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DXでイベント業界に変革を。ソフトバンク社内発ベンチャー企業「MICEプラットフォーム」の挑戦と未来

DXでイベント業界に変革を。ソフトバンクイノベンチャーから誕生した企業「MICEプラットフォーム」の挑戦と未来

コロナ禍では多くの企業が臨場でのイベントやセミナー開催の自粛を迫られ、オンラインでのイベント開催が主流となりました。コロナが落ち着いた最近では、有観客でのイベントやセミナー開催が復活し始め、オンラインとのハイブリッド型でイベントを行う企業も増えてきました。

コロナ禍を経て、大きな変革を経験してきたイベント業界。ソフトバンクの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」から生まれたイベントテック企業「MICEプラットフォーム株式会社」もコロナにより転換を求められた企業の一つです。コロナ禍で生まれたサービスや、AIなどのデジタルを活用した今後の目指すべき姿など、永田社長にお話を聞きました。

永田 誠(ながた・まこと)

MICEプラットフォーム株式会社 代表取締役社長 兼 CEO

永田 誠(ながた・まこと)

ソフトバンク新卒入社。メディア部門に異動し、セミナーやWebメディアの新規事業を立ち上げ運営に従事。ソフトバンクアカデミア4期生、2019年ソフトバンクイノベンチャーを通じて、MICEプラットフォーム社を設立。

オンラインイベント参加時のログイン不要&視聴ログも同時に取得。コロナ禍で生まれた「MICE My URL」

オンラインイベント参加時のログイン不要&視聴ログも同時に取得。コロナ禍で生まれた「MICE My URL」

MICEプラットフォーム株式会社は、ソフトバンクの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」から生まれた会社で、イベント運営における一連のサポートを行っているイベントテック企業です。

企業が開催するオンラインイベントやセミナーでは、参加者の視聴データを取得するために参加時にIDやパスワードの入力を求めるケースが多くあります。一方で、IDやパスワード忘れや入力の煩わしさが課題としてあり、MICEプラットフォームでは次世代のアクセス管理サービスとして「MICE My URL」を開発。特許も取得しているサービスについて詳しく話を聞きました。

「MICE My URL」とはどのようなサービスでしょうか?

永田 「企業が開催するイベントやセミナーなどにオンラインで参加する場合、これまでは事前に参加者にIDとパスワードを作成してもらい、それらの情報を入力してオンラインイベントに参加してもらう手法が当たり前でした。その参加者の煩わしい手間を省くために生まれたサービスが『MICE My URL』です。参加登録者ごとに情報がひも付けられた個別のURLを発行することで、参加者はIDやパスワードの入力をせずに送付された視聴URLをクリックするだけで参加することができます。また、主催者側としては、参加者への負担を減らせる以外にも、参加人数や視聴履歴のデータをリアルタイムで取得できるなどのメリットがあります」

オンラインイベント参加時のログイン不要&視聴ログも同時に取得。コロナ禍で生まれた「MICE My URL」

コロナ禍でオンラインイベントが増えたことが背景にあるのでしょうか?

永田 「コロナによって多くの企業がオンラインで動画配信をせざるを得ない状況になりました。そんな中主催者側から、参加時の面倒なIDやパスワード入力をなくすことで参加者の手間を省きつつ、出欠確認や参加人数、参加者の入退室時間などの視聴データも同時に取得できる動画視聴方法がないかと相談を受け、主催者と参加者の双方にメリットがあるソリューションを開発しました」

特許も取得されたと聞きました。

永田 「はい、今年6月に特許を取得しました。取得した特許の範囲としては、『MICE My URL』を使い参加者のIDやパスワードの入力を不要とした個別URLを発行するのか、または参加者情報をひも付けていない共通URLを発行するのか、主催者側の要望に応じて切り替えられるという点で特許を取得しています。より強度なアクセス管理の下で動画配信を実施する場合には、IDとパスワードを入れてさらにワンタイムパスワードを入力させる仕様もできたりと、主催者側と相談しながらアクセス管理のレベルを設定しています」

URLの切り替えができるのが「MICE My URL」の特長なのですね。他にも何か特長はありますか?

永田 「もともとは『MICE Online』という動画配信プラットフォームのサービスの中にある付加価値的なサービスとして提供していたのですが、他社の動画配信プラットフォームを使っていて、URLの発行だけ『MICE My URL』を利用したいというニーズもあったため、他社の動画プラットフォームでもこのサービスを使えるように対応しました」

ソフトバンクイノベンチャーから誕生した企業「MICEプラットフォーム」の戦略と今後の展望

ソフトバンク社内企業制度から誕生した会社「MICEプラットフォーム」の戦略と未来の展望

「MICEプラットフォーム株式会社」とはどのような会社ですか?

永田 「ソフトバンクの社内起業制度『ソフトバンクイノベンチャー』から誕生し、2019年に設立した会社です。イベント業界にはまだまだアナログ文化が残っていて、そこにDXを導入し加速させていくことで市場を活性化させていきたいという思いで立ち上げました。もともとは、会場のマッチングサービスからスタートをしていて、当時はイベントやセミナーを開催するときの会場探しは、会場側に電話をかけて1つ1つ空き状況を確認するのが当たり前でした。そのアナログな作業をDXで解決するために、多種多様なスペースを検索・比較・予約ができるシステムを開発してサービスを提供したのが始まりです」

ソフトバンクイノベンチャーとは?

