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データ活用で“おばあちゃんの原宿”が変わる!? 地元の大学が巣鴨地蔵通り商店街の活性化にチャレンジ

データ活用で“おばあちゃんの原宿”が変わる!? 地元の大学が巣鴨地蔵通り商店街の活性化にチャレンジ

「おばあちゃんの原宿」という愛称で親しまれる東京・巣鴨の商店街。約200の店舗が並ぶ巣鴨地蔵通りには、イメージ通りの昔懐かしい雰囲気があるお店だけでなく、幅広い年代が楽しめるお店も多く並んでいるのをご存じでしょうか。実はここ巣鴨にある大正大学が主体となって、企業や商店街と力を合わせた地域活性化の取り組みが動き出しています。一体どのように巣鴨地蔵通り商店街を盛り上げていくのでしょうか?

商店街が学生の起業家精神育成の現場に

商店街が学生の起業家精神育成の現場に

歴史が長く高齢者に人気の街というイメージのある「巣鴨地蔵通り商店街」。実際に歩いてみると地元で人気のスイーツやパン、お惣菜、さらには地域の特産品を扱うお店など、さまざまなショッピングが楽しめる商店街となっています。一方、人々が集う地域の中核的な存在でありながらも、コロナウイルス流行の影響を受けるなどさまざまな課題を抱え、デジタル化の点でも後れを取っている現状があります。

病気が治るご利益があるとされる「とげぬき地蔵尊」

病気が治るご利益があるとされる「とげぬき地蔵尊」

巣鴨の新名物「だれかといっしょに すがもプリン」

巣鴨の新名物「だれかといっしょに すがもプリン」

巣鴨にある大正大学は、巣鴨の商店街を含む一帯の地域を「すがも街なかキャンパス」として、教室やアンテナショップ、カフェなどを展開し、地域活性化に取り組んでいます。大正大学の地域創生学部の授業「地域課題解決実践論」で行われている「ガモール堂運営プロジェクト」では、店舗に設置されたAIサイネージを生かして、店舗前の歩行者やサイネージの視聴者データに基づいた分析・検証を行っています。

同大学は、アントレプレナーシップ(起業家精神)人材の育成を目指し、地域貢献やデータサイエンス教育分野に注力しています。ビッグデータやAIなどのテクノロジーを活用して課題解決を目指すこの取り組みは、学生にとって実践経験を積む機会となります。

人の流れや世間の興味関心。集合データを分析すると“売れる”仕組みが見えてくる

今回の地域活性化への取り組みで肝となるのが“データの活用”です。主に駅前・店先・店内の人の動きや世間のトレンド、天候などのオープンデータを掛け合わせて分析し、来訪者の多い日や少ない日の要因を探ったり、キャンペーンやタイムセールの効果的な実施方法を企画したりすることで、来店者数の増加や売上の向上に役立てます。

活用する消費者の行動データには、人の流れや来訪者の年代、性別などがあり、駅前や商店街の入り口から店先、店内といったポイントで収集されます。商品の並びや売り上げなどのデータとあわせることで、特定商品の棚の前での来店者の滞在時間と陳列商品の売り上げの関係性や、サイネージ広告の掲載コンテンツごとの視聴率と広告表示された商品の売り上げの相関など、横断的な分析もできるようになります。

データ収集ツール 測定場所 読み取れるデータ
カメラ付きAIサイネージ 店の入り口 サイネージ広告の視聴率、性別、世代など
カメラ + AIボックス 店内・店先 店先の通行者数、店内の棚前に訪れた人数と滞在時間など
DS.INSIGHT 巣鴨エリア一体(駅前・商店街) ヤフーが保有する検索や位置情報などの統計データ

この取り組みで活用するデータの収集方法と種類

データの収集には、店内や店先などのカメラで取得した映像データをAIを活用して解析します。先進的なAI技術により、個人を特定できないように抽象化されたテキスト形式のデータへ変換されたうえでクラウドに送信され、データベースに蓄積されます。映像データそのものは、店舗のサーバーでAI解析処理後すぐに破棄されるため保存はされず、来訪者のプライバシーにも配慮されています。

