「テクノロジーでSDGsに貢献する」をテーマに子どもたちが自ら発見した社会課題の解決に取り組むプロジェクト「STREAMチャレンジ2023」の表彰式が3月12日にオンライン配信され、ファイナリストとして選出された精鋭15チームのプロジェクト紹介が行われました。「AI部門」5組、「Pepper部門」10組の各部門で、最優秀賞に輝いた斬新なプロジェクトは…!?
MCのお笑い芸人・パンサーも数々の創造的な取り組みに思わず関心。受賞式直後に、パンサーの皆さんとコメンテーターを務めた慶應義塾大学教授で、イベントを主催した超SDGsラボの石戸奈々子さんに特別にお話を聞きました!
STREAM※チャレンジ
ロボットやAIといったテクノロジーと共生する社会の実現に向け、PepperやAIを活用したクリエイティブな発想で、子どもたちが自ら発見した社会課題の解決に取り組む探究活動を社会全体で応援するプログラミング教育プロジェクト。
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「STREAM」とはSTEAM教育(Science(科学)、 Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)Arts(リベラル・アーツ)を統合的に学習する教育)にRobotics(ロボット工学)、Reality(現実性)、Reviewing(評価)の観点を入れ、頭文字のRを加えたものです。
目次
- AIやPepperを使って解決したい! 遊び心満載のプロジェクトが続々提案
- ファイナリスト15チームから最優秀賞に輝いたのは……!
- 印象に残ったのはどのアイデア? パンサーの皆さんに特別インタビュー!
- テクノロジー×SDGsで創る未来へ。「超SDGsラボ」石戸教授からの総評
AIやPepperを使って解決したい! 遊び心満載のプロジェクトが続々提案
参加した子どもたちはこれまで、自由に課題領域を設定できる共通テーマ「テクノロジーでSDGsに貢献しよう」と、本プロジェクトに賛同するパートナー団体・企業から提供されるリアルな課題の選択テーマ「難民」「移動弱者」「災害」「消費体験」の中から、自ら課題を見つけ出し、解決に向けて各々プロジェクトに取り組んできました。
課題解決の鍵となるのはテクノロジー。「AI部門」と「Pepper部門」に分かれて行われた本プログラムは、ソフトバンク提供の探究学習でAI活用人材育成を目指す教材「AIチャレンジ」や、ソフトバンクロボティクスが提供する「Pepper for Education」や「Pepper社会貢献プログラム」の参加団体がメインとなっています。
「子どもたちのアイデアには毎年驚かされるので、今年もどんなテーマがあるのかとっても楽しみです!」
「楽しみですね~! 各発表の後には菅さんと尾形さんにも社会を解決するアイデアを聞いていきたいと思いますので考えながら見てくださいね!
ちなみに、菅さんと尾形さんはSDGsに向けて何か取り組んでることありますか?」
「いやもうめちゃくちゃやってますよ! 服とかね、後輩に全部譲ってますから! で、それを後輩がフリマアプリで売って高級な時計を買うっていう…」
「(笑)まぁ、捨てないって大事ですよね。菅さんは何かありますか?」
「僕はですね……」
菅さんの発言を聞いた尾形さんは「すげえなお前!」と驚きます。菅さんのやっていること、気になりますね(ぜひアーカイブ動画の冒頭を見てみてください)。
子どもたちはAIやPepperを使ってどんなSDGs貢献プロジェクトに取り組んだのでしょうか!?
ファイナリスト15チームから最優秀賞に輝いたのは……!
