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雪山の遭難者を救助せよ!気球・ドローンを使った位置特定の実証実験に密着!

遭難事故では「遭難者をどれだけ早く発見できるか」が命を助ける分かれ目。そこで遭難者の位置特定に、私たちがいつも身に着けているケータイやスマホを利用する実証実験が北海道虻田郡倶知安町にあるスキー場で行われました。

ケータイやスマホで遭難者の位置を特定!

総務省北海道総合通信局が主催している「携帯・スマホ等を活用した遭難者の位置特定に関する調査検討会」とソフトバンクが共同で実施した今回の公開実験。視察には、総務省関係者、警察、消防、自治体、陸上自衛隊、スキー場などたくさんの関係者が参加しました。

この実験に使われるシステムは、ソフトバンクの研究開発本部が開発したもの。総務省の「雪山での遭難者位置特定に関する調査検討」を受託し、2016年9月からシステムの研究・開発を行なってきました。今回の実験では、ケータイやスマホが雪の中に深く埋まってしまった場合に、「係留気球無線中継システム」と「ドローン無線中継システム」を使ってどの程度まで通信が可能となり、遭難者の位置を特定できるかを検証します。

気球やドローンを使って基地局が空に浮かぶなんて、ちょっとビックリですね! 実験が楽しみです☆

実験スタート!
遭難者「人形くん」の発見はいかに!

実験準備は、まず、等身大の人形の内ポケットにスマホを忍ばせます。それを雪穴の中に置いて、うつぶせの状態で埋まったことを想定して、背中側には電波が通らない遮蔽版をかぶせて「3メートル埋まった状態」を再現します。


こちら埋められる運命の「人形くん」。ドキドキ


3メールの穴へ、ズドン・・・


遮蔽版と雪で完全密閉されました

この状態で、人形くんの胸ポケットに入っているケータイやスマホから発する電波を、係留気球およびドローンに搭載した無線中継局でキャッチします。

でも、埋まった状態のスマホとは通信ができません。
この状態で本当に電波をキャッチできるの…? とちょっと心配に。

さっそく係留気球無線中継システムを使って、人形くんの端末の位置特定を開始!

すると見事、雪に埋まったスマホの電波を発見して、地図アプリに位置が表示されました!
実験は大成功です!


アプリ画面

気球やドローンを利用するメリットって?

実験を大成功させた気球とドローン♪
でもちょっと疑問も出てきちゃいました。せっかくなので教えてもらいましょう☆

なぜ雪の下にあると、電波が検知しにくいのでしょうか?

スマホは、電池が続く限り電波を発しています。でも、もし圏内であっても基地局から遠く離れた雪下に埋まっている場合は、通常の基地局から発する電波では雪面で反射し、雪下に透過しにくいため、検知が難しくなるのです。

気球を利用することのメリットは?

気球は雪上車に係留しているため、雪下に埋まっている端末の近くまで移動することができます。

そうなんですね! ではドローンのメリットは?

ドローンの特長はなんといってもその身軽さです。救助隊が容易に立ち入れない場所でも短時間にその近くまで移動することができるので、位置特定できる範囲が一気に広がります。さらに重要なポイントは、雪下に埋まっている端末近くの上空に無線中継局が移動することにより、雪面に対して鋭角に電波を発射できることです。実は、ソフトバンクが新たに考案したドローン無線中継システムを実証実験で利用するのは、今回が国内で初めて(2016年12月時点)なんですよ。

そんな画期的な実験だったとは! ところで「電波を鋭角に」ってなんですか?

雪面に対して水平方向では電波を反射しやすいので、垂直に近い角度を付けることで積雪の中でも電波を受信しやすくなるんです!

知らなかったー!

さらに、無線中継局と雪下に埋まっている端末との距離を短くすることで、端末に届く電波を大きくできます。この特性を利用し、雪下深くに埋まった遭難者のケータイやスマホの電波をキャッチします。

端末の電波をキャッチした後は?

端末のGPSから位置情報を取得して、パソコンやタブレットの地図アプリ上にその位置を表示することができるので、速やかな救出活動につながります。

なるほど! 勉強になりました★

今後の新たな人命救助の手段として期待!

今回の実験に用いられた係留気球などのシステムが誕生したきっかけは、2011年の東日本大震災の教訓でした。その後も改良や実験が重ねられ、法改正の後押しもあり、2016年4月に発生した熊本地震の際に初めて実際に利用され、被災地へ向かうための重要ルートとなる山間部エリアでの通信確保に活用されました。

今回の実験で、雪に埋もれた遭難者の救助に応用されているとおり、活用の幅はますます広がっています。さらなる展開に注目ですね!

(掲載日:2017年3月16日)