光熱費の高騰が続くなか、調理中の消費電力を抑えた「節電料理」が注目されています。でも、「なんだか面倒くさそう」「特別な材料や調理法が必要なのでは?」と身構えてしまう方も少なくないのでは? そこで今回は、節電レシピ本も出されている日本料理界の重鎮 野﨑洋光さんに、電気代の節約につながる簡単レシピや、節電料理のコツを教えていただきました!
どのレシピも身近な食材で手軽に作れて、飽きのこない味わいのものばかり。覚えておくと日々の暮らしの中できっと役に立つはずです。この機会に、無理なく楽しみながら続けられる節電料理を始めてみませんか?
目次
和食料理人が考える節電レシピと暮らしのヒント
まずは、野﨑さんが節電料理を考案されたきっかけについて教えてください。
野﨑さん 「2011年の東日本大震災の後に出版社から『節電料理の本を出さないか』と声をかけてもらったのがきっかけです。震災後すぐにお話をいただいたので、当初は『こんなときに商売の話とは…』と正直ムッとしましたね。でも、その年の夏に電力不足が起きる可能性があるという話をされて必要性を感じ、節電レシピの考案に取り組むことを決めました」
調理の節電テクニックを知ることでどのようなメリットがありますか?
野﨑さん 「いろいろありますが、大きく言うと『かしこく生きること』につながるのではないかと思います。特に今は便利な食材がたくさんあるので、それらをうまく使えばおいしく節電できます。缶詰や乾物を使うことで、だしやうま味調味料が不要になるので節約にもつながりますし、素材そのものの味わいを楽しめるようになりますよ」
野﨑さんのアイデア満載! カンタン節電レシピ5選
それでは早速、節電レシピを教えてください!
野﨑さん 「今回紹介する5品は、消費電力の多い電子レンジなどの調理家電を使わずに、身近な食材で手軽に作ることができます。また、ガスコンロではなくIHコンロをお使いの方でも、材料と工程をシンプルにすることで調理時間が短くなり、自然と節電につながりますよ」
節電レシピ① 【火を使わずにできる】 缶詰のうま味たっぷり! サバの水煮缶の冷や汁(調理時間:約10分)

材料(2~3人前)
- サバの水煮缶 1缶(180~200g)
- 木綿豆腐 150g
- きゅうり 1本
- 塩 少々
- トマト 1/2個
- 大葉 4枚
- みょうが 適量
- いりごま 大さじ2
(A)
- 田舎味噌(みそ) 50g
- 水 400〜450cc

①きゅうりは小口切りにして塩を少々ふります。きゅうりから水分が出てきてしんなりしてきたら、手で軽くもみ、サッと水洗いをして水気を絞ります。

②トマトはヘタを取って1cm角にカット、みょうがは小口切り、大葉は千切りにします。余裕があれば、トマトは湯むきすると口当たりがよくなります。

③ボウルに(A)の田舎味噌と水を合わせます。水を少しずつ足しながら味噌を伸ばすことで、ダマになるのを防ぐことができます。次に、サバの水煮缶を汁ごと入れます。サバ缶の残り汁はそのままでは苦味が強く味も濃いですが、水で薄めることでうま味に変化します。

④豆腐を一口大に手でちぎって加えます。包丁で切るよりも断面積が増え、味がなじみやすくなります。①と②、いりごまを加えて混ぜたら完成です。
レシピのポイント
- 味噌はだしの入っていないものを選びましょう。八丁味噌や赤味噌以外であればどんな味噌でもおいしく作れます。
- サバの水煮缶の内容量はメーカーにより異なるので、水と味噌の量を変えて調整してください。
- 入れる野菜は基本的にサラダに使えるものならなんでもOK! セロリを入れてもおいしいです。
- 冬はきゅうりを入れずに、ほんのり温めて温汁(ぬくじる)にするのもおススメ。
節電レシピ② 【下ゆででおいしく時短】豚肉と白滝の淡煮(あわに)(調理時間:約15分)

材料(2人前)
- 豚バラ肉(スライス) 150g
- 白滝 120g
- ねぎ 60g
- しめじ 60g
- 粗びき黒こしょう 適量
(A)
- 水 150cc
- 薄口しょうゆ 大さじ2
- 酒 大さじ1

①豚バラ肉は8cm幅に切り、しめじは石づきを落としてほぐします。 ねぎは白い部分は2cm程度の長さに斜め切り、青い部分はざく切りにします。白滝は7cmの長さにカットします。

②鍋に湯を沸かし、ねぎ、白滝、しめじを入れて1分ほど湯に通し、冷水に取って水気を切ります。 同じ湯に豚肉を入れ、表面の色が白く変わる程度にサッと湯通ししたら、冷水に取って水気を切ってください。下ゆでをすると、次の工程の煮込み時間が短縮できるとともに、アクや豚肉の脂が抜けてすっきりとした味わいになります。

