外に出かけようとすると、空から何かが降ってきて屋根を打ちつける音が…。地面を確認してみると、降ってきたのは雹(ひょう)のようです。もしあなたが同じような状況に置かれたら、一体どうすればいいのでしょうか?
正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。
今回は、雹によってもたらされる被害や、降雹時にとるべき行動、雹に備えた事前の対策など、専門家の意見を交えながらご紹介。
この災害テーマのポイント
- 雹は人や建物、車、農作物などに被害をもたらす
- 雹が降ってきたら、一刻も早く建物や身を守れる場所へ避難
- 頭を守れるものを持ち歩いて雹から身を守ろう
この災害テーマのポイント
- 雹は人や建物、車、農作物などに被害をもたらす
- 雹が降ってきたら、一刻も早く建物や身を守れる場所へ避難
- 頭を守れるものを持ち歩いて雹から身を守ろう
目次
雹は5mm以上の氷の塊! 人体や建物への被害に注意
雹とは直径5mm以上の氷の塊が、空から落下してくる現象です。発達した積乱雲の中では激しい上昇気流の影響で氷の粒が発生し、ある程度の大きさに成長すると地上へ落下してきます。雹と霰(あられ)の違いはサイズの大きさで、直径5mm未満の氷の塊は霰に分類されます。混同されがちな霙(みぞれ)は雪と雨が交じって降る現象です。
雹はゴルフボール大(約5cm)になると落下速度が時速100kmを超えると言われており、以下のような被害をもたらす可能性があります。
雹によってもたらされる被害
- 人体への被害
- 車の表面にできる傷やへこみ
- 農作物へのダメージ(作物に傷がつく、葉に穴が開くなど)
- 太陽光発電パネルの破損
- 天窓のガラスが割れる
上記の被害の他、農業施設へのダメージも深刻です。サイズの大きな雹により、ビニールハウスやガラスハウスに穴が空くなどの被害も報告されています。
過去に発生した雹被害事例
1917年6月29日には、埼玉県で直径29.5cm、重量約3,400gのかぼちゃ大の雹が降った記録があります。当時の気象要覧(中央気象台)の記録では、屋根や雨戸を突き破るなどの被害が確認されています。2023年にも都内や群馬県などで雹被害が観測されているため、注意が必要です。
雹が降ってきたら一刻も早く建物内へ! 窓には近寄らないこと
雹は急激に発達した積乱雲の中で発生するため、予測が難しいとされ、雹の注意報はありません。ただし、発達した積乱雲では雷や竜巻などが起きる可能性が高いことから、雷注意報や竜巻注意報は雹の発生を予測する情報として役に立ちます。
また、成長した積乱雲が近づくと冷たい風を感じたり、太陽が遮られることで突然辺りが暗くなったりなどの前兆があります。雹が発生しないにせよ、大雨や落雷などの危険性があるため、外出時に上記のような前兆が現れたら、天気の変化に注意しましょう。
降雹被害を防ぐための行動
- 外出時の場合
一刻も早く、近くにある建物の中や屋根のある場所に避難しましょう。大粒の雹は傘を突き破る危険性があります。周りに建物がない場合は鞄や衣服などで頭と顔を守りましょう。木の下や塀の脇なども雹から身を守れる場所としておすすめですが、降雹に落雷が伴う場合、高い木の周辺は雷による被害の危険性もあるため注意しましょう。
- 屋内にいる場合
雹が当たって窓ガラスが破損する可能性があるため、窓付近から離れてください。余裕があれば網戸やカーテンを閉めると、万が一雹が当たった際に窓ガラスが飛散するリスクを減らせます。
ビルなどの窓ガラスは網入り板ガラスが使われているケースが多いことから、破片が飛散しにくいですが、十分に離れておくと安心です。 - 車に乗っている場合
慌てて外に飛び出さず、屋内駐車場などに避難しましょう。屋内駐車場が近くにない場合は、路肩に停車します。大粒の雹が降っている中、無理に運転を続けると、車の速度も相まって雹がぶつかったときの衝撃が大きくなります。視界の悪さから、衝突事故などの二次被害の危険性が高まるため注意しましょう。
カバンや上着など頭を守れるものを常備しよう
雹は上空と地上の温度差があり、積乱雲が発達しやすい初夏(5月〜7月)に多く発生する傾向があります。実際に2005年までの10年間で、降雹が多い月は5月の約115件、次いで7月の約70件でした。
雹の発生を事前に予想することは難しいですが、天気予報で「大気の状態が不安定」というキーワードが出た場合は注意しましょう。積乱雲が発達しやすい気候のため、降雹の確率が高まります。同時に雷注意報が発令されている場合はさらに警戒が必要です。
雹が発生しやすい時期に持ち歩いておくと安心なもの
- カバンや上着、帽子など
- 毛布、車用ボディーカバー
どうしても外出が必要な場合、雹から頭を守れるカバンや上着、帽子を持っておくと安心です。衝撃を吸収する防護キャップなども役立ちます。また、車に毛布などを積んでおくと、フロントガラスを覆って雹の被害を最小限に抑えることができます。ただし雹が降る中、車外に出る行為は危険を伴うので、何より人命を優先することを心掛けてください。その他、道端にある段ボールなど、いざという時は周りにあるものを上手く使う意識を持ちましょう。
雹への備え・雹が降ったときに役立つサービス・ウェブサイト
- 気象庁「ナウキャスト」
1時間先までの降水分布、雷の活動度などを確認できるウェブサイト。雷の発生時には降雹の可能性があるため、天気の不安定な日にチェックし、降雹に備えましょう。
- Yahoo!天気・災害(雨雲レーダー)
天気に関するあらゆる情報・災害情報を収集できる総合サイト。「雨雲レーダー」は、雨雲の様子をリアルタイムにチェックでき、降雹の予測に役立ちます。
監修者プロフィール
防災講師・防災コンサルタント 高橋洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
(掲載日:2024年3月18日)
監修者:高橋洋
文:大瀧亜友美
編集:エクスライト
イラスト:高山千草