各チームが注目した社会課題は、「給食の完食人数を増やしたい」といった学校ならではの着眼点や、「タバコのポイ捨てを減らす」「災害後の避難所での生活を安全にする」「保護猫を守る」… など、目の付け所がさまざまです。


紙芝居形式や寸劇を実演するなどくすっと笑ってしまうような子どもらしさ満載のものや、自分たちで動画編集した映像を上映するなど、子どもたちの工夫がいっぱい
「社会課題についてよく考え抜かれていて…、本当に素晴らしいですね!」
「さっきから子どもたちが普通に使ってる『マイクロビット※』って、知ってて当たり前の言葉なんですか…!?」
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子ども向けのプログラミング教育用に開発されたLED、温度や光・加速度センサーなどの機能を搭載している小型コンピューターボードのこと
子どもたちの発表のレベルの高さに一同感心のご様子。プロジェクトの成果発表後、株式会社丸井グループや国連難民高等弁務官駐日事務所、ファインピース株式会社、LINE株式会社など、関連分野の企業や国際機関、民間団体の有識者が良かったところや改善点を子どもたちに伝えていきます。実社会の最前線で課題解決に取り組む大人からのフィードバックは、学校内だけでは得られない貴重な体験です。
そしていよいよ最優秀賞の発表です!
「AI部門」と「Pepper部門」でそれぞれ最優秀賞に輝いたチームに感想を聞きました。
「AI部門」最優秀賞
岩手県立盛岡商業高等学校 所属 熊川山小(くまがわやまこ)「サーモ君」
車内での置き去り事故をサーモグラフィとカメラ画像解析で解決する「サーモ君」を提案。

(生徒の感想)
「自分たちが自信を持って取り組んだ企画がいろんな方に評価されたことがうれしいです。印象に残ったのは、実際に車関連の社会課題解決をしている方にフィードバックをいただけたこと。今回の経験を生かして、AIをさらにうまく活用し、もっと社会に役立つアイデアを提案していきたいです!」
「Pepper部門」最優秀賞
掛川市立北中学校 所属 掛川北中Pepper部「SDGsに貢献するPepper」
SDGsに楽しく取り組んでもらうことを目指して、身近に取り組める10個のゴールに焦点を当て、Pepperにクイズやご褒美QRコードを搭載。

(生徒の感想)
「優勝できてうれしいです! 中学3年生で、受験勉強をがんばる中で本プロジェクトに取り組んできて大変でしたが、放課後や土日に集まってプログラミングをした努力が実ってうれしいです。協力してくれた学校の皆さんにも感謝しています」
「発表形式も完璧でしたね~! これだけいい若者が世の中にいて、社会課題について考えてくれていてホント安心します!」
印象に残ったのはどのプロジェクト? パンサーの皆さんに特別インタビュー!
MCとして大会を盛り上げたパンサーの皆さんにもお話を聞いてみました。
収録お疲れさまでした! とっても盛り上がった大会でしたね。どのプレゼンが印象に残りましたか?
「いや~ホント全部よかったよね」
「それぞれのプレゼンでハッとさせられる視点もあり、『子どもたちはそこまで考えているんだ』という驚きがありました。僕たちも舞台に立つ側なので、そういう意味だと稽古量がみえた最後の飯塚市立若菜小学校「若菜っこボンバーズ」のおみくじのアイデアはすごくよかったですね」
「うんうん、元気良かったしね」
「相当計算しつくされてたよね。マイク使ったほうが声が聞きづらくなるという… (笑)ああいう発表は見てても楽しいですよね」
見ていてとても楽しい発表ばかりでしたね。試してみたいアイデアはありましたか?
「ゴミ分別とかいいですよね。町だけじゃなくてゴミが増えてきている海でも使えそう」
「『サーモ君』なんて、何年後かに実現しますよね絶対。あれ株とか買いたいよね(笑)」
「子どもたちの有望なアイデアに、思わず先行投資したくなるよね」
パンサーの皆さんがPepperやAIをネタにするなら、どんなお笑いができそうですか?
「実は昔、僕がPepper役をしたネタがあるんですよ! もはやPepperを入れたら俺いらなくなっちゃうよ…」
「尾形さんじゃなくてPepperのほうがウケてたりね…(笑)」
「AIにとって変わられるのではなくて、お互いに足りない部分を補っていくのが大事なんだなと。できることとできないことがあると思いますし、熱湯風呂とかリアクション芸をこれまでいろいろやってきていますけど、そういうものは芸人ならではですよね」
ちなみに、Pepperをパンサー4人目に入れるならボケですか? ツッコミですか?
