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社会実装につながる学びのカタチを。神山まるごと高専を支援するソフトバンクの思い

社会実装につながる学びのカタチを。神山まるごと高専を支援するソフトバンクの思い

ソフトバンクでは、神山まるごと高専のスカラーシップパートナーとして、ソフトバンク奨学生に対して、新しい学びとその環境を提供しています。なぜソフトバンクはその学びを提供することに決めたのか、ソフトバンクと神山まるごと高専の関係についてその奨学生である私が、取材しました。

松井 ひな子(まつい・ひなこ)さん

神山まるごと高専 ソフトバンク奨学生

松井 ひな子(まつい・ひなこ)さん

2007年生まれ、北海道出身。2023年に神山まるごと高専に入学。
中学校時代から、放課後にコミュニティスペースに通い、教育に関するイベントを企画・主催。現在はアルバイトでためたお金で岩手、山形、東京をめぐる一人旅をするなど、興味のあることに積極的に取り組んでいる。

高専に入学してからSNSを始め、インプレッションやエンゲージメントが高くなるのはどんな投稿なのかを分析するのが楽しくなり、広報に興味を持つ。ソフトバンクの広報はどんなことをしているのかを知りたくなったことから、奨学生の個人活動としてソフトバンクニュースの編集などを学び、今回、ソフトバンクと神山まるごと高専の関係を伝える記事を書くことに。

社会に開かれた学校「神山まるごと高専」。その特長はスカラーシップ制度

社会に開かれた学校「神山まるごと高専」。その特長はスカラーシップ制度

神山まるごと高専は、2023年4月2日に徳島県神山町に開校した1学年40人の5年間全寮制の学校です。学科はデザイン・エンジニアリング学科のみで、学生たちはテクノロジーとデザイン、アントレプレナーシップ(起業家精神)を学んでいます。学校の授業だけでなく、日常生活を過ごす中でのさまざまな学びを大切にしています。

特徴的なのはカリキュラムだけではなく、経済状況を問わず目指せる学校を目標とするその仕組みにあります。学費の問題で入学をあきらめるようなことがあってはならないとの考えから、奨学金基金と長期的な寄付により学費の無償化を実現する「スカラーシップ(奨学生)パートナー」という仕組みが作られました。

この制度は、企業からの拠出金、そして長期契約に基づく寄付などにより、奨学金の安定的な給付を可能にした日本初のスキームです。現在は日本の名だたる企業11社がスカラーシップパートナーとして学校づくりに参画しており、ソフトバンク株式会社も2022年からスカラーシップパートナーになっています。

わたしが神山まるごと高専を選んだ理由

初めて神山まるごと高専のことを知ったとき、すごくワクワクしたのを覚えています。世の中には大学進学のために勉強をする学校が多い中、自分のやりたいことを実現するための学びを得ながら、その学びを実践し、挑戦を応援してくれるような、神山まるごと高専のあり方がとても理想的だと。その思いを両親にすぐに伝えました。「わたし、この学校受けたい」と。

高専に通うには、1年間で200万円もの学費が必要になります。両親に伝えたときにはスカラーシップ制度によって学費が無償化されるかもという話も出ていたので、両親もすぐに応援してくれました。

わたしが神山まるごと高専を選んだ理由

入学してからは、起業家が来校して特別授業をしてくれるプログラム「Wednesday Night」で神山に来てくれる起業家の皆さんの経験を直接聞いたり、授業に来てくださるゲストなどとお話したり、周りの友だちにも刺激を受けながら、地元の高校に進学していたらできなかったようなたくさんの貴重な体験ができています。

夏休みには、任意参加の海外研修でインドに行ってきました。移動するバスに乗りながら、右手側は高層ビルが建っている一方で、左手側にはダンボールで作られた家や、物乞いをしている子どもたちもいて、富裕層と貧困層が同時に存在している世界を目の当たりにしました。ネットで調べればたくさん情報は出てきますが、実際に現地に行って自分の目で見た世界は、想像していたよりもはるかにカオスでした。

起業家が来校し、特別授業をするプログラム “Wednesday nightの風景”

起業家が来校し、特別授業をするプログラム
“Wednesday Night”の風景

インド研修の様子

インド研修の様子

関係者に聞きました。なぜソフトバンクが神山まるごと高専のスカラーシップパートナーに?

