SNSボタン
記事分割(js記載用)

つい長時間働いてしまう? 有給休暇を取らなくなった? 改めて考えたい「テレワーク時代の働き方・休み方」

つい長時間働いてしまう? 有給休暇を取らなくなった? 改めて考えたい「テレワーク時代の働き方・休み方」

コロナ禍以降、働き方が大きく変化し、会社以外の場所で働くテレワークスタイルが浸透しました。テレワークは移動時間から解放され、ワーク・ライフバランスを追求できる一方、仕事にメリハリをつけられず労働時間が長くなったり、有給休暇の取得率が低下したりするケースも発生しているそうです。

今回は、テレワークにおける休暇取得の実態や休みを取らないことによるリスク、仕事のパフォーマンスを上げる休暇の取り方について、テレワーク・マネジメントのスペシャリストであるパーソル総合研究所の髙橋豊さんにお聞きしました。

髙橋さん

株式会社パーソル総合研究所 執行役員
髙橋 豊(たかはし・ゆたか)さん

大手建設会社で総務人事担当、電気メーカー子会社での採用および研修担当を経て、株式会社日本能率協会コンサルティングに入社。研究所や技術開発組織の知的生産性向上を目的とした組織開発コンサルティングと管理職および経営層のコーチングを担当したのち、現職。大手IT企業などを対象に1,000を超える事案のコンサルティング経験を持つ。今年4月に『テレワーク時代のマネジメントの教科書』を刊行した、テレワーク・マネジメントのスペシャリスト。

株式会社パーソル総合研究所

目次

余暇時間が増えてもリフレッシュしにくい? テレワークで変わった仕事と休みの関係性

テレワークが一般化する中で「有給休暇の取得が減った」「リフレッシュできない」という声も増えているそうですが、本当ですか?

髙橋さん

当社で有給取得率に関する具体的な調査は行っていませんが、「テレワーク実施後に有給休暇取得率が下がった」という声はよく耳にしますし、実感としては減っている企業が多いように思います。

「下がった」と聞くと、悪いように捉えがちですが、必ずしもそうではありません。当社が実施した「コロナ禍における就業者の休暇実態に関する定量調査」によると、テレワーカーのうち32.4%が「コロナ禍以降、平日(労働日)の余暇時間が増えた」と回答。通勤に使っていた時間を、家事や育児に割り当てることができ、ワーク・ライフバランスの取れた働き方を実践できている人も少なくないでしょう。

コロナ禍前後の労働日の余暇総時間

髙橋さん

通院や子どもの行事など、以前は有給休暇を取る必要があった用事もテレワークなら中抜けで済ませられます。また、不要不急の外出を控えるよう呼び掛けられている期間は旅行に行くことを控えて、長期休暇を取らなくなった人も多いと思います。そう考えると、余暇時間は確かに増えていますが、「思いきり休んでリフレッシュした!」という感覚は薄れているかもしれませんね。

テレワーク導入前後で、労働時間に変化はあったのでしょうか?

髙橋さん

先ほどと同じ調査で、残業時間はコロナ禍前に比べて減少していることがわかっています。ただし、これはあくまで平均の残業時間を示したもの。実態は、残業が大幅に減った人と大幅に増えた人というように、二極化していると考えられます。

コロナ禍前後の平均残業時間

髙橋さん

出社が当たり前だったこれまでは通勤時間で仕事モードに切り替えたり、帰宅時間で家モードに戻ったりというように、オンオフの切り替えがしやすかったんですね。

ところが、自宅でのテレワークは環境の変化がないため、オンオフの切り替えがしにくくなってしまった。また、これまでは、同じチームのメンバーの様子を見ながら「明日は休むので、この部分をやっておいてくれますか」と声をかけて、仕事をバトンタッチすることができました。しかし、テレワークだと、他のメンバーの現状を把握しにくく、仕事を頼みにくいと感じる人もいるでしょう。

そのような理由から「自分1人でこなさなければならない仕事が多く、残業が増えて有給休暇が取れない」という人が、実は増えています。

なるほど……。コロナ禍以降、オンラインでのやりとりが当たり前になりましたが、それによって労働時間に何か影響は出ていますか?

