違いはなに?Alibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudのオブジェクトストレージサービス比較!

2022年6月30日掲載

キービジュアル

ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。
本記事ではAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudのオブジェクトストレージサービスについて、概要と特徴を比較します。
パブリッククラウドのストレージサービスを使用したいけれど、違いがわからない、どのストレージサービスを使用したらよいか分からないという方は、ぜひご一読ください。

目次

パブリッククラウドのストレージサービスとは。

はじめに、パブリッククラウドのストレージサービスとは何かについてご説明します。

ストレージという用語になじみがない方もいらっしゃるかもしれませんが、もしこのサイトをパソコンからご覧いただいているのであれば、パソコンに内蔵されているハードディスク(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)もストレージの一種です。
ストレージとは、長期的にデータを記録しておく装置のことで、補助記憶装置とも呼ばれます。

パブリッククラウドベンダで長期かつ大容量でデータが保存できるようにストレージを用意し、インターネット経由でストレージを利用できるようにしたのが、パブリッククラウドのストレージサービスになります。

ただし、ストレージサービスと言っても、いくつか種類があります。
これからご紹介するストレージでは、「何々」ストレージと、ストレージの前につく用語の単位でデータをとりあつかっています。
このデータのとりあつかい単位の違いと、利用するプロトコルの違いで種類がことなっています。そして、プロトコルが違うとデータにアクセスするユーザが使うアプリケーションも変わってきます。

また、それぞれデータの更新頻度や容量によって保存するストレージに向き、不向きがあるので、自社のデータがどのようなものなのかあらかじめ特性を把握しておくことも重要です。

 オブジェクトストレージ ファイルストレージ ブロックストレージ
データ更新頻度
データ量大容量中程度大容量
主な用途バックアップなどの更新頻度の低い大容量データ
動画や静的なWebページ
共有ファイルサーバサーバ、データベース
プロトコルHTTP、HTTPSCIFS、NFSSCSI、FCoEなど

・オブジェクトストレージ

この後に比較するストレージサービスは、このオブジェクトストレージになります。
前置きの通り、オブジェクトストレージはオブジェクトという単位でデータをあつかいます。

オブジェクトストレージでは、HTTPもしくはHTTPSプロトコルでデータにアクセスします。
データの更新頻度が低く、データ容量も非常に大きいものを保存するのに適しています。

・ファイルストレージ
ファイルストレージはファイル単位でデータをあつかっていて、Windows OSをお仕事でお使いであればお馴染みのように、データをフォルダやファイルという形のディレクトリ構造で管理します。

ファイルストレージでは、CIFSやNFSというプロトコルでデータにアクセスでき、Windows OSであればエクスプローラーなどからデータにアクセスできます。
データの更新頻度とデータ容量が、3つの中では中程度のものを保存するのに適しています。
ファイルストレージのほうがみなさまにはなじみ深いと思いますが、パブリッククラウドではオブジェクトストレージの方が歴史の長いサービスであるため、ファイルストレージの比較は別の機会とさせていただきます。

・ブロックストレージ
ブロックストレージはブロック単位でデータをあつかいます。
利用者が何らかのアプリケーションでブロックストレージを直接操作することはありません。
ブロックストレージでは、SCSIやFCoEというプロトコルでデータにアクセスします。

データの更新頻度が高く、データ容量は3つの中では少ないものを保存するのに適しています。
ブロックストレージも、今回の比較記事ではご紹介しません。

オンラインストレージという用語もありますが、ファイルストレージの一種で、今回ご紹介するパブリッククラウドのストレージサービスとは、IaaSなのかSaaSなのかというサービス提供形態の面で異なるものとなります。

パブリッククラウドのストレージサービスを利用するメリット・デメリット

次に自社でストレージ用のハードウェアを調達するオンプレミス型と比較して、パブリッククラウドのストレージサービスを利用するメリットとデメリットについてです。
パブリッククラウドのストレージサービスを利用すると、ストレージ特有の悩みからも解放されるでしょう。

