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【書き起こし】2018年3月期決算説明会(後編)

ソフトバンクグループ株式会社は2018年5月9日に、2018年3月期 決算説明会を開催しました。

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資料

スプリント事業

スプリント事業 サマリー

スプリントは創業以来119年の歴史がある中で、一番大きな営業利益を出した。マルセロ・クラウレは「マサ、がんばったんだ、俺たちは」と言っていたので、一つ強調しておきたい。また、最終利益が黒字になったのは11年ぶりでEBITDAも最高になった。

OPEX(サービス売上原価+販管費)

OPEX

なぜかと言うとOPEXの費用をマルセロ体制になって下げることができたからだ。
EBITDAが倍増した結果、営業利益が3,000億円近くになった。日本円で2,900億円、ドルで言うと2.7ビリオンドル。これは、スプリント119年の歴史で過去最高だ。

営業利益

営業利益

2年前までは11年も赤字だった。そういう状況から、過去119年で最高の営業利益というのは、スプリント単独でもがんばっていたということを、ぜひ再認識していただきたい。

純利益

純利益

税引き後の利益でも黒字。(グラフで)薄く書いてあるところは税制改正による一次的な部分なので差し引いて考えた。「1円でもいいから黒字にしよう」を合言葉としてやっていたが、最終利益でも黒字になっている。

調整後フリーキャッシュフロー

調整後フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローは1,000億円黒字。しかも2年連続。(グラフの)角度を見ていただければ、着実にソフトバンクグループになって、好転した。

経費を下げただけじゃなく、ネットワークも改善し、顧客の獲得も増やした。

スプリント 2018年度 見通し

2018年度 見通し

スプリントは着実に改善し、EBITDAやキャッシュも見通しとして十分いける状況になった。

スプリント投資の実績

ソフトバンクがスプリントを買収したときは確か7ドルだった。
(2018年5月9日)現在5ドルぐらいだから、「スプリントに投資して、損をした」と見ている方がいる。でも実際はソフトバンクが親会社として円で借り入れし、円でドルに転換して買収した。円換算だと2兆円。現在2兆2,000億円で借り入れが同じでも、株式価値は(取得原価の)3,800億円。(現在は)5,300億円に増え、1,500億円ぐらいもうかっている。

今回、「売り払った」わけじゃなくて「合併をした」ので、合併後の株式を持っている。持っている27%の株式価値が合併後のシナジーで増える。株式部分の5,300億円が、何倍増になると信じているから、スプリントの株は手放さない。途中経過だが、決して損している状況ではないということを、ご理解いただきたい。

スプリントとTモバイルUS 合併に合意

スプリントとTモバイルUS 合併に合意

スプリントとTモバイルUSが合併を発表した。「本当に上場会社の社長2人が並んだ写真か?」と笑っている人がいますが、まさに型破りの2人。この2人が手を結んでこれから大競争を仕掛けていくことは、より価格が安くなる。あるいは、5Gのネットワーク競争がより高まって、米国の国民にとって大いにプラスではないかと思う。

取引概要

合併の結果、ソフトバンクの持株比率は27%になり、取締役派遣は4名の枠を持つ。来年(2019年)の前半に合併が正式完了見込みだ。

半年ぐらい前に交渉が破談した。そのときにソフトバンクの取締役会は熱い議論をした。「われわれの経営権を手放すべきではない。せめて対等の権利を持つべきだ」と先方にも伝えた結果、破談になった。その後、もう一度交渉して、いろんな条件を交渉し、合意した。

何を妥協したのかというと、「せめて、経営権を対等に持ちたい」ということを妥協した。妥協することはある意味恥ずかしい。「孫はあれほど経営権にこだわった。『これからも持ち続けるんだ』と胸を張って言ってたのに」と評価をされていると思うが、恥ずかしい思いも分かった上で飲み込む。一時的な恥、退却は、長い意味での勝利、大きな意味での勝ちを取れるのであれば、恥ずべきことではない。私はあえて非難を受けてもかまわない。

