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「雲」は空に浮かぶエンターテインメント。誰かに話したくなる雲の話

「雲」は空に浮かぶエンターテインメント。きっと誰かに話したくなる雲の話。

ダイナミックな入道雲に、まさに魚のうろこのように見えるうろこ雲。あの「雲」の本当の名前や性質がわかるようになったら、ちょっと楽しいと思いませんか? 今回は気象予報士の佐々木恭子さんに「雲って一体何なの?」という基本の話から、雲を見て天気を読む方法、そして気象予報士も憧れるレアな種類の雲まで、思わず誰かに話したくなる「雲」のことを教えてもらいました。

佐々木恭子(ささき・きょうこ)さん

教えてくれた人

気象予報士、防災士、合同会社てんコロ.代表

佐々木恭子(ささき・きょうこ)さん

バラエティー番組のディレクターを経て、2007年に気象予報士の資格を取得。民間気象会社で自治体防災向けや高速道路・国道向けの予報業務などを担当する。著書『天気でわかる四季のくらし』(新日本出版社)など。編集協力に気象研究者・荒木健太郎氏の著書『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)。

「雲」の正体、実は水蒸気じゃないんです!

「雲」の正体、実は水蒸気じゃないんです!

よく晴れた夏のある日、ソフトバンク本社に現れた佐々木さん。窓から見える空を見て、「あ! あの雲すごいですよ!」と、早速スマホのカメラを構えます。さすが、あふれんばかりの雲愛です。

佐々木さんは、雲研究者として知られる荒木健太郎さんのお弟子さんとして活動中。雲を愛する佐々木さんに、まずは基本的な質問を。ずばり、あのフワフワと浮かんでいる雲の正体って、いったい何なのでしょうか?

「雲」の正体、実は水蒸気じゃないんです!

佐々木さん 「多くの人は『雲の正体は水蒸気』だと思っているかもしれませんね。でも、厳密に言うと違います。ちょっといじわるかもしれませんが、正しくは『非常に小さな水や氷の粒が無数に集まったもの』です。水蒸気は気体ですから、私たちの目には見えないもの。水蒸気を含む空気が上空で冷え、空気の中に含めなくなった水蒸気が水と氷の細かい粒に変化することで、目に見えるようになるわけです」

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

では、なぜ水や氷の粒が空に浮かんでいられるのでしょう?

佐々木さん 「それは空の至るところに、上昇気流(上に向かう空気の流れ)があるからです。雲を構成している水や氷の粒の代表的な大きさは、一粒が髪の毛の太さの5分の1ほどという極小サイズ。重さがあるため重力で落下しますが、その力は上昇気流に勝てず、浮かんでいるんです。ちなみに、輪郭がはっきりとしていてモクモクした見た目の雲は水の粒、輪郭がもやっとしていて薄く滑らかな見た目の雲は氷の粒でできていると、大きく見分けることができます」

雲の形から、その雲が何でできているのか一目でわかるんですね! 窓の外の雲を指さしながら、佐々木さんの「雲の授業」が続きます。

取材の日、ソフトバンク本社から見えた空

取材の日、ソフトバンク本社から見えた空

佐々木さん 「ほら、例えばあの雲。モクモクした雲は水の粒でできています。その雲の下半分がもやもやしていますよね? あのもやもやした部分は、雨粒が落下しているところなんです。入道雲が発達して雲の中の水の粒が成長し、落下し始めたことで、雲の中には下降気流が多くなります。それによって、雲全体が衰弱し始めて、入道雲の頭の部分だけが取り残されているようです」

この取材の現場でも、次々と姿を変える雲に話題が尽きません。ちょっと知識を得ただけで、雲をじっくりと眺める楽しみに触れた気がします!

佐々木さん 「そうそう! 雲の面白さって、こういうことなんですよね。雲はいつでも観察できるし、少しの知識があるだけで見え方がぐっと変わります。次に、雲の基本の種類を紹介していきますね」

あの雲の名前は何? まずは基本の「十種雲形」から覚えよう

気になる雲を見つけたら、その名前を探してみましょう。雲はその高さと特徴ごとに分類がされていて、全ての雲は「十種雲形(じっしゅうんけい)」と呼ばれる10種に大きく分けられます。その10分類からさらに細かく分類していくと、その数はなんと400種類以上! ここでは、基本の十種雲形をご紹介します。

佐々木さん 「十種雲形は、雲ができる高度によって3つに分けられています。一番高い上層に現れるのが、巻雲・巻積雲・巻層雲の『上層雲』。巻積雲は『うろこ雲』の名前で親しまれていて、秋の空でよく見られます。中層に現れる高積雲(ひつじ雲)も秋の空の定番ですね。さらに地上に比較的近い『下層雲』には、『わた雲』と呼ばれる積雲が現れます。『雲の絵を描いて』と言われて多くの人がイメージするのはこの雲ですね。この雲が発達すると、雷を伴った雨を降らせる積乱雲(雷雲)になります」

