5G対応スマホ、見た目は4G対応のスマホとあまり変わらなそうですが、何が変わったと思いますか?
実は、通信周りが高速になるだけではなく、4G対応していたり、スマホ内部に入っている通信チップが新しかったり、色々と秘密があるんです。5G対応スマホの特長や開発の裏側をスマホ端末の開発担当者に聞いてきました。
今回話を聞いたのはこの人
ソフトバンク ベアラ&アプリ技術部 ベアラ無線技術課
西山 真司(にしやま・しんじ)
5G対応スマホの特長と、4Gと5Gの電波をハイブリッドに組み合わせる技術
私たちの日常に革新的な変化をもたらすともいわれている5Gですが、身近なスマホに置き換わると何が変わるのでしょうか。5G対応でユーザー体験がどう変わるのか、裏の通信技術はどのようなものが使われているのか、その特長を聞きました。
5G(第5世代移動通信システム)の特長をおさらい
「高速大容量」「低遅延」「多接続」などの特長を持つ。5Gが実用化されると、AI、IoT、コネクテッドカー、ロボット、VRなどを用いた革新的な技術やサービスが生まれ、日常生活がさらに便利に、より安全になることが期待されている。
スマホが4G対応から5G対応になることで、なにが変わってきますか?
西山真司(以下、西山)「動画やゲームなど、大容量な通信を必要とするサービスで違いが見えてくるのではないでしょうか。ユーザー体験の目線でいうと、コンテンツのダウンロード速度が早くなったり、今よりも臨場感のある動画やゲーム体験が可能になったりします。その分、各ファイルの容量も大きくなるのでネットワーク回線がキモになり、我々通信キャリアの技術が重要になってきます」
5G対応スマホの主な特長は、「高速大容量」の通信。「SoftBank 5G 新商品・新サービス発表会」の展示ブースでは、5G対応スマホを使って、4Gスマホとダウンロード速度を比較するデモを行いました。
見た目にも違いは出るのでしょうか?
西山 「5G対応スマホでは、5G用に割り当てられた高い周波数『3.9GHz帯』での送受信を行うために、これまでの4G用の周波数で送受信できるアンテナを高度化して5Gも使えるようにしています。見た目としては、お客さまにはこれまでと同じ感覚で使っていただけるように、新しい通信技術に対応しつつも、4G対応スマホと同じような大きさで実現しています。強いていえば、5Gのピクトが立ちますからそこはこれまでとは違うポイントですね」
スマホがネットワークにつながる仕組みも解説
「基地局」の役割や通信技術の進化でどのように変化してきたのかをエンジニアに聞いてきました。
5Gと4Gの電波を組み合わせ、通信速度を更に高速にする「デュアルコネクティビティ」
使用されている通信技術の特長はありますか?
西山 「4Gと5Gの異なる電波を組み合わせて使う、『デュアルコネクティビティ』という技術ですね。4Gはこれまでと同じソフトバンクの所有する周波数を使用しますが、5Gはソフトバンクが新たに割り当てられた周波数『3.9GHz帯』を使用します。チップセット(半導体)ベンダーとも協業することで、ソフトバンクのこれまでの4G周波数と新しい5G周波数の組み合わせを実現できるようにしました。『3.9GHz帯』は他国にも先行した周波数帯になります」
「デュアルコネクティビティ」という技術
車線に例えると、4G同士の電波を束ねて高速化させる「キャリアアグリケーション」はデータが通れる車線が増えることで、1回に送れるデータ容量を増やす技術。加えて、「デュアルコネクティビティ」で、より周波数幅の広い(レーン数の多い車線)5Gを束ねることで、さらなる高速化を実現します。
担当者が語る、通信キャリアの役割とは。5G対応スマホの開発プロセスとその裏側
通常のスマホの開発プロセスは以下の通り。5G対応の場合も同様の工程で進めていきます。
まずは、社内での戦略協議を行い、チップセットベンダーさまなどとも技術協議も行いながら、要件定義や仕様定義を行なって行きます。次に進めるのは、要件や仕様に基づいた開発をメーカ協議し、ソフトウェアやハードウェアの開発。通信を試験するためのラボ環境やフィールド環境などを用意して、スマホ端末とネットワークが問題なくつながるかの検証を行います。お客さまに使っていただくためのさまざまなケースを想定した検証を終えた後、発売に至るんです。
通信キャリアと端末メーカーの役割の違いを教えてください。
西山 「端末メーカーさまとは、季節ごとの商戦期などに合わせて『こういう端末を実現したい』というような話をさせていただきます。お客さまにソフトバンクのネットワークを有効に利用していただくために、ソフトバンク側のネットワーク部門と共にネットワークや端末にどのような新規技術や拡張技術などを導入すべきかを議論し、チップセットベンダーさまなどとも実現性を議論します。加えて、端末メーカーさまとの協議を重ね、コスト・部材・技術などのさまざまな側面で実現の見込みが立てば、いざ発売に向かって進んでいくという流れです」
5G対応ということは中身のパーツも新しいものを使用しているのでしょうか?
