ECサイトなどで会員登録をするときに、既に登録済みのSNSアカウントなどでログインできるようになっているのを見たことはありませんか?
多くのウェブサイトで導入が進む「ソーシャルログイン」の仕組みやメリットについて、ソフトバンク株式会社、株式会社博報堂、Treasure Data,Inc.が設立した、データ活用を起点に企業のDX推進を支援しているインキュデータ株式会社(以下「インキュデータ」)の担当者に話を聞きました。
お話を聞いた人
インキュデータ株式会社 事業推進本部 IDマネジメント部 部長
高柳 怜士(たかやなぎ・さとし)さん
新卒入社した大手Slerに約10年間在籍。スマートフォンアプリ制作やコンサルティング業務を担当し、並行してAWSやIDaaS関連の執筆活動も行う。2021年6月のインキュデータ入社後は、IDマネジメントプロダクトの開発、カスタマーサクセスに携わる。
インキュデータ株式会社 事業推進本部 IDマネジメント部
養父 隆太郎(やぶ・りゅうたろう)さん
外資系企業にてSaaSプロダクトのマーケティングに従事した後、ベンチャー企業に転職。経営企画室やSaaS事業部にて新規事業計画やマーケティング・営業戦略の策定に携わる。インキュデータ入社後は、IDマネジメント領域のマーケティングセールスを担当。
目次
ソーシャルログインとは?
よく見かけるようになったソーシャルログインですが、改めて詳しく教えてください。
高柳:LINEやYahoo! JAPAN、Googleなど、普段から慣れ親しんだSNSアカウントなどの情報を各種サイトに連携することで、簡単に会員登録やログインができる機能を「ソーシャルログイン」と呼びます。
ソーシャルログインの流れを簡単に説明します。まずは、ウェブサイトに表示されているSNSログインボタンをユーザーがクリックします。次に、 ソーシャルプロバイダー(SNSの提供者)を介して、「操作を行っているのが本人かどうか」「アカウント情報をウェブサイトに連携してもよいか」といった確認が行われます。最後に、ユーザーがこれに同意をすれば、ウェブサイト側にアカウント情報の利用が許可され、会員登録やログインが完了する仕組みです。
ソーシャルログインは、その利便性から近年広く普及してきたため、皆さんにとっても身近なログイン方法となっているのではないでしょうか?
会員登録やログインが簡単に。不正ログインのリスクも軽減
ソーシャルログインを利用することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
養父:ユーザーがソーシャルログインを利用するメリットは大きく分けて3つあります。
メリット① 会員登録を簡単に行えること
会員登録時、SNSアカウントに登録された情報が必要事項の入力フォームに自動で反映されるので、自身でメールアドレスやパスワード、氏名、住所といった情報を新たに入力する手間を省けます。
メリット② 2回目以降のログインをスムーズに行えること
SNSログインボタンを押すだけでログインが完了するため、登録した情報をわざわざ覚えておく必要はなく、面倒なパスワード管理も必要ありません。
メリット③ パスワード漏えいなどセキュリティ面におけるリスクを軽減できること
ウェブサイト側で連携されたIDやパスワードは保持しておらず、さらに、ソーシャルプロバイダー側が提供する2段階認証といったセキュリティ対策が適用されるため、ユーザーも安心して利用することができます。
サービスを提供する側のメリットは何でしょうか?
高柳:ユーザーが得られるメリットは、そのまま事業者側のメリットにもつながっています。例えば、情報入力を面倒に感じてサイトを離れてしまう方は少なくありません。しかし、ソーシャルログインを利用すれば、新規会員が獲得しやすくなり、再ログイン率の向上やサービスの継続利用も見込めます。
また、先述した通り、ソーシャルログインを導入した企業は、自社でIDやパスワードを保有する必要がありません。ユーザーがログインするSNSの画面は各SNSのセキュリティ対策をそのまま適用でき、第三者による不正ログインなどのリスクを減らすことができます。
利用者にとっても、サービスを提供する側にとってもさまざまなメリットがあるため、ソーシャルログインの普及が進んでいるのですね。他にも普及している理由はあるのでしょうか?
養父: 先述したメリットに加えて、事業者がサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)に頼らないマーケティング施策を行うことが可能となり、ユーザーがよりパーソナライズされたアプローチを受けられる点も、ソーシャルログインが普及する要因の1つです。
サードパーティクッキーとは?