なぜかと言うと、冒頭に申し上げた群戦略の部分が非常に大きい。大きな根本的戦略は、群戦略だ。その大きな戦略の組織論からすると、正しい判断をしたと思っている。

5G加速へ

5G加速へ

この合併が何を意味するのか。四つあるが、大競争の中で、まずネットワーク競争がある。

5Gのネットワーク競争が、これから米国で行われる。米国が世界で最も重要な、先進的で大きな市場だが、日本や韓国、あるいは中国に比べると、米国のネットワークは遅れがちでいいのかと。

5Gの特徴

今IoTが一気に始まろうとしている。IoTが始まると、人間が「しゃべるため」「インターネットに接続するため」の端末だけでなく、さまざまな端末が通信を始める。端末が爆発的に増えるとき、4GのLTEのネットワークでは、それをさばけない。5Gのネットワークに1日も早く転換することは重要なことだ。

重要なのはスピード、ネットワークのキャパシティー、レスポンスタイム。例えば、自動運転はレスポンスタイムが遅いといろんな問題が発生し得る。この5GのネットワークはIoT時代、AI時代に欠かすことができないものになってくる。

5Gの可能性

この合併後の新会社がスマートシティー、自動運転、さまざまな機器に、IoTとしてリードしていく。

初の全米5Gネットワークを構築

初の全米5Gネットワークを構築

それをリードするためにふさわしい電波の周波数。2社合わせると、全米でも最も強い電波の組み合わせ。5Gになったときに、一番力を発揮する電波が2.5GHz帯。この2.5GHz帯をたくさん持っているのがスプリント。それと、TモバイルUSが持っているローバンド、それからミリバンド。

5G早期展開へ

この部分を足すと、最強の5Gのネットワークを作ることができ、統合シナジーも出てくる。5Gの時代に米国で最もリーダーシップを発揮するのがこの新会社で、通信インフラとしての世界のリーダーシップを取り戻すのは、この合併によってもたらされる。

統合によるシナジー

統合によるシナジー

次にシナジー効果。この2社による合併後の効果は約5兆円弱。ネットワーク、セールス、そしてバックオフィス。足して、現在の資産の売り上げ、そしてEBITDAの利益マージン。40%ぐらいが50%を超えるところまでいく。

統合会社

売り上げも急激に増えていく。場合によっては、米国でナンバーワンの会社になることも不可能ではないというところが見えてきた。

フリーキャッシュフロー(統合会社)

フリーキャッシュフロー(統合会社)

フリーキャッシュフローも、一気に増えている。スプリントはフリーキャッシュフローでプラスになったばかり。合併後の会社も最初は小さいが、シナジーで一気に高まってくる。

今までスプリント、TモバイルUSは、それぞれ他の3社に負けないネットワークを持たないといけなかったが、新会社は足して一つの、より強力なネットワークを持てばいい。ネットワークの投資に対する経営効率は大ざっぱに言うと倍良くなっていく。固定費だけでなく、設備投資に対する効率も一気に良くなり、フリーキャッシュフローは高まる。

今回、合併後の会社の株式27%をすぐに売りたくないというのは、このアップサイドが期待できるから。今(2018年5月9日時点)の株価で計算しても、損ではなくプラスが大いに期待できると思っている。

大競争戦略の構築

大競争戦略の構築

次に、大競争。われわれはNO.1を目指しているが、スプリントが虚勢を張っても、AT&Tやベライゾンを抜くのは戦略的にも構造的にも難しいのが、今までの状況。しかし、合併で1位を狙う。高付加価値の商品も出しながら、価格でも勝負する。

ケーブルカンパニーのコムキャストやチャーターもワイヤレスの世界に参入してきた。今まで4社あったのが、5社、6社、7社と競争相手は増えるが、AT&Tやベライゾンに負けない規模の会社を作ることでネットワーク競争や価格競争を仕掛ける。

経営的な源泉として、規模の経済とネットワークのキャパシティーがあるから、価格競争を仕掛けられる。マーケットシェア1位を狙いに行くところを背景として、ワイヤレス・ブロードバンド・ビデオと、競争の範囲を広げていく。

5G早期展開

5G早期展開

米国への貢献として、5Gの早期展開で雇用を見込んでいる。直接的な建設、あるいはその他で300万人ぐらい出るし、競争を各社が行えば55兆円ぐらいの経済効果があるという試算もなされている。

