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知れば知るほど深い宇宙の世界。天文学者が教える、一度は見てみたい天文現象

ロマンチックな星空を眺めよう! 学者に聞く、さまざまな天文現象の魅力

日々進歩している科学ですが、宇宙には、まだ分からないことがたくさん存在します。夜空を見上げれば美しい星々はいつも輝き、月食や流星群などの天体ショーはニュースでも取り上げられ、多くの人が関心を持つトピックではないでしょうか。そこで今回は、さまざまな天文現象の知識や魅力について、天文学者の本間希樹先生にあれこれお話を伺いました。

本間 希樹(ほんま まれき)先生

本間 希樹(ほんま・まれき)先生

アメリカ合衆国テキサス州生まれ、神奈川県育ち。
1994年東京大学理学部天文学科卒、1999年同大学院博士課程修了。同年国立天文台COE研究員、助教、准教授を経て2015年より国立天文台教授、水沢VLBI(超長基線電波干渉計)観測所所長を兼務。総合研究大学院大学および東京大学大学院の併任教授(現任)。
専門は電波天文学で、VLBIを用いて銀河系構造やブラックホールの研究を行っている。著書に『巨大ブラックホールの謎』(講談社ブルーバックス)、『国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ』『宇宙の奇跡を科学する』『国立天文台教授がおどろいた ヤバい科学者図鑑』(扶桑社)など。2017年よりNHKラジオ『子ども科学電話相談』の回答者も務める。

目次

あなたはすべて知っている? 毎年見られる主な天文現象

珍しい天文現象は、数十年、数百年に一度と思われがちですが、実は毎年決まった時期に見られるものも数多くあるのです。では、いったいどんなものが見られるのか? 代表的な天文現象を、おさらいしておきましょう。

①流星群

①流星群

地球の周りを漂う数mm〜数cmほどの小さなチリが、地球の重力に引っ張られて落下する際に大気と激しく衝突して、高温になった大気が光を放つ現象です。そのチリをまき散らしたのは彗星で、太陽に近づいた際にたくさんのチリを放出し、彗星の軌道に沿って帯状に残していきます。公転する地球がそのチリの帯と交差するとき、チリがたくさん大気に飛び込んでくるわけです。地球がチリの帯を横切る時期は毎年決まっているので、地上からは同じ時期に同じ方角で流星群が出現するように見えるため、その近くにある星座の名前が付けられます。特に多くの流星が出現する「しぶんぎ座流星群」(12~1月)、「ペルセウス座流星群」(7~8月)、「ふたご座流星群」(12月)を三大流星群と呼んでいます。2023年は、昨年と同じく12月のふたご座流星群が、数年ぶりの好条件で見られると予測されています。

②彗星(すいせい)

②彗星

太陽系の天体の一種で、長い尾をひいて輝くため「ほうき星」とも呼ばれます。直径1〜数kmの塊で、微細なチリと氷からできているので、「汚れた雪だるま」と表現されることも。太陽の重力によって引き寄せられるのですが、彗星は太陽に近づくと熱で表面が溶けて放出されるチリやガスの量が多くなります。その結果、尾も明るく長く伸びていくのです。
太陽に近づいてくる周期は彗星ごとにバラバラで、短いものは数年~数十年程度、有名な「ハレー彗星」は約75年で戻ってきます。約11万4,000年周期の「百武(ひゃくたけ)彗星」のようなとんでもなく長い周期のものも存在し、このような彗星は一度見たら生きているうちは二度と見られません。彗星は暗いものも含めれば結構数があるので、毎年何個かは太陽に近づきます。ただし、肉眼で楽しめるような大彗星が出現するのは5~10年に1回程度です。2023年は、ZTF彗星が1月から2月にかけて明るくなると予想されています。

