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東日本大震災の復興支援に取り組む社員が、岩手県でのテレワークを通じて感じた東北の現状

モザイクアート壁画「ありがとう貝画」(釜石鵜住居復興スタジアム)

モザイクアート壁画「ありがとう貝画」(釜石鵜住居復興スタジアム)

復興に向けて歩み続ける東日本大震災の被災地。「何か力になれることはないか」と、震災発生直後の岩手県で支援活動をし、その後も岩手県を中心に東北の復興支援に携わるソフトバンクの社員に、被災地への思いと希望を聞きました。

話を聞いたソフトバンク社員のプロフィール

村山さん

ソフトバンク CSR本部 
村山 裕紀(むらやま・ゆうき)

公益財団法人東日本大震災復興支援財団を兼務。「スマートコーチ」を活用した地域サポートや「SoftBank 東北絆CUP」の企画運営に関わる。
東日本大震災発生時には、岩手県大槌町や釜石市で1年間復興支援活動に従事し、「子どもの居場所づくり(大槌こどもセンター建設など)」や「瓦礫の中から発見された写真などの洗浄・返却」に注力。

震災発生直後に岩手県入り。そのときからずっと、復興の伴走者でありたいと思った

東日本大震災発生の際、現地に赴いて復興支援をされたと聞きました。

村山:2011年3月11日に発生した震災がもたらした凄まじい被害に、本当にショックを受けました。当時千葉県で暮らしていて、メディアに流れる被災地の光景に居ても立っても居られなくなり、「何か自分にできることはないか」と考えてまずはとにかく情報を集めました。さまざまな支援の形がある中で、現地に行って復興支援に関わる選択肢があることを知り、岩手県大槌町や釜石市で復興支援活動に関わることにしたのです。

震災発生直後に岩手県入り。そのときからずっと、復興の伴走者でありたいと思った

2011年3月21日に岩手県に入り、3月25日から大槌町で支援を開始しました。東北沿岸部は津波による被害も甚大で、大槌町も町の半分以上が津波で浸水。中心部では火災も多発して、多くの方が亡くなったり行方不明になってしまっていました。

震災発生直後に岩手県入り。そのときからずっと、復興の伴走者でありたいと思った

震災前にはJICAのメンバーとしてエジプトで活動していた経験もあり、そのときまで特に縁のなかった岩手県での生活に不安はなかったものの、見たことも経験したこともない被害にはただただ恐れおののきました。「この地の役に立ちたい。自分にできることは何でもしよう」と考え、無我夢中で、子どもの居場所を作るため「大槌こどもセンター」の建設に関わったり、瓦礫の中から発見される写真などの洗浄をして持ち主にお返しする、という支援活動を続け、あっという間に1年が過ぎました。

その後も復興支援を継続していますね。

村山:はい。1年間活動した結果、被災地が復興に向けて動き始めているという手応えを感じました。一方で、やはりまだ震災の爪痕が色濃く残る部分も多く、続けて取り組んで行かなければならないと考えました。

その後入社したソフトバンクでは、CSR本部に所属し東日本大震災復興支援財団を兼務することになりました。震災直後の現地での支援活動経験も生かして、被災地のサポートに関わりました。復興支援の一環として2018年から毎年開催している「SoftBank 東北絆CUP」の企画運営も手掛けました。SoftBank 東北絆CUPは、スポーツや文化活動を心から楽しむ笑顔を応援するために、県や地方という枠を超え、子どもたちが交流できる大会を開くものです。大いに盛り上がりましたし、個人で参加した子どもたちの中には大会終了後も継続的な交流を行い、大会がきっかけでジュニアユースアカデミーの参加メンバーに選出される子どもも誕生しています。

被災地でテレワークを体験。地元との交流で得られたもの

今年1月には岩手県で3週間、テレワークをしたそうですね。

村山:岩手県が昨秋募集した、県外の方に岩手県の魅力を理解してもらうために県外の企業を対象とした「お試しテレワーク」を利用しました。期間は、1月5日から25日の約3週間。東京は1月8日に緊急事態宣言が出ましたが、出発がその前で、またPCR検査を受けるなど新型コロナウイルス感染症拡大防止対策をしっかりと行ったうえで、岩手県でのテレワークが予定どおりスタートできました。

ソフトバンクでは新型コロナウイルス感染症が発生する前から、テレワークをするためのOA環境が整っていました。感染症拡大防止の観点から在宅勤務が推奨され、以降千葉県の自宅でテレワークをしていましたので、岩手県でも全く同じ仕事環境で、戸惑うことなく、東京にいるときと同じく業務に集中できたのです。必要な打ち合わせも感染症対策をしたうえで実施し、困ることはありませんでした。