ソフトバンクのスカラーシップパートナー参画をリードした源田さん、奨学生の学びをサポートしてくださっている須藤さん、神山まるごと高専の立ち上げに尽力された長谷川さん、高専の広報担当をしている小池さんにお時間をいただき、スカラーシップパートナーとしての取り組みが始まってからの1年を振り返っての感想をインタビューしました。

長谷川 嵩(はせがわ・たか)さん

元 神山まるごと高専 Relationship Manager

長谷川 嵩(はせがわ・たかし)さん

2015年にSansan株式会社入社。 累計140億円以上の資金調達・50社以上のパートナー企業連携を担当。開校を見届けた後、高専PJを卒業。

小池 亮介(こいけ・りょうすけ)さん

神山まるごと高専 広報

小池 亮介(こいけ・りょうすけ)さん

2017年にSansan株式会社に入社し、広報・PRに従事。2022年より同社の社長室立ち上げに向き合う。2019年の構想発表記者会見より神山まるごと高専の広報として活動。

源田 泰之(げんだ・やすゆき)

ソフトバンク株式会社 執行役員 コーポレート統括 人事本部 本部長 兼 総務本部 本部長 兼 Well-being 推進室 室長

源田 泰之(げんだ・やすゆき)

1998年入社。営業を経験後、2008年より人事領域を担当。2019年に日本の人事部「HRアワード2019」企業人事部門 個人の部最優秀賞 受賞。

須藤 三佳(すとう・みか)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 人事総務PMO室 室長代行

須藤 三佳(すとう・みか)

2008年入社。社員や販売クルー向けの研修企画・実施。ソフトバンクアカデミアおよび、経営人材育成プログラムの企画、運営を担当。

神山まるごと高専にとってソフトバンクは “仲間” のような存在

松井 「本日はよろしくお願いします! 早速ですが、神山まるごと高専はどのような経緯でソフトバンクにスカラーシップパートナーのお願いをすることになったのでしょうか?」

長谷川 「ソフトバンクさんのスカラーシップパートナー参画までのストーリーは、学校づくりの過程の中でも大変思い出深い出来事の1つです。 神山まるごと高専の開校資金が集まってから、理事長の寺田が “学費の無償化” を次の目標として掲げました。学費の無償化は1社当たり10億円の支援を10社からしてもらうことを目標としていたため、そもそもお話を持っていくことができる企業さまは限られています。2021年8月から各社にアタックしていましたが、学校づくりをご一緒したい企業の1つとして、ソフトバンクさんはずっとお声がけするタイミングを見計らっていた企業でした」

源田 「日本のベーシックな教育システムはよくできているけれど、日本全体が経済成長を果たせていない原因の一つに、詰め込み型教育や、学校で行った学びと社会がつながっていない部分にあるのではないかと言われています。話を聞いたときに、高専という仕組みを使って、さらにデザインなど新たな要素を盛り込んだ教育の方法を打ち出してきたことがすばらしいと思いましたね。
ただ、ソフトバンクがパートナー企業として参画することに対して、実現はそう簡単ではありませんでした。それでもなんとか実現させたいという思いで、企業イメージの向上や事業への効果など、ソフトバンクの会社としてのメリットを模索し、社内で “YES” をもらえるように日々動いていた記憶があります。未来に向けて良いことをしている人たちがいて、スキームも出来上がっていて、その熱い思いにただただ共感していましたし、(パートナー企業としての参画の)実現に向けて100%の力を出し切るのは、当然のことだと思いました」