髙橋さん

以前は、出張して取引先と会わなければ成り立たなかった仕事も、今は「明日1時間空いているので、この時間にオンラインで打ち合わせしましょう」ということが簡単に成り立ってしまいます。そのように、提案のスピードが速くなると、当然ながら納期も早まり、仕事のサイクルがどんどんスピードアップしますよね。

「コロナ禍以降、商談件数が増えている」という話も聞きますが、提案資料の作成など、準備にかかる工数もその分増えているということ。そのため、テレワークによって、仕事量が増え、残業しなければ仕事が終わらない……といった状況に陥っている人も多いのではないかと思います。

休まなければパフォーマンスは低下する。テレワークで長時間労働に陥りやすいタイプとは?

悩み

テレワークで長時間労働に陥りやすいのは、どんな人でしょうか?

髙橋さん

次の4つのタイプに当てはまる人は、長時間労働に陥りやすいと言えます。「真面目さ」などは日本人の特性とも重なるので、該当する人も多いのではないでしょうか。

①真面目な人

以前は“会社を出る”ことによって仕事を切り上げることができましたが、テレワークでは切り替えのタイミングを図るのが難しくなり、夕食後もついパソコンを開いてしまう。そこで仕事を始めてしまうと、あれもこれもと仕事がどんどん増えていく……。この傾向は、真面目な人にほど多く見られるようです。このようなタイプの人は「19時以降は仕事をしない」とか「夕食後はパソコンを開かない」など、自分でルールを作って意図的に切り替えるようにしないと、時間も曜日も関係なく、ずっと働き続けることになってしまいます。

②仕事ができる人

通常、人事異動や中途採用などでチームの顔ぶれが変わると、上司は新しいメンバーにどのような仕事が向いているか見極めて、仕事量を平準化していきます。ところが、2020年は異動や採用が活発になる4月に緊急事態宣言が発令されて、人間関係の構築ができないままテレワークにシフトした企業が多くありました。未曾有の事態の中で納期を守るため、既知の人にとりあえず仕事を振った上司が多かったんです。コロナ禍以降は、このように、特定の“できる人”に仕事が集中する傾向が強まったと言われています。

③タイムマネジメントができない人

自律的に動けない人の中には、タイムマネジメントができずに深夜まで働くことがルーティンになり、それによって翌昼の生産性が下がるような悪循環に陥っている人が一定数見られます。他のメンバーは昼間に働いているため、昼間にオンライン会議などが発生するわけですが、そこに集中力が欠けた状態で参加するので、ケアレスミスや二度手間が多くなります。

④自分からコミュニケーションを取りにいかない人

会社にいれば、上司やチームメンバーが「何か困っているの?」と声をかけてくれるかもしれませんが、テレワークでは、自ら相談しなければ困りごとは解決しません。コミュニケーションを取らずに自己判断した結果、二度手間になり、残業が増えてしまうといった人も多いですね。

脳や体を休める時間が減ることには、どのようなリスクが考えられるでしょうか?

髙橋さん

当社が実施した調査では、休暇への満足度が仕事のパフォーマンスや従業員エンゲージメントに影響するという結果が出ています。

休暇とパフォーマンスの関係

髙橋さん

皆さんも経験したことがあると思いますが、続けざまにオンライン会議をしたり、頭を長時間働かせて資料を作り続けたりすると、疲労が蓄積してパフォーマンスが低下しますよね。休暇を取らなければパフォーマンスが落ちる、というのは明確なんです。

さらに、仕事量が膨れ上がると、納期に間に合わないかもしれないというプレッシャーがかかり、精神的にも疲れてしまいます。休暇を取れない状況が続くと、仕事のパフォーマンスや従業員エンゲージメントは落ち続けますし、メンタル疾患にかかる可能性も高くなるでしょう。

従業員エンゲージメントとは

「従業員エンゲージメント」は「愛社精神」や「会社に貢献したい意欲」などを意味します。会社との距離が離れるテレワークで仕事へのやる気を出すには、従業員エンゲージメントを高めることが重要となります。

メリハリをつけて働くために。部下も上司も意識したい「効果的な休みの取り方・取らせ方」

休み

休暇が仕事のパフォーマンスやエンゲージメントに影響するということですが、効果的な休暇の取り方を教えてください。

髙橋さん

仕事のパフォーマンスを上げたいなら、休みの日は仕事から離れて、いつもと違うことをしましょう。ずっと同じような仕事に向き合っていると、脳が効率化を求めて、いろいろなことを省略して考えるようになるそうです。つまり、仕事の量はこなせるようになりますが、質が高まっていかないんですね。

本人はずっと仕事をしているので、頑張って成果を出している気になりますが、周りからは「あの人の企画は変わり映えしないね」とか「いつもの焼き直しだね」といった評価をされてしまいがちです。

「いつもと違うことをする」とは、例えばどういうことでしょう?

