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意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

美しい海を守り、未来の生態系を維持していくために、ソフトバンクが恩納村や多数の企業・団体と共に立ち上げた「未来とサンゴプロジェクト」。サンゴを守ることが大切なのは皆さん知っていると思いますが、サンゴの生態についてはよく知らない人が多いのでは?

そこで、同プロジェクトを一緒に推進しているサンシャイン水族館で、サンゴ飼育を担当されているスタッフの今井さんに、サンゴについて教えていただきました。

今井 俊宏(いまい・としひろ)さん

株式会社 サンシャインエンタプライズ
サンシャイン水族館
今井 俊宏(いまい・としひろ)さん

サンシャイン水族館でサンゴをはじめ、魚類・小動物などの飼育を4年以上担当。好きな生き物はサンゴのほか、出身地の岐阜県の県魚であるアユなど。

意外な事実! サンゴはクラゲやイソギンチャクと同じ「刺胞(しほう)動物」だった

サンゴってどんな生き物なのでしょうか?

いきなり質問返しになってしまいますが、そもそも、サンゴって生き物だと思っていましたか? 今まで考えてみたことがなかった、という方が多いんです。水族館のイベントなどでも、最初に「ヒトデ、イソギンチャク、ワカメのうち、サンゴの仲間はどれでしょうか?」という質問をしています。

うっ、そう言われると…よく分かっていませんでした。海の底で水の流れに任せて揺れている、というイメージで、ワカメに近い気がします。

サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じグループに分類されます。クラゲが毒を持っていることはよく知られていると思いますが、サンゴも刺胞という毒を持つ「刺胞動物」なんです。毒を使ってプランクトンを捕ったり、敵から身を守ったりしています。

体の構造の違いによって、ソフトコーラルとハードコーラルに分けることができます。皆さんがイメージするサンゴは、個体(ポリプ)がたくさん集まった群体です。個体には触手や口があり、触手を動かしてプランクトンなどを食べたり、サンゴの種類によっては移動するものもいます。

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

ちなみにサンシャイン水族館で飼育しているサンゴの大半は、生育している場所から移動することはありません。

サンゴは海の中でどんな役割を果たしていますか?

サンゴは小さな魚のゆりかごであり、産卵場所としても機能します。さらに、小さな魚たちを食べる中型・大型の生き物も集まってきます。つまり豊かな生態系を支える大切な役割を担っているんです。

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

サンゴにすみ着くデバスズメダイ

そして、中型・大型の生き物を人間が食べているので、俯瞰して見ると私たちの生活にまでつながっていることが分かりますね。

また、サンゴの恩恵は海の中だけではなく、医療分野でもサンゴの研究が行われていて、サンゴの成分を新薬の開発に役立てる例もあります。

サンゴが白化する? 温暖化や環境破壊が脅威になるワケ

サンゴが私たちの生活を支えてくれている、といっても過言ではないですね! 生息するのに適した環境条件などはありますか? 暖かくてきれいな場所、というイメージがありますが。

浅瀬に生息するサンゴもいれば、もう少し深いところを好むサンゴもいて、種類によって条件は異なります。長い時間をかけて環境への適応が繰り返された結果、いますんでいる環境に落ち着いたのだと思います。

また、海水温が高いところは苦手です。サンゴの体の中には褐虫藻(かっちゅうそう)という藻類が共生していて、それが光合成して生み出すエネルギーを使って成長しています。高水温の影響により、サンゴに共生している褐虫藻の数が減少してしまうことがあります。褐虫藻がいなくなり、骨格が透けてサンゴが白色にみえる状態を「白化」と言います。白化しても褐虫藻が戻ってくれば復活するのですが、白化している状態が長く続くと、やがてサンゴは死んでしまうことがあります。

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

白化したサンゴ

夏期の台風の発生数の減少や、温暖化を始めとした近年の地球環境の変化を、サンゴは敏感に受けているように思います。温暖化が深刻化すればいずれは生育地が変わったりすることもあるかもしれません。

他にも、サンゴにとって脅威になるものはありますか?

サンゴを食べてしまうオニヒトデの大量発生も問題になっています。サンゴが捕食されるスピードが早く、深刻な状況です。

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サンゴの天敵のオニヒトデ

他には、土地開発による森林伐採などの影響で川から流れてくる赤土も脅威になっています。淡水である川の水は海水に比べて比重が軽く海面近くにとどまってしまうので、濁った水が海を覆うと日光が遮られてしまい、光合成ができなくなってしまうんです。

美しい海を取り戻す。サンゴを守る取り組み

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

サンシャイン水族館で育成中のサンゴ

サンシャイン水族館ではサンゴを殖やす活動をされていますが、サンゴはどのように殖えるのですか?