西山 「5Gはこれまでよりも高い周波数帯になるため、その新しい周波数に対応したアンテナや高周波パーツを使用する必要があるんです。5G端末には5G周波数にも対応した『周波数フィルタ』や『パワーアンプ』などの高周波パーツが実装されています」
スマホに使われているパーツの一例
① 周波数フィルタ
アンテナから送信された周波数と信号の中から、必要なものを取り出すフィルタリングのようなもの。
② パワーアンプ
基地局のアンテナに高周波信号が届くように、高周波信号を必要な出力まで増幅させるためのもの。携帯電話の高周波パーツではありませんが、増幅という意味合いでは、私たちの身近にあるオーディオ機器のアンプが音響の電気信号を増幅するために使われています。
開発のプロジェクトはいつ頃から?
西山 「チップセットベンダーさまやメーカーさまと事前協議は行っていましたが、本格的にプロジェクトをスタートしたのは2年前ほどの2018年頃からでしょうか。先ほど触れた4Gと5Gの電波の組み合わせの調整や新しい周波数やシステムでの通信を実現するためにさまざまな調整を行いました。限られた筐体サイズの中に、これまでの3Gや4Gなどの通信技術に加えて、5G技術追加することになるため、3Gや4G通信技術への影響なども懸念していましたが、問題なく動作するよう開発を進めることができました」
苦労した点はありますか?
西山 「評価試験の環境づくりですね。5Gという新たな移動通信システムに対して、新しい基地局を入れて、端末も新しい開発になるため、双方を同時に立ち上げ、安定した通信ができるようになるまで苦労しました。4Gはつながっても、5Gがつながらないということもありましたね。通信がつながらなかったり、安定した通信状態が継続できなかったりする場合には、基地局側と端末側の両面から原因を究明して解決し、サービスインを実現しました」
最後に、今後の展望を教えてください。
西山 「今回は、『高速大容量』に対応した端末を作りましたが、今後対応していくものは『低遅延』『多接続』です。まだ、世界的にも規格が決まりきっていない難しい分野ではありますが、メーカーや各種ベンダーとの協力を進めて取り組んでいきたいと思います。これまでよりも使い勝手の良いものになっていくので、ぜひご期待いただければと思います」
「高速大容量」を体感できる5G対応スマホは全部で4種類。5Gならではの特長を活かした、音楽ライブやスポーツなどの視聴体験ができるサービス「5G LAB」のアプリがプリインストールされています。
ワイモバイルでも5Gスマホが登場
「Libero 5G」や「iPhone12」を始めとした5G対応スマホが登場しています。ぜひチェックしてみてくださいね。
(掲載日:2020年4月8日、更新日:2021年4月9日)
文:インプレス
編集:ソフトバンクニュース編集部
先端技術で日常生活が劇的に変わる時代へ
次世代通信技術「5G」によって、人と人だけでなく、あらゆるモノとモノがつながるIoT時代が本格的に到来します。
先端技術を用いた新たなサービス・ソリューションの実現に向け、さらなる技術開発に取り組んでいます。