朝晩は肌寒くなり、日を追うごとに秋が深まってきました。秋といえば「食欲の秋」「スポーツの秋」「芸術の秋」など連想するものがありますよね。
今年は、オンラインで開催されるイベントが増えていますが、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻と横浜市が共催するアート展「OPEN STUDIO 2020 - ONLINE」もその一つ。アートになじみがなくても実は足を踏み出しやすい? オンライン展覧会の見どころや楽しみ方を東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻の教員と学生に教えてもらいました。
東京藝術大学大学院映像研究科 元町中華街校舎
横浜市が進める文化芸術創造都市施策の一環として、2006年に開設。開設当初より学生の作品展を年2回、一般公開しており、今年で15年目。毎年たくさんの人が来場します。
どう見たらいいの? オンラインで始める現代アート
アートって理解できるかな……。そんな思いをかかえている人は多いのではないでしょうか? 同じくアートになじみがない初心者のひとりとして、現代アートのど真ん中にいる教員と学生に聞いたのは、「OPEN STUDIO 2020 - ONLINE」や現代アートの楽しみ方。
アートと聞くとハードルが高いと感じる方もいるかと思います。今回の「OPEN STUDIO 2020 - ONLINE」の楽しみ方を教えてください。
桂「オフラインの展示会場だと、入り口から出口までの道筋が決められていたり、作家との対話が発生したり、と来場者が空間や時間の制約を受けます。それはそれでひとつの楽しみでもあるのですが、今回はオンライン展示なので、飽きたらすぐに出ることもできる。そういった意味ではアートになじみのない方でも気軽に見ていただけるのではないかと思います。
オンラインアート展の中には、Webサイト自体を凝りすぎた演出にして、作品の存在感が後退しているようなものがあります。『OPEN STUDIO 2020 - ONLINE』のサイトデザインは、できるだけ作品の存在感を際立たせるような作りにして、使い勝手や表示速度にも考慮しています」
作品の見どころはありますか?
西村「桂先生がおっしゃっているように、実空間での展覧会とWeb上での展覧会では、展示を見てくれる人の動きや姿勢も変わってくるので、Webブラウザ上で作品が一番引き立つ方法を考えています。個々の作品の形状やコンセプトに合わせて、設置の仕方も工夫しているので、どういう形式で作品を見れるのかという点にも注目してほしいですね」
正直、アート作品は、どう見たらいいのか分からないのですが……。
桂「現代アートのおもしろさは、いろいろあると思いますけど、まずはアーティストが同時代に対してもっている問いを社会に向けて投げかけていることです。
賛否両論はありますが、バンクシーが、なぜ人気があるのかというと、その問いの投げ方や姿勢に共感を覚える人たちがいるからです。もはやアーティストは行動や活動も作品の一部となっています。
作品に触れたときに『正しい答え』を答え合わせしようとしても面白くはないでしょうね。『なんでこんな表現するをしているのか』という、アーティストの制作の動機を想像してみると何らかの気づきがあるかもしれません。
でも何も気づきがなくても大丈夫です (笑)。わからなくしていると思っておもしろいところを探してみてください」
オンラインでアートの世界に飛び込もう! 「OPEN STUDIO 2020 - ONLINE」の参加方法
前期に制作された作品を展示する「OPEN STUDIO 2020 - ONLINE」には、10月2日(金)~10月18日(日)の期間に計60課題作品ほどが展示されています。
- URLにアクセス
- 氏名とメールアドレスを入力
- 自由に作品を楽しもう!
OPEN STUDIO 2020 - ONLINEのWebサイト
通信環境面でのサポートを実施しました
ソフトバンクは横浜市と「SDGs未来都市・横浜」の実現に向けて包括連携協定を締結しています。その取り組みの一環として、コロナ禍における授業継続を支援すべく横浜市に所在する同校に通信機器を貸し出しました。
ジョイス「私は入学を機に横浜に引っ越してきたので、通信環境がなく特に助かりました!」
コロナ禍でのアートの教え方。なにもかもリモートの試みに四苦八苦
実は、今回取材に協力してくれた先生と学生はこの日が初対面。入学式が中止になり、学生は入学以来、一度も登校していなかったそうです。新しい環境で、かつフルオンラインでの授業や作品制作、コミュニケーション事情を聞いてみました。
今回の展示作品は、すべてオンライン授業の元で制作されたそうですが、オフラインの指導と比較して難しさや工夫した点はありますか?
桂「4月はオンライン授業の準備をしていて、学生の状況把握をするためにアンケート調査をしたり、講義に必要なものを手配したりしていて、5月の連休明けからオンライン授業がスタートしました。
実技もあるため、教員も初めは抵抗がありましたが、私の演習の場合はほぼ昨年までと同じクオリティでできましたね。オフラインに比べて個人個人の相談にも乗りやすいという利点も。また、学生をフォローするために例年に比べてメンターを5倍くらいの数に増員したので、ある意味これまでよりも手厚い体制だったかもしれません」
西村「オンラインでの授業が決まった時は不安でしたが、機材や通信環境などのサポートを受けられたり、オンラインでも充実した相談ができたりしたので安心して制作を続けられました」
オンライン授業でも不安なく過ごせていたのですね。
西村「始まってみると授業が忙しく、不安を感じる暇はありませんでした」
ジョイス「家にいるのに家事をする時間もなかったんです(笑)」
コロナ禍の状況が、学生の作品にも反映されているものはありましたか?
桂「ステイホーム期間での制作だったので、身近なものからの気づきを題材にしている内面的な作品が多い。それも今年の特長になっています」
ジョイス「これまではドキュメンタリー映像をはじめ、他の人やものを観察する作品を制作してきたので、自分の作品の中に自分が登場することは抵抗がありました。
でも身体表現を使った映像制作の課題に取り組んだときは、ステイホーム期間で自分を撮るしかできなかったので、ある意味、新しい表現方法にチャレンジができました。今後の作品にも影響があるんじゃないかと感じています」
コロナ禍でのアートが果たす役割をどのように捉えていますか?
桂「人類の歴史でパンデミックは何度も起きてきました。その度に膨大なアート作品が作られ、恐れや祈りを視覚化されているものも多い。作品を見る人がその問題を共有し、希望を感じ、未来のヒントを得られるように、社会問題を気付かせ、考えさせることは、アートの大きな役割でもあります」
ありがとうございました!
ソフトバンクのサステナビリティ
今回の紹介した内容は、SDGsの目標「1、3、4、8、9、10、11」に対し、「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」することで、SDGsの達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。
(掲載日:2020年10月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部