髙橋さん

家の近所を散歩するだけでもいいですし、公園のベンチに座って、普段は手に取らない本や雑誌を読んでみるのもいいと思います。今は難しいですが、1週間や10日など長期休暇を取って、海外や国内の知らない場所に旅行に行くことも、仕事のパフォーマンスを上げるために必要な行動ですね。

上司や周囲の目を気にして、休めないと思っている部下は多いと思います。罪悪感を覚えず休暇を取るために、部下はどんな意識を持っていればいいでしょうか?

髙橋さん

「仕事のパフォーマンスを上げるために休暇が必要だ」というように、休みのあり方を捉え直したほうがいいですね。休むことに対して「気まずい」「サボっていると思われる」と考えるのはやめて、有給休暇を取ったら思い切って休む。“休暇も仕事の一部”という考え方にパラダイムシフトしたほうがいいと思います。

テレワークでもメリハリをつけて働いてもらうために、マネジメントの立場の方は、部下とどのように接すればいいでしょうか?

髙橋さん

これまでは「これやっておいて」と仕事を渡し、ときどき進捗を確認することで仕事が成り立っていましたが、テレワーク下では頻繁に確認することが難しいですよね。マイクロマネジメントをしてしまう上司も多いのですが、部下からすれば確認されればされるほど「早くやらなきゃ」「また連絡がくるかもしれない」など、プレッシャーを感じてメリハリもなくなってしまいます。

だから部下に仕事を渡すときに、なぜその仕事をしてほしいのか、いつまでにやらなければいけないのか、どのくらいの水準で終わらせればいいのかなどの判断基準を説明し、理解してもらうことが、二度手間、三度手間を防ぐカギになります。

また、テレワーク下では、部下は「任せてもらえている」「評価してもらえている」といった心理的安全性を得にくいため、仕事を渡すときやフィードバックするときの言葉の使い方にも、心を砕いたほうがいいと思います。

上司は大変ですね。

髙橋さん

もちろん部下も自立して仕事をしていく必要があります。テレワークで受け身はダメですし、自分自身でタイムマネジメントをしなければなりません。成果を出すために足りないことがあれば、自ら取りに行く姿勢も大切です。

部下が遠慮なく休暇を取るには、周りの理解も必要だと思います。休暇を取りやすくするためのチーム作りについても教えてください。

髙橋さん

テレワークに限ったことではありませんが、チームの関係性がいいと、有給休暇の取得率が上がるという調査結果が出ています。「明日は休むからこれをお願いね」と遠慮なく頼むには、チーム内で仕事を“見える化”することが大切ですし、その仕事を進めるためにどのような知識やスキルが必要か、お互いに理解しておく必要があるでしょう。

組織風土やマネジメントと年次有給休暇取得日数の関係性

最後に、部下にメリハリをつけて働いてもらうために、髙橋さんご自身が日頃どのようなことを実践されているか、ぜひ教えてください。

髙橋さん

1on1ミーティングなどでは「いつ休もうか」「目処が見えたら少し休もう」といった話をして、できるだけ休暇を取ることを奨励するように心掛けています。また、部下から「休みたい」と連絡を受けたときは、基本的に「了解です」と即答するようにしていますね。

でも、それだけだとコミュニケーション不足なので「ゆっくり休んでください」とか「旅行に行った場所のことを今度教えてください」とか、何かひと言添えるんです。仕事を進めるためにも休暇を取得するのはいいことだね、というメッセージが届けばいいと思いながら、日々、部下と接しています。

(掲載日:2021年7月31日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト

社員が心身ともに健康に働ける職場へ

ソフトバンクでは「心身の健康づくりに関する基本方針」にのっとり、最先端のAI・ICTを積極的に活用しながら、社員とその家族の健康維持・増進を目指した、さまざまな取り組みを行っています。その取り組みの1つとして、メリハリをつけて働くための年次有給休暇の取得推進も実施中です。

 

ソフトバンクの健康経営宣言