皆さんは突然、夜空を見上げて、キレイな月や星が見えたときにスマホで思わず撮影したいと思ったことはありませんか?でも、その場で撮った写真を見ると、「見ている夜空と違う!」とがっかりした経験があるのではないでしょうか。
昼の撮影に比べると夜の撮影は難易度が高いのですが、ちょっとしたコツをつかめば、簡単に感動的で、比較的珍しい写真が撮れるかもしれません。そこで星空の写真を撮る方法を解説します。
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- ※この記事では紹介するスマホの操作手順は、一般的な操作を掲載しています。機種によって異なる場合があります。
神崎 洋治(こうざき・ようじ)
TRISEC International,Inc.代表。
テクニカルライター兼コンサルタント。報道写真や商業写真を年間4千枚以上撮影。デジタルカメラやレタッチ関連の書籍も多く執筆、監修しているほか、初心者向けに撮影やレタッチ講座の連載、人を引きつける写真の撮り方の講演実績など多数。
Twitter:@internetman
目次
【基本編】知っておくとすぐに役立つ撮影テクニック
プロの写真家が星や夜空を撮る場合、周到な準備をしてのぞみますが、スマホの利点はふとしたときに誰でも簡単に撮ることができる点です。そこでキレイな写真を撮るため、すぐに役立つポイントを3点紹介します。
テクニック① 写真の明るさを調整しよう
カメラを撮影するときに真っ暗で夜空が撮れないという場合、写真の明るさを変えて撮ってみましょう。露出補正を使って、夜空を明るくして撮ると、夜景はキレイに、星空もよりハッキリと撮ることができます。
露出補正の方法
基本的な操作として、撮影したい箇所にスマホを向けて、画面に写る最も遠くにある被写体をタップすることでそのポイントにピントと露出が合います。
<iPhoneの場合>
被写体を長押しすると、そのポイントのピントと露出が固定されるようになります。後は、画面上を指で上にゆっくりと、こするようにドラッグして太陽のマークのスライダーを上げると写真の明るさが上がり、下げると暗くなります。
<Android 搭載のスマホの場合>
横にして持った場合、画面の上に太陽のマークとゲージが表示されます。その状態で画面を指で左にスライドすると、写真の明るさが上がり、右にスライドすると暗くなります。
その際、露出補正された数値も表示されます。
画面が明るくなって夜の景色が明るくなりました。画面では夜空に星は見えてきましたか?
スマホはノイズが入りやすいので注意が必要
スマホは簡単に露出補正できるのですが、明るくし過ぎるとざらざらに見え、画質の繊細さが失われる「ノイズ」が目立ってしまいます。ノイズを抑える機能がスマホには搭載されているのですが、明るく補正しすぎには注意しましょう。
なお、スマホで暗いところを撮影する場合、ノイズは少なからず必ず出てしまいます。できるだけ明るさで調整することが大切です。
テクニック② 手ぶれに注意
どんなキレイなシーンでも、スマホがぶれると残念な写真になります。でもぶれた経験は誰にでもあるはずです。最近のスマホには「手ぶれ補正」機能が搭載されている機種もあり、多少は抑えられますが、それでも注意は必要です。手ぶれを抑える対策は2点です。
柵や塀、手すりなどにスマホを固定する
コツは柵や塀、手すりなどにスマホを固定して持って、スマホがぶれないように慎重にシャッターボタンを押す方法です。アナログな方法ですが、簡単にぶれを抑えることができますよ。
テクニック③ズームを使う場合は光学ズームで
ズーム(望遠)機能を使うと大きく撮影できますが、ズームには大きく「光学ズーム」と「デジタルズーム」があり、デジタルズームは画質が落ちるデメリットがあります。
光学ズーム |
望遠レンズを使って拡大するため、画質は落ちないのでおすすめしたい方法。 |
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デジタルズーム |
画像の一部だけを大きく拡大して、あたかも望遠のように見せる技術。拡大するため、画像が荒くなったりぼやけて見えるのでおすすめしない方法。 |
機種によりますが、あるスマホだと望遠レンズを使った光学ズームは2倍まで、それ以上、ズームするとデジタルズームに自動的に切り替わります。画角が広い「広角」で撮った方が雄大な構図になるため、なるべくデジタルズームは使わず、光学ズームの範囲で撮影しましょう。
ちなみにスマホに望遠レンズをつけるアクセサリーなども活用できますが、後ほど紹介します。なお、ズームする場合は視野も狭くなることから、スマホを少し動かしただけで手ぶれが発生します。こちらも注意してください。
肉眼とスマホで見た場合に違いが出るのはなぜ?
