毎日暑いですね。エアコンをガンガンに効かせたいところだけど電気代が…。何かスーッと涼しくなる方法はないかな? かき氷や風鈴、すだれなどもいいですが、打ち水も涼を感じる日本の知恵のひとつです。最近は各地でも打ち水イベントが盛んで、ソフトバンクの本社がある東京ポートシティ竹芝でもイベントが行われたので参加してきました。
みんなで一斉に打ち水! 猛暑日の竹芝に涼しい風が吹く
数日前から猛暑になると予想されていた7月26日。10時過ぎに開催場所に到着すると、すでに35度近い気温で、日陰にいてもじんわり汗が出てくるほどです。まさに「打ち水日和」ですね!
今年で2回目となる東京ポートシティ竹芝敷地内でのイベントは、全国的に広まっている「打ち水大作戦」をもとに、「mecc(みなと環境にやさしい事業者会議)」が主催しています。meccに参加する近隣の事業者、ビル内勤務者、近隣住民、園児が集まりました。
打ち水を行う際の大事なルールは、水道水を直接利用しないこと。今回は会員事業者提供の期限切れの備蓄水を使用します。おのおの、水が入ったおけを持って一列に並び… 通路に向かって一斉にまきます!
水にぬれて通路一体の色が変わり、ひんやりした空気が感じられました。風も吹いていてとても気持ちいいです! 照りつける太陽のおかげですぐに路面が乾いてしまいましたが、打ち水の効果を実感できました。
真夏の気温が2度下がる? 江戸庶民の知恵を借りたみんなの大作戦
とても簡単にできる打ち水。先ほど、利用する水に注意点がありましたが、他にもお作法などはあるんでしょうか。打ち水大作戦家元の浅井重範さん(打ち水大作戦本部、特定非営利活動法人日本水フォーラム)に、打ち水に関するあれこれを聞いてきました。
打ち水は日本の知恵ということですが、もともとは何のために行われていたのですか?
古来、人々の生活や営みには、水が密接に関わってきました。打ち水は、「茶の湯」に端を発し、武士や商人、そして庶民へと広がっていったと考えられます。打ち水には、場を清める、土ぼこり・砂ぼこりを抑える、涼を呼び込むなど、さまざまな意味があったと考えられますが、いずれも、お客さまへのおもてなしに心を砕く、「茶の湯」の精神につながっているように感じられるのは大変興味深いと思います。
なぜ打ち水をすると涼しくなるのでしょうか。
水は、温まりにくい物質です。そして、水から気体(水蒸気)に変わるには、非常に多くの熱量が必要となります。日中は、地表面が太陽エネルギーにより温められ、これにより気温も上昇していきますが、打ち水はこの地表面の熱を吸収し、気化する瞬間に特に多くの熱を奪うので、地表面の温度が下がります。また、これにより気圧の変化も生じ、そよ風が発生します。
さらに、地表面だけでなく、水に触れている手肌などからも、熱が奪われていきますので、これらの相乗効果が、涼しさを感じる要因と考えられます。
実際にはどのくらい効果があるのですか?
研究者による数値計算の結果では、正午に東京都23区内の約265平方キロメートル(全体面積の約40%)に散水を行うことによって、最大で2~2.5度程度、気温が低下する、と予測されています。
実際にこれ程の範囲での散水を人為的に行うのは難しいのですが、2004年に行われた墨田区東向島(1~3丁目)での実験結果として、同地域内のわずか約3%の面積への散水でも平均値で約0.5℃の気温低下効果が見られた、と報告されています。また、小学校の校庭での散水により、地面の温度約50℃が約39℃に低下、これにより、地点にいた人の表面温度が6℃以上低下したそうです。地面からの熱放射(照り返し)を抑える効果も大きいと思います。
さらに限定的なエリアでの実験結果となりますが、1~2℃程度気温低下が測定されることが多いようです。また、気温が低下しないまでも、気温上昇の抑制効果が見られた、という報告もなされています。
家でも打ち水をやってみたいです! 注意点はありますか?
打ち水の準備や方法は、とてもシンプルです。ぜひご家庭でも打ち水を実践してみてください。
初めての方は、夕暮れの時間帯に打ち水してみるのがおススメです。この時間帯は、通常、気温が少しずつ下がり始めており、また、風がまだやや強く吹いている傾向があります。そこに打ち水による温度低減効果とそよ風が加わり、涼しさを感じやすいのではないかと思います。雨の日は別として、どんな時間帯でも打ち水の効果や影響は生じるのですが、ご自身の生活サイクルとの兼ね合いなども考慮しつつ、いろいろと試してみて、楽しみながら自分なりの「打ち水スタイル」を確立していっていただけたら良いなと思います。
ただ、近年は、夏季に異常な高温となることも増えてきました。熱中症対策として、日中の気温の高い時間帯を避ける、水分・塩分や休憩をこまめにとりながら行うなど、体調には十分注意して、絶対に無理はしないでいただきたいと思います。
打ち水の準備と方法
①水と容器を用意する
水道水をそのまま使うのではなく、一度使った水や雨水などをためておき、有効利用しましょう。家庭では、お風呂の残り湯が一番手軽でしょうか。他にも、シャワーで使ったお湯や温度調節に使った水、台所などで仕上げのすすぎに使った水、空き缶やペットボトルを洗った水、米のとぎ汁、子ども用プールの残り水など、まだ使える「一度使った水」が意外とあります。ただし、洗剤成分や汚濁成分が多く含まれているものは避けてください。
繰り返し使えるような使い方、大切な水の賢い使い方につながっていくとさらに良いと思います。
②水をまく
手を使う、バケツや洗面器、柄杓(ひしゃく)、ペットボトル、じょうろなど、やり方は自由です。家の周りや庭、屋上、ベランダ、壁など、お住まいの状況に合わせて、水をまけそうな場所を探してみましょう(集合住宅の場合は管理規約やルールに沿って行ってください)。場所が決まったら、表面全体がぬれる程度に広範囲にまくのがおススメです。乾いたら、またまくとなお良しです。
ただし、車通りの多い場所やカーブのある道、交差点、路面標示の上、マンホールの上にまくのはNGです。
③変化を感じる
五感をフルに使って、打ち水した後の変化を感じてみましょう。気温などを測定してみても良いと思います。涼しさや楽しさを感じられたら毎日続けてみてください! SNSなどでみんなと共有しましょう。
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もっと詳しく知りたい方は、打ち水大作戦ウェブサイトで「“令和版”打ち水の作法」や「打ち水問答」のページもご参照ください。
浅井さん 「8月1日は、『打ち水の日』。打ち水をした後は、なぜ打ち水で気温が下がるのか、打った水はどこへ行くのか、そして、あなたが打ち水した水はどこからどうやって来たのか、ということにぜひ思いをはせていただきたいと思います。地球温暖化そして気候変動。その悪影響のほとんどは、豪雨や渇水などの形で、水を通じて現れます。水のことをもっと知ることで、私たちは、今置かれている現状、そして未来に対してもっと敏感になれるのではないでしょうか。
たかが打ち水ですが、みんなで取り組めば、つかの間でも気温すら変えられる。良い変化への行動の『呼び水』として、家庭や職場、店舗などでの日常の打ち水に、ぜひチャレンジしてみてください」
(掲載日:2023年7月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部
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