SNSボタン
記事分割(js記載用)

人との違いや逆境を楽しむ。ロービジョンフットサル日本代表として活躍するソフトバンク社員

人との違いや逆境を楽しむ。ロービジョンフットサル日本代表として活躍するソフトバンク社員

障がいを持つアスリートたちが躍動するパラスポーツ。2023年8月にバーミンガム2023 IBSAワールドゲームズが開催され、日本代表選手団の競技パートナーの1人として、ソフトバンクの加渡主悟が参加しました。ロービジョンフットサルの魅力や、日々の業務と競技の両立について聞きました。

加渡 主悟(かど・じゅお)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR企画2部 環境・資源企画課

加渡 主悟(かど・じゅお)

2021年にNo.1採用でソフトバンクに入社。CSR本部にて新規施策検討を担当。

プレーヤーでありつづけながらパラスポーツに関わる。自分らしさを発揮できる競技との出会い

ロービジョンフットサルとはどんなスポーツですか? ブラインドサッカーとは違うのでしょうか。

ロービジョンフットサルは、視覚に障がいのある人がプレーする、サッカーのカテゴリのひとつです。視覚障がいは全盲と、視力はあるけど見えづらい弱視に分けることができ、キーパー以外は全盲で、アイマスクをつけてプレーするブラインドサッカーに対し、ロービジョンフットサルは弱視の人が自身の視力を生かしてプレーします。

他には、ブラインドサッカーは目隠しして鈴が入っているボールを使用しますが、ロービジョンフットサルのボールは通常のフットサルと同じで、ルールも同じです。アイマスクの着用もないので、一見、通常のフットサルのゲームと区別がつかないと思います。コートを一歩出れば障がいのことは忘れてしまうくらい、普通の仲間として交流しています。

加渡さんのポジションはキーパーですが、通常のフットサルと違う点はありますか?

ロービジョンフットサルのキーパーは晴眼者(健常者)が担ってもよいとされていて、私もその立場で参加しています。キーパーはもともとチーム全体を見て背後から声をかけますが、視覚障がいがあるフィールドプレーヤーへ適切な声かけを必要とするため、ゴールを守るのと同じくらい、コーチング(声かけ)の役割が重要です。一口に弱視と言っても、全体がぼやけている、中心が見えない、片側の視野が欠けているなど、症状は人それぞれです。選手一人一人の見え方を把握し、その人に合った情報を伝える必要があります。現在は敵味方どちらのボールなのか、フィールド上のどこで試合展開しているか、見るべき方向の指示など…。目の前のゲーム展開を把握し、選手に伝え、かつゴールを守るので、バランスが難しいですね。とはいえ、コーチングという自身の役割の観点からだけでなく、チーム作りやゲームメイキングの点からも、全員が同じ状況でないということがロービジョンフットサルというスポーツの面白いポイントだと思っています。

プレーヤーでありつづけながらパラスポーツに関わる。自分らしさを発揮できる競技との出会い

ゴールを守りつつ、メンバーの視覚サポートもこなす…。フィールドプレーヤーに劣らず、とてもハードなポジションのようですね。

長くキーパーとしてプレーしてきたので、守備と指示出しの両立には慣れています。あとはいかに各選手に的確な情報を送れるか。量と質の両面での向上が求められます。普段からコミュニケーションを取り、日々の練習でもどんな声掛けをしてほしいかなどについて、細かいすり合わせが肝心です。また、声を出し続けているので、試合にフル出場したあとは喉がかれてしまいます(笑)。大きな大会では観戦者も多いので、とにかく大声を出し、声援に負けずに声を届けるのが大変ですね。8月の大会でも、開催地であるイングランドチームとの試合では特に声援がすごかったです。

キーパーというポジションは、ミスが勝敗に直結してしまうことが多い半面、ヒーローにもなりづらく、あまり得をしないというか。ですが、そういう逆境の中でしっかりと結果を出したときに得られる達成感や称賛が格別なんです。他にも、試合中に唯一手を使うとかユニホームの色が違うとか、少し人と違うところなども、自分にとって魅力的です。

どういう経緯でロービジョンフットサルのキーパーをするようになったのですか?