雇用創出を加速へ

雇用をさらに加速するため、合併は大いに意味のあること。大きな結果を出すための戦略的な意思決定である。もともと狙っていたのは、TモバイルUSを買収し、われわれが完全コントロールを取って、プレミアムを30%や40%払う覚悟で交渉していた。

今回は、経営のコントロール権、意思決定権は向こうに譲ったが、プレミアムを受け取る側になった。経済面では悪いものではない。群戦略の中の一環としては、一部譲って一部取る。トータルでは誤差の範囲だ。

アーム事業

Armベース チップ出荷数

大きなお金をかけて買収した。アームは皆さん全員がポケットに持っているであろうスマホ、あるいは携帯電話のチップのマーケットシェアが世界でほぼ100%。世界市場の約100%のマーケットシェアを持っている会社で、どれほど収益を稼げるか?

なくてはならないチップのほぼ100%のシェアを持っているアームが、ソフトバンクの傘下に入った。チップ出荷数も着実に伸びてきて、200億個出荷している。赤ちゃんやお年寄りを含めて、世界70億人が平均して1年間で3個のアームを買ったことになる。先進国の人ならば5個買っている計算。いかにアームの存在が大きいかということだ。

売上高

売上高

売り上げも8%伸びている。

arm 仮想SIMカード

仮想SIMカード

さらに重要なのは、IoTでSIMカードが大きい。そして、コントロールするためのマイクロプロセッサが別個あって、通信するためのIoTデバイスは最低2個チップが必要だった。それをニコイチにして、iSIMということでワンチップ化され、アームのコアの中に入れてしまった。

そのIoTのチップには、これからアームのSIM、ソフトバンクつまりスプリントやTモバイルUSのSIMが自動的に内蔵されることを意味する。これが戦略的に何を意味するのか。

arm Project Trillium

Project Trillium

「Trillium」とは、1兆という意味。1兆個のIoTのチップに機械学習、AIの機能を実装可能にし、それを全部、iSIMでつなぐというのが「Project Trillium」。しかも自動的にどんどん賢くなる。今から30年たつと、このアームを中心として、「ソフトバンクはやっぱり賢かったんだ」と皆さん理解を深めていただける。

1兆個のアームのチップがAI化し、iSIMで自動的につながり、われわれのクラウドにつながる。さまざまな製品に載り始めている。

アーム 2018年度見通し

アーム 2018年度見通し

今アームは先行投資をして、エンジニアを一気に増やしている。ソフトバンク傘下に入って、上場を取りやめた。それは、自信があるから。先行投資をしている。

アリババグループ

売上高

アリババグループ 売上高

まだまだ伸び続けている。売り上げが58%伸び、純利益も44%伸びている。

フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフローも44%伸びているが、絶対額を見るとアリババのフリーキャッシュフローは、もはや1兆7,000億円。
どれほどの会社が、この1兆7,000億円というフリーキャッシュフローを出し、しかもこれくらいの勢いで伸びているか。私がアリババの株をあまり早く手放したくないというのは、こういう意味である。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンド事業

ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンド事業

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは非常にうまくいっている。いくつか例を出して、解説をしたいと思う。

WeWork

WeWork 売上高

WeWorkは、急激に伸びている。われわれソフトバンク・ビジョン・ファンドの中でも、中核的な会社になると思っている。年平均の成長率が、129%である。

Paytm

Paytm 総取引高

Paytm、これも急激に伸びている。

OYO

OYO 宿泊数

OYOもまた急激に伸びている。非常に期待している。

Auto1

Auto1 総売上高

Auto1も伸びている。

Compass

Compass 取扱高

Compassも伸びている。

Improbable

Improbable エコシステムが拡大

Improbableも伸びている。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの会社は、一つ一つ挙げれば切りがないが、ものすごい勢いで伸びている。

18年間、私自身が自分の時間の3%ぐらいを使って投資をしてきた。利益が毎年複利で伸びていったということになる。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、まだ最終クローズしていないので、正式な数字は公開できないが、実はこの1年間は、年間換算のIRRでいくと、今までの私自身のIRRの実績を上回るペースで推移している。
少し良すぎるぐらいの結果が出ているので、毎年続けられるとは思っていないが、少なくとも、今までのわれわれの実績に匹敵するぐらいのペースを、今後も期待できるのではないかというぐらいの手応えを感じている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドをやって非常に良かったと思っている。