例えば月や星を撮るとき、目で見た場合に比べてスマホで撮ると小さく写ってしまうと感じる場合があります。これはスマホは「広角レンズ」が標準になっていることが理由なんです。
プロカメラマンなどが一眼レフのカメラで撮影する場合、レンズを切り替えていることがあると思いますが、標準レンズ(50mm)が、人間が見ている視野や画角に近いといわれています。一眼レフでは撮影する用途に応じて使い分けているんですね。
【実践編】星景写真は構図を意識して撮ろう
撮影には構図(配置)が重要になってきますが、その前に写真の種類として、大きく2種類あることを知っておきましょう。ちなみに今回は星景写真を中心に紹介します。
星景写真と天体写真
星景写真(せいけいしゃしん)
風景写真の中に星や星座などが入ったもの。街の明かりや山の稜線の上空に広がる星空や月を、写真の配置(構図)の中に収めることで星景写真になる。
天体写真
星そのものや星座、星雲などを写す写真。天文写真とも呼ばれます。夏の夜空に広がる天の川や、冬のオリオン座などがその代表。月そのものを撮影した写真も天体写真になる。(この写真は一眼レフカメラで撮影したものです)
星景写真を撮ろう
星景写真は星が見える場所を選ぶことが重要ですので、できるだけ暗く、肉眼でも星がよく見える場所が理想です。山の稜線、道路の街灯、夜景などが構図の一部に入るようにして撮ります。
構図① 星空を多めに、街灯や建物の明かりを入れる
星空を多めに、その下に街灯や道路、建物の明かりを入れた構図です。街灯や道路、建物の色合いがキレイですが、その分、空が明るいと見える星は少なくなるのが特長です。
構図② 明かりのない場所と夜空を入れる
江の島海岸(神奈川県)で撮影しました。明かりがない海に、左には江の島灯台(江ノ島キャンドル)、右には月が入るように撮りました。この日は天候が不安定で雲も多かったのですが、雲が月の光に照らされて幻想的に見えます。
構図③ 真っ暗な場所であえて夜空を撮る
あえて真っ暗な夜空を撮るのも星が見えて美しく感じます。この写真では下側にある街の明かりでともされたスピーカーが幻想的に見えます。
「中秋の名月」の撮影に挑戦!
ちょうど「中秋の名月」(2019年9月13日)に合わせて撮影できたので、その日の写真を紹介する・・・予定だったのですが、ちょうどその日の天気は曇り、台風の影響で空は厚い雲に覆われてしまいました。そのため、月を撮ることはほとんどできませんでした。
でも、雲の間からのぞく小さなお月さまはそれですてきなので、その写真を紹介します。ちなみに撮影場所は「すすき野原」で知られる箱根の仙石原です。秋の七草のひとつ、ススキで一面に広がるススキの高原です。
雲の切れ間からのぞいた名月、夢中でシャッターボタンを押しました。月がキレイに丸く見えるよう、露出を暗めに撮りました。
景色が見えるように露出を明るくしました。明るく露出補正した分、月は露出オーバーで白くぼやけます。
明かりがない場所だったので、夜景モードを使って撮影してみました。機種によっては夜には見えないほど明るく撮影できることもあります。お使いの機種でモードがある場合はぜひチャレンジしてみてください。
行燈でライトアップされていたので、地面にカメラを寄せて夜空が入るように撮影しました。幻想的な雰囲な遊歩道になっていますね。
【応用編】月の撮影時期や天気の確認、これであなたもプロの仲間入り!?