③鍋に(A)の材料と、②の豚肉と白滝を入れて中火にかけます。豚肉に火が通ったら、しめじとねぎを加えてサッと煮ます。加熱時間を短くすることで豚肉が柔らかく仕上がります。お好みで最後に黒こしょうをふって完成です。
レシピのポイント
- 豚肉の代わりに魚を使ってもおいしいです。魚を塩でもんでから煮ると味が入りやすくなり時短調理につながります。魚を使う場合は沸騰したら火を止め、余熱で火を通すと身が硬くなりにくいです。
- 下ゆでのお湯を使いまわすことで、水の節約にもつながります。
- ごはんに汁ごとかけて、丼にして食べるのもおススメです。
節電レシピ③ 【炊飯器を使わず節電】鍋で簡単! 鮭フレーク炊き込みご飯(調理時間:約30分)
※ 調理時間に米の浸水・水切り時間は含みません。

材料(2~4人前)
- 鮭フレーク 中1瓶
- 白滝 120g
- しいたけ 2~3個 ※大きさにもよるのでお好みで調整
- ねぎ 2本
- 米 3合
(A)
- 水 450cc
- 薄口しょうゆ 45cc
- 酒 45cc

①白滝は水からゆでてザルに上げます(あく抜き不要な白滝を使う場合、この工程は不要)。白滝は3cmの長さにカット、しいたけは薄くスライスします。ねぎは小口切りにします。

②米を洗い、15分浸水させたあと、ザルに上げ15分おいて水気を切ります。吸水させ過ぎると炊いたときに米粒が崩れる可能性があるので、途中でザルに上げて余分な水分を切ることがポイントです。

③大きめの鍋に米、(A)、白滝、しいたけを入れてふたをし、強火にかけます。沸騰したら一度かき混ぜてから、火を弱めて7分加熱します。鍋に水分が少し残り、米の表面が見える状態になったら、火を弱めてさらに7分加熱します。最後に極弱火で5分加熱し、火を止めます。

④鮭フレークを入れ、ふたをした状態で5分ほど蒸らしたら、ねぎを入れて全体をサックリと混ぜて完成。 ふたをして蒸らすことで、鍋の中にたまった水分が上から降りてふっくらと仕上がります。
レシピのポイント
- 米を上手に炊くには、95℃以上を保ちながら20分近く加熱することが大事です。加熱後、10分間は鍋の中の水分が少なくなり、温度が下がりやすくなるので、ふたを閉めたままにしましょう。
- 炊飯器を使う場合は、材料を鍋に入れる工程までは同じです。炊き上がったら④の作業を行ってください。エコ炊飯機能などの省エネ機能がついている炊飯器の場合、節電のためにはその機能を活用すると良いでしょう。
- 塩鮭やほかの魚でもおいしく作れます。季節で使う魚を変えてみるのもおススメ。
節電レシピ④ 【サッと加熱で栄養満点】タンパク質もビタミンも摂れる! 高野豆腐とほうれん草の卵とじ(調理時間:約15分)

材料(2人前)
- 卵 1個
- 高野豆腐 1枚
- ほうれん草 1束(約8株)
- しいたけ 4個
- 薄口しょうゆ 小さじ1強
- こしょう 少々
- サラダ油 大さじ1

①ほうれん草は根元を十字に切り、砂をよく落としてから、沸騰したお湯で根元を20秒、葉を入れてさらに20秒ゆでます。ゆで時間を短くすることで調理時間が短くなり、シャキシャキとした食感も残せます。ゆでたほうれん草は3〜4cmの長さに切り、しいたけは1cm程度の厚めにスライスします。 高野豆腐は水で戻して、1cm角×3〜4cmの棒状に切ります。

② フライパンにサラダ油を熱し、しいたけを炒めて火が通ったら、高野豆腐を加えて炒めます。ほうれん草は食感を生かすため、最後に加えてサッと炒めるのがポイントです。

③薄口しょうゆとこしょうで味を調えたら、卵を入れます。ふたをして蒸し焼きにし、白身が半熟程度になったら完成です。
レシピのポイント
- ほうれん草は下ゆでの時間を短くすることで、苦味や渋味が出にくくなります。甘みのある根の部分も、ぜひ余さず使ってみてください。
- しいたけを厚めにカットすると歯切れが良く、食感を楽しめます。
- ほうれん草と高野豆腐の代わりに、小松菜や厚揚げなどで作るのもおススメです。
節電レシピ⑤ 【乾物を使ってスピード調理】うま味の出る食材を使ってだしいらず! じゃこ入り切り干し大根(調理時間:約20分)

材料(作りやすい分量)
- 切り干し大根 100g(乾物の状態で約30g)
- ちりめんじゃこ 20g
- 桜海老 10g
- サラダ油 大さじ1
(A)
- 水 80cc
- しょうゆ 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 砂糖 大さじ1/2

①水で戻した切り干し大根を熱湯に入れてひと煮立ちさせたら、ザルに上げ、水気を切ります。ゆでることで乾物特有の臭みが抜けます(気にならない場合は水で戻すだけでOK)。

