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NTT法の見直しは国民も関心を持つべき重要課題。事業者など181者がオープンかつ丁寧な議論を政府に要望

NTT法の見直しは国民も関心を持つべき重要課題。事業者など181者がオープンかつ丁寧な議論を政府に要望

2023年12月4日、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、楽天モバイル株式会社、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟により、電気通信事業者や地方自治体など181者を代表して「NTT法」の見直し議論についての意見表明の共同記者会見が開催されました。

この会見は、12月1日に自由民主党の「『日本電信電話株式会社等に関する法律』の在り方に関するプロジェクトチーム」(以下「PT」)においてNTT法に関する提言案が議論され、2025年の通常国会をめどにNTT法を廃止するよう求める提言がなされているとの報道を受けて開催されたものです。

4社は改めてNTT法の廃止に反対するとともに、今後の政府における検討に向けて、NTTのあり方・法制度のあり方は国民のサービスに大きな影響を及ぼす重要課題であるとして、国民の皆さまに関心を持っていただきたいこと、オープンかつ丁寧な議論をすることを強く要望しました。

NTT法の見直し議論についての共同記者会見が行われるのは今回で3回目となります。

登壇者

※写真左から

  • 一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟 専務理事 村田 太一
  • KDDI株式会社 代表取締役社長 CEO 髙橋 誠
  • ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
  • 楽天モバイル株式会社 代表取締役会長 三木谷 浩史

NTT法の見直しをめぐるこれまでの議論

NTT法については現在、2023年8月末に初回の会議が行われた自由民主党のPTや9月初旬に第1回の会合が行われた総務省情報通信審議会の「通信政策特別委員会」において、NTT法の廃止も含めNTT完全民営化の可能性についてさまざまな議論が行われています。

KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの3社はNTT法の見直し議論について、これまでにも電気通信事業者や地方自治体などを代表する形で10月19日と31日の2回、共同記者会見を行っています。また、3社を含む180者で自民党および総務大臣に対して「連名要望書」を提出し、NTT法の「廃止」に反対し、より慎重な政策議論を行うことなどを要望しています。

さらに、11月14日には3社のトップが相次いで「NTT法のあり方」に関する見解をX(旧Twitter)で投稿すると、11月17日付けでNTT広報室がNTTの見解についてXでポストを行うなど、意見の応酬が行われる場面もありました。

自民党PTの提言報道について、改めてNTT法の廃止に反対。公平・平等にオープンな場で議論を尽くすべき

今回の会見では最初にKDDIの髙橋社長が、181者の意見表明の要旨について説明しました。

公平・平等に市場の声を

髙橋社長は「自民党のPTでの提言がまだ正式なものになっていないと理解しており、まだ正式に聞いてるわけではないが、こういうタイミングで再度われわれのスタンスを明確化したいと思い、会見を開かせていただいた」と開催の趣旨を述べ、意見表明の内容について次のように説明しました。

「自民党の提言案については、NTT法の廃止という、NTT 1社のみの意向に沿ったものだと理解している。市場を形成している大小さまざまな企業、そして何よりも、国民の声を十分聞いた上で提言を出されたものとは言えないのではないか。

今回問題が提起された、NTTが求めている国際競争力の向上を目的とした技術開示義務を撤廃するということについては、これにより何がなされるのか、誰と戦っていくのかということについて明確にしていく必要がある。NTTが国際競争力を強化していくことを目的とするのであれば、NTT法の解釈、もしくはその改正で対応可能と思っている。われわれ各社はNTT法も含めた通信政策の見直しには大いに賛成している。

本来、NTT法改正、通信政策の見直しで目的は達成されるはずであると考えるが、公正競争にも大きく影響を及ぼすNTT法の廃止までがPTの提言には盛り込まれているということで、もしこの議論をするのであれば、当然オープンな場で十分議論を尽くすべきではないか。

本件はNTT法のみならず、今後の通信政策全体に関わる問題であり、公平・平等にNTT以外の181者を含めた市場の声をお聞きいただいた上で、その方向性を定めていただくというのは非常に重要なことではないかと考える」

公正な市場環境の維持が国民の利益に直結

さらに、NTT法は電電公社を民営化する際に、単に利益のみを追い求める巨大企業をつくることは国民の市場の利益にならないという観点から制定されたものであり、今なおその役割を果たしていると指摘。

公正な市場競争環境を維持できなくなれば、これからの世界であらゆるものに活用されていく通信に大きな影響を及ぼすことになり、「まさに国民の利益に直結する相当大きな意味を持つ」として、改めてNTT法の廃止への反対と、オープンかつ丁寧な政策議論を要望しました。

分離の趣旨に逆行する独占回帰に懸念

また、電電公社時代の独占体制からNTT民営化・通信の自由化によって競争が生まれ、通信料金の低廉化、サービスの多様化、イノベーションにつながり、国民への利益の還元・国民生活の向上に寄与したと、NTTのあり方の議論の経緯を説明。

しかし、2020年に携帯電話料金の値下げ議論のどさくさに紛れて、分離の趣旨に逆行する形で、NTT持ち株会社によるNTTドコモの完全子会社化が審議会の議論を得ないまま、一方的に行われた出来事をあげ、「まさに市場支配の強化だと捉えられる。今回のNTT法の廃止が、市場支配力の強化につながることを一番懸念している」と警戒感を示しました。

