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自販機業界のDXを実現するサービス「Vendy」。AIが需要予測など自販機オペレーションを最適化

自販機業界のDXを実現するサービス「Vendy」。AIが需要予測など自販機オペレーションを最適化

街を歩けば目にする自動販売機。「自販機大国」とも言われる日本では、全国に約400万台もの自販機が設置されており、年間の売上金額は約4兆円にも上ると言われています。その一方で、自販機オペレーションにはまだまだアナログな管理や運用がされていたりと課題が多いのも実情です。ソフトバンクは、このような課題を解決すべく、AIを活用して自販機業界のDXを推進するサービス「Vendy(ベンディ)」の提供を発表し、説明会が行われました。

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人手不足や廃棄ロス。自販機オペレーションが抱える課題

ボタンを押すだけで商品を手軽に買える便利な自販機の裏側では、定期的に自販機を巡回し、飲料の補充や商品ラインナップ(棚割り)の変更、売上金の回収、自販機周りの清掃など、さまざまなオペレーション業務を行う「オペレーター」がおり、管理や運営を行っています。

しかし、自販機ごとの棚割り計画や、複数の自販機を巡回するためのルート計画など、担当者個人の経験や勘に基づいて決められることが多く、属人的な業務となっていることが課題としてあります。さらに、作業員の業務負荷や人手不足に加え、廃棄ロスや品切れによる機会損失、非効率な巡回によるCO2の排出量など、自販機オペレーションにはさまざまな課題があり、運用方法の最適化や効率化が期待されています。

自販機オペレーションの課題

データをもとにAIが巡回計画やアイテムを最適化。コスト削減と売上向上の両面を支援

ソフトバンクは、自販機業界が抱える課題解決をDXで実現すべく、自販機オペレーション最適化サービス「Vendy」を発表。説明会に登壇した、ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 部長の松山誠が、AIを活用した「Vendy」のサービス内容について説明しました。「Vendy」の特長として、ソフトバンクが独自開発したAIアルゴリズムを用いて、過去の売り上げや在庫情報などの自販機データや、巡回に伴う人件費などのコスト情報を分析・予測することで、オペレーション業務の最適化と効率化を実現すると説明。

ソフトバンク 松山 誠

ソフトバンク 松山 誠

「AI分析機能」により、自販機の品切れによる機会損失を防ぎながら巡回コストを最小化するための巡回計画を自動生成する他、過去の売上データによる需要予測をもとに、自販機の利益を最大化するための最適な棚割りをAIが自動生成するとのこと。松山は、「これまで経験や勘に左右されていた部分をAIで平準化でき、さらに慢性的な人手不足や長時間労働などの負荷が軽減されていく」と述べました。

サービス概要

他にも、データ収集などに利用する通信機やAI分析機能、管理画面の3つのソリューションを、運用・保守を含めてワンパッケージで提供するなど、お客さまのニーズに合わせた柔軟なプランも特長として挙げました。

「Vendy」のスマートフォンアプリの画面

「Vendy」のスマートフォンアプリの画面

続けて、「Vendy」の導入を発表した、キリンビバレッジ株式会社 営業部 戦略推進担当 主務の吉岡弘隆氏は、2024年10月より順次開始し、キリンビバレッジグループが運営する全国の自販機約8万台のオペレーションに導入していくと説明しました。また、「Vendy」の導入にあたりソフトバンクと共同実証を行い、オペレーションに関するノウハウの提供や、現場担当者へのヒアリング結果の共有などを実施。これにより、現場での有効性や各オペレーションに対応する汎用(はんよう)性を確認できたと述べました。吉岡氏は、「『Vendy』の導入により、新規設置先の開拓や人材配置の柔軟性を高めることで従業員の人材育成にも取り組める」と期待を寄せました。

キリンビバレッジ 吉岡 弘隆氏

キリンビバレッジ 吉岡 弘隆氏

「Vendy」導入前後の業務のフロー

実際の現場を体験したからこそ見えた課題をサービスに反映

「Vendy」の担当者に、サービスを開発する経緯やAIシステムの構築で苦労したこと、サービスの今後の展望などについて話を聞きました。

五十嵐 桂馬(いがらし・けいま)

話を聞いた人

ソフトバンク株式会社 法人事業統括 オペレーションデザイン事業推進部

五十嵐 桂馬(いがらし・けいま)

2013年入社。プレセールスSEとして主に金融のお客さまを担当。2017年より現在の部署にて新規事業の企画・開発を行い、2019年よりVendyプロジェクトに参画。

坂本 侑(さかもと・ゆう)

ソフトバンク株式会社 IT統括 データサイエンス部

坂本 侑(さかもと・ゆう)

2013年入社。ネットワークエンジニアとして開発、運用を経験した後、2021年から現在の部署にてVendyのAIシステムの構築を担当。

自動販売機業界のDXに注目したきっかけについて教えてください

五十嵐 「私がいるデジタルトランスフォーメーション本部では、あらゆる領域で抱えている社会課題を解決するためのDXソリューションの創出に力を入れています。飲料・小売業界の中でも、全国に約400万台もの自販機を展開する自販機業界は顧客とのタッチポイントが多いという観点から、そこにビジネスチャンスがあるのではないかと思い着目しました。調べてみると、自販機ビジネスを取り巻く環境には労働不足の問題やフードロスなど、さまざまな課題があることが分かりました。これらの課題をDXの推進で解決できるのでないかと考えソリューションを開発することになりました」

ソリューション開発は、どのように進めたのですか?