幼少期からサッカーやフットサルを続けてきて、高校を卒業した後はドイツへサッカー留学をしました。10代の頃からキーパーを始め、もう13年くらいになります。日本に戻ってから入学した大学でパラスポーツに関する講義を受けたのをきっかけに、ロービジョンフットサルの存在を知りました。自分も関わってみたいと思い、ロービジョンフットサル日本代表チームのヘッドコーチへ直接連絡し、強化メンバーに志願しました。それが大学2年生の頃のことです。

プレーヤーでありつづけながらパラスポーツに関わる。自分らしさを発揮できる競技との出会い

ドイツ留学中、所属クラブチームでの試合開始前

ドイツ留学の経験なども、パラスポーツへの興味のきっかけになったのでしょうか。

直接的な経験があったわけではありません。ただ、留学中は言葉の壁や生活の違いから孤独を感じる場面が何度もあった中、サッカーを通じて徐々にさまざまな人と関われるようになる経験をしました。そのときに、スポーツは国や人の違いを超える共通ツールになるんだと、価値を感じたことは大きいと思います。その頃から、スポーツでボランティアに関わることに興味を持ち始めました。

一方で、自身がプレーヤーであり続けたいという思いもありました。ロービジョンフットサルの競技パートナーとして関わる道があると知ったとき、自分の中でぼんやり考えていたことがはっきりとした形になりました。これまでの自分とこれからの自分に、がっちりはまっている、という感覚があります。

日本代表としてチームとともに戦ってきた感想はいかがですか?

日本におけるロービジョンフットサルの歴史はまだ浅く、2011年頃からスタートしました。これまでは世界大会での勝利がほとんどなかったのですが、ここ数年で新しい選手が加入し、そして今回の大会でベスト4という結果を残すことができ、競技として一歩前進したのではと感じています。その一方で、個人的には何も成し遂げられなかったという思いが強く、自分にはもっとできることがあったのではと反省することが多くありました。次の大会に向けてたくさんの宿題をもらった大会だと捉えています。4年後の大会を目標に、日々の練習に取り組んでいきたいです。

バーミンガム2023 IBSAワールドゲームズにて

バーミンガム2023 IBSAワールドゲームズにて(後列左から3番目)

社会貢献を軸に、仕事もフットサルも全力で挑む。気持ちはすでに4年後へ

ソフトバンクではどのような業務に就いていますか?

現在3年目になりますが、入社後はCSR部門に所属し、デジタル子ども手帳「てくてく」の企画推進、PCRセンターの運営、ボランティア関連の人事制度の導入などを経験してきました。現在は資源循環社会の実現に向けた企画推進を行っています。全国のソフトバンクショップに設置している、携帯電話のリサイクルボックスの運用も業務の一つです。新規企画の一例でいうと、リユースカップを普及させるべく、今年の9月からPayPayドームで実証実験を開始しました。一つ一つ課題を解決していくことで将来具現化できればと思っています。

社会貢献を軸に、仕事もフットサルも全力で挑む。気持ちはすでに4年後へ

3年目にしてさまざまな業務を経験してきたのですね。

スポーツに関するボランティアに興味をもつようになった経緯にも通じますが、社会貢献に携わりたいという思いがあったので、CSR本部に所属し、さまざまな施策に携われる日々にとてもやりがいを感じています。これまでサッカーやフットサルのクラブやそこで出会った人々に支えてもらってきたので、仕事を通じて恩返ししたいと思っています。

ソフトバンクで働きながら代表選手として活躍するのは大変ではないでしょうか?

代表としての活動は、合宿や練習会が月に1・2回ほどで、メンバーはそれぞれ仕事を持っているので週末に行われることが多いです。他にも社会人のフットサルチームに所属しており、練習時間は22~24時なので業務終了後に参加しています。翌日は在宅勤務やフレックス勤務などを適用させてもらうなど、フレキシブルな対応が取れるのでとてもありがたいです。国際大会の遠征時は不在期間が長くなってしまいますが、周囲の理解があり、快く送り出してもらいました。

社会貢献を軸に、仕事もフットサルも全力で挑む。気持ちはすでに4年後へ

仕事とフットサルという二つの環境があることは、今の自分にとってバランスが取れている状態なんです。どちらかで行き詰まったとき、もう一方に打ち込むことで結果を出し、結果、乗り越えられるというような。むしろ自身の世界が豊かになっていると感じていて、どちらも今の自分になくてはならないものです。

仕事と競技について、これからの目標を教えてください。

仕事では自分ができることを確実にこなし、さまざまな業務にあたる中で多くのことを学び取りたいと思っています。目の前にあることについて泥臭くがんばるのが性に合っているんです。フットサルについても同様で、改善すべき課題に対して地道にこつこつ練習を積み上げていき、4年後の国際大会ではしっかり結果を出したいです。他には、ロービジョンフットサルのクラブが主催しているイベントで、健常者へ弱視の人の見え方を伝えています。こういった機会を通してパラスポーツを盛り上げていけたらと思っています。

ありがとうございました!

(掲載日:2023年10月6日)
文:ソフトバンクニュース編集部