「うーん、ツッコミですかねぇ…」
「一応僕ら3人はボケとツッコミと、『元気』でやってますから。もう一人『元気』でもいいよねぇ!」
一同:(笑)
「『元気』2人は、ちょっといいかな…」
テクノロジー×SDGsで創る未来へ。「超SDGsラボ」石戸教授からの総評
プログラミングコンテスト「STREAMチャレンジ 2023」を主催した「超SDGsラボ」の石戸教授にも、成果発表を受けて総評を聞きました。
話を聞いた人
石戸 奈々子(いしど・ななこ)さん
CANVAS代表、慶應義塾大学教授、B Lab所長
「STREAMチャレンジ2023」を主催する「超SDGsラボ」のプロジェクトディレクター。京都超SDGs コンソーシアム(京都大学、京都市、ソフトバンクほか企業約10社)と共同で、テクノロジーを活用して社会課題に取り組み、社会実装しようとするこどもたちのアクションを社会全体で応援する活動を推進。
STREAMチャレンジ2023」を終えて感想をお聞かせください。
例年、課題発見力や構想力、実装力すべてにおいて、子どもとは思えないレベルで驚愕しかないのですが、3回目を迎えた今回のSTREAMチャレンジでは駄菓子屋やジェスチャーを使った解決策など、子どもらしい発想もたくさんありました。オリジナリティあふれるアイデアにテクノロジーが掛け合わさって、実効性がありながらもユニークな社会課題解決になっていました。過去のアイデアを参考にしつつも、過去に引きずられず自分たちらしい発想を大切にする子どもたちの姿が見えてきましたね。
ChatGPTや画像生成AIの登場により、AIを使いこなす力が重要になってきていると多くの人たちが実感したこのタイミングで、今年から「AI部門」を設けたことも、AIの使い方を社会全体で考えるよい機会になったと思います。
探究学習やプログラミングのコンテストは他にもありますが、この大会ならではの特長や教育界での意義などあれば教えてください。
社会と接点を持ちながら、テクノロジー×クリエイティビティで本気で社会課題を解決するプロジェクトであることが特長です。社会とつながりながら検討する場が提供されることで、机上の空論ではなく、現場の課題をしっかりと理解した上で解決方法を考えることができます。その道の専門家によるアイデアへの建設的なフィードバックがもらえることで、実装に近づきます。
私たちが目指すのは、テクノロジーを活用した社会課題解決型探求学習の普及です。社会課題解決の方法はさまざまあって、テクノロジーを使うことだけが全てではありませんが、テクノロジーがあるからこそより多くの人たちを巻き込みコストを抑えつつ、社会課題を解決することもできます。実践的な探究学習を通じて、テクノロジーに関するリテラシーが上がっていくことも本プログラムの特長ですね。
ますます重要性が増していくプログラミング教育を、今後どのように発展させていきたいですか?
学校教育において、プログラミングを読み書きと同列に必修化したということは、これからの時代を生きていくための基礎教養として全ての人が身につけなければならないリテラシーであることを意味します。AIも重要性を増していく中で、どうやって全ての人のリテラシー向上に寄与するかが重要です。
GIGAスクール構想によって1人1台タブレット端末が導入され、環境は整備されました。今回のSTREAMチャレンジのようなコンテンツや教材を合わせていくことで、より良いプログラミング教育が日本に定着していく可能性が大いにあるんじゃないかと思っています。
課題発見や技術の面でも子どもたちをサポートをするSTREAMチャレンジのような場を民間でもっと創っていき、教育機関と密接につながりながら、子どもたちにとってよりよい『テクノロジーを使った社会課題解決型探究学習』が広がっていくといいなと思います。
(掲載日:2023年3月20日)
文:ソフトバンクニュース編集部