を持つアプリがたくさん出ていますので、使いやすいものを探してみてくださいね。
ARの家具配置アプリ

AR(拡張現実)で家具の試し置きができるアプリ。新しく買う予定の家具がある場合は、家具が配置できるか、実際に置いたときのイメージを把握するのに役立ちます。家具メーカーのアプリや、複数のメーカーの家具を試せるアプリなど、さまざまなのものがあります。
騒音・振動チェックアプリ
室内や窓を開けた際の周辺の道路、施設などからの騒音・振動を測定できるアプリ。入居してから騒音に悩むことがないようにチェックしておきましょう。

Sonic Tools SVM
騒音・振動・磁場の3つを計測することができるアプリです。スマホのマイクを使って音の大きさを感知し、dB(デシベル)で表示してくれます。
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日常生活における普通の会話は60dBほどと言われていますが、実際に静かな室内で計測してみると平均34.6dBほど(画像左)
スマホを壁や床に触れさせれば、加速度センサーを活用して簡単に振動の大きさも測定できます。(画像右) - ※
このアプリは理科実験として身近な音・振動・磁場を計測するだけでなく、プログラミングの面白さを感じてもらうことを目的にGitHubでソースコードが公開されています。
「内見時に持ち物をたくさん持っていくのは少し面倒なのでスマホのアプリを活用すると良いでしょう。特におススメなのが方位、傾斜、振動、騒音を測定できるアプリです。騒音は建物の構造によっても違いがありますが、鉄骨や木造は振動を感じやすいです。特に、リモートワークの方は気になる方も多いのではないでしょうか。近くの道がトラックの抜け道などになっていることもありますので、内見時にこうしたスマホアプリでチェックしておきましょう」
オンラインで物件を内見するときに活用したいサービス
360度パノラマビュー
360度パノラマビューとは、実際にその場にいるかのような風景を見られる画像コンテンツのことです。物件情報を360度のパノラマ画像で見ることができ、静止画像よりもより詳しく室内の様子を確認できます。先ほどの内見でのチェックポイントにある窓やコンセントの位置、照明のシーリングなどもチェックできるでしょう。
オンライン相談・オンライン内見
オンライン相談とは、不動産担当者にオンラインで相談するサービスのことです。物件情報について質問したり、似たような物件を紹介してもらうなど、店舗と同じサービスをオンラインで受けることが可能です。また、オンライン内見とは、現地にいる不動産担当者とビデオ通話でつながり、リアルタイムで内見するサービスのことをいいます。スマホやPCを使って、担当者と会話しながら内見できます。
「オンライン内見時は気になる点や詳しく見せてほしい部分は、遠慮せず担当者に質問するようにしましょう。チェックしたい部分は事前にスマホや手帳などに書き出しておくと聞き忘れを防げます。また、窓を開けてもらって外の音がどのくらい聞こえてくるかも忘れずに確認しておきましょう。収納スペースはその場でサイズを測ってもらうとどのくらいの大きさなのか把握しやすいですよ」
物件探しで役立つおすすめスマホアプリ
それでは最後に、物件探しに役立つスマホアプリの便利機能を紹介します。
「近年は、災害対策を考慮して物件選びをされる方もいます。半地下の家など、水害が起こりやすい場所は決まっているので、あらかじめ地域情報については防災アプリなどでしっかりと確認しておきましょう。その他にも、周辺施設や治安状況についても事前に地図アプリでチェックしておくと安心ですよ」
Yahoo! MAP ジャンル検索・防犯マップ
「ジャンル検索」メニューから周辺の飲食店や施設を検索できます
「ジャンル検索」は、現在地や目的地の周辺にある施設を、ジャンルごとに検索できる機能です(飲食店、学校、病院、コンビニなど)。
身近な場所で発生する不審者情報などを、地図と詳細情報で確認できます(画像提供:Yahoo!地図ブログ)
「防犯マップ」は、声かけ、わいせつ、窃盗、不審者情報などを地図上で確認できる機能。地域の防犯情報について知りたいときに便利です。
Yahoo!防災速報
(画像提供:Yahoo!防災速報)
「災害マップ」機能で、設定したエリアの災害リスクについて地図上から確認できるほか、緊急地震速報や豪雨予報などリアルタイムでの防災情報もプッシュ通知で受け取ることができます。また、地域の防災情報では避難場所の確認ができます。
【まとめ】
最後に、スマホを活用した物件探しや、内見で役立つスマホの便利機能についてポイントをおさらいしましょう。
- ①スマホを活用してオンライン上で物件探しから契約まで完結させるのは、現地に行く手間がなく時間とお金が節約できる分、部屋や周囲の環境が分かりづらい
- ②物件探しは、オンラインであってもなくても、自分の希望する条件をリスト化させることが大切
- ③オンライン内見では部屋の確認はもちろん、隣にどんな人が住んでいるのか、置きたい家具を入れられるかといった点にも注意する
物件探しでは自分の希望する条件や譲れないポイントをリスト化するのが重要です。スマホを活用したオンライン上での物件探しはメリット・デメリットもありますが、どこまでオンラインにするかあらかじめ決めておき、上手に組み合わせて快適な新生活を送れるとよいですね。
(掲載日:2023年1月27日)
文・編集:エクスライト
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