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え? ソフトバンクがまた上場? 国内初「社債型種類株式」上場とは

え? ソフトバンクがまた上場? 国内初「社債型種類株式」上場とは

2023年9月25日にソフトバンク株式会社は、取締役会において第1回社債型種類株式を発行することを決議し、11月2日に東京証券取引所プライム市場に上場をしました。なかなか聞き慣れない「社債型種類株式」という言葉に、どういう株式なのかと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。普通株式との違いや社債型種類株式を発行した背景についてソフトバンクの担当者に話を聞きました。

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ソフトバンク株式会社 財務統括 財務戦略本部

田代 智仁(たしろ・ともひと)

社債型種類株式のプロジェクトメンバー。資本政策や資金調達計画の作成を担当。

ソフトバンク株式会社 財務統括 財務戦略本部

小林 紘子(こばやし・ひろこ)

社債型種類株式のプロジェクトメンバー。社債など直接金融の資金調達業務を担当。

「社債型種類株式」ってどんな株式? 「社債」や「普通株式」との違いは?

「社債型種類株式」とは、どのような株式なのですか?

小林 「まず種類株式とは、権利内容の異なる複数種類の株式のことです。当社の『社債型種類株式』は、普通株式とは権利の内容が異なり、『社債型』という言葉のとおり、企業が発行する債券の社債に近い商品性を持つ株式になります」

社債に近い、とのことですが一般的な社債との違いは何でしょうか?

小林 「社債は、会計上は原則『負債』として扱われますが、一方で社債型種類株式は、株式になるため『資本』として計上されるところに大きな違いがあります。一般的に社債は、保有すると一定の期間で決められた利子が得られるうえ、償還日には額面金額が払い戻されます。当社の社債型種類株式は、社債と同様に一定の期間で決められた配当が得られますが、株式のため社債と異なり償還期限がありません。ただし、原則として、発行から5年経過した後、当社の権利として発行価格に一定の調整を加えた金額で取得することが可能です」

社債との違いについては理解できたのですが、普通株式との違いは何でしょうか?

田代 「ソフトバンクが発行する社債型種類株式と普通株式との大きな違いは、株主が会社への出資を通じて経営に参加する権利である『議決権』がないことです。また、普通株式への『転換権』がないため、今回の社債型種類株式の発行によって議決権の希薄化が生じないところが大きな特徴です。さらに、普通株式による増資に比べて普通株式に係る「ROE(自己資本利益率)」や「EPS(1株当たり純利益)」といった財務指標の影響に配慮しつつ、健全な財務基盤を確保できることも特徴として挙げられます」

なるほど、普通株主に配慮した設計になっているのですね。

田代 「その他にも、配当は発行からおおむね5年間は固定配当※1となり、当初設定された配当金以上の配当は行われない点などの違いがあります」

  第1回
社債型種類株式
普通株式
証券コード 94345 9434
議決権 なし あり
普通株式への
転換権
なし
配当 固定配当年率2.500%※1
(発行からおおむね5年間は固定配当、それ以降は変動配当)
配当利回り 5.04%※2

国内初の「社債型種類株式」の上場を行ったソフトバンクの狙いとは

東京証券取引所プライム市場に上場したそうですが、種類株式も普通株式のように上場ができるのですか?

小林 「普通株式と異なる種類の株式も条件を満たせば東証への上場が可能であり、当社の社債型種類株式は「優先株等」という制度によって上場しました。今回上場に至った理由としては、個人の方を含めた幅広い投資家から投資をしていただくためには、東証に上場することにより認知度を高めるとともに、売買の機会を提供することが重要と考えたためです」

ソフトバンクが国内初の種類株式の上場企業なのですよね。

小林 「『優先株等』の制度を利用した上場は他社事例があります。社債型種類株式という商品性で上場したということが、国内初になります」

なぜ、社債型種類株式を発行する決断に至ったのでしょうか。

田代 「今年5月の決算発表の場で宮川社長が話した通り、ソフトバンクは長期ビジョンとして、『デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供』する企業を目指しています。また、その実現に向けた事業基盤の再構築を目指す3カ年の中期経営計画(2023年度から2025年度)を発表しました。今後、通信・IT技術の高度化や次世代社会インフラの構築に関連した成長投資を行いながら、高水準の株主還元を継続していくには、手元資金や借入金といった負債性の調達だけではなく、資本性の資金調達を組み合わせて資本を充実させ、財務基盤を強化していくのが望ましいという考えに至りました。資本を調達する手法はさまざまありますが、普通株式の増資と比べ普通株主および普通株式に係る財務指標への影響に配慮した資本調達の手段として、社債型種類株式の発行を選択しました」

投資する側にとって、社債型種類株式はどのような方に向いているのでしょうか。

田代 「上場することにより、投資家の皆さんには市場で売買いただけるようになります。また、現行のNISAや2024年から始まる新NISA制度の成長投資枠の対象となるので、社債型種類株式をNISA口座で保有する場合、他の上場株式と同様に、配当金や売却によって得た利益に対する税金は非課税になります。社債型種類株式は発行からおおむね5年は固定配当として、発行価格の2.5%の配当金※1を受け取れますので、業績によって変動が生じる普通株式に比べて変動リスクが低く、ミドルリスク・ミドルリターンの商品を選好する個人投資家の方に向いていると証券会社は分析している様です」

最後に一言お願いします。

田代 「今回の社債型種類株式を用いた挑戦を成功させ、良い先行事例となることで、日本の資本市場の活性化に貢献できれば良いなと思います」

ありがとうございました。

  • ※1
    配当年率は、2029年3月31日以前に終了する各事業年度に基準日が属する場合は2.500%、2029年4月1日以降に終了する各事業年度に基準日が属する場合は変動の基準金利に3.182%を加えた率とします。また、第1回社債型種類株式は、未払の優先配当金がある場合に未払分を翌期以降に繰り越して支払う「累積型」であり、当初設定された優先配当金以上の配当が行われない「非参加型」の商品となります。なお、2024年3月31日を基準日とする第1回社債型種類株式優先配当金の額は、41.53円(1年を366日とする日割計算)となります。
  • ※2
    2023年度の普通株式の1株当たり配当金予想(86円)÷株価1707.5円(2023年11月1日時点)

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(掲載日:2023年11月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部