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クリームソーダ、レコード、使い切りカメラ。Z世代の若者がレトロなアイテムに引かれている心理とは

クリームソーダ、レコード、インスタントカメラ。Z世代の若者がレトロなアイテムに惹かれる心理とは

近年、若者の間でますます勢いを増している「レトロブーム」。喫茶店のクリームソーダやレコードから、グルメ、歌謡曲、ファッションに至るまで、若者たちが生まれる前にはやったコンテンツが彼らの心をつかんでいます。なぜ、若者たちはレトロコンテンツに引かれているのでしょうか。Z世代に特化した若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」の所長を務める長田麻衣さんに、レトロ流行のきっかけや若者たちの心理を伺いました。

長田 麻衣(おさだ・まい)さん

教えてくれた人

SHIBUYA109 lab. 所長

長田 麻衣(おさだ・まい)さん

大学卒業後、総合マーケティング会社にて化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発やブランディング、PRサポートを経て、SHIBUYA109のマーケティング担当に。2018年5月、Z世代に特化したマーケティングチーム「SHIBUYA109 lab.」を設立。所長として、毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する。

大正、昭和、平成。時代の垣根なくレトロを楽しむ若者たち

大正、昭和、平成。時代の垣根なくレトロを楽しむ若者たち

冷めやらぬレトロブーム。大正、昭和、平成にはやった懐かしのコンテンツが、今の若者たちの心をつかんでいます。まずは、このブームの発端や現在地について長田さんに聞きました。

そもそも、若者たちの間でレトロブームはどのようにして始まったのでしょうか?

長田さん 「最初のきっかけとなったのは昭和レトロで、喫茶店のクリームソーダが火付け役でした。昭和の香りが漂う純喫茶のようなクラシカルな場所でクリームソーダを飲み、その様子をSNSで投稿するのが2018年頃にはやったんです。今でも若者たちにとってレトロブームの中心となるのは、やはり昭和レトロだと思います。

その後すぐに、大正レトロや平成レトロまでブームが広がっていきました。特に、2019年にはギャル雑誌『egg』(大洋図書刊)の復刊がきっかけとなり、平成レトロに目が向けられました。今では2000年前後のトレンドを取り入れたY2Kファッションや、Z世代が子どもの頃に憧れていた『メゾ ピアノ』などのティーンズブランドまで人気が広がり、最近では2000年代のパンクファッションも注目されていますね。例えば、こんなものがあります」

大正レトロ

大正ロマン

レトロな着物、女学生のようなはかま姿、浅草など

昭和レトロ

昭和レトロ

喫茶店のナポリタンやクリームソーダ、アデリアのグラス、バブル期のファッション、70~80年代のシティ・ポップ、レコードなど

平成レトロ

平成レトロ

画像提供:SHIBUYA109 lab.

使い切りカメラ、Y2Kファッション、2000年代初頭のティーンズブランドなど

昭和レトロから始まり、かなり早い段階で大正ロマン、平成レトロまで広がっていったんですね。

長田さん 「実際には、若者たちはレトロブームのカテゴリを、年代や定義で明確に区別しているわけではありません。クリームソーダやレコードといったモノごとに何となく時代を識別し、楽しんでいるように感じます。例えば大正ロマンであれば着物を着て浅草で遊んだり、平成レトロなら使い切りカメラで写真を撮ったりなど、 “その時代っぽい” コンテンツを『◯◯レトロ』として楽しんでいるんです。

現在、レトロブームが始まってからもう5年は経っているので、もはや一過性のものではなく、ひとつのカルチャーになりつつあると感じますね。TikTokやInstagramなどのSNSで投稿されるコンテンツは流行のサイクルが早くどんどん新しいものが出てくる一方、レトロという世界観そのもののブームは変わらずあり続けていて、自分の好きなものを深く追求する人も多いと感じています」

レトロブームの背景は、パワフルな時代や自分のスタイルを貫く姿への憧れ

レトロブームの背景は、パワフルな時代や自分のスタイルを貫く姿への憧れ

なぜレトロコンテンツはここまでZ世代の心を魅了するのでしょうか?