まず、オンプレミス環境では、ハードウェア購入後にストレージ容量の追加が必要になった場合、コストや時間的な面でリソースをすぐに追加することが困難です。
しかし、パブリッククラウドのストレージサービスを利用すると、オブジェクトストレージでは容量が無限、ファイルストレージでも桁違いの容量のため、容量を心配する必要がまずありません。
もちろん、容量に応じて課金は発生しますので、思わぬ過大請求が来ないように、データ容量がどの程度かは把握しておきましょう。

また、インフラストラクチャ部分の運用保守責任をパブリッククラウドベンダが負いますので、ハードウェアの制約、保守からも解放されます。ユーザが、ストレージのバージョンアップやハードウェア故障、老朽化によるリプレースに対応する必要がなくなります。
特にストレージのメンテナンスは、トラブルでデータが無くならないように非常に気を使いますので、このメンテナンスからの解放もコスト面での大きなメリットと言えるでしょう。

さらに、オンプレミスの場合では、ハードウェアの仕様と価格を比較・検討・決定して購入しても、大容量ストレージともなると購入しても数日では届かず相当の日数を必要とします。パブリッククラウドのストレージサービスでは、意思決定が済めば、調達や変更は数クリックで済むため時間を節約できビジネス要求に素早くこたえることができます。

料金も利用した分だけ支払う従量課金形態が選択できる点がメリットとしてあげられます。
オンプレミス環境では、今後数年のデータ容量を見越して余剰のある仕様でハードウェアを購入したりしますが、パブリッククラウドのストレージサービスでは実際に使用している分だけ支払えばよいので無駄が無くなります。

・オンプレミスとパブリッククラウドのメリットとデメリットの比較表
〇:比較先と比べてメリットがある。
△:比較先と比べて一長一短がある。
×:比較先と比べてデメリットがある。

 オンプレミスストレージパブリッククラウド
ストレージサービス
ハードウェア仕様の決定要求・予算に応じて自社で決定できる。
×パブリッククラウドベンダが決定する。
利用者側では決められない。
容量追加の容易さ×直ぐには難しい場合がある。オブジェクトストレージでは無限。
ファイルストレージでも桁違いの容量。
構成の柔軟さ冗長構成では同一ベンダで用意する必要が有る。一部だけをクラウドサービスで利用することができる。
ハードウェア保守
自社で行うため、運用負荷がある。
トラブル時も自社で制御できる。
ハードウェア保守は、パブリッククラウドベンダが行う。
障害時に深い原因追及が出来ない場合がある。
調達にかかる時間×購入後、一定の時間が必要。直ぐに調達が可能。
費用面固定金額で予算は立てやすい。
余剰投資になることがある。
従量課金だと無駄が減る。
課金項目が複雑でわかりづらい。
従量課金は変動するので予算が立てにくい。
セキュリティ自社で把握していることを前提に、自社の要求に応じてセキュリティを高めることができる。パブリッククラウドベンダが提供していることを前提に、
オンプレミス以上にセキュリティ担保の考慮が必要。

 

メリットだけではなく、デメリットも存在します。

インフラストラクチャ部分の運用保守責任をパブリッククラウドベンダが負いますので、オンプレミスと比較してトラブルが発生した際に利用者側でインフラストラクチャ部分のログを閲覧したり、利用者側で深い原因を追究することができません。自社で全てをコントロール・把握したい場合は、オンプレミス環境を利用する方が適しているといえます。

同様に、インフラストラクチャ部分をパブリッククラウドベンダが担うということは、性能や仕様を自社が指定するものに決められない場合があるデメリットも存在します。
ストレージ用ハードウェアが独自で持っている機能を利用したい場合、パブリッククラウドベンダが同様の機能を提供していなければ、利用できないことになります。

また、デメリットではありませんが考慮しておくべき点があります。
各社SLAや耐久性をうたっていますが、利用停止が許容出来ない場合は、クラウドコンピューティング上でも障害が発生することを前提に、利用者側で対策を講じる必要があります。
利用停止だけでなく、何らかの理由でパブリッククラウドのストレージサービス上のデータが損失しないよう、あらかじめ考慮しておくことも重要です。これは難しいことではなく、各パブリッククラウドで何らかの別サービスや冗長化オプションを用意しています。

オブジェクトストレージサービス概要の比較(2022年6月時点)