非常に有意義だった、岩手県でのテレワーク体験

岩手県では、どちらに滞在されたのですか。

村山:希望を聞かれて、大槌町をはじめとする沿岸部と答えました。震災では岩手県内各地も深刻な被害が発生し、特に沿岸地域は津波も受け、人的、物的被害は甚大なものでした。そして希望通り、前半を大槌町、後半を釜石市で過ごしました。これまでの支援活動で何度も訪れた思い入れのある場所です。今回は1年ぶりの訪問となりました。

東京と違って身近に家族や友人、知人はいませんが、LINE通話やZoomを活用して遠方の家族や知人とコミュニケーションを楽しんだり、また滞在先のホテルのご主人らからも声をかけてもらうなど、多くの方々に温かく受け入れていただきました。本当に感謝しています。

岩手県でのテレワークだからこそ可能だったことはありますか?

村山:岩手県の担当部署の方にもいろいろと調整いただき、自治体関係や岩手県在住の方々を直接訪問してお話をする機会が持てたことは、有意義でした。東日本大震災の復興支援に取り組む中で、岩手県には何度も出張をしましたが、訪問先や滞在時間に制限がある出張とは異なって、ちょこちょこと接点を持てたことで緩やかなつながりを作ることができて良かったと感じています。例えば、震災復興に関する現在の課題のヒアリングやディスカッションも日を改めて何回かできて、さまざまな思いを伺うことができました。私が現在担当しているICTを活用したスポーツ・部活動支援の紹介をしまして、また各自治体におけるスポーツを通じた地域づくりについても伺い、それらについても思う存分意見交換をすることもできて、これからの業務に反映させられることがたくさんありそうです。

非常に有意義だった、岩手県でのテレワーク体験

村山:出張では行程の都合で立ち寄れない施設や地域を、平日夜や休日を利用して訪問し、遠方含めて県内のさまざまな地域の様子を知ることができました。欲を言えばコロナ禍でなければ、さらに多くの方々にお会いしながら業務における企画や協業模索もできたかなと思っておりますが、この時世に長期滞在ができたことだけでも本当に良い経験となりました。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

長期滞在した岩手県の光景はどのように見えましたか? 強く印象に残るところと合わせて教えてください。

村山:テレワーク期間中、健康維持と街中散策を目的にランニングを日課としていたのですが、復興に向けた街並みをじっくりと見ることになりました。この10年で数々の新しい建物ができあがっていて、それらを見て感じたことは、復興への力強さとかエネルギーのようなものがあふれているなという思いです。震災後に整備された公共施設などでもテレワークをしましたが、復興に向けて着実に歩んでいることにも改めて気付かされました。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

村山:釡石鵜住居復興スタジアムでは、モザイクアート「ありがとう貝画」というものを見つけました。これは、震災復興支援への感謝を伝えるために地元の子どもたちが発案したもので、三陸産のホタテとアカザラガイの貝殻で作られ、2019年に完成しました。縦2.5m、横12mの大きなもので、圧倒されます。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

村山:こちらの写真は、三陸鉄道の大槌駅です。震災によって駅舎は全壊して営業を休止していましたが、再建されて、2019年3月に営業を再開しました。なんの形をモチーフにしているか、分かりますか? ひょっこりひょうたん島をイメージしたものです。実は、大槌湾にはぽっかりと浮かぶひょうたん型の島「蓬莱島」があります。蓬莱島は町のシンボルでして、大槌駅も復興のシンボルとして、その世界観を楽しめるように再建されたものなのです。

他の部分でも、復興に向けて着実に進んでいると感じます。目に見える分かりやすいものの代表例は、津波の被害を軽減することができる防潮堤でしょうか。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

村山:暮らしの面でも元の生活水準に戻ってきているところはたくさんあると聞きました。もともと過疎地ではありますが、若い方と話すととても意欲を感じますし、新しい産業も生まれたりしていて未来への希望を感じます。

とはいえ、いまだに津波の影響を感じさせる更地のままであるところもあって、そこが今後どうなるのかなと気になっていたりします。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

今回の滞在経験をどのように業務に生かしたいですか?

村山:平日は業務などで岩手県の方々との交流機会があり、休日はレンタカーを借りて、遠野市、花巻市、紫波町など、比較的広範囲を移動して、岩手県の広大な景色を堪能できました。岩手県の方々の温かさにも十分触れましたし、東北ならではの季節を感じることもでき、冬は厳しくも、自然は雄大で美しく、特に雪景色には圧倒されました。引き続きこの地の支援に関わりたいと強く思いました。

着実に前に進む岩手県の風景と人々から、力をいただく

村山:それからソフトバンクは地方創生の取り組みも行っていますが、この視点でも岩手県で過ごした経験と皆さまとの触れ合いは参考にできると思いますので、これからも一緒に考えていきたいと思っています。

(掲載日:2021年3月5日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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