長田さん 「レトロコンテンツの持つ非日常感に引かれているのかもしれませんね。現代の若者はSNSでの映えを意識して、非日常の体験を求める傾向があります。そんな中、昔のカルチャーは若者にとって目新しく、面白みを感じられるのでしょう。例えば、ノイズ混じりのラジオや画質の荒いデジカメなど、その不完全さや味わいに魅力を感じているのだと思います。

また、物心ついてからずっと社会の中心がコト消費だったZ世代にとって、モノ消費が新鮮という側面もあるかもしれません。平成生まれの若者たちが幼い頃、ビデオやカセットなどのモノに触れてきた経験から、モノそのものに懐かしさを覚えるのではないでしょうか。再開発が行われて街が画一的に整備されたり、デジタルで完結できることが増えたりした現代では、物質的なレトロコンテンツ自体に個性があり、心引かれるのだと思います」

レトロブームの背景は、パワフルな時代や自分のスタイルを貫く姿への憧れ

バブル期や平成初期のファッションブームも同様でしょうか?

長田さん 「ファッションには、マインドをインストールする意味合いもありそうです。ギャルから感じられる『意思の強さ』や『自由奔放』などのマインドに憧れを持っている子たちが、ファッションをまねすることでその精神を疑似体験したいという思いがあるように感じます。昭和のアイドルや、バブル期のファッションをまねるのも同じ感覚でしょう。特にバブル期は、社会全体が右肩上がりのエネルギッシュな時代で、当時のファッションから元気を得たいと思う子たちも多そうです。

Z世代の子たちに話を聞くと、良くも悪くもSNS上で人からの目を気にしているんですよね。SNSは誰とでもつながれる一方で、炎上や批判などのリスクもあります。SNSが生活の一部になっている若者にとって、自分の意見をはっきりと表明する行為には、周りの人に否定されるかもしれない… という不安がつきもの。だから、自分が憧れる時代のカルチャーを真似てSNSで発信することは、周囲に角を立てずに間接的に自分の好きなものや考えを共有できる手段のひとつなのかもしれません」

レトロブームとSNSの関係性はとても深いんですね。

長田さん 「レトロコンテンツを体験してSNSに投稿する、という一連の流れができていますね。SNSへ投稿する一番の目的は、コミュニケーション。自分の好きなものを共有したいという気持ちや、共通の趣味を持つ人とつながりたいという思いが根底にあります。Z世代にとってはSNSとリアルのコミュニケーションに差異はありません。InstagramのストーリーをきっかけにDMでのコミュニケーションが始まることもあるようです。コミュニケーションとしての要素も含まれることから、レトロブームは長く続いているのだと思います」

レトロブームの背景は、パワフルな時代や自分のスタイルを貫く姿への憧れ

体験コンテンツや平成女児カルチャー。これからも続くレトロブーム

体験コンテンツやリアルレトロ。これからも続くレトロブーム

今もっとも勢いがあるのが平成レトロとのことですが、最先端のトレンドも教えてください。

長田さん 「今はカプセルトイを集める『ガチャ活』が人気ですね! 2023年のトレンド大賞の1位にも輝いています。SHIBUYA109渋谷店内にもカプセルトイ売り場があり、そのスペースはどんどん広がっています。

最近はアクリル製のホテルキーや銭湯の鍵を模したキーホルダーなど、昔懐かしいアイテムが多くあります。この前、弊社の若手社員がコイル状のゴムがついた『コインロッカーの鍵』風の時計を身に着けていて驚きましたね。かくいう私も、平成ギャルブランドのカプセルトイを見つけて、思わず回してしまいました(笑)」

カプセルトイは気軽に試しやすいところが魅力なのでしょうね。

長田さん 「そうですね。他にも、20代の間で盛り上がっているコンテンツとして『平成女児カルチャー』があります。ティーンズブランドなどが復活し、幼少期を懐かしんでアイテムを購入する人が増えました。これらのブランドはZ世代が小さい頃に体験したことがあり、懐かしい実感があるレトロカルチャーと言えそうです。

2000年代にはやったトレーディングカードゲームのコンセプトカフェも大盛況でした。キャラクターのファッションをまねて、カフェに訪れる人もいたとか。今後はその世界観により入り込める、没入感のある体験コンテンツが人気になりそうです」

Z世代にとっては、コト消費からモノ消費、そしてまたコト消費に回帰してきているということですね。

長田さん 「今年のトレンドのひとつに『レコードカフェ』が入っていて、最近店舗が増えています。自分でレコードを選んで、プレーヤーに盤をセットし、曲をかけるという一連の流れを体験できるカフェです。今は何でもデジタルで完結できるとても便利な時代だからこそ、あえて手間や時間をかけて何かをすることにレトロさを感じるのでしょうね。

レトロブームをよく観察してみると、今のZ世代の心理や考えが少しつかめるような気がします。今年は新たにどんなトレンドが生まれるか、私も今から楽しみです!」

(掲載日:2024年2月21日)
写真:大崎あゆみ
文:大瀧亜友美
編集:エクスライト

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