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新しい産業を地元の手で! 福島県南相馬市「携帯アプリクリエーター養成講座」の取り組み

ソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンクモバイル」)では、福島県南相馬市の相双地域雇用創造推進協議会※1からの委託を受け、東日本大震災復興支援の取り組みの一環として、「携帯アプリクリエーター養成講座」の開設・運営に協力しました。この取り組みは、南相馬市とその周辺の出身者を対象に、携帯電話やスマートフォン向けアプリケーションの開発者育成支援を行うことで、地域における継続的な雇用と新たな産業の創出に貢献することを目的としています。

支援から自立へ

東日本大震災後、福島県南相馬市の有効求人倍率は、全国平均と比べ非常に高い水準で推移しています。しかし、この地域の求人票に並ぶのは、福島第一原発事故に関連する除染作業や土木作業などの仕事に集中しているのが現状です。目前の復旧対応に取り組むことは重要ですが、真の復興のためには短期的な雇用だけではなく、長期的・安定的な雇用が必要不可欠です。

こうした状況に危機感を抱いた南相馬市の相双地域雇用創造推進協議会では、5~10年後の町の将来を見越し、原発事故による風評被害の影響を受けないITを活用した産業創生と雇用創出を目指して、2012年秋に「携帯アプリクリエーター養成講座」を開始しました。

復旧が進む南相馬市の様子

ソフトバンクモバイルでは、相双地域雇用創造推進協議会から委託を受け、ソフトバンクグループの強みであるITを生かした支援として、「まずはアプリケーション開発者の育成支援から取り組み、将来的にはクラウドを活用して、世界中からアプリケーションの受託開発ができるよう協力したい」との構想をまとめ、同協議会と検討を重ねてきました。

そして「卒業生の中から必ずプログラミングで生計を立てられる人材を輩出しよう」という目標の下、開始から2年を経た2014年度までに約40名が受講し、20代から60代まで幅広い年齢層の方が参加しました。

地元出身の講師が地元の人へ知識を伝える

ソフトバンクモバイルは、受託者として講座全体の運営と進捗管理、および受講生の自主学習支援を目的としたクラウドコンピューティング環境の提供などを行っています。開始当初の2年間は、講師の派遣もソフトバンクモバイルで対応しましたが、2014年度は、地元出身者が講師を務めました。

地元南相馬市出身の講師 松嶋さん(左)と、南相馬ITコンソーシアム事務局長の石田 諭さん(右)

南相馬市出身で講師の一人、松嶋 一成さんは、「本講座を通じて、南相馬に原発事故の影響を受けないIT産業を根付かせたい」と語ります。普段はアプリケーションの開発を行う南相馬市ITコンソーシアム※2という団体に在籍し、日々開発に取り組む松嶋さんが、アプリケーション開発を始めたのは2年前。東京からUターンし南相馬市で仕事を探しているとき、「新しいことを始めたい」と、南相馬ITコンソーシアムに入ったことがきっかけでした。今回、初めて講師を務めることとなった松嶋さんは、「実際に教えることで、受講生が持つ消費者としての観点や、今まで気付かなかった開発の盲点が分かり、自分の視野も広がりました。将来は、地元の中高生などの若い世代にもスキルを広げ、南相馬市でIT産業の雇用を生み出せるようにしたいです」と抱負を語りました。

受講生が実際に製作した「スキー場アプリ」(左)と「趣味探しアプリ」(右)

2014年度の受講者8名が開発したアプリケーションは、「防災連絡簿アプリ」「スキー場アプリ」「カクテル辞典アプリ」「趣味探しアプリ」など、身近なものから実用的なものまで、魅力ある多様なラインアップとなっています。また、地元の方が講師を務めたことによる効果か、受講者が開発するアプリケーションの完成率が初めて100%を達成し、受講者の多くが講座終了後もアプリケーション開発のスキルアップを希望するなど、今後にも期待できる取り組みとなりました。

ソフトバンクモバイルでは、被災地の復興に貢献できる取り組みを継続して行ってまいります。

  • ※1 
    相双地域雇用創造推進協議会は、2012年7月より厚生労働省の委託事業として、相双地域における雇用拡大並びに雇用促進を図るべく事業を展開。2015年3月末をもって3カ年度の委託期間満了を迎え、事業が終了。
  • ※2 
    南相馬ITコンソーシアムは2012年設立。「福島県地域雇用再生・創出モデル事業」として人材育成に取り組む。現在は、ソフトウエア開発、自社エンジニアの育成を通じた雇用創出、教育プログラムの提供(小・中・高校生向け)など行っている。代表的なアプリケーションは、iPhone向け公式観光情報アプリ「相馬野馬追」。

(掲載日:2015年4月20日)