神山まるごと高専にとってソフトバンクは “仲間” のような存在

長谷川 「どうすれば一緒にやっていけるか? ソフトバンクさん側から次々にアイデアを考えて提案してくださったときは本当に感動しました。単なる “学校” と支援してくださる “パートナー” という関係ではなく、一緒にこのプロジェクトをやっていく、“仲間” のような存在です。そのやり取りをしているときも、スピード感、逆算の思考、1%の可能性を信じる執念など、ソフトバンク魂には圧倒されました。社員一人一人に強いリーダーシップがある会社で、これがソフトバンクさんの強みなのだろうなと思いましたね。個人的にも、一連の流れを通じてソフトバンクさんの大ファンになりました」

松井 「そんな背景があったんですね! ソフトバンクさんのことを説明してもらったとき、バリューに対するアクションが明確でかっこいい会社だなと思っていましたが、最初のタイミングからそんなやり取りが起こっていたなんて、かっこ良すぎます!」

神山まるごと高専にとってソフトバンクは “仲間” のような存在

奨学生の私たちに本気で向き合い、たくさんの体験や機会を提供してくれた1年間

松井 「このような経緯があって、神山まるごと高専が2023年4月に開校しまして、ソフトバンクさんとのスカラーシップパートナー活動では、インターンや竹芝本社への訪問、社員の皆さんとのディスカッションなど、さまざまな経験をさせてもらいました」

須藤 「スカラーシップパートナー活動の1年目の目標が企業理解だったので、前期は “ソフトバンクという企業を知る” ことを目的にプログラムを組みました。ソフトバンクはスマホなど移動体通信サービスの会社というイメージが強いですが、他にもいろいろな事業を展開したり、グループ会社のサービスを提供していることを理解してもらうために、グループ会社の説明会や竹芝本社の見学を通じて、社員との交流の機会を作りました。後半は奨学生一人一人の興味の方向性に合わせて、それぞれサポートしてきました」

松井 「私たちは、8月下旬にソフトバンク子会社のBOLDLY株式会社でインターンをしました。4日間のプログラムで、BOLDLYが自動運転バス事業を行っている茨城県境町へ実際に行き、BOLDLYのビジネスを学びながら、4日目には、境町の町長に “自動運転を体験できる施設のコンセプト、体験内容、デザイン/UXを提案する” ことをテーマとした プレゼンテーションをするという内容でした。
始めはソフトバンクのことをもっと知りたい! ということで、須藤さんたちにいくつかのグループ会社の説明会を開いてもらったのですが、そのときにBOLDLYの佐治社長が『単に学んで終わりではなく、実際に体験しよう』とインターンを提案してくださったのがきっかけです。インターン中も、社長が怒ってくださったときがあって、私たちに『本気で向き合ってくれているんだ』と感じました」

源田 「何を怒られたの?」

松井 「3日目の夜に、町長への提案内容のプロトタイプとプレゼンテーション資料を社長にお見せしたときに、それを見た社長から『それ、必要ある?』との指摘がありました。おそらく町長の立場で見たときに必要なのか、『自分たちのこと』と思って本気で考えられていないと感じられたんだと思います。『自分たちで必要か分からないのであれば作らないほうがいい』と、真剣にフィードバックを伝えてくれたことが印象に残っています」

奨学生の私たちに本気で向き合い、たくさんの体験や機会を提供してくれた1年間

須藤 「インターン中は、夜も会議をして町長へのプレゼンテーションの内容を考えていましたよね。そしてその社長から怒られたプレゼンテーション前夜は、まとまっていなくてもプレゼンテーションは明日だからといって妥協したアウトプットでいいのか、『妥協してアウトプットする意味はあるの?』と自分たちのオリジナリティにこだわるべきか、葛藤しながら、お互いの心のうちをぶつけ合う姿をずっと見守っていました。 みんなの成長のターニングポイントになったなと思います」

