2020年5月に「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの取り組みを強化したソフトバンク。いま実際に、どのような取り組みが行われているのか、担当社員が自らの言葉で事例を紹介します。7回目は、環境配慮の一環として行われている「SIM」に関する取り組みです。
今回、話を聞いた人
ソフトバンク株式会社
コンシューマ事業統括 モバイル事業推進本部 パートナービジネス統括部 パートナービジネス1部 1課
松山 範子(まつやま・のりこ)
ソフトバンクでは、海外端末メーカーとの交渉や新規事業立ち上げなどを経験して、2015年からSIM担当に。現在は、SIM関連プロジェクト・企画・調達などを行っている。
環境に優しい「eSIM」登場。「USIMカード」と併用へ
通信事業者であるソフトバンクの主な事業は、目に見えない「通信」です。そのため一般的なメーカーとは異なり目に見える製品は多くありませんが、製品の1つにスマホや通信機器に入れる「SIM」があります。SIMは「Subscriber Identity Module」の略で、電話番号などの契約識別情報を記録するチップのこと。「USIMカード」からSIMを取り外して、スマホに入れた経験があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ソフトバンクでは、2021年7月14日から「eSIM」という組み込み式SIMの提供を開始しました。eSIMは、スマホなどに加入者識別情報を遠隔で書き込むことが可能。USIMカードを作る必要もなくなり、配送も不要となるため地球環境にも優しいのですが、完全にeSIMへと切り替わるには時間が必要で、物理的なSIMとの併用期間が続くでしょう。ただ、ソフトバンクでは、USIMカードについても可能な限り環境に配慮した取り組みを行っています。
「USIMカードでこんなに紙を使う必要ある?」が取り組みの原点
私がSIM担当になったのは2015年。そのとき最初に感じたのが「こんなに紙を使って包装する必要があるかな?」ということでした。以前、CSR関連業務を担当した経験があったので、物事を環境目線で考える習慣がついていたのが大きかったと思います。SIMの環境配慮について上司に相談してみたところ「チャレンジしてみよう」と賛成いただき、取り組みをスタートさせました。
紙の削減を考えるうえで鍵となったのは、取扱説明書の取り扱いです。製造物責任法では、製品に関する指示・警告等の情報を記載することが義務付けられています。そこでUSIMカードに同封していた説明書の内容はWebに掲載して、必要最低限の情報だけをカードの裏側に記載するように変更しました。
残ったのは、SIMカードを包装している封筒です。USIMカードのチップ部分は繊細で傷ついてはならないため、何かしらの包装は必要。どうしようかと悩んでいたとき、訪問したメーカーの工場で透明なラップを目にしました。
透明なラップならUSIMカードに印刷されたロゴマークなども確認でき、視認性も良いので「これだ!」とひらめいたんです。早速、いくつかサンプルを取り寄せてみたのですが、密閉されているとうまく開けることができません。USIMカードはショップのスタッフやお客さまが開封作業をするので、扱いやすさも非常に重要。そこで最適な包装の検討を始めました。
特許も取得! 1年間かけてたどり着いた最適なパッケージ
SIMカードを梱包するラップの開発には、1年ほどかかりました。ラップの仕組み自体はとてもシンプルなのですが、製造数も多いので生産コストも考慮しなければなりません。数え切れないくらいのサンプルを試作して、ラップの強度を確保したミシン目のピッチサイズ、圧着部分からミシン目への切り込みを入れ、確実に開封できるようにしました。この包装ラップと製造方法は、特許も取得※しています。
新しい包装ラップによるUSIMカードの出荷は2017年から部分的に開始し、2018年には全てのUSIMカードに採用しました。1年間で削減できる紙の量は、A4用紙換算で2,000万枚以上。USIMはスマホだけでなく、さまざまな通信機器に利用されているので、単体でみると小さな取り組みですが、トータル換算するとかなりの削減量になっています。
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特許第6745291号。2022年度、公益社団法人発明協会の地方発明表彰 発明協会東京優秀賞を受賞。
「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」の根幹を支えていく
環境配慮に鑑みるとSIMは全てeSIMにするのが望ましく、ソフトバンクの各ブランドでeSIMの提供を開始しています。しかし、カーナビや自動販売機、AEDなどの通信機器で利用されるSIMについては、当面はUSIMカードが使われるでしょう。そのためUSIMカードについては、今後もさらに環境に配慮した工夫を行い、資源の利用抑制に務めていく予定です。
「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げてSDGsを推進しているソフトバンク。この言葉にもあるように、今後はあらゆるものが通信によってつながり、新しいサービスが生まれ、人々の暮らしを良い方向へ変えていくはずです。
私自身、テクノロジーの進化によって障壁ができてはならないという考えを持っています。テクノロジーでメリットが生まれるのならば、誰もが等しく享受できなければ意味がありません。そんな思いで仕事に向き合ってきたので、SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方にも強く共感しています。
社会を変えていく通信の根幹を担うSIMは、今後ますます増えていくでしょう。その中で、小さなことを積み重ねながら、最適な対応を模索していきたいと考えています。
ソフトバンクのeSIMの詳細はこちらでご確認いただけます。
ソフトバンクのマテリアリティ④「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」
ソフトバンクは、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を特定。そのうち、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」を踏まえた「循環型社会の推進(サーキュラーエコノミー)」では、資源の利用を抑制するとともにリサイクルやリユースの促進を行います。
(更新日:2023年9月29日、掲載日:2021年11月25日)
文:ソフトバンクニュース編集部