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HAPS普及に不可欠な利用周波数帯拡大へ。ソフトバンクが世界無線通信会議の決定に貢献

日本を代表して世界無線通信会議に参加。ソフトバンクが世界におけるHAPS実用化に向けて貢献

昨年11月から12月にかけて、アラブ首長国連邦のドバイで国際電気通信連合(ITU)の2023年世界無線通信会議(WRC-23)が開催され、ソフトバンクは日本を代表して総務省などとともに参加。ITUやアジア・太平洋地域において当社が議論をリードしてきた、HAPSの携帯電話基地局向け周波数帯追加が正式決定されました。

世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference)とは

国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)が主催する無線通信の各周波数帯や衛星軌道の利用方法、無線局の運用に関する各種規程、技術基準など国際的な電波秩序を規律する無線通信規則の改正を行う会議です。3~4年に1度開催され、ITUに加盟する世界各国の主管庁、世界6地域の代表機関、通信事業者を含む民間企業などが出席します。

提供:ITU

写真提供:ITU

実用化への重要課題、周波数帯の整備をリード。HAPSを世界中で利用できるサービスへ

ソフトバンクは、成層圏通信プラットフォーム HAPS(High Altitude Platform Station)の実用化に向けた取り組みを進めています。その中で、ITU-Rやアジア・太平洋電気通信共同体(APT)において、HAPSの携帯電話基地局で使用できる周波数帯を拡張するための国際標準化活動を行ってきました。WRCは国際的な周波数分配などを規定し、これにもとづいて各国で詳細な割り当てが決まる重要な会議体です。

成層圏を飛行するHAPSの携帯電話基地局と、地上で私たちが利用するスマートフォンの間での直接通信を実現するためには、通信に既存のスマートフォンが対応している周波数帯を用いることが必要になります。これまでは、2GHz帯の周波数帯のみ利用が可能でしたが、それは現在世界の携帯電話の通信で用いられている周波数帯のごく一部であり、世界中にインターネットを届けることを目指すHAPSの実用化や普及には周波数拡大が不可欠でした。

そこでソフトバンクはWRC-23において、世界的に携帯電話用の周波数として利用されている700~900MHz帯、1.7GHz帯および2.5GHz帯を追加することを目指し、2018年から活動を開始。ITU-RやAPTでの技術的研究や無線通信規則の改定案の取りまとめなどへ積極的に取り組み、議論を主導してきました。

今回のWRC-23で承認された周波数帯は、世界の多くの国で地上サービスとして利用されており既存のスマートフォンで利用可能。周波数帯を柔軟に選択できるようになることで、世界のさまざまな国や地域でHAPSによるモバイルブロードバンド通信の導入検討や整備などが進むことが期待されます。

実用化への重要課題、周波数帯の整備をリード。HAPSを世界中で利用できるサービスへ

約6年をかけた周波数帯追加への取り組み。今後も実用化に向けた国際標準化活動を推進

約1カ月間にわたり行われたWRC-23に参加した、ソフトバンク株式会社 渉外本部 電波政策統括室の福本史郎と坂田研太郎に話を聞きました。

坂田 「WRC-23で扱う議題は2019年開催のWRC-19で決定されるので、その準備も含めてこの取り組みは約6年を要しています。まずは、約2年をかけてWRC-19での議題化を行い、その後ITU-Rでの技術検討やAPTでのアジア・太平洋地域の意見の取りまとめなど約4年かけてさまざまな活動を行ってきました。特にWRC-23開催の約1年前からは、世界の各地域機関で作成される地域共同提案への当社意見の反映のため毎月のように世界各地に赴いていました。

坂田

坂田

WRCは全会一致が基本なので相当準備をしてきたつもりでしたが、それでもWRC-23本番ではなかなかコンセンサスを得ることができず、最終週でようやく決定した際は、約6年の積み重ねもあり、何にも代えがたい達成感がありました。今回、われわれがWRC-23含むITU-Rの会合および各地域機関の会合の場で議論を主導したことで、将来のHAPS展開候補国を含む世界各国の政府に対して、日本そして日本企業のHAPSビジネスにおけるプレゼンスをアピールすることができたと考えています」

福本 「今回の周波数帯追加に向けたWRCの一連の取り組みはソフトバンクとしても初めての試みだったと思いますが、おおむね期待通りの結果となり非常に満足しています。今回WRC-23で検討・追加された周波数帯は、同一帯域や隣接する帯域を他のシステムですでに使用している国・地域が存在するため、当該周波数帯をHAPSの携帯電話基地局向けに使用することや使用する際の他システムの保護条件について他国・他地域から異なる意見が出て対立することもありましたが、日本や日本企業が議論をリードすることで、HAPSの運用に過度な制約を与えず国内での使用や今後の海外展開も視野に入れた形での国際ルール作りで妥結することができました。

福本

写真提供:ITU

福本

写真提供:ITU

最終日、クロージングセッションの中でITU事務総局長から今後のコネクティビティにおけるゲームチェンジャーの一つとしてHAPSが挙げられており、世界的にも非常に期待されているソリューションであると改めて認識しました。今後は、今回の決定が各国制度として適切に反映されるよう、HAPS Allianceなどの業界団体も通じて働きかけを行っていく予定です」

ソフトバンク株式会社 渉外本部のWRC-23現地対応メンバー

WRC-23の現地対応を行ったソフトバンク株式会社 渉外本部のメンバー。
写真左から、長津知美、福本史郎、坂本恭平、坂田研太郎、吉田望杏

関連プレスリリース

2023年世界無線通信会議(WRC-23)においてHAPSの携帯電話基地局向け周波数帯の追加が正式決定(2023年12月28日、ソフトバンク株式会社)

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ソフトバンクは成層圏通信プラットフォーム「HAPS」の実用化に向け、さまざまな取り組みを行っています。

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(掲載日:2024年1月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部