NTT法で守られるべき大事なポイント

髙橋社長は、これまでの会見でも繰り返し説明を行ってきた、NTTの有する「特別な資産」の重要性と、NTT法廃止による国益・国民生活への影響についても改めて説明。日本の通信事業者は「特別な資産」を活用してさまざまなサービスを開発・提供していることを強調した他、重要な項目である「公正競争」「ユニバーサルサービス」「外資規制」の3項目について、NTT法で守られるべき大事なポイントなどをあげました。

オープンかつ丁寧な議論を政府に要望

今後の政府における検討に向けて、「NTT法廃止はいったん廃止してしまうと、今後生じるさまざまな課題に対応できなくなる可能性もある。日本の国民の利益や産業全体の発展のために、ぜひとも議論を尽くしていきたいと思っており、公正競争の維持における大変大きな課題であると考えている」とオープンかつ丁寧な議論を求めました。

NTT法の議論は、全国民に影響がある重要な課題

会見では、「オープンな場とは具体的に何か」「NTT法は担保措置では担保できないのか」「NTT法が見直されて完全民営化されるとどのような事業に最も影響が出るのか」などの質問が寄せられ、各社が回答を通して理解を呼びかけました。

どういう問題をどう解決しようとしているのか、一切国民は知らされていない

「よりオープンな場とは具体的に何なのか?」との問いに対してKDDIの髙橋社長は、「先週の土曜日から日曜日に各メディアで一斉にPTの提言について記事が掲載されているのを見て、具体的にこういう提言なんだなと知った。われわれは自民党のPTには呼んでいただいてヒアリングを受けているが、その議事の内容、それから他のPTの議事の内容は一切知らされてない。われわれも知らないぐらいなので国民の方たちはもっと分からない。この問題にどういう問題が内在していて、それについてどう解決しようとしているのかということについて、一切国民は知らされてない。これをやはりオープンにしなければいけないということです」と訴えました。

NTT法の改正で済む話なのになぜNTT法の廃止を議論しているのか分からない

「NTT法はそもそも他の法律や担保措置で担保できないものなのか?」という質問については各社とも、担保措置についてはまだ明確に書かれたものを見てないので、何とも言えないが、防衛費の問題から始まって、今、NTTが求められてるのは技術開示の問題のはず。そこについては、NTT法の改正をすれば済むはずなのに、なぜ今NTT法の廃止を議論してるのかよくわからない。NTT法をどうしても廃止したいということは、「何か大いなる目的があるのではないかと推測せざるを得ない」とコメントしました。

NTT法が廃止され完全民営化されると全ての国民生活、企業活動に影響

「NTT法が見直されて完全民営化された場合、具体的にどのような事業に最も影響が出ると考えるか?」との質問には、公正競争維持担保ができなくなると、各社が進めている通信サービス全てに影響が出る可能性がある。特にモバイルサービスについては、その根幹となるところの特別な資産はNTTが持っているため、「一言で言うと、国民の生活全て、企業の経済活動の全てに影響が及ぶ。1民間企業の経営状態によってその料金が決まってしまうということを指す」と、3社が一様に「全ての国民生活に影響がある」と指摘しました。

各社トップが改めて廃止に反対

続いて各社からはそれぞれ次のような意見が述べられました。

ソフトバンク

国の財産に関わる話を国民不在の議論で決着することについては断固反対

この通信政策の見直しの中で、なぜNTT法をなくさなければいけないのか、まだ全然腹落ちしていない。何度も言うように、NTTの『特別の資産』というのは、非常に大きな国の財産だ。それを国民不在の中で決着するということについては、私は断固反対させていただきたいと思っている」

楽天モバイル

通信によるコネクティビティは基本的人権の一部

「スマートフォンは人々にとってはライフラインであり、ワイヤレスコネクティビティというのはもう基本的人権の一部だと思う。NTT法はそのベースとなるもので、議論なしにこの法律をなくすということは、非常に拙速であり、なぜ廃止ありきということを書くのかということ自体、プロセス的にも非常に違和感がある」

日本ケーブルテレビ連盟

「特別な資産」の利用によりブロードバンドサービスが進展

「電電公社時代に全国に整備された電柱、管路などの『特別な資産』の利用が他社にも可能となることで、現在のようなわが国のブロードバンドサービスの提供が進展した。ケーブルテレビはこれらの電柱・管路を利用する形で回線を提供しているが、現状でもNTT電柱の利用申請で多くの拒否事案が発生している。万が一NTT法が廃止されればさらに運用が不透明化する恐れがある」

KDDI

5年先、10年先、全てのものに通信が使われる時代に必ず禍根を残す

「公正競争の担保というのは、結果的に国民の皆さんが使う通信サービスをいかに健全に素晴らしくしていくかというための議論。必ず国民の皆さんのサービスに直結する問題であり、ぜひ興味を持っていただきたい。防衛費の財源の話から始まって、いつの間にかNTT法の廃止というところに話が及んでいる。NTT法を廃止してしまうと、巨大NTTへの回帰の道を開けてしまうことにつながりかねず、今まで何十年もかかって議論をしてやってきた公正競争の維持ができなくなる恐れがある。5年先、10年先、これから全てのものに通信が使われる時代に、必ず禍根を残すことになる」

総務省の通信政策特別委員会では年内にヒアリングが行われ、年明けにかけて論点整理、報告書案の作成が行われ、パブリックコメントの期間を経て、6月頃に答申が行われるスケジュールとなっています。

関連プレスリリース

説明資料

(掲載日:2023年12月4日、最終更新日:2023年12月5日)
文:ソフトバンクニュース編集部