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

上層雲:高度5,000~13,000mに出現

  • 巻雲(すじ雲)…羽根のような形のなめらかな雲。
  • 巻積雲(うろこ雲、さば雲、いわし雲)…小さいつぶつぶのようなものが薄く広がる雲。
  • 巻層雲(うす雲)…氷の粒でできた薄い雲で、太陽や月ははっきり見える。

中層雲:高度2,000~7,000mに出現

  • 高積雲(ひつじ雲)…モクモクとした形の雲。色は白や灰色。
  • 高層雲(おぼろ雲)…巻層雲より厚く、ぼやっとしている雲。太陽や月がおぼろげになる。
  • 乱層雲(雨雲、雪雲)…雨や雪を降らせる雲。雨の時は暗く、雪の時は明るい色。

下層雲:地上付近から高度2,000mに出現

  • 層積雲(くもり雲)…低い空にできる灰色か白色の雲。
  • 層雲(きり雲)…灰色から白色の霧っぽい雲。弱い雨や雪を降らせることも。
  • 積雲(わた雲、入道雲)…輪郭がはっきりしていて、一つ一つが分かれている雲。
  • 積乱雲(雷雲)…背が高く、上部分が平らになっていることが多い。内部では雷が発生し、雲の頭は12,000m以上になることもある。

佐々木さん 「名前がわかると雲に親しみが湧きますし、次はその雲の性質や発生理由を知りたくなって、どんどん雲の世界にハマりますよ。いま見えている雲が十種雲形のどれに分類されるのか、簡単に調べられるチャートなどで確認してみましょう」

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

雲から未来の天気を読む「観天望気」はアテになる?

雲から未来の天気を読む「観天望気」はアテになる?

「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」というようなフレーズを聞いたことはないですか? これは「観天望気(かんてんぼうき)」といって、雲や空などの自然現象や、生物の行動から天気を予想する、昔ながらの天気予報のようなものです。「現代なら天気予報を見ればいいのでは?」と思いきや、そうでもないと佐々木さん。

佐々木さん 「時代と共に天気予報の精度がよくなってきていて、曇ってくる時間や雨の降り出し、雨がやむ時間もだいたい当たるようになってきました。そんな現代でも、積乱雲の発生をピンポイントで予想するなどということはできないんです。自分の上に広がる雲の様子を見ることで、身近な天気を読むことができますよ」

観天望気を活用すれば、洗濯物を台無しにする「ゲリラ豪雨」も対策できるかもしれません。昔から言われ続けている観天望気にはさまざまな種類がありますが、どのぐらい信ぴょう性があるのでしょうか?

佐々木さん 「実は動植物に関する観天望気は、ほぼアテになりません。例えば『ツバメが低く飛ぶと雨が降る』というのは、空気中の水分が増えて湿度が上がると、ツバメの餌である虫が低い位置を飛ぶのでツバメも低く飛ぶ…という理屈なのですが、実際には湿度が上がるからといって雨が降るとは限りません。観天望気の中でも信用できるのは、やっぱり雲の動きに言及しているもの。実用的な観天望気をいくつか紹介しましょう」

①入道雲の上に「頭巾雲」が出現 → 積乱雲に発達するかも!

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

佐々木さん 「『頭巾雲』とは、入道雲の上にベールのようにかかる薄い雲のこと。この雲が出ているということは入道雲がまさに成長中で、このあと積乱雲になるかもしれないという兆候です」

②「かなとこ雲」が出現 → 天気が急変するかも!

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

佐々木さん 「『かなとこ雲』は、上部が平らに広がった形の雲。積乱雲が限界まで発達してそれ以上高い空へ成長できなくなると、天気が急変する可能性が高いです」

③雲の底に「乳房雲」が出現 → 積乱雲が向かってきているかも!

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

佐々木さん 「②で出てきた『かなとこ雲』の底に、こぶのような乳房雲が出てきたら要注意。乳房雲は積乱雲が進む方向にできることがあるので、この雲が近くに現れたら、いよいよ雨が近づいてきているかもしれません」

天気予報で「大気の状態が不安定」と聞いたら要注意!

