SNSボタン
記事分割(js記載用)

パケ詰まりは無くせるのか?「スマホがつながらない!」を覆す地道な挑戦

パケ詰まりは無くせるのか?-「スマホがつながらない!」を覆す地道な挑戦- パケ詰まりは無くせるのか?-「スマホがつながらない!」を覆す地道な挑戦-

社会にとって必要不可欠なインフラとなっている通信ネットワーク。データ利用量の増加、人流の復活などに伴い、圏外ではないのに極端に通信速度が落ちる「パケ詰まり」が発生している今、通信会社が行っている対策とは何か。

スマホの利用シーンが多様化するなかで、ユーザーの快適な「体感」を生み出すのに「飛び道具はない」と言い切るソフトバンクのネットワークの「番人」に、宮田裕章さんが迫ります。

PROFILE

  • 宮田 裕章
    MIYATA HIROAKI

    慶應義塾大学医学部教授

    1978年生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論。「データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う」ことをテーマに幅広い活動を行っている。コメンテーターとしてさまざまなメディアにも出演。

ソフトバンク株式会社 モバイル&ネットワーク本部 無線設計統括部 エリア設計部 部長

橋本 信(はしもと まこと)

あらゆるライフスタイルに対応できる通信ネットワークの確立が急務に

宮田

私は周りの人から「趣味はスマホの充電だね」と言われるくらい、仕事でもプライベートでもスマホをよく使っています。
私のようなライフスタイルの場合、いついかなる場所でも、安定した通信ネットワーク環境が確保できるかどうかは非常に重要な問題です。
仕事で地方に出掛けるときなども、移動中や現地での通信環境はとても気になってしまいますね。
私に限らず、現代においてこういう人は多いと思います。

橋本

もはや通信ネットワークは、それなしには私たちの暮らしが成り立たないくらいの重要なインフラとなっていますよね。
ですからわれわれも「圏外がないこと」「イライラせず快適に使えること」を重視しながら、当たり前につながる通信ネットワーク環境の整備に取り組んでいます。

モバイルネットワークは社会に必要不可欠な通信基盤となっている スマホの”イライラ”を街からなくす

宮田

最近では電子決済も普及してきたので、ユーザー側としては「電波が届かなくて決済できない」というような状況は避けたいところです。
また、リモートワークやワーケーションが一般化するに伴って、オフィスだけでなく、移動中や地方においても高速で安定した通信ネットワークが必要になってきている。
ソフトバンクのような通信会社には、あらゆる場所、あらゆるライフスタイルに対応できる通信ネットワーク基盤の構築が求められているように思います。

橋本

おっしゃる通りです。
とりわけコロナ禍以降、通信環境を取り巻く状況も大きく変化しました。
繁華街の通信トラフィック量が減る一方、住宅街でのトラフィック量は増えましたが、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い規制が緩和された最近では、再び繁華街のトラフィック量が急増しています。
また、さまざまな決済サービスが登場して日々その利用量が増えていることや、今年はさまざまなイベントが再び開催されたり、インバウンド客が増えてきたりといったこともありました。

ソフトバンクは、そのような社会の変化に応じて臨機応変かつ迅速に対応しながら、安定したネットワーク環境を提供することが使命です。
そこには「これさえやっておけばいい」といった飛び道具的な施策はありません。
通信環境が不安定な地域があれば、新たに基地局を設置したり、無線パラメータの数値をこまめに変更し、最適な値にするといったチューニングを行ったり、そのような地道な取り組みを続ける毎日です。

通信環境を取り巻く状況の変化 トラフィック増加傾向の中、コロナ禍で人々の生活スタイルが読みづらい状況
お客さまの月間データ利用量は年々増加 月間データ利用量 20GB以上のお客さまの比率推移 20GB超のお客さまの比率 1年で約1.15倍の増加 全スマホ月間データ利用量の80%程度 ※SoftBank スマホ料金プランを対象とした数値

(ネットワーク環境をとりまく状況が変化している)

最も重要なことはお客さまの「体感」。その手段に「飛び道具」はない

宮田

ネットワーク品質の維持向上のために日々いろいろな努力をされているというお話ですが、具体的にどのような取り組みを行っているのか、ぜひ伺いたいです。

橋本

スマホで動画を見るときやキャッシュレス決済をする際、読み込みが遅くなることを、ユーザーの方も経験があるかと思いますが、通信ネットワークを構築するうえで、もっとも重視しているのが、そういったお客さまの「体感」です。
例えば、スマホなどの端末からデータを送信する場合などの通信回線の上り方向のことを「アップリンク」、その逆方向を「ダウンリンク」と言います。
スマホなどで動画やコンテンツを視聴する際に重要なのは一般的にダウンリンクのスピードだと思われがちなのですが、ダウンリンクがいくら速くても、アップリンクが遅いといわゆる「パケ詰まり」を起こしてしまうんです。
また、ダウンリンクを考える上で、お客さまが視聴するコンテンツに見合った速度を実現することも大切です。