③月食

③月食

月食とは満月の時に、月が地球の影に隠れる現象のことで、一部分が欠ける「部分月食」と、全部が隠れる「皆既月食」があります。太陽-地球-月の順番で一直線上に並ぶときに見られます。皆既月食中の月は実は真っ黒ではなく、「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれる赤黒い色に見えますが、これには、さまざまな色を含む太陽光と地球の大気が関係しています。太陽光が大気を通過するとき、青い光は空気の粒によって散乱してしまいますが、赤い光は影響を受けにくく、大気を通り抜けることができます。そのような地球の大気を通り抜けた赤い光が月を照らしているので赤くなるわけです。月食は毎年1~2回発生し、発生した場合には地球上の広い地域から観測できるので、目にする機会が多い現象です。

④日食

④日食

月食とは変わって、太陽-月-地球の順番に一直線上に並び、太陽が月に隠され欠けて見えるのが日食です。太陽の一部が隠される「部分食」、太陽の全てが隠される「皆既食」、月より太陽のほうが大きく見え、リングのように光って見える「金環食」などの種類があります。特に皆既食と金環食は、実際には全く大きさの違う太陽と月が、地球からのちょうど良い距離感により、見かけの大きさがほとんど同じになることで起きる現象です。太陽と月の二天体がほぼ同じ大きさに見えるのは全くの偶然なので、人類がこれを楽しめるのは極めて幸運といえます。昔は、日食は不吉なことが起こる前兆とも考えられていて、平安時代の日本では源平合戦中に日食が起き、日食が起きることを知らなかった源氏方が動揺して負けたと言われています。2023年は、南西諸島、九州南部、四国南部、近畿南部、伊豆半島〜房総半島など一部の地域で、4月に部分日食が見られます。日食は毎年2回程度発生しますが、観測できる地域が狭い範囲に限られるので、月食に比べると見るチャンスが少ない現象です。

  • 治承・寿永の乱の「水島の戦い」(1183年11月17日)での戦闘中に金環食が起きています。

数百年に一度!? 天文学者も観察したいレアな現象

短い期間で定期的に見られる天文現象に比べ、数十〜数百年といった長期のペースで起こるレアなものをご紹介。

①超新星爆発

①超新星爆発

「超新星」という言葉とは真逆で、年老いた星の寿命が尽きた時に起こる大爆発のことです。まるで新しい星が突如誕生したかのように昼間でも見えるほど明るく輝く現象で、私たちの住む天の川銀河の中でもおよそ100年に一度のペースで起きています。近年では、オリオン座の右肩にあるベテルギウスという星の寿命が尽きつつあるため、超新星爆発を起こす可能性もあります。ですがこの星の寿命は百万年単位という長大なものですので、超新星爆発は明日起きるかもしれず、1万年後かもしれないというほど、具体的な時期は予想できません。私自身、一生に一度はぜひ見てみたいですね。

②月食+惑星食

②月食+惑星食

月食と、月が惑星を隠す「惑星食」が同時に発生する現象。数百年に一度起きる非常に珍しい現象です。2022年11月に起きた「皆既月食+天王星食」は、月食と惑星食が同時に日本で見られるものとしては442年ぶりのものでした。天候や時間帯なども条件が良く、日本全国多くの場所で見ることができました。次に日本で見られる月食+惑星食は、322年後までありません。

③火星の大接近

③火星の大接近

火星と地球の距離は常に変化していて約2年2カ月ごとに「最接近」しますが、地球と火星の軌道が楕円(だえん)である関係で、毎回見える大きさは異なります。「大接近」は、地球と火星の軌道が比較的近いところで起こる「最接近」のことで、15〜17年に一度見ることができます。「最接近」に比べて非常に明るく、火星観察の大チャンスです。

ロマンチックな星空を最大限楽しむために。よく見える条件・観察に適した場所とは?

せっかくの貴重なチャンスを思いきり楽しむために、最大限の準備をして臨みたいもの。見る時のコツや見えやすい場所について、本間先生にポイントを伺いました。

光が全くない場所がベスト。自宅でもベランダなどで気軽に楽しんで

光が全くない場所がベスト。自宅でもベランダなどで気軽に楽しんで

天体観測をする際に適したスポットはどんな場所でしょうか?

