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安全な自動運転走行を可能にする高精度測位サービス「ichimill」。技術者インタビュー

安全な自動運転走行を可能にする高精度測位サービス「ichimill」。技術者インタビュー

CMなどでよく目にするようになった自動運転。本当に安全なのか、気になったことはありませんか? 自動運転における要のひとつが「位置情報」で、誤差が少なければ少ないほどよいもの。自動運転技術の一端を担う、誤差数センチメートル以内の高精度な測位を可能にするサービス「ichimill(イチミル)」を活用した自動運転技術について、聞いてみました。

話を聞いたソフトバンクの技術者

湯田坂さん

湯田坂 和大(ゆださか・かずひろ)
ソフトバンクテクノロジーユニット5G&IoTソリューション本部コアソリューション統括部

衛星を使う高精度な測位サービス「ichimill」に関する企画やサービスの立て付けを担当。

自動運転はさまざまな技術の集合体。それぞれが補完し合って、安全な走行を実現

自動運転のシステムって、どのようになっているのでしょうか?

湯田坂:障害物を避けたり、スピードをコントロールしたり、信号を認識したりするため、自動運転車には1つの技術ではなく複数の技術が実装されていて、お互い補完し合いながら自動運転を可能にしています。例えば、位置を把握する技術、周囲の状況や障害物を把握してそれとの間の距離を計測するためのGPS、レーザーを照射して対象との距離などを測定するLiDARやカメラ、建物や道路といった地図情報、などがあります。それぞれ、例えば屋外は得意だけど、トンネルの中といった屋内は苦手、という得意不得意があるので、複数技術を複合させ、屋内外での使い分けなどをしているのです。

自動運転に求められる技術の中で私は、衛星を使った高精度測位サービス「ichimill」を担当しています。

私たちは運転するとき、正しい位置情報を意識しますよね。ちゃんと位置を認識をしておかないと、衝突などの原因になってしまいます。もちろん自動運転でも同じで、位置情報の誤差は数センチメートル以内におさめるレベルが要求されます。ichimillは、誤差数センチメートルの高精度な測位がリアルタイムで可能なので、自動運転車の安全走行に欠かせない要素のひとつです。

ichimillは、なぜ誤差を数センチメートルにおさめられるのですか? 仕組みを教えてください。

湯田坂:準天頂衛星「みちびき」などのGNSS※1から受信した信号を利用してRTK測位※2を行うことで、誤差数センチメートルの測位を可能にしています。

  • ※1
    GNSS(Global Navigation Satellite System)とは、QZSS(準天頂衛星システム)やGPS、GLONASS、Galileoなどの衛星測位システムの総称。
  • ※2
    RTK(Real Time Kinematic)測位とは、固定局と移動局の2つの受信機を利用し、リアルタイムに2点間で情報をやりとりすることで、高精度での測位を可能にする手法のこと。

みちびきなどの衛星の信号を受信するだけでも位置情報の把握はできます。しかし、信号を受信する間に、対流圏など地球の大気の層という環境要因によって電波が屈折してしまうことがあり、そうした場合は衛星からの信号だけでは本来の位置情報との誤差を広げてしまう恐れがあります。わかりやすくいうとichimillは、そういった誤差を減らしてあげるサービス、と言えるかもしれません。

自動運転はさまざまな技術の集合体。それぞれが補完し合って、安全な走行を実現

ichimillの測位方式は、RTKを使用しています。ソフトバンクの独自基準点が受信した信号などを基に、「測位コアシステム」が補正情報を生成して、ソフトバンクのモバイルネットワークを通して自動運転車などに搭載されたGNSS受信機(移動局)に送ります。この補正情報と、GNSS受信機が受信した信号を活用してRTK測位を行うことで、誤差数センチメートルの高精度な測位をリアルタイムで実現しているのです。

ソフトバンクの独自基準点は、決められた座標位置に立てられている基準点であり、衛星からの情報を受けて誤差を割り出す役割があります。自分の座標位置から、どれだけずれて衛星の信号が入ってきたかを判別します。その誤差の情報を、測位コアシステムというサーバーに送り、それを補正情報としてモバイルのネットワークを介して送ることで、「あなたは、これだけずれていますよ」と自動運転車に教えてあげるのです。自動運転車は、自身が衛星から受け取る信号と補正情報をかけ合わせて位置を測定するので、センチメートルレベルという小さな誤差が実現するのです。

広域な移動でも安定した測位が可能。そのワケとは

ichimillを活用した自動運転は、独自基準点があるところで可能なのですね。独自基準点がないところではどうなるのでしょう。

湯田坂:安心してください。独自基準点は日本全国に3,300カ所以上あって、ほぼ日本全国をカバーしています。

広域な移動でも安定した測位が可能。そのワケとは

そして自動運転車が幅広いエリアを移動する場合、この3,300カ所の基準点を上手く切り替えながら走行することになります。独自基準点の多さ、つまり、カバーする範囲の広さや確実なハンドオーバーができることも、ichimillが自動運転に適している部分だと自負しています。基準点と基準点を結ぶ基線長が10キロ圏内になっていて、日本全国どこでも安定した走行が可能と言えます。

広域な移動でも安定した測位が可能。そのワケとは

測位サービスの活用で、MaaSをはじめ幅広い産業の発展を目指す

ichimillを類似サービスと比較したとき、独自の強みがあれば教えてください。

湯田坂:ichimillで使用しているRTK測位方式は昔からある技術ですので、信頼性の高いものです。全国どこで使う場合も設備投資は必要なくて、GNSS受信機さえあれば使っていただけるものなので、低コストで利用できます。独自基準点が多いので全国をカバーしている点や提供する情報の正確さも特長です。

ソフトバンクが提供しているものということもあって、サービスの保守や拡張といった点に臨機応変に対応できることも強みかもしれません。

GNSS受信機。サイズは129×90×50mm

GNSS受信機。サイズは129×90×50mm

実際、農業や建設業界、インフラ監視など幅広い業界から関心を寄せていただいていますし、すでに利用いただいている事例も多くあります。MaaSへの活用という視点で、車両の位置管理や走行軌跡の管理、ナビゲーションの高度化なども進めています。

ichimillはこれからの自動運転社会で大活躍しそうですね。

湯田坂:自動運転を実現させるための先進技術にはいろいろなものがあるので、現状、自動車メーカーは技術を複合させつつ、販売するには安価で、量産化できるものを見極めている状況かと思います。最終的にどのような技術が主流になるかはまだまだ研究段階ではありますが、われわれが目指すところは、自動車の先進技術を支えるインフラとして衛星を使った測位サービスが一般的に使われ広く普及することです。自動車そのものの先進技術に加えて、インフラ情報の確認や、人との、または車同士の情報交換の増幅にも備えなければなりません。高精度な位置情報として、ichimillの技術を自動運転車だけでなく、人が持つスマホにも搭載することで、さらにサービスの品質を高められると考えています。

自動運転普及の狙いの一つに、事故の減少や少子高齢化による人手不足などの課題解決があります。特に交通事故を減少させることは最大のポイントだと思っていて、高い技術力を搭載した自動運転車は、ドライバーの判断や操作ミスなどの人的要因による事故をゼロにすることができると思っています。これからさらに5Gのサービスも拡充します。測位ソリューションと5Gとの組み合わせで、さらなるシナジー創出も考えたいですね。

広域な移動でも安定した測位が可能。そのワケとは

(掲載日:2021年2月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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