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こんなオフィスで働きたい!日本に上陸する話題のコワーキングスペースWeWorkとは? Vol.3

米国在住のWeWorkユーザー、ジャーナリストの松村 太郎さんによるレポート最終回! WeWorkの特徴であるコミュニティーの存在、日本で将来WeWorkを利用するときの心構えなど、貴重な内容が満載です。

第3回 日本に上陸するWeWork

2018年の日本上陸が迫る、コワーキングスペースのグローバルネットワーク、WeWork。経済的な側面、仕事へのモチベーションの側面から、個人や小規模のスタートアップがWeWorkを選ぶメリットについて、ご紹介してきました。
そんなWeWorkは、私たち、あるいはそのはたらき方に与える変化とは、いったい何でしょうか?

筆者・松村太郎(まつむらたろう)
1980年東京生まれ。米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了後、テクノロジーとライフスタイルをテーマに執筆活動を続ける。テクノロジーと教育で問題解決に取り組むキャスタリア株式会社取締役。プログラミング必修の通信制高校コードアカデミー高等学校の創立副校長を務め、現在スーパーバイザーを務める。
Web https://tarosite.net/ Twitter @taromatsumura

「インスタ映えするおしゃれオフィス」が本質ではない

前回の原稿で、WeWorkは「どこを切り取ってもインスタ映えするおしゃれなオフィス」になるよう作られていることをご紹介しました。ただし、WeWorkに参加して使えば使うほど、そのことが本質ではないことが分かります。

WeWorkの本質はメンバーや地域、そしてグローバルに広がるネットワークとのつながりと言えます。とくに、同じ建物に通っているメンバー同士や、周辺地域とのつながりをアレンジする役割を果たしているのが、コミュニティービルダーと言われる常駐スタッフです。

コミュニティービルダーは通常、フロントデスクや専用のオフィスにおり、メンバーに声をかけている様子が印象的です。メンバー間のつながりやローカルとの関係強化のためのイベント企画にも積極的に関与しています。

例えば、WeWorkに入居している企業が新しいアプリを発表したり、なんらかのアナウンスをしたい場合、WeWork Berkeleyでは、5階のラウンジスペースでイベントを開くことができます。たいていの場合、ランチタイムにピザを振る舞いながら、プレゼンテーションを聴いてもらうスタイルになっています。

こうして、同じ建物で働く人たちが何に取り組み、何を考えているのかを共有する機会を、毎週必ずつくっているのです。

また、ラウンジスペースでは、周辺地域にオープンした新しいお店や、プロモーションしたい食料品、例えば飲料やヨーグルトのブランドの試食イベントも頻繁に行われています。バークレーに、ワシントンDC発のサラダボウルチェーン「Sweetgreen」がオープンした際には、試食用のサラダボウルが振る舞われ、アプリのクーポンコードを配布しました。

近所ということもあって、格好のランチスポットになり、WeWorkからSweetgreenにランチを買いに行く人が増えました。また、この原稿を書いている金曜日の夕方は、「National beer lover’s happy hour」と称して、各階のビールの人気投票を行う飲み歩きイベントが企画されています。

一方、より実務的なイベントも開かれます。例えばWeWork Berkeleyに入居している会計士や移民弁護士が相談に乗ったり、UXやAIの企業が勉強会を主催したり。あるいは瞑想のトレーナーが、集中力を高めるためのメディテーション・レッスンを開催しており、これらも人気を集めています。

WeWorkでは、自分の仕事に誇りを持つ人が多く、それを同じビルで働く人たちに共有して役立てたい、そんな思いが高まるよう、コミュニティービルダーが日々のイベントを企画していました。

一般的なコワーキングスペースとは異なる日常をつくり出しているWeWorkならではの特徴、と言えるかもしれません。

WeWorkを迎える日本が、最大限に生かすには

さて、2018年にWeWorkが上陸する日本。日本でも、バークレーのように、自分の仕事が好きな人たちが集まり、お互いのアイディアを共有しながら、より良い仕事を目指す、そんな生き生きとした場になることを願っています。

そんなWeWorkという場を日本が生かすには、どのようにどうすれば良いか、いくつかのヒントを考えたいと思います。

まず、できるだけWeWorkの海外のメンバーとのコミュニケーションを、アプリの上で取って行くことだと思います。WeWorkメンバーとしては新参者である日本人が、いち早くそのカルチャーに触れ、グローバル・ギルドのメリットを生かすには、郷に入っては郷に従う、が最も早道だと思うからです。

ただしそのためには、英語でのコミュニケーションや自分のアピールが必要になり、ここは1つのハードルになるかもしれません。

もう1つは、大企業がWeWorkメンバーを上手く活用できるようにすることです。米国では、大企業もWeWorkに部屋を持って、メンバーとの交流からリクルーティングにつなげたり、仕事の発注を行うといった、コミュニティーの中に入り込んだ活用が進んでいます。仕事場を共有する事で、個人やスタートアップ企業との関係をつくり、活用して行く方法を見出しているのです。

日本でも、優秀な個人や小規模企業の多くが、WeWorkを利用し始めることになると思います。日本の大企業が、WeWorkのネットワークに参画し、個人や小規模の企業と仕事を共にするチャンスを、制度面、マインド面を通じて、いかにつくり出せるかが重要になってくるのではないでしょうか。

日本がWeWorkという場所、仕組み、コミュニティーを生かせるかどうかは、個人や小規模企業ではなく、大企業の側にかかっています。 大企業にとっては、サテライトオフィスの活用や、前述のような外部の人たちとの積極的な協業などが、既存のはたらき方を変えていくきっかけとして活用できると思いますし、そうなることを期待しています。

もしサンフランシスコを訪れる機会がありましたら、ぜひバークレーに私を訪ねてきてください。WeWorkをご案内しながら、未来のはたらき方について、語り合えることを楽しみにしています。

(掲載日:2017年10月27日)
文・写真:松村太郎