ライドシェア

特にこれから大きくなっていくのが、ライドシェアのUber、DiDi、Grab、Ola。ライドシェアは、これから自動車産業の業界地図を丸ごと塗り替えてしまうぐらいの大きなインパクトを与えると思っている。世界中の圧倒的に大きな規模をわれわれのグループが持っている。

ライドシェア GMV

お客さんが払った運賃で、すでに7兆円ぐらいの取扱金額になっている。

みんな未上場で、今われわれのグループの傘下にあるわけだが、それが、年率平均100%ぐらい伸びている。もう恐ろしい勢いで伸び続けている。業界全体で、われわれが筆頭株主である。

乗車回数/日

1日当たりの乗車回数は、すでに3,500万回を超えている。しかも、年率倍々ゲームで伸びている。もはや、世界の圧倒的最大の半公共的な交通機関になった。われわれが、世界で圧倒的最大の交通機関になったというぐらいの状況ではないかと思う。

MOU調印(2018年3月27日)

MOU調印

さらにサウジアラビアの皇太子と2018年3月末、200GWの世界最大のソーラー発電プロジェクトについての覚書調印をさせていただいた。これは、世界最大の規模になる。

「200ギガワット」を原発に直すと、ピーク時の発電の量は原発200基分相当。今はほとんど稼働していないが、日本で存在している原発は30基。それの200基相当分ぐらいを、サウジアラビア1カ国で持つということが、どれほど大きなインパクトを与えるか。

われわれとしては、非常に重要なプロジェクトになると思っている。こちらもソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資の一つである。

群戦略

群戦略:同志的結合グループ

われわれの「群戦略」というのは、従来の日本、あるいは韓国にあるような財閥モデルとは似て非なるもの。ブランドを統一せず、51%以上の持株比率にこだわらず、むしろ20~30%ぐらいをスイートスポットとして、分野ごとに世界ナンバーワンの会社ばかりを集めている。それが、「群戦略」である。

従って、各社が喜んでシナジーを出し合うのが「群戦略」である。冒頭で言ったように、これを戦略的に意図的に、組織論として設計し、実践し始めているのはわれわれ1社だけであり、世界で初の会社。全く新しい組織体系を私は発明したと思っている。

それを、正しいモデルだと見なすのか、間違ったモデルだと見なすのかは、歴史のみがこれから証明するんだろうと思う。おそらく300年たったら、「あれは正しいモデルだったね」と思っていただけると思うし、このモデルを正しいと思い、まねする組織も現れてくると思う。それはそれでいい。

少なくともわれわれは、それをやり始めた1社目の会社であり、しかも10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドをつくり、それをさらに拡大していこうと狙っている。

群戦略 300年成長し続ける企業へ

われわれは、この方向で突き進んでいく。なぜならば、われわれは30年でピークを迎えようとしているグループではなく、300年成長し続け、「情報革命で人々に幸せを」という理念の下に走り続ける組織でありたいと思うからである。

以上が、私の説明でございます。ありがとうございました。

質疑応答

楽天の携帯電話市場参入

国内の携帯電話市場に楽天が参入することになったが、どう迎え撃つのか。また、孫さんは「日本の携帯電話は高すぎる」と言って携帯事業に参入したが、やや高止まりしていることについて、どう考えているか。

 三木谷さんは大変優れた事業家だと、私は高く評価している。やる以上はそれなりの成果を出されると思うし、そういう準備もしておられると思う。一企業家として、あるいは事業家として、彼の健闘をお祈りする。情報革命では、いろんな人がいろんな役割を果たして、それなりの成果を出していくだろうと思うが、そのうちの重要な1人である。当然、われわれはライバルとして迎え撃つわけなので、宮内(謙)社長を中心に、ソフトバンクも、他の2社も含め、切磋琢磨することになろうと思う。

