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デジタルツインで変わる未来を宮田裕章とひもとく

【テクノロジー×ソフトバンク】デジタルツインで変わる未来を宮田裕章とひもとく 【テクノロジー×ソフトバンク】デジタルツインで変わる未来を宮田裕章とひもとく

みんなのチカラやアイデアをかけあわせて、社会を良くしていくために――。さまざまな社会課題について、ソフトバンクはどのように挑みつづけているのか。X PROJECTでは、ソフトバンクが創ろうとする今と未来を、多角的な視点からひもといていきます。

通信を土台に、あらゆる産業のDXを通じて「テクノロジーで社会を良くしよう」というソフトバンクの思いのもと、今回は「デジタルツイン」をテーマに考えていきます。IoTやAI 、ビッグデータを活用したまちづくりが全国で広がっており、ソフトバンクでもデジタルツインを活用したまちづくりや実証実験に取り組んでいます。そんなソフトバンクの取り組みとともに、これからのまちづくりの可能性や未来の街のあり方について、データサイエンティストの宮田裕章さんにお聞きしました。

PROFILE

  • 宮田裕章
    MIYATA HIROAKI

    慶應義塾大学医学部教授

    1978年生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論。「データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う」ことをテーマに幅広い活動を行っている。コメンテーターとしてさまざまなメディアにも出演。

デジタルを活用した情報革命時代の新しいまちづくりとは

今、IoTやAIなどを活用したまちづくりが活発になっています。そうした新しいまちづくりが活発化している背景にはどのような理由があるのでしょうか?

宮田

産業革命以降、私たちの社会は大量生産・大量消費という考え方を軸に発展してきました。人々の働き方や暮らし方も経済活動を優先したものとなり、私たちが暮らす都市のあり方もそれに最適化する形で考えられてきたわけです。しかし今、テクノロジーの発展によって、従来の社会のあり方、ひいては人と都市そのものの関係が大きく変わろうとしています。

現代は農業革命、産業革命に続く “情報革命” の時代だとも言われますが、デジタル技術を活用することで、これまでは収集できなかったデータが集められるようになり、それによって個々人の多様な生き方を尊重できるまちづくりが現実的になってきたわけです。

デジタルを活用することで具体的にどのようなまちづくりが可能になるのでしょうか?

宮田

これまでは「経済をいかに効率的に回していくか」が、私たちが暮らす都市やまちづくりを考える上での中心的な考え方でした。しかし、情報革命時代のまちづくりにおいては、そうした考え方が逆転すると思います。あくまでも私たちの多様な生き方を成立させるための手段が都市であり、そのためのまちづくりである、というように。

例えば、東京への人口の一極集中が依然として続いていますが、デジタル技術によって働き方における場所の制約がなくなってきたことは、分かりやすい一例です。

そのようにテクノロジーによって “人々の多様な暮らしが響き合う街” を実現するのが、情報革命時代の新たなまちづくりのあり方だと私は考えています。

デジタルツインで街における新しい体験をデザインする

情報革命時代の新しいまちづくりに必要なデジタルの力。その中でもソフトバンクは「デジタルツイン」を活用した実証実験を進めています。本章ではデジタルツインを活用したソフトバンクの取り組みについて、先端技術研究所の小林、AI戦略室の國枝を交えてご紹介します。

デジタルツインとは、現実空間に設置したセンサーなどから集めたデータをAIで分析・処理し、仮想空間にもうひとつの現実空間を再現する技術のこと。それによって現実空間では難しいシミュレーションや精度の高い未来予測を実現し、エネルギーや資源、人的リソースを最適化するなど、今までにない価値を生み出すことが可能になります。

デジタルツインに関連するソフトバンクの取り組みについては以下の記事でも詳しく紹介しています。

宮田

ソフトバンクでは具体的にどのようなデジタルツインの取り組みを行っているのでしょうか?

小林

ソフトバンクは2022年、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に5G回線を活用したデジタルツイン基盤「デジタルツイン・キャンパス」を構築しました。教員や学生らとともに、デジタルツインを活用した実証実験や技術開発を行っています。

小林

主要な実証実験のひとつに、キャンパス内を循環する自動運転バスの実証実験があります。これは、キャンパス内に設置したセンサーから情報を集め、デジタルツインプラットフォームを活用し、右折時の対向車の検知や信号灯火予測の実証実験を大学構内で行うというものです。

宮田

なるほど。私もこれからのまちづくりを考える上で、自動運転は非常に重要な技術だと考えています。自動運転はドライバー不足を補ったり、過疎地での移動手段となったりするだけでなく、私たちが持ってきた、これまでの移動の概念そのものを大きく変える可能性があります。

