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国民経済発展のために慎重な議論を。「NTT法」の見直しに関する要望書を事業者など180者が提出

NTT法の在り方についての説明会

2023年10月19日、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社による、「NTT法の在り方について」の説明会が開催されました。

3社は、「日本電信電話株式会社等に関する法律」(以下、「NTT法」)の廃止も含めた議論が進みつつあるNTT法の見直しについて、拙速な議論を行うことなく、日本が目指すべき国民生活向上や経済活性化などにつながる情報通信インフラの将来像の実現に向けて、より慎重な議論を求める要望書を、全国180の事業者や自治体と連名で、自由民主党(以下、「自民党」)および総務大臣に提出したことを報告し、要望書の概要や各社の見解などについて説明を行いました。

登壇者

    • ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一
    • KDDI株式会社 代表取締役社長 CEO 髙橋誠
    • 楽天モバイル株式会社 代表取締役 共同CEO 鈴木和洋

NTT法の改正については賛成、廃止には反対

2023年8月から、自民党の「『日本電信電話株式会社等に関する法律』の在り方に関するプロジェクトチーム」総務省情報通信審議会の「通信政策特別委員会」において、NTT法の廃止も含めたNTT完全民営化の可能性について議論が行われています。

今回、通信事業者など180者は、NTT法の廃止に反対し、慎重な検討を求める要望書を提出しました。国民生活の向上や経済の活性化など、日本が目指すべき情報通信インフラの実現に向けた見直しを検討していくことには賛成だが、NTT法の廃止には反対し、より慎重な議論を求めたものです。

その理由は、NTTは電電公社時代からの資産や重要な設備である局舎や電柱、とう道、管路、光ファイバーなどを保有しており、仮にNTT法が廃止されると公正な競争環境が阻害される他、NTTが公益的な責務を負わなくなる恐れがあることや地域サービスの衰退の懸念が生じるためです。

注:通信政策特別委員会の事業者ヒアリングでのソフトバンク説明資料

また、自民党の 「日本電信電話株式会社等に関する法律」の在り方に関するプロジェクトチームは今年11月頃を目途に提言を取りまとめ政府に申し入れをする予定であり、総務省の通信政策特別委員会は、2024年夏頃を目途に答申を行うスケジュールとなっています。日本の電気通信市場の将来に向けた議論は非常に重要であるにもかかわらず、現在想定される議論の期間があまりにも短く、必要十分な議論が尽くされるのかが懸念されています。

電気通信政策に関する法制度については、総務省の「テレコム競争政策ポータルサイト」をご参照ください。

要望書の趣旨について、KDDIの髙橋社長が説明を行いました。髙橋社長は、「今回の議論は公正競争の確保という根幹の議論になる」として、電気通信事業者(MNO/CATV/ ISP/電力系)や自治体など180者が要望書に名を連ね、自民党の政務調査会長とプロジェクトチームの座長および総務大臣に本日この要望書を提出したことを報告。「このような要望書を今までも作ってきたことがあるが、このような180者もの企業・団体というのは多分初めてのケースだ」とコメントしました。

要望書提出

要望の内容のポイントとして、国民生活の向上や経済活性化などに向けたNTT法の見直しには賛成だが、国民の利益が損なわれるためNTT法廃止には反対であること、より慎重な政策議論を行うことを要望したと説明。

要望の内容

また、仮にNTT法が廃止された場合の懸念点として、①公社時代からの資産や重要な設備を継承するNTT持株会社やNTT東西とその他のNTTグループ企業とが一体化することによって、健全かつ公正な競争環境が阻害され、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞を起こす可能性があること、②NTTがラストリゾートの公益的な責務を負わなくなることで、地域を問わず安心安全、強じんかつ高速・大容量の通信環境の実現が困難になること、③NTTグループの強大な市場支配力によって地域事業者が排除されることによる地域サービスの衰退が懸念されることの3点を指摘しました。

「国民生活向上などに向けた改正については賛成ですが、このような懸念事項があるNTT法の廃止というものを強引に進めることについては反対という形で表明をさせていだきます」とNTT法廃止反対の意思を示しました。

国民の利益

各社からそれぞれNTT法の廃止について次のような意見が述べられました。

KDDI株式会社

KDDI

「時代に合わせたNTT法の見直しについては賛成するが、NTT法の廃止については国民の利益が損なわれる可能性があるので反対する。NTTグループと他事業者との公正競争の確保、ラストリゾートの義務、公益性の高い通信に関する特別な資産を守っていく必要がある」

KDDI

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク

「NTT法の見直しについては賛成だが、廃案となると絶対に反対。電電公社時代に国民の資産として整備された線路敷設基盤などの公益な資産を所有するNTTが規律なくこれらを利用することは国民の利便性・公正競争確保に反する。唯一無二の日本の重要な公共資産の運営については規制が当たり前だと考える」

ソフトバンクスライド

楽天モバイル株式会社

楽天

「低価格で高品質なサービスを国民にあまねく提供することや携帯電話の値下げは、公平な競争がもたらした結果だと考えることから、NTT法の撤廃については強く反対をする。NTTが持っている特別な資産は国民全員が平等に公平に使える権利がある資産であり、引き続きそういった形での提供が可能になるようにしていくべき。GAFAのような企業が日本には出てこないとよく言われるが、米国でAT&Tやベライゾンのような通信事業者からGoogleやAmazonが出てきたわけではない。NTT法を改正したからといってそういった企業が日本に出てくるというわけではない。もう少し大きな目で、どうしたらそういった企業が日本に出てきて育っていくのか、包括的な取り組みが必要だと考える」

楽天スライド

総務省の通信政策特別委員会では年内中にヒアリングが行われ、年明けから論点整理、報告書案の作成が行われ、パブリックコメントの期間を経て、夏ごろを目途に答申が行われるスケジュールとなっています。

説明会の模様は、以下よりご覧いただけます。

「NTT法の在り方について」の
説明会

関連プレスリリースなど

(掲載日:2023年10月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部