携帯の値段について言うと、実際に米国で携帯会社を経営している立場の人間として、日本の通信料金は米国に比べて随分安いと思う。米国のベライゾン・AT&Tは、はるかに高く、はるかに日本より劣ったサービスをしている。高いし、ネットワークがつながらない、通信は遅い。それをはるかに上回るクオリティーのネットワークを提供している日本が、はるかに安い値段でサービスを提供している。これは、事実だと思う。
さらに、われわれが携帯事業に参入する直前を思い出してほしいのは、女子高生を含めて当時は1人当たり1~2万円かかっている状態だった。しかも、つなげられるパケット通信量は、今よりもはるかに小さい状況だった。それに比べると、われわれが「ホワイトプラン」など、さまざまなパケット放題のサービスを提供し、日本の価格が米国に比べて随分安くなったのは、われわれが仕掛けた競争の成果でもあると私は思っている。また、われわれが参入する前は、日本はいわゆるガラケー全盛の時代だった。われわれが、iPhoneを中心に、日本のスマホ普及率を最も上げた会社だとも思っている。

過去の話はさておき、楽天さんが市場に新たな角度から競争を仕掛けてくるというのは、いろんな意味で刺激があってよろしいのではないか。われわれもまた負けないようにがんばる。余裕のある発言のような気がしますが、がんばります。

スプリントとTモバイルUS合併について

昨年の秋、スプリントとTモバイルUSの合併交渉が破談した際は「すっきりとした晴れやかな気持ちだ」と言ったが、今回は「一時的な退却というか、恥ずべきだけど長い目での勝利を望んだ」と述べた。気持ちにどういう変化があって、なぜこういう決断に至ったのか。

 一言で言うと群戦略。群戦略が、われわれの基本的な戦略として、より鮮明になった。さらに、ソフトバンク・ビジョン・ファンドがすばらしい立ち上がりを始めた。私自身の関心が、より群戦略に移ったというのが、一つの重要な要因になると思う。もう一つは、スプリントとTモバイルUSが合併することによって得られるシナジーや戦いのポジションは、非常に大きなものがある。「その大きな成果の前に、小さな妥協はあってもいいんではないか」と飲み込んだ。いろんな恥だとか、プライドだとか、こだわりというものを飲み込んで、より大きな成果のために受け入れてもいいんではないかと思った。ほかにもいくつか、いろんな要因があるが、ここでコメントできるものとしては、以上の二つが一番大きな要因。

「飲み込むべきだ」というのは、いつ思ったのか?きっかけはあったのか?

 この1~2カ月。大人になったんです(笑)。

今回のスプリントとTモバイルUSの合併の決断について、取締役会のほかのメンバーは、どういう理由・狙いで意見を変え、結論が変わったのか?

 米国が最も重要な市場であるというのは、全員変わってない。ですから今回、われわれは売却していない。1株も売却していないというのは、米国が最も世界で重要なわれわれの市場であるというのは、変わりないという意味。一方、経営のコントロール権について「われわれがコントロール権を持つ」というところまでは、最初から言っていなかった。買収した直後はそれがあったが、この何年間かは、対等かそれに近いぐらいの意思決定権を持つ、というところにこだわって、交渉していた。今回は取締役会全員一致で、名を取るより実を取ろうというのが、みんな合意したところ。

「群戦略」におけるソフトバンク株式会社

「携帯事業も群戦略の一環」という視点で見ると、日本のソフトバンク株式会社(SBKK)も「群戦略」の一環と考えられる。出資比率を2、3割ぐらいに引き下げて、経営権あるいはメジャー出資をほかの外部に引き渡すような考えはあるのか。

 そこだけは、「なんでもあり」ではない(笑)。なぜかというと、ソフトバンクは日本で上場している。日本という限られた地域の中では、われわれが一番造詣が深く、かつ組織としてもいろんな強みを持っている。われわれの根源の国が日本です。Yahoo! JAPANもありますし、そのほかたくさんわれわれのグループ会社がある。ソフトバンク・ビジョン・ファンドのジョイントベンチャーを着地させる場所としても、日本に重要なこだわりを持ってやっていきたい。そういう意味では、日本のSBKKを分離独立し、独立採算の会社としてやっていくが、「群戦略」の中では中核的企業であるというところは、変わらない。