例えば、運転に使っていた時間を車内での仕事や勉強、リフレッシュの時間に充てることができるようになるかもしれない。また、これまでの地図アプリなどでは最短経路が表示されていましたが、最短で目的地に到着したい人ばかりではありません。きれいな景色を見ながらゆっくり移動したい人もいれば、道中で友人との会話を楽しんだり、名所やおいしいお店に寄り道したりしながら移動したい人もいる。そのような移動という行為にまつわる多様なニーズをかなえる技術としても注目しています。

また、例えばそこにヘルスケアデータなどを組み合わせてもおもしろいと思います。大学周辺を運行するバスは得てして混雑するものですが、運動不足の人がバスに乗らずに歩くことで、何らかのリワードがもらえるような仕組みを作れば、混雑解消の一手になるかもしれない。そのように、大学というコミュニティの環境改善につなげることもできるかもしれませんね。

國枝

ありがとうございます。ソフトバンクでは他にも、神奈川県海老名市にてデジタルツインを活用した街の活性化にも取り組んでいます。これは海老名駅周辺の公共施設や商業施設の情報、交通データとソフトバンクが持つ位置情報を組み合わせて、人の動きや購買行動をデジタル空間でシミュレーションするというものです。

人流や滞在時間、売上予測を商業施設運営者やテナントに提供・共有することで、施策実施の決定判断に加え、広告配信タイミング、人員や在庫数の最適化に活用してもらう取り組みです。

宮田

おもしろいですね。都市部では人気のスポーツや音楽イベントの後は、交通機関が混雑します。しかし今後、ソフトバンクが行っているような人流データの利活用がさらに進めば、人の流れを分散させることはもちろん、街における新しい体験のデザインも可能になるでしょう。

例えば、雨が降ると来店者数が少なくなる店舗が割引情報を発信したり、雨ならではのイベントを開催したりといった、雨の日だからこその楽しい時間を過ごしてもらうような工夫も容易になるはずです。こうした取り組みの積み重ねは、先ほど述べたような情報革命時代の新しいまちづくりの実現につながっていくと思います。

海老名市の実証実験では人流予測や滞在時間、売上予測などの情報を店舗へ展開。店舗側はそれらの情報を参考に混雑対策やスタッフ・在庫の最適化を行うことが可能に

一人一人に最適化した、一期一会の体験を提供するまちづくりへ

ソフトバンクのデジタルツインの取り組みについてご紹介させていただきましたが、私たちがデジタルを活用したまちづくりに実際に取り組んでいく上で、大切な考え方とはどのようなものでしょうか?

宮田

技術的な制約でデータを収集することが難しかった時代は、10人が10人同じ行動を取ることを想定し、最大公約数的なニーズに応えることを目的に街が設計されてきました。同時に、その中で失われていた豊かさや快適さもあったように思います。

繰り返しにはなりますが、そのような従来の街のあり方そのものが、これからは根本的に変わる可能性があるでしょう。ビッグデータやAI を活用すれば、その街にいる一人一人に個別最適化したサービスを提供することが可能になるからです。例えば、同じ街を訪れても、1人で行くか子ども連れで行くか、その時の気分や健康状態によっても楽しみ方は変わってきますよね。その時々の個々人のステータスに合わせた一期一会の体験をもたらすことができれば、訪れるたびにその街のことを好きになっていくようなまちづくりも可能になる。これからの街は、そのような発想で設計していくことが重要なのではないでしょうか。

最後に、新しいまちづくりを実現する上で宮田さんがソフトバンクに期待することを教えてください。

宮田

私はソフトバンクの「=(イコール)」のような形のブランドロゴがすごくいいな、と思っていて。なぜならデジタルの本質もイコール、つまりあらゆるものがつながることにあるからです。

だからこそ無線通信を核に、さまざまなテクノロジーを有し、それらをつなげることのできるソフトバンクのポテンシャルは測りしれないものがあると思っています。現在、実証実験中のデジタルツインも仮想空間と現実空間をつなげるものですが、それだけにとどまらず、モビリティやヘルスケア、アートやエンターテインメントといった異なる領域をテクノロジーでつなげながら、ソフトバンクならではの新しい価値をどんどん生み出してほしいですね。

情報革命とは、テクノロジーによって多様なものをつなげ、今までにない価値や豊かさを社会に生み出すこと。同時に、個人の思いやその時々の状態にまで配慮した「一期一会」の体験を生み出すことがこれからの新しいまちづくりにおいて重要になると、ソフトバンクへの共感とともに語ってくれた宮田さん。通信技術にとどまらない、さまざまなテクノロジーを有する強みを生かし新しい価値を生み出せるよう、ソフトバンクは挑戦と進化を続けていきます。

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