SNSボタン
記事分割(js記載用)

デジタルのおもてなしが街歩きを変える。人流データを活用して街の過ごし方を快適に

デジタルのおもてなしが街歩きを変える。人流データを活用して町の過ごし方を快適に

街を訪れた人や住んでいる人、働いている人や店舗を構えている人などに欲しい情報が必要なときに届く… そんな快適な街づくりを目指した実験が、神奈川県の海老名駅周辺で行われました。どんな実験が行われたのか、そしてなぜ実施したのかを担当者に聞きました。

目次

実験の舞台は東京と神奈川のベッドタウンとして注目を集めている海老名

神奈川県のほぼ中央に位置する海老名市。日本トップの集客数を誇る海老名サービスエリアでその名前を知っているという人も多いのではないでしょうか。鉄道では、小田急線・相鉄線・JR線・東急線が乗り入れ、海老名駅はその玄関口となっています。

駅周辺は、駅前の「ViNAWALK(ビナウォーク)」をはじめとした多くの商業施設、イベントホールや市立図書館などの公共施設、大型タワーマンションやオフィスビルなど、住む・働く・遊ぶ・ショッピングの全てが約1km圏内に網羅されています。今回はこのエリア全体を小さな街と見立て、実証実験が行われました。

上空から見た実証実験が行われているエリアの全景

上空から見た実証実験が行われているエリアの全景

果たして何が体験できるのか? 駅周辺施設をぶらぶらしながら散策開始

早速、実証実験の舞台、ViNAWALKにやってきました。

到着したのはViNAWALKの駐車場。館内に入るエレベーター前で、色鮮やかなデジタルサイネージを発見。LINE公式アカウントの案内があります。

果たして何が体験できるのか? 駅周辺施設をぶらぶらしながら散策開始

最新情報が届くということなので、お友だちになってみました。

果たして何が体験できるのか? 駅周辺施設をぶらぶらしながら散策開始

絶妙のタイミングでイベント情報が届いた

それにしてもこのViNAWALKはとても大きな商業施設。約150の専門店が集まっているそうです。気になるお店を見ながらぶらぶら散策してみます。

絶妙のタイミングでイベント情報が届いた

オープンテラスの途中に公園があったので、下りて少し休憩…。次はどこに行こうかなぁと考えながらベンチに座ってLINEを開いたら、さっき友だち登録した公式アカウントからイベントのお知らせが!

絶妙のタイミングでイベント情報が届いた

絶妙のタイミングでイベント情報が届いた

今日は近くでイベントが開催されているようです。なんだか楽しそう…。ランチのクーポン券も付いているので、早速行ってみることにします!

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

届いたお知らせに地図もついていたので、迷わずイベント会場に到着。ワークショップや雑貨やスイーツなどの販売、ライブも行われていて、家族連れなど老若男女でにぎわっていました。

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

ランチはクーポンを使って♡

これはデジタルのおもてなし? 迷わず到着&クーポン活用でイベントを満喫

なんだか絶妙のタイミングでスマホに近場のイベント情報やクーポンが通知され、楽しくおトクな体験ができました。さりげなくデジタルのおもてなしを受けたようです。

人流データをデジタル空間上に再現し、未来をシミュレーション

利用者目線としては、デジタルのおもてなしを受けてエリア内を楽しく歩き回るという体験でしたが、なぜ実際の街を使ってこのような実験を行っているのかを担当者に聞きました。

加藤 大造(かとう・たいぞう)

加藤 大造(かとう・たいぞう)
ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット AI戦略室 AIソリューションデザイン部 デザイン2課 課長

AIモデルおよびデジタルツインプラットフォーム開発全般を担当

今回はどのような実験が行われていたのでしょうか?