メリットとデメリットについて記載しましたが、今では、さまざまなパブリッククラウドベンダからオブジェクトストレージサービスが提供されていますので、いざ利用しようと考えても、どのパブリッククラウドを利用したらよいか迷われるかもしれません。

そこで、シェアの高いパブリッククラウドであるAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudのオブジェクトストレージサービスについて、概要や特色についての比較表とコメントを掲載します。

基本的な機能は各社横並びではありますが、付加機能の面で違いがあります。

※パブリッククラウドの比較表とコメントについては、アルファベット順で記載しています。

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
オブジェクトストレージサービス名称Object Storage Service(略称:OSS)Amazon Simple Storage Service
(略称:S3)
Azure Blob StorageCloud Storage
専用クライアントの有無あり
ossbrowser
あり
S3 Browser
あり
Azure Storage Explorer
なし
耐久性
*データを失わない確率
99.9999999999%
12個の9
99.999999999%
11個の9
99.999999999%
から
99.99999999999999%
11個の9から16個の9
*冗長構成による
99.999999999%
11個の9
可用性
*稼働率
99.995%99.5%から99.99%*
*ストレージクラスによる
99%から99.9%*
*冗長構成による
99.9%から99.99%
*ストレージクラスによる
課金項目

・ストレージ容量
・アウトバウンドトラフィック量
・APIコール量
・付加サービス利用量

・ストレージ容量
・アウトバウンドデータ転送量
・リクエスト数

・ストレージ容量
・アウトバウンドデータ転送量
・データ操作量
・その他機能

・ストレージ容量
・アウトバウンドネットワーク使用量
・データ処理

無料枠ありありありあり
ストレージクラス・Standard
・Infrequent Access
・Archive
・Cold Archive
・S3 Standard
・S3 Intelligent-Tiering
・S3 Standard-IA
・S3 One Zone-IA
・S3 Glacier Instant Retrieval
・S3 Glacier Flexible Retrieval
・S3 Glacier Deep Archive
・Hot
・Cool
・Archive
・Standard Storage
・Nearline Storage
・Coldline Storage
・Archive Storage
アクセス制御方法・ACL
・RAM
・ポリシー
・ACL
・IAM
・ポリシー
・Azure Active Directory
・Role Base Access Control
・Shared Access Signature(SAS)
・共有キー
・ACL
・IAM
容量上限無制限無制限制限あり無制限
データ暗号化可能可能可能可能
監査ログ可能可能可能可能
ライフサイクル機能ありありありあり
ゾーン・リージョン間複製可能
*非対応なリージョン組み合わせあり
可能可能可能
転送高速化ありありなしなし
ユニーク機能Image processingS3 Intelligent-TieringAzure Active Directory セキュリティTurbo Replication
SLAありありありあり
見積用サイトの有無なし(OSS非対応)あり(日本語対応)あり(日本語対応)あり(英語)

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、世界やアジアでも指折り、中国では圧倒的なシェアを誇るパブリッククラウドサービスです。
Alibaba Cloudには、中国国内での利用がメインの「中国サイト」と、中国国外向けの「国際サイト」の2つのサイトが存在します。2つのサイトの違いは、サービスを運営する企業が異なることで、日本から利用する場合は、Alibaba Cloudシンガポールが運営している「国際サイト」が主に利用されます。

Alibaba Cloudでのオブジェクトストレージサービスは、Object Storage Service通称OSSとして提供されていて、データを蓄積する、操作するといったような基本的な機能は備わっています。
OSSでは、さらにそこからTransfer accelerationやImage Processingといったそのデータをどうしたいのかという付加機能を提供することで、他社との差別化を図っていることがうかがえます。
OSSの機能一覧については、公式のこちらのページをご覧ください。

Amazon Web Services

Amazon Web Servicesは、ECサイトで有名なAmazon関連のAmazon Web Services社が提供しているパブリッククラウドサービスで、通称AWSと呼ばれています。パブリッククラウドの分野では、世界シェア1位で業界の第一人者でもあります。

オブジェクトストレージサービスはもちろん提供されており、Amazon Simple Storage Service通称S3として提供されています。何故通称がS3なのかは、サービス名のアルファベットの頭文字全てがSであり、その数が3つであることからS3という通称になっています。