五十嵐 「まずは、現場での課題を把握するため、実地調査を行いました。飲料メーカーや自販機オペレーターなど複数社に協力をいただき、『オペレーター』と呼ばれる、自販機に商品を補充したりする現場作業員のトラックに同乗させてもらい、1日の業務に一緒について回りながら課題の洗い出しを行いました」

徹底した現場理解をサービスに反映しているのですね。実際に現場を見て感じた課題はありますか?

五十嵐 「朝から晩まで忙しく、業務量が非常に多いなという印象を持ちました。トラックにどれくらい商品を積めばよいかの判断や、当日巡回する自販機の計画やルートなど、オペレーターの経験や勘を駆使しているところが多く、ベテランと新人のスキルの差が大きいのも課題として感じました。一つ一つの自販機を回って在庫確認や補充作業を行っているため、つい多めに商品をトラックに積んでしまい結局多くの在庫を抱えて戻ってきてしまうという状況も発生していました」

坂本 「オペレーターは、スマホの地図で巡回する自販機の場所を確認するんですね。でも実際に補充場所に行ってみると、ビルの中に自販機があることもあり、そういう場合はまず駐車場にトラックを停めて、荷台に商品の段ボールを載せて自販機がある場所まで運ぶという作業が発生してしまいます。さらには、商品が足りなければトラックに戻り、商品を持ってまた自販機に戻るという二度手間が発生してしまったりもして、地図上だけでは分からない情報もあるなと同乗調査をして実感しました」

実際の現場を体験したからこそ見えた課題をサービスに反映
実際の現場を体験したからこそ見えた課題をサービスに反映

Vendyに搭載されている、ソフトバンク独自のAIアルゴリズムとはどういったものなのでしょうか?

坂本 「自販機に特化した需要予測や分析をするものです。大きく2つあり、1つ目は売り上げを向上するための商品ラインナップの最適化で、過去の売上げデータをもとに商品配置の提案をします。また、飲料メーカーによっては育成したい商品ブランドがある場合もありますが、それを加味して提案できるという点も特長です。2つ目は、巡回計画を提案するという点で、各自販機の売切れによる機会損失を抑えつつ、巡回コストを削減できる訪問計画を提示します」

開発の面で苦労したところはありますか。

坂本 「AIシステムはデータが命なので、正確にデータを入れないときちんと出力されなくなってしまいます。キリンビバレッジでの導入に当たって、同社の販売データなどを反映していますが、その中で、データをわれわれが欲しい情報として変換していく作業は大変でしたね。例えば、商品データで『5』という数字があったとします。その数字が今在庫としてある数なのか、購入された数なのかどちらかによって意味が大きく変わりますよね。そういったデータ情報を理解して変換していくところは慎重に行いました」

AIシステム以外でのVendyの強みは何でしょうか?

五十嵐 「通信機器からAIによる分析・予測、管理画面までワンストップで提供できるというところです。お客さまのニーズに合わせて必要なものだけを組み合わせて提供できることも強みです。SaaSの提供になるので、初期費用がかからず月額のサービス費だけで済むというのも導入しやすいのではないかと思っています」

  • お客さまの個別要件により追加でシステム開発が必要な場合や、自販機の年式により通信機へ追加の付属品が必要な場合などは、初期費用が発生します。
実際の現場を体験したからこそ見えた課題をサービスに反映

最後に、今後の展望について教えてください。

五十嵐 「目先では、今年10月から順次、キリンビバレッジグループ会社の自販機での導入が決まっています。約1年かけて計約8万台の自販機を対象にしたオペレーションへの導入完了に向けて進めていく予定です。AIシステムに関しては今後、販売データだけでなく、位置情報や人流データ、気象データなどもAIに加えていくことも検討しています。さらに先の未来では、自販機業界だけでなく、同じような巡回業務をしている業界にもサービスの幅を広げて行きたいと思っています」

坂本 「AIによる需要予測の点ではオペレーション業務だけでなく、その前の過程にある商品の生産の領域でも効率の良い生産を実現できるような予測をAIで行えるとさらにDXにつながるのではないかと考えています。また、需要予測だけでなく、新しく自販機を設置したいと要望があった際に、AIで最適な場所を提案できるようになったらより便利なサービスになっていくのではないかと思います」

(掲載日:2024年3月29日)
文:ソフトバンクニュース編集部

AIを活用して自販機運営の業務を効率化する「Vendy」

AIを活用して自販機運営の業務を効率化する「Vendy」

自動販売機の売上・在庫データなどをAIが分析し、これまでルートセールスが経験と勘を駆使していたオペレーション業務を自動化。業務効率化や売上向上による持続的な自販機運営業務を支援します。

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