ソフトバンクの社内起業制度で、社員による新規事業提案実現を支援するプログラムです。独創性・革新性に富んだ事業アイデアを社員から幅広く募集し、2011年に開始してからこれまでに数多くの新規事業が創出されています。

2019年設立というと、程なくしてコロナが急拡大したタイミングでもあると思うのですが…。

永田 「2019年4月に会社を設立してから少ししてコロナの大打撃を受けました。リアルイベントの開催が軒並み中止になり、私たちが提供していた会場マッチングサービスに入っていた予約もキャンセルになってしまったんです。その状況で事業をどうしていくべきか転換を求められる中でたどり着いたのが、オンラインでイベントを開催する企業に対してサポートするサービスの提供です。リアルイベントの開催を取りやめ、オンラインに切り替える企業が増えていく状況を受け、オンラインでのイベント運営サポートや動画配信プラットフォームの提供、オンライン展示会サポートの3つの事業を1つの柱としてやってきました。

ですが今はコロナ禍を経て、イベント会場の予約も増えてきている傾向にあります。市場の変化に合わせて事業も変化させていくことが求められていると思います。最近はハイブリッド形式でイベントを開催するのが主流になりつつあるので、会場マッチングサービスに加えて、ハイブリッドイベントの運営サポートや運営からデータ管理までワンストップで行えるサービス『MICEソリューションズ』の提供に注力しています」

時代の変化に合わせて事業も変革していくことが必要なのですね。そもそも、会社を立ち上げようと思ったきっかけについて教えてください。

永田 「私は起業する前は、ソフトバンクでメディア事業の担当をしながら、セミナーやイベントを企画・運営するイベント事業にも関わっていました。イベントの企画や運営をしていく中で、アナログな作業が多いことをとても実感していて、作業を効率化できるツールがないかと探したのですがそういったサービスがなかったので、自分たちで作りたいと思い、ソフトバンクイノベンチャーを活用して会社を立ち上げました」

ソフトバンク社内企業制度から誕生した会社「MICEプラットフォーム」の戦略と未来の展望

ちなみに、「MICE(マイス)」という言葉はどのような意味なのでしょうか?

永田 「『MICE』は一般的に使われている用語で、『Meeting(会議・研修・セミナー)』、『Incentive Travel(報奨・招待旅行)』、『Convention(大会・学会・国際会議)』、『Exhibition/Event(展示会・ビジネスイベント)』のそれぞれの頭文字をとった造語です。ビジネスイベントや国際会議などを日本に誘致することで高い経済効果が期待できると、観光庁が経済成長戦略の一環として取り組んでいることがそもそもの背景にあります」

直近では、音と映像のトータル・ソリューション企業であるヒビノ株式会社と資本提携も発表されていますよね。狙いは何でしょうか?

永田 「MICEプラットフォームのミッションは、MICE業界のDXを進めていくことです。これまでは、BtoBのイベントに特化してサービスを提供してきました。ですが、そういったイベント以外にも、スポーツや音楽ライブなどさまざまなイベントが幅広くあるんですよね。そういったイベントまで事業を今後広げていくとなった場合に、私たちが持っているリソースだけでは難しいところがあります。ヒビノさんは、音と映像のパイオニアとしてスポーツや音楽ライブなどの分野にとても強みを持っている会社です。そこにオンライン技術に強みを持つMICEプラットフォームを掛け合わせ、両社の強みをうまく融合することで、新たな提供価値を共創できるのではないかと思っています」

新しいシナジーが生まれていくのが楽しみですね。ヒビノとの資本連携の他にも今後の展望があれば教えてください。

永田 「コロナが落ち着いてリアルイベントが復活してきたことで、あらためて臨場でのイベントの価値というのが見直されているのではないかと思います。一方で、オンラインでの視聴ニーズもあるので、今後はハイブリッド型でのイベント開催が主流になっていくと考えます。その中でMICEプラットフォームとしては、ハイブリッドイベント向けのサービスやソリューションを強化していきたいと思っています。

ハイブリッド型で行う場合は、リアルまたはオンライン単独で行うよりも運営の工数がどうしてもかかってきてしまいます。MICEプラットフォームが提供する『MICEソリューションズ』で工数を減らし効率化していくことが今後のキーとなっていくと思います。さらに、リアルイベントのデジタル化も今後の注力ポイントの一つです。例えば、AIによる同時通訳やAIカメラなど、コロナ前とは全く違うデジタルを活用したイベント体験を提供していきたいと思っています。私たちはその分野のトップランナーとして、MICE業界をけん引するポジションを目指していきます」

(掲載日:2023年10月30日)
文:ソフトバンクニュース編集部

MICE業界のDXを加速する「MICEプラットフォーム」

MICE業界のDXを加速する「MICEプラットフォーム」

ソフトバンク社内の起業制度で2019年に誕生したスタートアップ企業。MICE業界のDX推進をミッションに、個社ごとの管理システムやオンライン配信のプラットフォーム開発をはじめ、会場マッチングやオンライン&オフラインイベントの企画&運営サービスを提供しています。

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