多くのテクニックにふれましたが、「失敗しない撮影をしたい!」という方のためにもう何点かポイントを紹介しましょう。
撮影前に条件を確認する
月見表・月齢カレンダーで日程を決める
月を入れた写真を撮る場合、インターネットなどで月見表、月齢カレンダーを調べてみましょう。
「満月」の場合、月あかりで空全体が明るいため、きれいな月は見られますが、暗めの星は見えなくなります。逆に「新月」だと真っ黒で月は見えませんが、夜空が暗いので比較的光が弱い星も見えます。
「十五夜」という言葉がありますが、月は15日かけて新月から「三日月」「半月」そして「満月」に変わります。撮りたい写真をイメージして撮影に最適な夜を選びましょう。
知っておくと便利!? 満月の名前と見どころ
各月の満月には、それぞれ名前がついています。地域によって呼び名が変わる場合もあるそうですが、満月の時期にこの名前がSNSなどで話題になることがあります。この時期を狙って撮影するとよいかもしれません。
- 1月:ウルフムーン
- 2月:スノームーン
- 3月:ワームムーン
- 4月:ピンクムーン
- 5月:フラワームーン
- 6月:ストロベリームーン
- 7月:バックムーン
- 8月:スタジェンムーン
- 9月:ハーベストムーン
- 10月:ハンターズムーン
- 11月:ビーバームーン
- 12月:コールドムーン
この満月の名前以外にも、1年で一番大きい満月をスーパームーン、一番小さい満月をマイクロムーン(ミニマムーン)、満月が赤っぽく見える「皆既月食」をブラッドムーン、1か月の間に2回目の満月が見られる場合に2回目の満月をブルームーン※、中秋に見ることができる美しい月として「中秋の名月」などがあります。
これらは年によって該当する月が変わるため、具体的な日付を確認したい場合は、インターネットで検索すると紹介されていますよ。
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ブルームーンは1か月の間に2回目の満月が見られない年もあります。2022年はありません。
出かける前に天気を確認する
一番注意しなければならないのは「天気」です。せっかく出かけても、雲が多ければ星は見えません。いつも使っている天気予報サイトやアプリで事前に確認しておきましょう。
時間で天候は変わりますので、時間単位の予報などを確認し、「晴れ」もしくは「月のマーク」が表示されていたら出かけましょう。
現地で月や星座を位置を知る
月や星座の位置を調べるアプリがあります。場所と時間を指定すると、そこから月の方角や星座の位置が分かるので、撮影位置を確認できます。
最近はスマホを夜空に向けるとARで星座の名前が表示されるアプリもあります。今回はあまり紹介できていませんが天体写真を撮影する場合はとても便利なので、ぜひ使ってみてください。
撮影のアクセサリーを購入する
スマホ対応の三脚を使う
一眼レフカメラも同じですが、スマホでも専用の三脚を使うことで安定した撮影ができます。
リモコンが付属している製品もあります。これは、Bluetoothでスマホと接続し、リモコンのボタンを押すとスマホのシャッターが切れるタイプの製品でシャッターボタンを押すときの手ぶれを抑えられますし、手が届かない位置にスマホをおいていても撮影が可能です。
スマホ用三脚(Yahoo!ショッピング) Bluetooth シャッターリモコン(Yahoo!ショッピング)スマホに装着できる望遠レンズを使う
月の写真を光学ズームで拡大して撮影したいという場合は、光学ズームができる市販の望遠レンズを用意することです。使い勝手がよい製品が少ないのですが、あると便利ですよ。
このようにスマホに望遠レンズを装着できるアクセサリーがあります。三脚はレンズに付属します。この望遠レンズで撮ったものは後で紹介する月の写真です。
ただし、撮影した写真はレンズに依存するため、円形に写ってしまうものもありますので注意が必要です。
スマホ用望遠レンズ(Yahoo!ショッピング)コツを意識して、楽しみながら撮影にチャレンジしよう!
スマホなら一眼レフなどで撮るときに比べ、簡単に夜空の撮影ができるようになりました。テクニックを使えば、こんな月の写真もスマホで撮れるようになるはずです。唯一の難点はノイズが多いことで荒く見えるのが残念ですが、気軽さを考えると問題ない部分だなと感じています。
一番のポイントは露出の補正や構図を変えて、納得がいくまで、いろいろ工夫しながら何度も写真を撮ることが大切です。そうすれば、きっと思い出に残る一枚があるはずですよ。
(掲載日:2019年10月2日、更新日:2022年5月12日)
文・写真・監修:神崎洋治
編集:ソフトバンクニュース編集部
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