着なくなった洋服や自分に合わなかったコスメなど、不用品を簡単に販売できるフリマアプリ。出品したはいいけれど「品物はいいのに、なかなか売れない…」なんてことありませんか? そんなときは商品写真の撮り方をアップデートするだけで、売れる確率がアップするかもしれません。
画面に表示されるたくさんの商品の中から注目してもらうには、ぐっと目を引く写真が重要。初心者でもスマホでワンランク上の商品写真を撮るテクニックを、物撮りのプロ・Risuさんに徹底レクチャーしてもらいます。ちょっとしたコツを抑えるだけで、誰でも物撮り名人になれますよ!
目次
- どっちが目を引く? フリマアプリの商品写真は「わかりやすさ」と「清潔感」
- 物撮りを研究し尽くしたRisuさん流、撮影術を実践!
- さらにプロクオリティに近づく!あると便利な撮影グッズ
- 物撮りスキルを磨けば、フリマアプリがもっと楽しくなる!
Risu(りす)さん
8年前にウェブショップを始めたきっかけで、カメラを独学で勉強。現在は、企業のHPやSNS写真を撮影する物撮り専門のフォトグラファー。SNSでは「15秒で学べるオシャレな写真術」をコンセプトに発信している。現在、フォト講座も準備中。
- Instagram:@risu__photo/
どっちが目を引く? フリマアプリの商品写真は「わかりやすさ」と「清潔感」
まずはフリマアプリでどれほど商品写真が重要なのか、直感で判断してもらいたいと思います。さて下の2つの写真のうち、あなたはどちらに引かれますか?
おそらくほとんどの方が、「右」の写真を選んだのではないでしょうか。左は編集部、右は今日の先生であるRisuさんが撮ったもの。どちらも撮影に使っているのはスマホです。どうしてこんなにも違いが出るのでしょう?
「フリマアプリの商品写真で大切なのは、商品の魅力がしっかり伝わることと、清潔感があること。いくらいい品物でも、まず写真をタップさせることができないと詳細を見てもらえません。実店舗のようにお客さんに話しかけることができないぶん、写真そのものに呼び込む力が求められるんです」
普段は小物などを使い、商品の世界観を作り込んで物撮りをすることが多いと言うRisuさん。
とてもすてきな写真ですが、ここまで作り込む写真はフリマアプリには向いていないそう。
「商品以外の小物が多いと写真がごちゃごちゃしてしまい、たくさんの商品写真が並ぶ画面で目立つことができません。フリマアプリはシンプルが一番! 背景も、基本は白一色が良いと思います。コツを抑えれば、スマホでもすてきな商品写真が撮れるようになりますよ」
それでは早速、レクチャーをお願いしましょう!
「物撮り(ブツ撮り)」って何のこと?
「物撮り(ブツ撮り)」とは、人や風景ではなく、小物や商品といった静物を撮影することを言います。もともとは広告・出版、映像業界などを中心に使われてきた言葉ですが、近年では個人がフリマアプリを活用したりオンラインショップを経営したりすることが広まったことにより、広く知られるようになってきました。
物撮りを研究し尽くしたRisuさん流、撮影術を実践!
ものごとを徹底的に追求するタイプだと言うRisuさん。物撮りに関しても、雑誌やSNSを見て「なぜこの写真は良く見えるのか?」を言語化しながら研究してきたと言います。
撮影前にチェック! 物撮りの基本ルール6カ条
- 晴れた日の10~14時の間が撮影に最適
- 撮影場所は窓際が鉄則。室内の電灯は消し、自然の光で!
- 窓から入る光が強い場合は、白いカーテンやトレーシングペーパーで遮る
- カメラのレンズは「2倍」、画面のサイズは「1:1」に設定を
- グリッド線を表示させて水平を意識
- 撮影前にはスマホカメラのレンズをきれいに拭く!
こんなに変わる…! アイテムごとの撮影ポイント
本日撮影するのは、「腕時計」「使いかけのリップ」「古着のカットソー」「陶器のエスプレッソカップ」「革のコインケース」の5アイテム。Risuさんにそれぞれポイントを教えてもらいながら、実際にスマホで撮影していきます。
アイテム①「腕時計」を撮る
撮影のポイント
- 金属は汚れが目立ちやすいのできちんと拭く
- 付属している箱があれば一緒に撮る
- 自立させるためにクッションや布を巻いたものを使う
- 時計の針は10:10が一番美しく見える
「ブランド物は箱や袋などの付属品がついているほうが売れやすいので、あれば一緒に撮影します。今回はクッションが付いていたのですが、ない場合はハンカチを丸めてバンドに通すと、自立させて撮ることができてきれいですよ。アクセサリーは金属部分に自分やスマホが映り込みやすいので注意しましょう」
アイテム②「使いかけのリップ」を撮る
撮影のポイント
- 大理石柄の背景シートを使うと高級感アップ
- ブランドロゴが写るように配置する
- 使った量がわかるようにリップ部分は伸ばせるだけ伸ばす
- カラーのあるコスメは実物の色に近づける
「コスメは大理石との相性が良く、高級感が出るのでオススメです。ブランド物の場合はそれがポイントになるので、ロゴをしっかりと見せてあげましょう。今回は中身を見せつつ、キャップのロゴが見えるように配置しました。またカラーがある場合は、写真と実物の色に近づくように画像を調整します。コスメは汚れやすいので、特に使用済みのものはきれいにしてから撮影します」
アイテム③「古着のカットソー」を撮る
撮影のポイント
- 撮る前に必ずアイロンをかける
- ハンガーに掛けて自然なフォルムに
- 生地感やデザインのポイントになる部分を撮る
- 白い壁があるとベスト
「服はシワがあると一気に汚くみえてしまうので、必ずアイロンがけを。もし白い壁があれば、床に置くよりもハンガーに掛けて撮る方が自然に見えますよ。特になで肩気味の形をしたハンガーを使うと、シルエットがよりきれいに見えておススメです。生地の素材も大事なので、カメラの角度を調整して生地感がわかる写真もおさえましょう。またこの服ならば胸元のギャザーなど、デザインのポイントになる部分も撮っておくと、品物の魅力が伝わりやすいですね」
アイテム④「陶器のエスプレッソカップ」を撮る
撮影のポイント
- 高さがあるものは望遠レンズで撮る
- バック紙を持ち上げてカーブさせる
- 写り込みに気をつける
「背の高いものを撮るときは、バック紙を持ち上げてカーブさせ、ブックエンドや壁に貼り付けて高さを出します。そうするとカップの背景がカバーされ、部屋が写って生活感が出ることがありません。カップのように高さがあるものは望遠レンズで撮ると形がゆがみにくいですよ。今回のカップは光沢があるので、部屋や自分が写り込まないようにも注意してくださいね。例えばカップと同じ黒い服を着るだけでも、写り込みが目立ちにくくなります」
アイテム⑤「革のコインケース」を撮る
撮影のポイント
- 平たいものは真上から撮る
- 品物の役割を瞬時にわかる小物使い
- 革の質感がわかるように肉眼で確認しながら撮る
「平たいものは真上から撮ることで全体像がわかりやすくなります。写真をパッと見てコインケースだとわかるように、実際のコインを添えてもいいですね。外貨を使うとスタイリッシュに見えますよ。中のポケットが見える写真、革の質感がわかる写真があるとさらに親切です」
最後は写真を編集してフィニッシュ!