観天望気の前に、まずは日頃から天気予報をチェックしてみましょう。「大気の状態が不安定です」「ところにより雷や竜巻のおそれがあります」といった言葉が出てきたら、天気を崩す積乱雲が現れるかもしれない合図です。実際の空を見て、上記のような雲のサインが出ていないかよく注意しましょう。

佐々木さん 「気になる雲を見つけた時、スマホやパソコンが使える状態であれば天気予報サイトや気象庁のウェブサイトを開いて、雨雲レーダーを見て近くに強い雨が降っているところはないか、その雨雲はどちらに動いているのかを調べれば、危険を回避することができます。雲の様子を見る習慣をつけることで、自然と防災にもつながりますよ」

雲が作り出す美しい景色。春夏秋冬の雲を探してみよう

まるで生き物のように形が変化し、全く同じものには二度と出会えない雲。春夏秋冬を象徴する雲は、季節の移り変わりを目で楽しめる風物詩でもあります。佐々木さんに四季を代表する雲を教えてもらいました。

①春の「おぼろ雲」

荒木健太郎さんのX(@arakencloud)より

荒木健太郎さんのX(@arakencloud)より

佐々木さん 「薄いおぼろ雲が空一面に広がり、月にかかってぼんやりと輝く『おぼろ月』は春の季語。春は高気圧と低気圧が交互にやってくるので、低気圧が近づくときにおぼろ雲が厚くなり、雨が降った次の日は晴れ…という風に、天気がころころと変わるのも春らしい空模様です」

② 夏の「入道雲」

出典:『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

佐々木さん 「夏の雲と言えば、迫力満点の雄大積雲(入道雲)。私の一番好きな雲かもしれません。雄大積雲や積雲(わた雲)みたいに輪郭がはっきりとしているモコモコ雲は、梅雨から夏にかけての暖候期に現れる特徴的な雲ですね」

③ 秋の「うろこ雲」

荒木健太郎さんのX(@arakencloud)より

荒木健太郎さんのX(@arakencloud)より

佐々木さん 「秋は空の高いところに、うろこ雲が広がります。『秋は空が高い』と感じたことはありませんか? これは、秋冬から春にかけて上層雲が現れやすくなることと、下層の空気が乾燥して下層雲が現れにくくなることが相まって、上層の雲がよく見えるようになるからなんですよ」

④ 冬の日本海側では「天使のはしご」に注目

出典:『天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

佐々木さん 「関東にいると冬の空は澄んでいて雲がない日もあるので、雲好きな私はさみしく感じます(笑) ただし日本海側の地域は別で、寒気の影響で雲ができやすい季節です。積雲や層積雲(くもり雲)が広がると、その隙間から太陽光が差し込む『天使のはしご』という美しい現象が見られるのですが、冬によく出会えるというのは日本海側の特権ですね」

【番外編】一生に一度は見てみたい世界のレア雲

さらに世界には、特別な条件が重なった時しか現れないレアな雲もたくさん。日本で観測するには難しいものもありますが、一生に一度でいいから出合いたい自然の芸術です。佐々木さんが「いつか見たい」と憧れているレア雲も教えてくれました。

真珠母雲(しんじゅぼぐも)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

「真珠をつくるアコヤ貝の内側のような、虹色に輝く雲。ほとんどの雲は高度10数kmまでの対流圏にできるのに対して、真珠母雲はもっと上の成層圏のうち、高度20〜30kmの空に現れます。残念ながら日本では観測が難しく、冬に南極など緯度の高い場所で見られます。この雲を見るために、南極に行きたいぐらいです!」

夜光雲(やこううん)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

出典:『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

「夜光雲は、夜空で銀色っぽく光る雲。水面のようなゆらゆらした形です。これが発生するのは地球上で最も高い高度の75〜85km付近、気温もマイナス120℃と最も低い極寒の空。ロケットの噴煙によってできることもあります。日本では北海道で観測されたことがありますが、自然現象の夜光雲はとても珍しいものなんです」

雲を知れば、空を見るのがもっと楽しくなる!

雲を知れば、空を見るのがもっと楽しくなる!

空の上で起こっているさまざまな現象の影響を受け、気象とも深い関わりを持つ雲。今日の話は、もちろんまだまだ入り口です。

佐々木さん 「面白い形の雲を見つけたら、写真を撮ってSNSにアップするのもいいと思いますが、ぜひ雲の名前も調べてみてください。雲の名前がわかるだけで空を見るのが楽しくなるし、きっと誰かに話したくなるはず。また、雲を楽しむ延長で『この雲を見たら天気がこう変わる』と知っているだけで、自然と防災にもつながります。なにげなく見ていた雲が、少しでも近い存在になってくれたらうれしいです」

今日、皆さんの頭上にはどんな雲が浮かんでいますか? ぜひ、空を見上げてみてくださいね。

今回の記事でご紹介した写真や解説図は、荒木健太郎さんの『雲の解説』シリーズに載っています。雲や空、天気や気象についてもっと知りたいという方はぜひチェックしてみてくださいね。

『雲の解説』シリーズ

面白い雲の形を見つけたら撮ってみましょう!

(掲載日:2023年9月28日)
写真提供:荒木健太郎
写真:河合 莉子
文:井上 麻子
編集:エクスライト

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