②鍋にサラダ油を熱して➀を炒めます。味がぼやけるのを防ぐため、調味料を入れる前に切り干し大根だけを軽く炒めて水分を飛ばします。(A)を入れて煮汁が半分くらいになるまで煮詰めます。

③②にちりめんじゃこ、桜海老を加えて、全体に煮汁を絡めながら煮詰めます。汁気がなくなったら完成です。
レシピのポイント
- 調味料で切り干し大根を煮詰める際にネギの青い部分を入れると、甘みが加わり、味がまろやかになります。
- 桜海老やちりめんじゃこからもうま味が出るので、だしやうま味調味料を使わなくても、おいしく仕上がります。
- 仕上げにゆでたスナップえんどうや絹さやをトッピングすると見栄えがよくなり、栄養価もアップ!
今すぐ使える節電アイデア10選&実践する際のコツ
調理の際に使える節電アイデアやテクニックにはどんなものがありますか?
野﨑さん 「代表的なものを10個紹介しましょう。知っておくと節電だけでなく、災害などで停電したときにも役に立ちますよ」
- 火が通りやすい食材を選ぶ
葉物など火が通りやすい食材を選ぶことで、調理時間の短縮につながります。根菜類など火が通りにくい食材は、薄くカットしましょう。 - 缶詰や瓶詰めを利用する
サバの水煮缶などの缶詰はあらかじめ加熱調理され、味もついているので、そのまま加熱せずに料理を作ることができます。汁ごと使えばだし代わりにもなります。 - 乾物を活用する
切り干し大根や高野豆腐などの乾物は、冷蔵庫で保存する必要がないため節電に役立ちます。常温保存で長持ちするため、備蓄食材としても便利です。 - 加熱時間を短くする
切り干し大根のように水で戻すだけでも食べられる食材や、缶詰を使うと、加熱時間をぐっと短くすることができます。その他、余熱の利用や、食材を下ゆでしてあらかじめ火を通しておく方法も、加熱時間の短縮につながります。 - お湯は使い回す
食材を下ゆでする際はお湯を使いまわすことで節電・節水につながります。野菜を最初に、肉類を後にゆでることで、肉の脂が他の食材につくのを防げます。
- 電気ポットなどの電源をこまめにオフにする
使わない電化製品の電源を都度切っておくことで節電につながります。また、洗い物はまとめて行うことで、給湯器の使用頻度を下げ、ガス代も節約できます。 - 鍋でご飯を炊く方法を覚える
ご飯を炊くのに、消費電力の多い電気炊飯器ではなく、鍋とガスコンロを使うことで電気代を節約できます。また、「米は95℃で20分加熱するとご飯になる」という原理を覚えれば、どんな調理器具でも炊飯が可能です。耐熱性のポリ袋に洗った米と同量の水を入れて、お湯を張った鍋で25分加熱する方法は、災害時にも役立ちます。 - 使う分だけ食材を買う
冷蔵庫に食材を詰め込みすぎると冷却力が低下してしまいます。スーパーを大きな冷蔵庫と捉えて、なるべくその日のうちに使い切れる食材のみを厳選して購入すると、冷蔵庫の節電につながります。 - 冷蔵庫のドアは開閉をなるべく少なく・早くする
冷蔵庫を1秒間開けていると、元の庫内温度に戻るのに約10秒かかるといわれています。冷蔵庫はきれいに整理して、必要なものをすぐに取り出せるようにしておきましょう。 - 常温保存できる食材は冷蔵庫に入れない
季節によりますが、基本的にしいたけなどのきのこ類は2〜3日常温保存でも大丈夫です。ほうれん草などの葉物は冷蔵庫に入れなくても水に浸けておくと葉がパリッとします。その状態でゆでると、ゆで時間も少なく済むので一石二鳥です。
節電レシピは生活の知恵。難しく考えずに楽しむことが大事
工夫次第で節電できるポイントはたくさんあるんですね。
野﨑さん 「大事なのは目的に合わせて発想を転換させることです。例えば、常温保存できるたくあんなどの漬物は、水に15分ほど浸して塩抜きをすれば、炒め物の具材として使えます。豆腐やちくわといったそのまま食べられる食材も、切り方を変えるだけで新たな食感を楽しむことができますよ。こんなふうに固定概念を捨てて、柔軟に考えることで誰でも節電アイデアが生み出せるはずです」
なるほど。ちょっとした工夫で、節電だけでなく食卓のバリエーションも豊かになりそうです。
野﨑さん 「他にも豆乳やトマトジュースは水で薄めて使うことでうま味が出て、だしとしてさまざまな料理に使うことができます。豆乳や缶詰のトマトジュースは未開封であれば常温で保存でき、とても便利です。こんなふうに節電レシピは生活の知恵なので、ぜひこの機会に覚えてみてくださいね。きっと料理がより楽しくなりますよ!」
(掲載日:2024年5月14日)
写真:山﨑悠次
文:大瀧亜友美
編集:エクスライト

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