松井 「『15、16歳の考えだからしょうがない』と言って片付けるのではなく、 本気で向き合ってくれていることがすごく伝わってきました。私たちも本気で向き合わないといけないと、エネルギーをいただいたインターン期間でした。
他にも、9月中旬に竹芝本社で行われた『ファミリーデイ』にボランティアスタッフとして参加しました。ファミリーデイはソフトバンク社員とその家族を竹芝本社に招待し、ソフトバンクがどんなことをやっているのか知ってもらうイベントで、その中の一つのコンテンツ『ChatGPT教室』に先生役として参加しました。私の他にもう1人参加したのですが、担当してくれた社員さんに『その子がやる授業から、良いところを3つと、次絶対にやることを1つ決めてやってみよう』と教えていただいたことが印象的でした。振り返りやそれを生かす方法を学びました」

奨学生の私たちに本気で向き合い、たくさんの体験や機会を提供してくれた1年間

小池 「社員の方と対面で会話できたからこそ、会社の良さを肌で感じて帰って来てくれたのではないかと思っています。先ほど話にあったBOLDLYのインターンでは、4日間で多くの経験をできる機会を用意していただき、学生たちにとってステキな体験になったと思います」

須藤 「1年間、本当にいろんなことをやってきたけれど、ソフトバンクへの印象は変わりましたか?」

松井 「変わりました。最初は、大企業だからそんなに動いてくれないんじゃないかと思っていたのですが、私たちの『やりたい!』という言葉一つに、想像以上の体験や機会を提供してくれる企業だと思っています。チャットでの連絡やミーティング、提供してもらった一つ一つの体験や機会を見ても、私たちに本気で向き合ってくれているんだ、と感じています」

長谷川 「たったの1年ですけど、以前に比べて学生たちの表情が大人になったなぁと思います。本当にいい経験ができたんでしょうね」

神山まるごと高専生の「やりたい!」を応援していきたい

松井 「私は今までテクノロジーにあまり興味がなかったのですが、ソフトバンクの本社を訪問した際にEBC(Executive Briefing Center)を見学し、それを機にテクノロジーに興味が湧きました。実は知る機会があったら興味が湧くことが多くあるんだということに気付かされました。これからは食わず嫌いをしないで、もっと多くの体験をして、知って、興味の幅を広げたり、興味を掘り下げたり、もっといろんなことに熱中したいなと思います」

最新ソリューションの体験プログラムを実施する施設EBC(Executive Briefing Center)

最新ソリューションの体験プログラムを実施する施設EBC(Executive Briefing Center)

松井 「ソフトバンクとしては、今後、高専と一緒にどんなことをしていきたいですか?」

須藤 「開校当初は『どんな学校ができるんだろう?』と世間の注目度が高かったと思います。次のフェーズでは『「未来を背負う人材がどう育っていくのか』」という形に進化していくのではないかと思っていまして、これから入学してくる学生にも、成長を加速させられるようなさまざまな価値や機会を提供し続けたいですね」

源田 「高専生と一緒に活動するのって想像していた以上に面白いですね。僕らがこれをやってほしいとかではなくて、高専生が自律的に、そして自発的に『こんなことをやりたい!』というのを応援していきたいです」

小池 「ありがたいですね。3、4年後、今まで成し遂げられなかった大きく深いことを、ソフトバンクの皆さんと一緒に成し遂げられればと思っています」

松井 「お話を伺って、ソフトバンクがどれだけリーダーシップがあるかっこいい会社なのかということを改めて思いました。
私がもし普通に高校進学していたら出会えなかったような方々とたくさん出会いがあって、私たちの『やりたい!』に対して、想像以上の価値や機会を提供してくださって、この学校に入学して本当に良かったなと思います。そして、スカラーシップパートナー企業がソフトバンクで良かったです。本日はありがとうございました!」

(掲載日:2024年3月28日)
文:神山まるごと高専 ソフトバンク奨学生 松井 ひな子
編集:ソフトバンクニュース編集部