たった3分で「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」の基礎知識が学べる【3分で分かるSDGs】シリーズ。この記事では、SDGsを構成する「17の目標」のうち目標2「飢餓をゼロに」について、現状の課題や企業の活動例、私たちにできることを見ていきます。
これだけは知っておきたい! SDGsの目標2「飢餓をゼロに」3つのポイント
- 世界人口の9人に1人が飢餓に苦しんでいる
- 企業がしていること。給食支援や持続可能な農業をサポート
- 私たちにできること。安全で栄養のある食事を
世界の飢餓の現状とは? 9人に1人が飢えに苦しんでいる(SDGsの目標2)
「飢餓」とは、長い期間にわたり満足な食事が取れず栄養が足りなくなり、生きることや社会的な生活が難しくなっている状態。2018年の時点で、世界で約8.2億人が飢餓に苦しんでいます。これは、世界の人口の9人に1人にあたります。
飢餓には“飢饉(ききん)”と“慢性的飢餓”があります。飢饉は、自然災害や紛争などによって一時的に食料が不足することです。この場合は、緊急の食料支援などをする必要があります。
一方、慢性的飢餓は、食料を手に入れられない状態が長く続き、慢性的な栄養不足になってしまうことです。その原因は、作物が育ちにくい土地に住んでいることや、紛争が続いていること、農業の技術が低いことなどさまざまです。こちらは、一時的な食料支援だけではどうにもならず、根本的な解決が求められます。
十分な食事が取れないと、病気になっても抵抗力がないので命を落としやすくなります。また、飢餓状態の妊婦から産まれた赤ちゃんは栄養不足となり、生涯にわたって身体に影響が残ることもあるのです。
ゴールは「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成する」こと
次の世代の健康を守るためにも、飢餓の連鎖を止めなければなりません。そのためには、持続可能な農業の開発が必要になります。その土地に根付き、将来にわたって安定的に食料を供給できるシステムをつくることが重要です。
覚えておきたいSDGs関連用語
- 飢饉…干ばつや洪水などの自然災害、紛争などによって、一時的に食料の確保が困難になること。
- 慢性的飢餓…長期間にわたり食料が不足し、十分な栄養を取れないこと。
- 飢饉…干ばつや洪水などの自然災害、紛争などによって、一時的に食料の確保が困難になること。
- 慢性的飢餓…長期間にわたり食料が不足し、十分な栄養を取れないこと。
企業がしていること。給食支援や持続可能な農業をサポート(SDGsの目標2)
① 途上国への給食支援プロジェクト
ある途上国では、現在も人口の35%が栄養不足になっています。中には学校での給食が一日で唯一の食事という子どもも。そのような地域の学校に対して、給食支援をしている民間の企業があります。特定の商品を買うと、その売り上げの一部が給食費にあてられます。栄養価の高い給食があれば、子どもたちの健康状態が良くなるだけでなく、親が子どもを毎日学校に通わせるきっかけにもなります。
② 持続可能な農業への取り組み
農業の技術が上がれば、食料の供給も安定します。ただし、先進国で使っている機械などをそのまま渡せばいいというわけではありません。その土地の人たちが扱える道具やシステムでなければ、将来にわたって持続可能な農業とはいえません。そのため、企業では途上国の生産者に対して、生産性をアップさせるための技術・ノウハウの共有をはじめ、高品質の種子や肥料の提供、収益化するためのシステムをつくるサポートなど、さまざまな支援をしています。
私たちにできること。毎日の食事を大切に(SDGsの目標2)
① オーガニック食材を選ぶ
オーガニック食材は、地域の気候や風土にあわせ、環境に負荷をかけずに生産される食材です。野菜であれば農薬や化学肥料を使わず、畜産物であればなるべく自然に近い環境で育てます。こうした生産方法は、食べる人にとって安全な食材を生み出すだけではなく、その土地の生態系や自然環境を守ることにつながります。オーガニック食材を選ぶことで、持続可能な農業に取り組む生産者を応援することができます。
② 栄養バランスを考えた食事をする
日本にいると、栄養不足の問題は他人ごとのように思われがちです。しかし、先進国では食料が豊富で選択肢が多いために、かえって偏った食事をしてしまい、必要な栄養素を取れていない人も少なくありません。また、日本以外の先進国の子どもの5人に1人が過体重とするデータもあります。肥満は病気の元になります。栄養バランスを考えた食事によって、健康な身体を保ちましょう。
すべての人が栄養のある十分な食料を得るために
世界には今日明日の食べ物がなく、飢えに苦しんでいる人がたくさんいます。食事は生きていくために欠かせないもの。すべての人が十分に栄養を取ることができる世界を目指して、まずは毎日の食事を見直してみましょう。
監修者:蟹江 憲史(かにえ・のりちか)先生
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。SDGs策定過程から国連におけるSDGs設定に参画、「目標ベースのガバナンス」という概念を打ち立て、国際的に高く評価されている。国連事務総長より、2023年に国連が発行する『グローバル持続可能な開発報告書(GSDR)』を執筆する15人の科学者の一人に選ばれているSDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。『SDGs(持続可能な開発目標)』(2020年、中公新書)『未来を変える目標SDGsアイデアブック』(Think the Earth、2018、監修)、『SDGs白書2019』(インプレスR&D)など。
(掲載日:2021年3月12日)
文:丹下真美
編集:エクスライト
イラスト:小鈴キリカ
監修者プロフィール写真:市村円香