こうしたことを踏まえて、アップリンクとダウンリンクのバランスをしっかり取って、ネットワーク全体でパケ詰まりを起こさないことを重要視しています。

ネットワークの整備において一番重視しているポイント お客さまの体感≒ネットワーク全体でパケ詰まりがない

宮田

なるほど。
ネットワーク回線の使い方は利用者の行動スタイルによっても異なりますからね。
動画配信をする人はアップリンクをよく使いますが、一般ユーザーはダウンリンク中心の人が多いかもしれない。そのようなユーザーそれぞれの行動スタイルに合わせた通信サービスが提供できれば、理想的かもしれませんね。

同時に通信ネットワークが重要な生活インフラとなっている現在、「いつでもどこでもつながる」といった安心感を提供することも大事だと思うんです。
そのようなユーザーの安心感に寄与するような取り組みには、どのようなものがありますか?

橋本

ビッグデータを活用したネットワーク品質の改善、というのが一つ挙げられます。
携帯電話の基地局周辺では、さまざまな周波数の電波が飛び交っており、基地局ごとにカバーするエリアも数百メートルから数キロメートルと異なるため、どの場所の通信品質が良くないのかピンポイントで見極めるのは難しいんです。

ビックデータを活用した解析と対策 ネットワーク側の品質データ 端末側の品質データ 詳細分析・改善

橋本

そこでわれわれは基地局単位の品質データだけでなく、端末側の品質データも全国を100m〜1kmのメッシュ単位に区切ったビッグデータとして収集し、それらをかけ合わせることで、通信が不安定な場所をピンポイントで見極め、改善策を講じています。

また、問題検知から要因分析、対策実行、効果測定のプロセスはAIや機械学習も活用しており、年々その対象を増やしながら対策サイクルを早める努力をしています。
さらにお客さまの端末から応答が返ってくるまでの時間を分析する独自の評価指標で、各エリアの通信品質を分析しています。

宮田

端末データも通信品質の分析に活用しているというのは興味深いですね。
そうやって通信品質をきめ細かく可視化しているので、アンテナ設置や帯域の調整なども迅速に対応できる。

また、そのような通信品質の可視化がユーザーの目にも届くようになれば、非常に便利な気がします。
例えば、出張の移動中に新幹線などで仕事をしたい場合、このエリアからこのエリアは通信状況が良好なのでオンライン会議をしよう、このエリアは通信状況がイマイチだからオフラインの作業をしよう、など計画も立てやすくなる。
1つのサービスとしても可能性があるな、と感じました。

独自の評価指数による品質分析

(通信要求から応答までの時間を分析したグラフ。赤の部分はパケづまりが起こる可能性が高まっている領域であり、青や緑が大きいほど品質維持ができている事を示しています。)

充実した通信ネットワークが、社会課題を解決する未来

充実した通信ネットワークが、社会課題を解決する未来

橋本

宮田さんはこれからの時代の通信ネットワークにどのようなことを期待したり、どのようなことが求められたりすると思いますか?

宮田

通信ネットワークはお金のやり取りから私たちの命に関わることまで、ますますライフラインとしての重要性が高いものとなっていくはずです。

例えば今後、医療の現場で遠隔手術などが普及する場合、少しの通信の遅延が患者の命を左右することも考えられるわけです。
日常的にスマホやIoTデバイスで自分の健康状態をチェックし、異常が検知されれば自動的に医療機関に連絡がいくような仕組みや、スマホを使った遠隔診療も今後は一般的になっていくでしょう。
そしてそれらは、高速大容量かつ安定した通信ネットワークの存在が大前提となってくる。

とはいえ、電波や通信のリソースにも限りがあると思うので、そうしたリソースを個別最適化していく発想も大切です。その点でも、AIやビッグデータの活用に長(た)けたソフトバンクの今後の取り組みには注目しています。

橋本

ありがとうございます。
今後は、人口減少や過疎化などの社会問題を解決する手段としても、通信ネットワークがますます活用されるようになっていくことかと思います。
ネットワーク品質とそれに対する信頼性をますます高めていくためにも、私たちの取り組みに終わりはありません。

宮田

そうですね。
全国どこでも、余すことなく高品質なネットワーク環境が実現できれば、本当の意味で場所に縛られない多様な生き方ができるようになるかもしれません。
地方の過疎化や東京一極集中の解決の一手につながる可能性も大いにあります。
そういった意味でも、あらゆる場所から「圏外をなくす」という志は素晴らしいと思いますし、通信領域だけでなく幅広い分野の技術を有するテクノロジー企業としてのポテンシャルにも期待したいところですね。

あらゆるものをデジタルでつなぎ、社会を変革する。そのようなビジョンを掲げるソフトバンクにとって、通信ネットワークは根幹ともいえる重要な分野です。
「いつでもどこでもつながる」ネットワーク構築にこれからも着実に取り組んでいくと同時に、AIやIoT、ロボットや自動運転など、幅広いテクノロジーを扱う企業としての強みを活かし、通信ネットワークにおける安心感と付加価値の提供に今後も尽力していきます。

2023年9月に開催したモバイルネットワーク品質向上に関する説明会の記事はこちら