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災害の怖さをバーチャル体験できる「VR防災体験車」レポート! 消防士のエースに聞く、災害時の4つの備えとは

災害の怖さをバーチャル体験できる「VR防災」レポート! 消防士のエースに聞く、災害時の4つの備えとは

私たちは、地震や火災、風水害といった災害の脅威に対して、常に心の準備をしなくてはなりません。個人の防災意識が問われる昨今、テクノロジーが防災訓練を進化させています。

臨場感ある体験で危機意識を喚起する360度視界の「VR防災訓練」とはどのようなものなのか、東京消防庁・本所防災館で実際に体験してきました。また、現役消防士の若手エースから聞いてきた、万一に備えた防災の心得もご紹介します。

災害をリアルに再現することで、防災意識を高めるVR体験 〜風水害編〜

まずは、こちらの映像をご覧ください。

  • 風水害のバーチャル映像が流れます。ストレスを感じる方はご視聴をお控えください。

「自分には災害は起きない」という正常性バイアスを変える、VR防災体験車の意義

「VRで災害を体験できる」と聞いて訪れたのは、東京消防庁本所 防災館。施設に着くなり、目に飛び込んできたのは、真っ赤なボディの「VR防災体験車」です。

VR防災体験車

最新のバーチャルリアリティー技術を活用し、VR映像を見ながら災害を疑似体験訓練できる大型車両。ヘッドマウントディスプレィを装着し、360°の立体映像が見られるほか、災害の実相に合わせて座席が動き、さまざまな状況が発生します。

VR防災体験車は、2018年4月から運用され、この1年間で約5万8千人がVRでの防災体験を行いました。全長約11,935センチメートルの車には、MX4Dの椅子が備え付けられ、最大8人で同時にVR映像を見ることができます。地震・火災・風水害の3つのストーリーに合わせて座席が動き、火災の熱や水しぶきなどの効果で、災害現場をバーチャル体感できるのが特徴。

  • 2019年7月時点

テクノロジーで防災意識を変える。VR防災体験車を導入する理由

導入の経緯や効果について、東京消防庁防災部防災安全課・地域防災係長の星英孝さんに聞いてみました。

星さん

常に掲げている課題のひとつが、防災訓練参加者数を増やすこと。災害の恐ろしさを自分ごと化して、万が一に備えましょう、と呼びかけるだけでは、防災訓練への参加に結びつきません。

人間は防衛本能から、自分には災害は起きないだろう、と思いたがるクセがあります。これを「正常性バイアス」といいますが、厄介なことに、知見のある人から「大丈夫だよ」と言われると、自己判断せずに大丈夫だと思い込んでしまうんですね。それを食い止めるには、家族に災害が起きたら? などと災害をイメージさせ、行動変容を促すしかけが必要になります。通常の起震車では、そこまでつなげられない点が課題でした

その課題を解決するのが、VR防災体験車ということですね。

星さん

VR防災体験車では、360度視界のVR映像を見ながら、煙にむせたり、ガラスが降ってくる音を感じたり、閉じ込められる恐怖を感じたりといった疑似訓練ができます。災害現場のリアルな恐ろしさを感じていただくことで自分ごと化してもらい、そこから防災訓練につなげるのが、VR防災体験車の目的です

ハイテクなゆえに、高価そうですね。

星さん

通常の起震車が約4,000万円で、VR防災体験車は約1億3,000万円です。新しい取り組みで世の中にないものだったので、災害の恐ろしさをどのようにイメージさせるか、映像作りにも力を入れました

ただならぬ覚悟と期待の強さを聞いたところで、VR防災体験訓練をすることになりました。

【VR防災レポート】熱さ! 揺れ! 水しぶき! 風! 匂い! 4D演出で災害時の恐怖をバーチャル体験

シートにしっかりと深く腰をかけると、消防士さんから「体験中に気分が悪くなった場合は急に立ち上がらず、ヘッドマウントディスプレイを外してお待ちください」と言われました。ヘッドマウントディスプレイを装着して、いよいよ映像スタート!

最初は震災編。映像が流れ始めてすぐに、大きな揺れが起こります。机の下に避難し、揺れがおさまってから部屋の中を見回すと、家具や小物が辺り一面に散乱していました。窓ガラスが粉々に割れている様は、映像とわかっていながら、ショックが大きいもの。余震に備え、家の中からの脱出を目指します。

続いて見たのは、火災編の映像。2階の部屋でかすかな煙のにおいを感知し、1階に降りると、台所のコンロから火柱が!

火を消そうと試みるものの、消火器をなかなかうまく扱えません。部屋の中いっぱいに煙が立ちこめ、息が浅くなっていきます。首や腕に熱風を感じた頃には、視界はもう真っ白。家の外から聞こえる声をたよりに、玄関へと向かいます。

最後に、風水害編の映像。足首あたりまで水が溜まった地下駐車場から出て、雨風の吹き荒れる街中を車で移動。フロントガラスに、ゴミや小枝などが衝突する「バチバチ」という音が聞こえるたびに体がすくみます。

水かさがどんどん増していき、アンダーパス(地下道)に差しかかったところで動けない状態に。車中に閉じ込められる恐怖から外に出ると、強い風や水しぶきが容赦なく襲いかかってきます。できるだけ高い場所を目指し、水の中を進んでいきます。

風水害編の映像を見る

3つのストーリーを体験し、「実際に自分があの場にいたら、逃げ切れないのでは…」と考えると、ゾッとします。星さんによれば「災害現場では、パニックになっていたり、ぼーっとしてしまっていたりする人も少なくありません」とのこと。そのような人を見掛けたら、星さんは何度も「お名前は?」と聞くなどしながら、避難誘導したと言います。

導入してから、防災訓練参加者数は上がりましたか?