海老名駅の周辺エリアを対象に、人流データを集めて街の活性化にどうつなげるかを目的に行った実験で、国立大学法人東京大学(以下「東京大学」)、小田急電鉄株式会社(以下「小田急電鉄」)、株式会社グリッドとソフトバンクが一緒に実施しました。

実験では、海老名駅と周辺施設の人流、交通、購買、訪れる人の属性などのデータをデジタル空間上に反映することで、もう一つの海老名市周辺の街を再現し、どこに人が集まるのか、どんな施策をしたら周辺施設の売り上げが上がるのかなどをシミュレーションします。さらにシミュレーションの予測を基に、現実の世界で実際に海老名市に訪れた人や地域の住民、勤務者へクーポンなどの情報配信を行い、その効果を検証しました。

シミュレーションには、ソフトバンクと東京大学が産学連携で進めているBeyond AI 研究推進機構の研究テーマの一つとして研究開発を行っている「次世代AI都市シミュレーター」を使いました。

もう1つの世界で未来を予測。デジタルツインで街があなたを「おもてなし」?

実験の構想については、こちらで詳しく紹介しています。

もう1つの世界で未来を予測。デジタルツインで街があなたを「おもてなし」?

情報の有無や受け取り方… 条件を変えながら人流の変化を検証

なぜこのような実験を行っているのですか?

海老名駅周辺エリアでは、「職、住、商、学・遊」の生活シーンの充実による、暮らしやすさの向上や地域経済の活性化を推進しています。課題になっていたのは集客。そこで東京の竹芝エリアなどスマートシティづくりに注力しているソフトバンクが、この課題に取り組む小田急電鉄と一緒に、これまでの実績やノウハウを提供しながらにぎわいのある新しい街づくりに生かすべく協力することになりました。シミュレーターのほかにも、ソフトバンクがこれまで培ってきたサイネージ技術、グループ会社のAgoopと連携した、駅改札の人流データなども活用しています。

どうすればにぎわいを創出できるのか…。そこで人の流れを促すために実験的に取り入れたのがLINE活用でした。

情報の有無や受け取り方… 条件を変えながら人流の変化を検証

公園で休憩中にイベント情報やクーポンがLINEで届いたので、イベント会場に行きました。これは想定通りの動きということですね(笑)

そうですね(笑)実験期間中はクーポンを送る日/送らない日など条件をさまざま変えながら、人の流れにどのような変化があるのかなど、大量のデータを蓄積していきながら、予測と効果検証を繰り返しました。滞在時間が長ければ興味がある人を呼べたのではないか、天候はどうだったかなどの分析も行いました。

いろいろな効果測定をしていたのですね。そういえば、休憩したときにタイミング良くLINEにイベント情報が届いたのは偶然でしょうか?

偶然ではないですよ。公園など施設内に設置したビーコンを活用して、LINEと今回われわれが作ったシステムで連携してメッセージが送られるようにしていました。人の流れを予測しつつ、普段立ち寄らないようなところに行くことを促す実験の一つでもあります。

全ての人にとって快適なスマートシティの実現を目指す

シミュレーションや分析をした結果は何かに役立てていたのでしょうか?

人流予測や滞在時間、売上予測などの情報を、数十の店舗へ展開しました。例えば、先週の人出はどうだったかとか、今週末は天気が良いから先週に比べて増えそう、などです。店舗側はそれらの情報を参考に、混雑への対策やスタッフ・在庫の最適化などに活用。これからも情報提供してほしいという声をいただいています。

全ての人にとって快適なスマートシティの実現を目指す

今回の実験は終了しましたが、このデジタルツインの研究が進んでいくと、私たちはどのような恩恵が受けられるようになるのでしょうか?

例えば、混雑状況が見えるようになれば、近隣に住んでいる人や働いている人、来訪者は混雑を避けてお店を選べるようになります。当日の混雑予測が店舗に送られれば、在庫管理がしやすくなる…。そのような姿がイメージしやすいのではないでしょうか。

それがスマートシティということなのでしょうか?

具体的に「スマートシティとはこのような街」と言い切ることはまだできませんが、例えば住んでいる人たちに欲しい情報が自動で届くような…。今の研究の積み上げが、スマートシティを創っていくと考えています。海老名での実証実験については小田急電鉄と引き続き取り組んでいく予定です。他の地域での取り組みも予定しており、今後も地域に関わる全ての人にとって価値のあるスマートシティの実現を目指していきます。

ありがとうございました。

(掲載日:2023年4月18日)
文:ソフトバンクニュース編集部