左:ガモールマルシェ内に設置されたカメラ付きAIサイネージ

ガモールマルシェ内に設置されたカメラ付きAIサイネージ

右:店内のカメラで取得した映像データを店内にあるAIボックスへ送信しています

店内のカメラで取得した映像データを店内にあるAIボックスへ送信しています

より効果的な施策を打ち出すために、行動ビッグデータを分析できる「DS.INSIGHT」を用いて、検索ワードにひもづく統計的な人々の興味関心・トレンドデータを活用した分析も行っています。例えば、検索エンジンで「いぶりがっこ」と一緒に検索される上位ワードが「クリームチーズ」「ポテサラ」「レシピ」だったと分かった場合、オススメの食べ方を紹介するポスターや看板などを飾ったり、商品の配列を変えてみたり、ライブキッチンで実演してみるなど生活者の興味関心に基づいた施策を企画・実行できるようになります。

「DS.INSIGHT」で、検索キーワードをもとに最近のトレンドを可視化

「DS.INSIGHT」で、検索キーワードをもとに最近のトレンドを可視化

検索や位置情報を分析できる「DS.INSIGHT」

ヤフー提供のデスクリサーチツール。調べたいキーワードの検索量や、同時に検索された単語を可視化するなど最新のトレンドや生活者の興味関心や、特定エリアにおける人々の動きを分析することができます。大正大学の地域創生学部の授業「地域課題解決実践論」では、検索ワードに関する認知度や属性ごとの潜在的ニーズを調べる際に、本ツールが活用されています。

データ分析に基づく仮説検証サイクルの積み重ねで未来を予測

データ分析に基づく仮説検証サイクルの積み重ねで未来を予測

天気などのオープンデータとの掛け合わせによって、将来的には来店者が増えるタイミングや興味関心トレンドの予測を行い、商品の仕入れや陳列、キャンペーン企画などに役立てることも期待されています。
取得したデータの分析やそれに基づく施策の実行と効果検証といったサイクルに携わることで、学生は実践的なデータ活用の経験を培うことができます。

学生とともに商店街のデジタル化やデータ活用の推進を行うことで、デジタルを活用した店舗運営に対する商店街側の理解を促し、これからの社会に適応していくための変化の兆しを買い物という日常シーンから作り出すという狙いもあります。

地域の食材を生かした食事や落語を楽しめる「ガモール志學亭」

地域の食材を生かした食事や落語を楽しめる「ガモール志學亭」

マルシェ内には、お客さんに話しかけるソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」もいました

マルシェ内には、お客さんに話しかけるソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」もいました

今回の取り組みは、教育機関と企業によるそれぞれの知見を生かした産学連携によって行われています。大正大学は地域課題に対する知見提供やデータサイエンス教育の実践的なカリキュラム策定を、ニューラルポケット株式会社はカメラ映像のAI解析技術を提供しデータ収集の点で協力。2020年10月に大正大学と連携協定を結んだソフトバンクは先進テクノロジーの知見と経験を生かして、この取り組みを支援しています。

大正大学で魅力化推進部 部長を務める髙橋慈海さんは今回の取り組みへの意気込みを次のように語りました。

「集めたデータをどんな視点をもって分析し、地域が抱える課題の解決にどのように生かしていくか。それには、文系の学生だからこそ生かせる知見があると思っています。生活者に根差したデータを活用して地域の課題解決に向けた新しいソリューションを生み出せる学生を育成し、将来的には、商店街全体の活性化に貢献したいと考えています」

本プロジェクトメンバーの皆さんたち

本プロジェクトメンバーの皆さん

将来的には、全国90を超える地域と連携協定を結ぶ大学のネットワークを生かし、巣鴨の取り組みで培ったノウハウを全国地域への貢献に活用していく構想を立てているとのことです。

大学・企業・商店街が一体となって地域活性化を推進する東京・巣鴨にある巣鴨地蔵通り商店街。ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

(掲載日:2022年6月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部