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電力コスト削減と環境価値向上を両立。ネットワークセンターへの再エネ導入プロジェクト

グループシナジーで課題を突破。電力大量消費施設データセンターで再エネ導入への道

安定した通信サービスを届けるために電気通信事業者には欠かせない存在であるネットワークセンター。そのネットワークセンターの電力消費量は生成AIや5Gをはじめとした高速通信、IoTデバイスなどの普及拡大により、ますます膨らんでいきます。ソフトバンクは、ネットワークセンターのエネルギー対策の一つとして再生可能エネルギーの導入を開始。その背景について担当者に話を聞きました。

話を聞いた人

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット ネットワーク運用本部

鈴木 貴雄

施設技術統括部 統括部長 鈴木 貴雄(すずき・たかお)

北澤 隼也

DC施設技術部 環境設備技術課 北澤 隼也(きたざわ・じゅんや)

目次

カーボンニュートラル達成に向けたプロジェクト始動

再生可能エネルギーの導入を始めた背景を教えてください。

鈴木

「ソフトバンクは、2021年に『カーボンニュートラル2030』を発表しました。全社的にカーボンニュートラルへの取り組みを推進していこうという動きの中で、われわれの部門でもプロジェクトを立ち上げたことが、きっかけです。

われわれの部門で管理をしているネットワークセンターやゲートウェイなどの中継局、データセンターという枠組みの中で、何ができるのかを、ゼロベースで各部署の考えを持ち寄り、省エネや再生可能エネルギー導入に取り組んでいくことになりました。試算などを重ねていき、予算や各発電方法の費用対効果など、メリットデメリットを多面的に考慮した上で発電方法は太陽光発電が選定されました」

拠点の屋上を有効活用し、ピーク時には100%の電力を賄う

拠点の屋上を有効活用し、ピーク時には100%の電力を賄う

今回のプロジェクトでは、ソフトバンクの所有する土地を活用して2カ所に太陽光発電を導入しました。

最初に導入したのは、中国地方にある拠点です。施設の屋上に太陽光パネルを設置して、発電した電気をその拠点に供給、消費しています。その規模は73kWでピーク時は拠点の100%、年間でも平均約24%の電力が賄えています。

北澤

「これまで一部のネットワークセンターに設置していた太陽光発電の規模は20kWのため、ある程度の規模感のある導入ができました。

一方で、再生可能エネルギーの導入をさらに拡張させていくには、初期コストの削減策や都心部など狭い敷地内の太陽光発電だけでは電力が賄えないような拠点に、遠隔地から電力を送るにはどのような方法があるのかといった課題も見えてきました…」

グループ企業との連携で課題を突破! さらなる導入の一歩を踏み出す

その課題はどのように解決したんですか?

鈴木

「当時グループ会社の中で、再生可能エネルギーの発電事業を行うテラスエナジー株式会社や電力小売事業を行うSBパワー株式会社に相談をしました。

自分たちの実現したいことに対して、テラスエナジー株式会社から自己託送の提案をもらいました。自己託送の仕組みについて両社で協議を重ね、練り上げることで遠隔地からの電力供給を実現できるだけでなく、発電所をリースにすることで初期コストもゼロ円にでき、抱えていた課題を突破することができました。

そして自己託送を活用した場合に、発電した電力をどこの拠点に供給するのが良いかをSBパワー株式会社に選定してもらいました。それで導入できたのが2つ目の取り組みです」

グループ企業との連携で課題を突破! さらなる導入の一歩を踏み出す

自己託送を利用して再生可能エネルギー導入を果たしたのが、関東にある拠点での取り組みです。テラスエナジー株式会社が太陽光発電所を設置し、それをソフトバンクに20年間の利用権をリース契約。発電所の初期コストがかからない代わりに、施設のリース料やメンテナンス費用などを包括してサービス料として支払うスキームを採用しています。

そこで発電した電気を送り、発電所とは約80km離れた場所に所在するソフトバンクのネットワークセンターで消費することで、自社で発電した電気を送り自社で消費する自己託送制度が利用できます。一般電気事業者や小売電気事業者から電気を購入するよりも安価で電気を調達することができ、かつカーボンニュートラルに貢献できる仕組みです。

  • 関連プレスリリース

需要家の再生可能エネルギー調達を支援する賃借モデルの自己託送サービスを提供開始(2022年9月12日、SBエナジー株式会社)

  • ※SBエナジー株式会社は2023年4月28日より、テラスエナジー株式会社に社名変更されました。

膨大な手続きに追われる日々… そんな中での謎の地下通路発見⁉︎

膨大な手続きに追われる日々…そんな中での謎の地下通路発見⁉︎

実際にプロジェクトを進めていく上で、苦労したところはありますか?

鈴木

「社内でも前例のないビジネスモデルだったため、法規チェックやリーガル的に問題がないのかなど確認に苦労しました…。法務部門などとも綿密に連携して乗り越えましたね」

北澤

「自己託送制度を利用するにあたって、手続きも膨大でした。まず発電した電気を送る送配電事業者とネットワークセンターに電力を供給する小売事業者それぞれに申し込みと契約をする必要があります。発電所もネットワークセンターも東京電力管内のため、各1社と契約すると思っていたのですが、万事に備え全国で電力を融通し合うことも想定し、全国の電力会社各社と手続きが必要だと分かりました。申し込みや契約のフォーマットが会社ごとに異なるため、当時は手探りで手続きを進めました」

膨大な手続きに追われる日々…そんな中での謎の地下通路発見⁉︎

全国の電力会社との契約は大変そうですね…。建設は予定通り進んだのでしょうか?

鈴木

「無事に手続きが終わって、2022年12月から発電所の建設が開始されましたが、工事を進めていく中で建設地から想定外の地下通路が発見されたこともありました。テラスエナジーにも協力してもらい、地下通路を避けて建設を進め、発電所は予定通り完成しました。その後、送電線と接続する電柱が建てられ、ついに2023年5月から送電が開始されています」

追加性のある再生可能エネルギーの導入と電力コスト削減に貢献

追加性のある再生可能エネルギーの導入と電力コスト削減に貢献

再生可能エネルギーを導入したことによる効果を教えてください。

鈴木

「ソフトバンクがカーボンニュートラルやネットゼロの達成に向けて目指している『追加性のある再生可能エネルギー』の導入の一環として、今回の取り組みは新たに再生可能エネルギーを増やすことに貢献できたことです。またコスト面では市場で購入する電気料金と比較すると、中国地方の拠点に関しては約5割、自己託送に関しては約2〜3割の電気料金の削減効果を見込んでいます」

大きな効果ですね。今後の展開を教えてください。

鈴木

「ChatGPTなど生成AIの広がりによって、今後もますますネットワークセンターやデータセンターなどでの電力消費量は増えていきます。電気通信事業を担う企業として、電気料金の変動が激しい世の中の情勢も見据え、常にチャンスをうかがいつつ、今後も再生可能エネルギーの活用をはじめとして、どういった施策をしていくべきかを見極め取り組んでいきたいです」

ありがとうございました。

「カーボンニュートラル」と「ネットゼロ」実現に向けたソフトバンクの取り組み

(掲載日:2023年8月1日)
文:ソフトバンクニュース編集部