クッキー(Cookie)とは、ウェブサイトを訪問したユーザーの訪問日時や行動データなどを記録する仕組みやデータのこと。その中でも、複数のウェブサイトを横断してユーザーの行動を把握できるのがサードパーティクッキーです。ウェブサイト(A)でスニーカーを見た後、ウェブサイト(B)を訪れると、スニーカーの広告が表示された経験がある方、いらっしゃいませんか? これがサードパーティクッキーを活用したマーケティングの一例で、ウェブサイトをまたいでユーザーの趣味嗜好(しこう)にあった広告表示を可能にしてくれます。
しかし、ウェブサイトを離れた後も行動追跡されることに不安を覚えるユーザーは少なくなく、近年は個人情報保護の観点から、世界的にサードパーティクッキーの利用規制が進み、企業が自社ウェブサイトなどから取得するファーストパーティデータ(1st Party Data)の重要性が増しています。
企業としても、自社ウェブサイト以外から収集したデータ(サードパーティデータ)ではなく、自社ウェブサイトから収集したデータ(ファーストパーティデータ)を活用することで、より自社の顧客にカスタマイズしたサービス提供が可能になります。つまり、ソーシャルログインを利用し、訪問先ウェブサイトで会員登録するだけで、ユーザーは一人一人に合わせたマーケティングアプローチを受けることが可能になるというわけです。
ライフスタイルや興味関心に合った情報やクーポンを受け取れる
ソーシャルログインから連携したデータが活用されることで、一人一人がより最適なアプローチを受けられるということですが、具体的にどのようなサービスが利用者に提供されているのでしょうか?
養父:例えば、LINEを使ったソーシャルログインで会員登録をすると、顧客分析に役立つデータが企業側に連携され、ユーザー一人一人がそれぞれ興味関心のありそうな情報を受け取ることが可能になります。また、手順の中で、企業の公式LINEアカウントと友だちになったとします。そうすると、普段使っているLINEのメッセージで、その情報を受け取ることができるため、お得な情報を見逃すことも避けられます。
高柳:さらに、ソーシャルログインで取得した情報を、カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)に連携し、マーケティングをより高度化させることもできます。CDPとは、複数の部門やサービスごとで散在する顧客の属性データや行動データを、顧客単位で統合するプラットフォームのこと。例えば、実店舗とECサイトの購買履歴を別々のデータベースで管理している企業があるとします。そうした場合にCDPを使うことで、それぞれの購買履歴を統合し、より正確な顧客分析やユーザー一人一人に最適なマーケティングが行えるようになります。
ソーシャルログインで取得したデータと、企業が持っているデータを掛け合わせることで、ユーザーが欲しい情報をさらに精度高く予測できるようになります。先ほどのLINEの例で言えば、一斉送信のメッセージではなく、より自分に最適なメッセージを受け取ることができるため、有益な情報を得やすくなります。また、事業者にとっても、ターゲットを絞ってクーポンや広告を配信できるため、送信数を減らすことで、コスト削減や開封率の向上が期待できます。
インキュデータでは、このような「データを活用したマーケティング」を提供する企業を支援されているのですよね?
養父:インキュデータは、データ活用の戦略立案からCDPの導入、運用支援などをワンストップでサポートしています。例えば、ソーシャルログインを導入する場合、プライバシーポリシーの改訂が必要になりますが、そうした支援も同時に行えます。
これからは企業自身がデータを集め、効率的なマーケティング活動につなげる必要がありますが、本格的にデータ活用を進めていくには、専門家の知識、技術が欠かせません。インキュデータには、コンサルティング・マーケティング・テクノロジー各領域のプロフェッショナルが在籍していますので、総合的な支援が可能です。
ソーシャルログインの仕組みやメリットについて、理解が深まりましたか。ソーシャルログインを利用することで、会員登録やログインの手間を省けるほか、セキュリティ面では不正ログインなどのリスク軽減にもつながります。また、ライフスタイルや興味関心に合った情報やクーポンを受け取れるメリットもあります。
インキュデータは企業のデータ利活用を幅広く支援することを通じ、皆さまと企業との信頼関係構築に貢献していきます。
(掲載日:2023年2月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部
インキュデータ株式会社は、データ活用戦略の立案から分析、基盤構築・導入支援、広告・マーケティング施策企画・実施までをワンストップで提供しています。ご支援内容や事例などをご覧いただけます。