まずは、年1、2回ある産卵です。サンゴは卵を一斉に放出し、海の中で受精します。受精卵がプラヌラ(刺胞動物に共通の幼生形)になって動き、岩などに定着します。その後は分裂して成長していきます。

もう1つは、サンゴの枝を折って無性生殖で殖やす方法があります。サンゴの一部から殖やすため、同じ遺伝子をもったクローンを量産。殖やしたサンゴはサンシャイン水族館で飼育し、成長後海に移植しています。

水族館での飼育から、海への移植まではどう進めるのでしょうか。

サンゴの枝を折って枝打ち土台に定着させます。ある程度大きく成長させ、海で適応するための養生期間を半年ほど取って、海中の岩盤などに移植。その後は定期的に移植したサンゴを観察し、サイズの確認や成長の記録、サンゴの競争相手となる藻の除去のため、周辺の清掃なども行います。

これらの技術は、恩納村でサンゴの保全に携わる方々が長年の研究・保全活動を通して築き上げたものです。サンシャイン水族館では恩納村の皆さんと協力し、技術指導などを受けながら実施しています。

水族館で飼育している間、どのような工夫をしていますか?

サンシャイン水族館は海の近くにあるわけではないので、海水を運んできて使用しているのですが、サンゴは水質に敏感なので、毎週水質測定をしてチェックしています。水が蒸発して塩分濃度が上がらないようにしたり、サンゴの成長に欠かせない、カルシウムの濃度を調整したりと気を配っています。

エサについては、さまざまなものを試しています。食べているかどうか目視では分からないのですけどね。

サンゴの健康状態はどのように見分けるのですか?

毎日接していると、ちゃんと違いが分かりますよ。触手が開いていないとか、それが一部だけに見られるとか、昨日まで元気だったのに急に変わったと感じることもあります。そういう時は環境をよく観察して、水流や光の強さを変えてみるなど、試行錯誤を繰り返しています。

大切な地球を守るために、サンゴを知ることから始めよう

サンゴを増やすために、どんどん移植を進められるといいですね。

単純にサンゴを移植するだけではうまくいきません。環境に適応できない場合もありますし、1つの群体を増やしても何かのきっかけで一気に死滅してしまうこともあります。とても繊細な生き物なんです。

また、技術を持っている組織や施設も限られていて、大規模な取り組みを行う段階には至っていません。だからこそ、皆さんにもっとサンゴの大切さを感じてほしいという思いで、サンゴへ興味をもってもらえるような取り組みや発信を行っています。

日々接していらっしゃる今井さんから見た、サンゴの魅力はどんなところですか?

拡大してみたときのポリプの開き方がすごく綺麗じゃないですか? (笑) 他にも触手を伸ばして敵を攻撃する種類がいたり、謎が多いことがむしろ魅力に感じるんです。 初めは動かないし、一体キミは何を考えているの!? と、よく分からない存在だったのですが、今ではとても愛着があり、生き物として尊敬の念も感じています。皆さんもぜひじっくり見てみてください。ハマる人はハマります! (笑)。

意外と知らないサンゴの生態。白化の原因や保全活動について、サンシャイン水族館の飼育スタッフに聞いてみた

拡大したポリプ

それから、恩納村の方々をはじめ、サンゴを通してつながった人との出会いがたくさんあります。人との絆や、地球環境に対する責任などを感じられて、このプロジェクトに関われたことに感謝しています。

恩納村の海でのサンゴの植え付けにも参加されているんですよね。

恩納村の方々には、サンゴの育成に関する専門的なことから、安全対策まで、多くのことを学ばせてもらっています。

また、現地でサンゴの産卵にも立ち会ったことがあるのですが、とても素晴らしい光景でした。産卵のタイミングを図るには経験と勘が必要で、簡単ではありませんが、ゆくゆくは水族館の水槽でも産卵を成功させたいと思っています。

サンゴのことを知って、推しポイントも伺って…早くサンゴに会いたくなってきました!

嬉しいです! かわいくて、でも繊細なサンゴのことを身近に感じてもらうことで、今ある環境を守るために、私たち1人ひとりができることを考えるきっかけになればと、願っています。

ありがとうございました。

「未来とサンゴプロジェクト」が主催していたフォトコンテストの受賞作品が決定しました。3月5日にマリンダイビングの公式ウェブサイト「Marine Diving web」などで発表されます。サンシャイン水族館では3月5日から3月14日までサンゴフェスタを開催。期間中は受賞作品が展示される予定とのこと。どんな作品が選ばれたのか、楽しみですね!

SDGsの海洋保護とは

国際連合が定める持続可能な開発目標(SDGs)で重要なテーマとして設定されている、「目標14:海の豊かさを守ろう」に対応した取り組み。

海に住む生き物たちの住み家であるサンゴは、温暖化や海洋プラスチックごみの増加による環境破壊の影響で、生態系に大きな影響を与えるため、海洋保護の中でも重要な課題になっています。

(掲載日:2021年3月4日)
画像提供:サンシャイン水族館
文:ソフトバンクニュース編集部

サンゴの保全活動を通じて海洋環境を守る

サンゴの保全活動を通じて海洋環境を守る

ソフトバンクは、多数の企業・団体と共に「未来とサンゴプロジェクト」を立ち上げ、未来の地球の生態系を維持していくため、さまざまな活動に取り組んでいます。

ソフトバンク 恩納村 未来とサンゴプロジェクト