地方新聞買収について

「米国の大手新聞トロンクの買収を検討」という記事があったが、本当に関心があるのか?メディアの買収を今後の戦略として考えているのか。

 地方新聞の買収に関して、ソフトバンクとしては直接的関心は現在まったくない。ただ、われわれが買収した会社一つであるフォートレスが持っている会社のうちの一つに、たまたま地方のローカル紙を保有している会社が含まれている。その会社が現在やっている事業を拡大するという意味で、関心を持っているのかもしれない。それは、今すでにやっている事業の単なる拡大ということで、われわれがそれを止めるわけにもいかない。それはそれなりにフォートレスの投資先の一つとして、業績が順調に進んでいると聞いているので、そこをあえて止めにいくということではないけれども、今現在やっている事業の延長としてどこまでいくのかというのは、私は直接知らないというのが実態。ソフトバンクグループとして、新たに何かやろうということは、全く考えていない。

UberとDiDiをソフトバンク・ビジョン・ファンドに紹介する理由

UberとDiDiをソフトバンク・ビジョン・ファンドに紹介する理由について聞かせていただきたい。またOlaとGrabも紹介する予定があるのか。

 元々ソフトバンク・ビジョン・ファンドのパートナーであるサウジアラビアのPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)が、すでにUberの株式を持っていた。ソフトバンク・ビジョン・ファンドではUberと競合する可能性のある会社への投資は、彼らの事前の承認が必要である、という契約が最初に交わされていた。一方で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドとしてUberに新たに15%ぐらい投資をするということについて、サウジアラビア側も含めて合意を得た。つまりソフトバンク・ビジョン・ファンドがUberに筆頭株主の立場で入るということが決まった。それであれば、もともとソフトバンクがソフトバンク・ビジョン・ファンドとは分けて持っていたDiDiやOla、Grabの株式を、まとめて全部ソフトバンク・ビジョン・ファンドに移してもよいのではないかと。そのほうがコンフリクト・オブ・インタレストがないのではないか、というのが、現在サウジアラビアおよびわれわれとの話し合いの状況。今すでにその方向で基本的には合意して、手続きを進めている最中だということ。

ゲーム・動画コンテンツへの関心

ゲーム会社や、動画系コンテンツといったところの買収に関心はあるか?

 コンテンツの場合、Yahoo! JAPANとしてやるとか、あるいはSBKKが若干やることはあると思うが、少なくともソフトバンク・ビジョン・ファンドあるいはソフトバンクグループが、コンテンツで何か大がかりに狙っているものは現在ない。将来は何でもあり得るが、今日現在は、僕自身に大きな関心があまりない。ただ、非常にいい条件でチャンスがやってくるかもしれないので、それはそれで考えるということ。

われわれの3大分野として、「AI」と「IoT」と「スマートロボティクス」の三つが一番関心のあるところで、情報革命の中心だと思っている。コンテンツのようにあまりにも小さく細切れにバラけてる状態のところを一つやっても、大した強みを発揮できないのではないかと思う。

サイトブロックについて

サイトブロックについて、先日ドコモの吉澤社長が「コンテンツビジネスをやっている者として、ブロックする」とコメントしたが、ソフトバンクの海賊版サイトに対しての見解は。

 それは、宮内がお答えします。

宮内 確かに、著作権を侵害していることについては、放置することのできない非常に重要な問題だと思っている。一方で皆さんもご存じのように、業界団体とも連携し、通信の秘密、法制度の問題を踏まえて、運用面・技術面も考慮しながら、何が実行可能かを検討しているところである。NTTさんは、もう「ブロックする」と発表されて、われわれも社内では相当議論した。でも、やっぱりどうしても、両方の意見がけっこう強くある。そこの線引きが非常に難しい。これは、国としても法案化するとか、これからいろんな議論がなされると思う。その上で対応していきたいというのが、われわれの見解です。

冒頭に申し上げたように、群戦略はソフトバンクの根底に関わる戦略なので、これからも何度か触れることがあると思うが、徐々に理解を深めていただきたい。
ありがとうございました。

ソフトバンクグループの
決算説明会書き起こし(前編)

(掲載日:2018年5月18日)
文:ソフトバンクニュース編集部

    • 原則として、株式会社や有限会社、社団法人などを省略して社名・団体名を表記しています。