業界第一人者だけあって、利用者が利用後に直面するアクセス権が適切か、ストレージの利用状況はどうかといったストレージサービス運用の分析機能が充実しています。
S3の機能については公式のこちらのページをご覧ください。

Microsoft Azure

Microsoft Azureは、Windows OSやOfficeソフトで有名なMicrosoft社が提供しているパブリッククラウドサービスで、Azureはアジュールと読みます。

Microsoft Azureからもオブジェクトストレージサービスが提供されており、Azure Blob Storageという名称で提供されています。Blobはブロブと読み、Binary Large Objectというデータベースのデータ型から取られたもので、一般には馴染みがない用語かもしれません。

Azure Blob Storageで特徴的なのは、耐久性とアクセス制御です。
耐久性を最も高い構成にした場合、他クラウドよりも耐久性が高くなります。
また、アクセス制御が他社とは明らかに異なっており、Azure Active Directoryと連携することでActive Directoryベースのアクセス制御を実施することができます。
Azure Blob Storageの機能一覧については、公式のこちらのページをご覧ください。

Google Cloud

Google Cloud は、検索エンジン、Gmail 、YouTube などを提供しているGoogle 社が提供しているパブリッククラウドサービスです。
通称GCPと呼ばれていますが、これは2021年までの名称だった Google Cloud Platform から来ています。

Google Cloud でのオブジェクトストレージサービスは、Cloud Storage という名称で提供されています。ネーミングが非常にシンプルで好感が持てます。

Cloud Storageでは、デュアルリージョンバケットやターボレプリケーションといったデータの冗長化や複製機能が強化されています。
Cloud Storageの機能については、公式のこちらのページをご覧ください。

オブジェクトストレージのストレージ容量料金比較(2022年6月時点)

実際にはストレージ容量以外でも料金が掛かってきますので、ご注意いただきたいのですが、ご参考までにストレージ容量部分のみの料金比較を掲載します。

一つ前の表に記載した見積サイトから計算したデータになり、いずれも定価です。
Alibaba Cloudはこちらから計算した値です。

他にも課金項目があるので参考値ではありますが、100TiBの容量が月数万で利用できるのは大きな魅力ではないでしょうか。

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
ストレージ容量100TiB100TiB100TiB100TiB
課金タイプ従量課金従量課金従量課金従量課金
条件Cold Archive StorageGlacier Deep Archiveレベル:Standard
タイプ:ブロックBlob Storage
ストレージアカウント:汎用v2
アクセス層:アーカイブ
冗長性:LRS
Archive Storage
地域日本(東京)アジアパシフィック東京Japan Westasia-northeast1 Tokyo
月額料金(ドル)204.8ドル206.45ドル204.8ドル256.0ドル
月額料金(日本円)
*1ドル135円換算 小数点以下切り捨て
27,648円27,870円27,648円34,560円

まとめ・利用ケースについて

利用ケースは、利用者側の要件やオブジェクトストレージサービス以外のご利用状況もありますので、あくまで一例ではありますが、以下のようなケースがあります。

・Alibaba Cloud の OSS の場合は、OSS 単体よりも OSS の付加機能、特に中国へのデータ転送を高速化する目的で選定されるケースがあります。

・Amazon Web Services の S3 の場合は、AWS 自体がパブリッククラウド業界標準となっており利用者も情報も多いことから選定されるケースがあります。

・Microsoft Azure の Azure Blob Storage の場合は、既存のシステムが Windows ベースで開発されている、アクセス制御をActive Directoryで行いたいなど、Microsoft 製品との親和性を求める場合に選定されるケースがあります。

・Google Cloud の Cloud Storage の場合は、Cloud Storage に格納したデータをGoogleが提供している別サービスで利活用することを求めて選定されるケースがあります。

利用ケースを参考にして、皆さんの利用シーンにあわせて使い分けてみてください。

関連サービス

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。

Amazon Web Services (AWS)

ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです

「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。

Microsoft Azure

Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。

Google Cloud

Google サービスを支える、信頼性に富んだクラウドサービスです。お客さまのニーズにあわせて利用可能なコンピューティングサービスに始まり、データから価値を導き出す情報分析や、最先端の機械学習技術が搭載されています。

おすすめの記事

条件に該当するページがございません