星さん

VR防災体験車をきっかけとして防災訓練に参加したかどうかは不明ですが、年々、訓練の参加者は増加傾向にあり、平成30年度は約236万人でした。現在は、広報誌を通じたアンケートなどで効果があったかどうかを確認しています

VR防災体験車

東京メトロ半蔵門線錦糸町駅4番出口、各線押上駅(とうきょうスカイツリー駅)B1出口より徒歩約10分。地震、煙、火事、暴風雨の災害の模擬体験を通じて、防災知識や行動力を高める学習施設。館内には自由見学コーナーと体験コーナーがあり、体験コーナーではインストラクターが案内するツアーも行っている。

自分の身を守るためにも、防災訓練を繰り返し行い、災害時の行動力を高めておくことが大切なんですね。VR防災体験訓練をした後は、消防士のエースに、防災の心得を聞いてみました。

明日、災害が起きたら? 消防士のエースに聞く、災害時の4つの備え

明日、災害が起きたら? 消防士のエースに聞く、災害時の4つの備え

日々、災害現場で働く消防士さんは、いわば「防災のプロ」。ここからは、一緒にVR防災体験訓練を一緒に体験した、東京消防庁芝消防署 エースの小出拓海さんに、防災の心がけについて教えてもらいました。

プロフィール

東京消防庁 芝消防署所属 小出拓海(こいで・たくみ)さん

小学5年生のときに自宅の近くで火災があり、消防職員の消火活動を見て「自分も人の役に立つ仕事がしたい」と思い、消防士を志した。座右の銘は「一言芳恩(いちごんほうおん)」。

VR防災を体験させていただき、リアルに災害を感じることができました。正直、怖かったです! 小出さんは、バーチャルで災害を体験することによって、どんな効果があると考えますか?

小出さん

災害を疑似体験することによって、地震や火災、風水害を身近に感じていただけます。また、実際に災害が起こった場合、初動対応によって被害を最小限に抑えられるということも感じていただけるはずです。火災の映像では、火のついた油に水を注いでしまい、被害の範囲が広がってしまいました。映像を見ることで、「火のついた油に水を注いではいけない」といった、災害時のNG行動も学べると思います。

一般の方に伝えたい、防災の心がけを教えてください。

小出さん

災害が起きたときの状況によって、取るべき行動は大きく変わってきます。災害が起きたときに、家に1人でいる場合、家族と一緒にいる場合、もし季節が冬だったら、時間帯が夜中だったら…。さまざまな状況を想像し、初期対応として何をすればいいか、どこに逃げればいいか、考えておくことが大切です。

「また、災害時に向けて、備えておきたいモノ・コトは、全部で4つあります」

① 食糧や備蓄品の用意

災害が起きた際に、すぐに持ち出して避難できるよう、リュックに詰めて玄関に置いておきます。人間は、1日3リットルの水が必要といわれますが、家族4人の場合、12リットルの水を運ぶと避難の際に負担になります。どのくらい荷物を運べるか、現実的に考えて準備しましょう。

② 室内の家具の転倒防止や物の落下防止、ガラスの飛散防止

阪神淡路大震災のときは、転倒してきた家具で口をケガして声が出せなくなり、検死の結果、餓死と判明した方もいらっしゃったそうです。避難の妨げにならないように、廊下や玄関を、普段からきれいにしておくことも大切ですね。

③ 自宅や職場周辺の道を調べておくこと

「災害が起きたときは、この経路で避難しよう」と想像し、できれば、避難場所までの経路を実際にたどってみてください。

④ コミュニケーション

災害時は、地域住民の方と協力することが大切になります。普段から、顔を合わせたら挨拶するなどして、コミュニケーションを取っておきましょう。

大きな災害があると、その直後は防災意識が高まりますが、次第に気持ちが緩んでしまいがちです。防災を「自分ごと化」するにはどうすればいいですか?

小出さん

VR防災体験車や、本所防災館などを利用して、防災に関する知識を高めていただくことが第一だと思います。子育て世代にも多く参加していただけるように、大型商業施設や駅、公園等で防災訓練を行っていますので、気軽にご参加ください。

ありがとうございました。

ソフトバンクでも防災訓練を実施しています

ソフトバンクでは、社員の防災意識を高めるため、毎年2回、防災訓練を実施しています。地震・火災・風水害の災害を疑似体験できる「VR防災体験車」は、ソフトバンク社員の関心が高く、今年も行列ができていました。

VR防災体験をする人の中には、災害現場のリアルな再現に、思わず「わっ」と声を上げてしまう社員もいました。

他にも、避難時の恐怖を体験できる煙体験ハウスや、実際の炎を消火体験できる初期消火コーナーなど、実践的なコーナーが設置されていました。「万一に備えよう」と、帰宅してから防災グッズの点検をした社員も多かったのではないかと思います。

防災教育向けのPepperを小学校に派遣

2019年1月に飯塚市とソフトバンクが締結した教育事業連携に関する協定をベースに、福岡管区気象台による監修の下で、Pepper用防災教育向けの専用コンテンツをPepperに搭載。

教育現場での活用によって、児童・生徒らが自らの判断で状況に応じた的確な行動がとれるような防災知識の習得や定着を目指しています。

テクノロジーによって進化する防災訓練の様子と現場の消防士さんの声を通して、防災の重要性を確認できましたか? こちらにスマホを活用した防災関連のアプリやサービスをまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

地震、津波、台風、大雨… いざという時に役立つアプリやサービスをまとめてチェック! スマホを活用した防災まとめ

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(掲載日:2019年6月14日、更新日:2019年7月30日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト
撮影:山野一真