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技術進化への投資機会を逃がさず、守りと攻めを両立 -ソフトバンクグループ株式会社 2023年3月期 決算説明会レポート

2023年5月11日、ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)の2023年3月期 決算説明会が開催され、取締役 専務執行役員 CFO 後藤芳光は「守りを固めた結果、重要指標であるNAV・LTVは安全なレベルであり、手元流動性も大幅に増加した」と説明。2023年度は「守り」「攻め」に対応できる財務運営を行う方針を示しました。

目次

さまざまなリスクがある中で「守りを徹底」し安全な財務運営を実現

冒頭、後藤は「この1年間、市場は非常に不安定な状況が続いた。大きな地政学的リスク、ロシアによるウクライナ侵攻や米中摩擦の深刻化などは想定の範囲内だったが、少しでも良くなるかなという期待は、なかなか実現していない。その中でも守りをしっかりと固めた1年だった」とした上で、連結業績について説明しました。

2022年度通期の売上高は6兆5,704億円、投資損失は8,351億円、税引前損失は4,691億円、純損失は9,701億円と対前年度比でいずれも回復。

連結業績

投資損益について、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下「SVF」)の投資損益は「2022年度は前年度よりもさらに厳しく5兆3,223億円の損失となったが、持株会社投資事業において主にアリババ関連の取引で4兆5,605億円の利益を生み出し、連結ベースで大幅に改善した」と説明しました。

投資損益

純損失は、第3四半期で約7,834億円を計上したのに対し、第4四半期は576億円と改善方向。

純利益

為替影響について「円安によりSBGが最も重要な経営指標とするNAV(時価純資産)はプラス1.3兆円で着地」したことを説明。また金利上昇の影響についてSBG単体の有利子負債に占める固定金利の割合は77%と大半を占め、低金利で固定化されていること、変動金利の米ドル建ての負債(14%)は受取利息の上昇によって相殺されていることに加えて、円ベース(9%)でも金利が1%上昇しても全体への影響は軽微であり財務リスクはないと説明しました。

為替影響

為替影響

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの損失が縮小

SVF1、SVF2、ラテンアメリカファンドの累計投資損失は、85億2,400万ドルで着地。「残念な結果ではあるが、四半期ごとの推移を見ると改善方向にある。運用期間が長く残っている中で、どのように回復できるか全社一丸となって取り組んでいく」としました。

投資損益(累計)

また、守りを徹底して投資を厳選した結果、2022年度の投資額は2021年度の10分の1以下となりました。さらに、厳しい状況下においても、株式公開した企業は4社、売却・資金化した額は77億ドルという結果を受け、「すでに上場していたポートフォリオの資金化などを進めてきた結果が現れた」とコメント。SVF1、SVF2、ラテンアメリカファンドの約440社の投資先の資金繰りについては「投資先の94%は12カ月以上の運転資金をしっかりと保持しており、各投資先がおおむね十分な資金を確保している」と述べました。公正価値の変動については「2022年度第4四半期は21億ドルのマイナスだが、第1四半期、第2四半期と比較し、マイナス幅が非常に小さくなってきている」としました。

2022年度Q4:公正価値の変動

投資額の推移

アーム事業は、売上高は28億ドルと直近3年間の年平均成長率は16%、調整後EBITDAの直近3年間の年平均成長率は60%となりました。アームは米国SECにForm F-1の登録届出書ドラフトを非公開で提出(コンフィデンシャル・サブミッション)したことを公表しています。

Arm新規株式公開プラン

財務の安全性を重視しながら新規投資と株主還元とのバランスを

「徹底的に守る」と宣言した1年を振り返り、「資金化」「投資抑制」「組織スリム化」「債務削減」の守りをしっかり徹底してきた結果、投資会社として重要な指標であるNAVが14.1兆円、LTVが11%と安全なレベルであること、手元流動性が5.1兆円と大幅に増加したことを説明しました。

重要指標の変動(2022年度Q4)

本格的な生成系AIの時代が到来したことに触れ、「技術革新に寄り添い、情報革命を通じて人類や社会の幸せに貢献するのがソフトバンクグループ。さまざまなトライアンドエラーを繰り返しながら成長していきたい」とコメント。

取締役 専務執行役員 CFO 後藤芳光

最後に、財務戦略についてはこれからも不変であるとし、「今期もマーケットはどう動くか分からず、ボラティリティは高い。市場のボラティリティに対する耐久力をしっかりと持っておくことが前提で、このバランスが取れる範囲内で、技術の進化への投資機会を逃さないことも大事。投資機会を逃さないための財務戦略をしっかり持っておかなければいけない。また、キャピタルアロケーションの議論は今後も徹底的にやっていく。財務の安全性を重視しながら、可能な範囲で新規投資と株主還元のバランスを取っていく」と、従来の財務ポリシーを堅持しながら、投資会社として守りと攻めの両立を図る方針を示しました。

「守りの構えは構築済みです。今期の新しいポイントは、AI革命の本格始動を背景に攻めをうかがうこと。これらを合成させた守りと攻めに対応できる財務運営をしてまいります」とプレゼンテーションを締めくくりました。

まとめ

2023年3月期 決算説明会

免責事項

(掲載日:2023年5月10日、更新日:2023年5月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部