満足な写真を撮影できたら、最後の仕上げとして画像を調整します。色味の調整はスマホに標準装備された編集機能で十分。
「暗い写真はタップされないので、白飛びしないように気をつけながら画像の明度を上げます。基本は『露出(明るさ)』をプラスに、暗い部分だけ明るくしたいときは『シャドウ』をプラスにします。おしゃれな加工フィルターもたくさんありますが、品物の色味が実物と違ってしまうので使わないこと。少し余白が多いなと思ったら、トリミングをして調整します」
写真加工アプリの中でも「シミ除去」機能があるものを使うと、写真に写り込んだゴミなどが一瞬で消えて、写真がよりきれいになります。
さらにプロクオリティに近づく! あると便利な撮影グッズ
これがあると格段に美しい写真が撮れる! という撮影グッズも教えてもらいました。
1.背景用の紙
商品の背景に使うなら、色は白がベスト。アクセサリーなどの小物ならA3サイズ、洋服やカバンなど少し大きなものも撮影したいなら90×90cm以上あれば安心です。コスメに合う大理石柄の背景シートを使うのも手です。
2.スマホ三脚
スマホを手で持って撮影するとシャッターを押すときにブレてしまいがちなので、三脚はあった方がベター。似た大きさの商品を撮るときは、スマホを固定して品物だけ差し変えていけばいいので便利です。三脚を使いづらい角度で撮る場合には、脇を締めて肘を台の上に付けてスマホを構えるとブレにくくなります。
3.レフ板
商品を撮影するときは、基本、自然の光を使います。レフ板があれば、影になってしまう部分にも柔らかく光を当てることができて商品をきれいに撮影できます。100円ショップで売っているサイン色紙を組み合わせて作ることもできます。
4.ねり消し
腕時計やリップなど、コロコロと転がるものを固定したりするときに大活躍するねり消し。何度でも使えるので一つゲットしておきましょう。
5.タオルや布巾
撮影前に品物を拭くのに使います。そのひと手間で商品の清潔感がぐっとアップ。特に金属や陶器、プラスチックなど、指紋やほこりが目立つものはしっかり拭くことが大事。またスマホカメラのレンズを拭くのにも使います。
6.マスキングテープ
バック紙をテーブルや壁、支えに固定するときに必須。できれば光が反射しない素材の無色のマスキングテープがおススメです。また、ねり消しで固定できないものをとめるときにも使えます。セロハンテープは剥がしにくい上に光が反射してしまうので避けましょう。
7.ブックエンドなど背のある支え
背の高い商品を撮影する際、背景用の紙を持ち上げて固定する支えとして使用します。ブックエンドがない場合は、壁に直接紙を固定してもOK。
撮影7つ道具は、Yahoo!ショッピングで!
有名ブランドの商品や人気家電、食料品、日用品からギフトまで幅広い商品が集まるYahoo!ショッピングなら、物撮りに使う撮影グッズも一気にそろえられます。「背景シート」「スマホ用三脚」などで検索してみてくださいね。
物撮りスキルを磨けば、フリマアプリがもっと楽しくなる!
すてきな商品写真を撮れるようになると、フリマアプリの売り上げも上がり、撮影そのものがもっと楽しくなってくるかもしれません。最後に、Risuさんが思う物撮りの面白さを聞いてみました。
「私が得意なのはスタイリング写真なのですが、小道具や光を駆使して、1枚の写真の中に世界観を作り込むことがすごく楽しいですね。商品やブランドの世界観を表現しながら、実際にその商品があるライフスタイルを想像できるような写真を撮りたいと思っています。皆さんも、物撮りをもっと楽しみたいと思ったら、好きな雑貨を並べて自分がワクワクする1シーンを作り上げてみてくださいね!」
撮影のコツがわかると、物撮りがちょっと楽しくなりそう! 皆さんもぜひ、Risuさん直伝のテクニックを駆使して、どんどんフリマアプリに活用してくださいね。
(掲載日:2023年6月15日)
写真:山崎悠次
文:井上麻子
編集:エクスライト