ベストは、肝試しに行くような周りが見えない真っ暗な場所です。近くに街灯が1つでもあったら途端に条件が悪くなるので、山の中や畑の真ん中などが最適。暗闇に人間の目が慣れるには時間がかかるので、暗いところで20分ほどかけてゆっくり目を慣らしてから観測を始めましょう。その他、晴れていること、月がないこと(新月や月が沈んだ後)が良い条件として挙げられます。標高については人によって感じ方の差があるので、あまり気にしなくてよいと思います。

とはいえ、なかなか遠方まで足を運べない場合は、自宅のベランダや庭、屋上からでも条件がそろえば観察することができるでしょう。その他、校庭や公園や河川敷などは比較的視界が広いので、広い夜空を見ることができると思います。とにかく、明かりが少ない場所を探してみてくださいね。

天体ショーに備えよう。2023年の天文現象カレンダー!

2023年の主な天文現象をカレンダーとして掲載。

本間先生注目、2023年の天文現象カレンダー
天文現象
1 4日:しぶんぎ座流星群が極大
2 ZTF彗星
3 24日:沖縄など一部地域で金星食
4 20日:南西諸島や九州、四国南部、紀伊半島などで部分日食
インド洋からインドネシア、太平洋などで金環・皆既日食
22日〜23日:こと座流星群が極大
5 6日:半影月食
7日:みずがめ座η流星群が極大
6 月末:うしかい座流星群
7 下旬:みずがめ座δ流星群、やぎ座流星群が極大
8 13日:ペルセウス座流星群が極大
20日:はくちょう座流星群が極大
9 29日:中秋の名月(十五夜)
10 10日:りゅう座流星群が極大
12日:オリオン座流星群が極大
29日:全国で部分月食
11 18日:しし座流星群が極大
12 14〜15日:ふたご座流星が極大
22〜23日:こぐま座流星群

今年部分日食を見るなら九州・四国へ

4月20日に起こる部分日食は、日本全国で見られる訳ではなく、国内では、南西諸島や九州、四国南部、紀伊半島など、限られた場所でしか見ることができません。その分レア度も高い貴重な機会なので、見たい方は、遠征してみてはいかがでしょうか?

数十年ぶりの好条件! ふたご座流星群に注目

2023年の注目は、数十年ぶりの好条件で見られるふたご座流星群です。見頃は12月15日未明。今年は夜間に月明かりもないため、良い条件下で観測したら1時間あたり50個ほどの流星が期待できると予想されています。

何度見ても魅了される、天文現象の魅力とは?

最後に「銀河系」の研究者である本間先生にとって、宇宙にはどんな魅力を感じますか?

私は小学校の時から星を眺めるのが好きで、流星群を寝っ転がって2時間くらい眺めていたこともあります。夜空や月の美しさに魅了され、やがて「宇宙はどうなっているんだろう?」という興味が湧き、研究の道に進みました。子供のときは親にねだって買ってもらった天体望遠鏡で夜空を見ていましたが、現在は電波望遠鏡で宇宙を観測しています。

普段は肉眼では見えないものを対象にしているので、時々自分の目で夜空を見ると、宇宙の壮大さを改めて感じます。星や夜空の裏に隠れた謎も含めて、引き込まれますね。きれいな星空や天文現象を眺めることで、広大な宇宙を感じることができますし、そこに誕生した私たちの存在の尊ささえ味わえるのが、最大の魅力だと思います。天体観測はちょっとした知識を持てば何倍も楽しめるので、ぜひ気軽にロマンチックな夜空を楽しんでみてくださいね!

何度見ても魅了される、天文現象の魅力とは?

(掲載日:2023年1月23日)
文:辰巳健太(リネイロデザイン)
編集:小林新(Roaster)、ソフトバンクニュース編集部

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